2021/03/07 のログ
ご案内:「第一教室棟 屋上」にレナードさんが現れました。
レナード > 「………ふう。」

屋上で独り、ベンチに座って本を読んでいる少年が居た。
居住地の下へと向かう人が、学園から姿を消し始める夕暮れ時。
少しでも授業のカリキュラムに追いつくべく、ぼんやりと自習しにやってきたのだ。
図書館を使うこともあれば、こういう独りになれそうなところを選ぶことだってある。
今日の気分は後者だった。

「……………。」

ぱたん、と教科書を閉じる。
読んでいた内容も程々覚えているだろうことを期待し、ベンチの上に無造作に置いて。
ふと前を見やればいつも変わらない、広々とした夕暮れの光景がそこには広がっている。

ここから眺められる夕暮れを見やると、ふと自分の脳裏に細切れになった記憶が蘇る。
出会いと別れを繰り返したこの場所と、この時間。
ここへは単なる気分でやってきたと自分に言い訳をしたが、まるで何かに惹かれるようにやってきたのも事実だった。

レナード > 時々、思い返すことがある。
あの時の自分が、違った選択をしていたら、どうなっていただろうか?と。
現実はこの通り、ここに戻ってきていて、学生生活を再開してはいるということに他ならない。
だが、

あの時、彼女から深く話を聞けていたとしたら?
あの時、自分がもっと落ち着いて行動できていたとしたら?
あの時、あの娘とここで会うことがなかったとしたら?
あの時、………自分が戻ってくることがなかったとしたら?

この場所は、そんなありもしなかった過去の選択を、つい妄想させてしまうのだ。

「………アホらしい妄想だし。」

そんな想像を、何度繰り返したことだろう。
その度に、そんな自らを愚かと切り捨てることにも、もう躊躇いはない。
ベンチの背もたれに身体を委ね、天を仰いでため息を吐く。

厭になるなあ。
なんて、少年は未練がましい自身を呪った。

レナード > 「…………そういえば……」

一つ思い出したことがある。
こちらに戻ってきた時のことだ。
自分が一度この世界から出ていく前に、確かに受け取ったはずのあのチケット。
あれを、いつの間にか紛失していた。

「……おっかしいなあ。
 使った覚えもねーし、結構気にかけてたんだけど……」

そもそも無くすような管理もしていないし、使った覚えもない。
だが、こちらに戻ってきてからそれは忽然と姿を消していた。
何のチケットだったか、結局判明する前に無くしてしまったわけだが、
それを渡してきた張本人に直接聞くのも憚られた。

「……ぜってーバカにされるの分かってるし。
 そんなの御免だし。あーやだやだ……」

レナード > 「………帰るか。もう、いい時間だし。」

ベンチから身体を起こす。
その場でぐーっとひとのびしてから、自分しかいなかった屋上を後にした。

ご案内:「第一教室棟 屋上」からレナードさんが去りました。