2020/10/10 のログ
史乃上空真咬八 > 「――現実じゃあなく、それだって、ひとつの"夢"、スよ」

素直じゃなく、素っ気なく、それまで応答してきた彼の声調が、唯一揺らいだ。
……そこにない片腕のある場所に視線を遣り、それから貴女を見上げた眼は、

『――見たくない光景を、深く、遠く、映したものだ』


「――餓死をこの世から無くすことだって夢たりえるンじゃないスかね。
……いえ、今のは忘れて下さい。つまらン事言いやした。
試験もレポートも、期待せず、しかし期日まで確とお待ちを。
明確な結果を、必ず提出しやス」

身長差はかなりある。見上げてようやく顔を映す。
終始静まり返った静謐な男子生徒は、頭を深く下げる。

「窮戯先生。講義、お疲れさンでした。俺はこれにて、失礼しやス」


そうして、最後の一人の生徒もまた、この大講義室から立ち去って行った。


…………。



――鼻をつくのは、そこにいた彼の残り香。"獰猛で、警戒を最大まで強めた狼の、唸り声さえ幻聴するような臭いだ。"
対峙する間見せなかったその色は、本人が居なくなった後で、そこにあったと初めて勘づける程、抑えられていたのだ。

ご案内:「第一教室棟 教室」から史乃上空真咬八さんが去りました。
窮戯 >  
「……フフ」

誰もいなくなった教室
小さな、狐の笑い声が響く

懸命に抑え込んでいた…猟犬?あるいは、狼の牙にも似た警戒心
考え方や立ち振舞だけなく、それを自制できることもまた一つ、"子供らしくない"と言える

「史乃上空真咬八…」

履修登録者の名簿から、名前を読み上げる

「尻尾も見せないなんて、恥ずかしがり屋さんね…」

クス、クス、と
漏れるような笑みを浮かべ、黒い狐の女教諭もまた、教室を去るのだった

ご案内:「第一教室棟 教室」から窮戯さんが去りました。