2021/10/17 のログ
ご案内:「第一教室棟 教室」に高梨美子さんが現れました。
高梨美子 > 授業が全て終わった放課後
クラスのみんなが喜びにあふれるであろう時間。
女は一人動画サイトで野球を緊張した面持ちで眺めていた。

(話しかけるだけ、話しかけるだけ)

そう、クラスメイトに話しかけようとしているのだ
野球の内容なんて勿論頭に入ってこない。
初めての友だちもできたし、今日こそは声をかけて友達を増やすと一念発起。

「はぁ……はぁ……」

現実は息を荒げて冷や汗もかいてる不審者。
もはや話しかけるだけでいいかな、と早くも願いはランクダウン。

高梨美子 > どうしよう、どうしよう。
周りは既にどっかにいこう、だとか今日何する?だとか
ペアやグループが作られ始めている。

まだだ、まだ慌てる時間じゃない。
どこかで聞いた台詞を脳内で何度も再生しながら
動画サイトの中の野球を眺める。

そうだ、推しのたかみんがホームラン打ったら話しかけよう。
自ら話しかけるどころか、決意を他人に委ねだした。

そして、たかみんの打席。
バッターボックスに入る勇姿を見送って。
第一球、ストライク。見事な振り遅れ。

二球三球と進んでいき、そしてワンストライクスリーボール
ツーアウトとフルカウント間近。
そして、たかみんは、また振り遅れた。


「ふざけっ……いだっ!」

短気と、焦りのおかげで机を蹴ってしまって
教室内に大きな音が流れた。

ご案内:「第一教室棟 教室」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
高梨美子 > 教室の中、机を蹴って大きな音を出して
顔を険しく、そして真赤にしてスマホの中の野球を眺める女が一人。
大きな音を出したのは一番うしろ、窓側の端っこの席で。

芥子風 菖蒲 >  
放課後の教室で、ぼんやりと窓を眺める少年が一人。
学年混合の授業自体は何も珍しくない。
何を考えてるかもわからない無表情で、ぼーっと窓を眺めていた。
別に何も考えていない訳じゃない。
風紀委員だって授業に出る。今日の授業のことだって、覚えてる。
ただ、この放課後。どうしたものか。今日は非番。
非番なので動くことが出来ない。要するに、仕事がない。

「……暇だなぁ……」

そう、やる事がない。
仕事人間と言う自覚は無いが、半分くらいは生き甲斐である自覚はある。
如何するべきか。とりあえず帰るか。
そう思い、席を立ったと思ったら大きな音が聞こえた。
音の正体は、誰かが机を蹴ったような。
あの一番後ろの、上級生だろうか。
少年は、席を立ったまますたすたと美子へと近づいた。

「ねぇ、どうしたの?喧嘩?」

何一つ物怖じすることなく、少年は尋ねる。

高梨美子 > やらかした、完全にやらかした
そう気づいたのはもう机を蹴った瞬間、すぐに。
顔を真赤にしてスマホの中の野球に専念しようとする。
たかみんは、ホームランを打っていた。

「今打つなよっ……!」

完全に話しかける雰囲気ではない。みんなこっちを見ている気がする。
下級生もいるというのに、なんて恥ずかしいのだろうか。

なんて思ってスマホを見ていたら、誰かがすたすたと歩き寄ってくる足音が聞こえて。
だれだろうか、と涙目の顔をあげようとした所、声が聞こえて。

「けん……か、なんてしてねぇよ。周りがうっさかっただけだ」

ああ、この口はなんてことを言うのだろうか。
震える口調の中で顔を上げてみると、年下に見える少年が目の前に。

「何のようだよ」

自分に、物怖じすることなく話しかけてくれる人は先日以来で
内心テンションが上がる。
それに応じてか声の調子も震えが消えていく。

芥子風 菖蒲 >  
だが果たしてそのホームランは後の引継ぎバッターを生かすことが出来るのか……。
じぃ、と見つめる少年の双眸は青空の様に済んだ青だ。

「そっか。喧嘩じゃないならいいや」

それならそれとして、風紀として取り締ま…仲裁をする必要がある。
威光をちらつかせるわけじゃない。単純に迷惑。
迷惑は困る。だから止める。唯の善性だ。
さて、喧嘩じゃなければと一安心したはいいが、少年はふと疑問に思う。
んー、とうなり声をあげて一拍子。

「……じゃぁ、どうしたの?頭ぶった?」

あの大きな音の正体は一体何なのか。
少年は結構無遠慮であった。あとちょっと失礼。

「別に。何か用ってわけじゃないけど、何かあったら皆が困るからさ。
 事と次第によっては、俺だって黙ってるわけにはいかないし……あ、そうだ」

「怪我とかしてない?なんだか、調子悪そうだけど」

無表情で淡々とした表裏の無い物言い。
だからそこに、嘘は無い。
声音の割にはきっちり彼女のことを心配していた。
本当に頭を打ったのなら、大変だ。

高梨美子 > 引き継ぎバッターはものの見事に沈んでいたとか……
此方を見つめる瞳は綺麗な青で、引き込まれるようなそれに思わず見惚れてしまったものの
今はそれどころではないと頭を軽く振った。

「おう、喧嘩じゃねえよ」

しかも口下手が恨めしい、これではただのオウム返しで
次の話につながらないと軽く息を荒げる。
どうしようどうしようと睨むように少年の瞳を見つめ続けた後
心配してくれたのだろうか、声をかけてもらえた。

「……足ぶつけた。たかみ……野球選手が打たねえから腹立った
 そしてお前ズケズケ言うね」

此方としてはありがたいのだけれども、と睨むように
細めていた目を開かせて。

「悪かったな……今度から気をつける。
 で、何お前。風紀委員か何か?」


ぶっきらぼうに言葉を発した後は
淡々とした物言いだが、此方をしっかり心配する優しい言葉が降り掛かってきて
少年が天使に見えてきた。

「別に、怪我もしてねえし問題ねえ……後友だちになって」

ぶっきらぼうに答えたつもりだったが、本心がぽろり
かいていた冷や汗が更にましたとか。

芥子風 菖蒲 >  
さらば引継ぎバッター。
ピッチャーの得意球は高速ストレート。
ぱちぱち、じぃ。視線は真っ直ぐ外さない。

「そっか」

喧嘩じゃないならそれでいい。
返事自体は素気ないが、必要以上の事をしないだけだ。
そのまま彼女の言う事に耳を傾けていると……思わず、首を傾げた。

「打たない……?野球選手なの?アンタ」

何かのすれ違いが起きたぞアンジャッシュ。
そう言うからには、少年は彼女を野球選手か何かかと思った。
……じぃー。じろじろと無遠慮に体を見ている。
確かに、体には鍛えている節が見える。強そうだ。
嘘ではなさそうだ。本当でもない事には勿論気付かない。

「そんなにズケズケ言ってる気はないけど、うん。
 気を付けてくれるならそれでいいよ」

うんうん、と数度頷いた。

「ん、風紀委員。俺が一番生かせる場所がそこってだけ。
 ……そう?ケガしてないからいいけど……、……ん、うん」

「いいよ」

いいよ。
お友達になって、と言われるなら拒否する理由は無い。
勿論友達の意味はちゃんとわかってる。
分かった上でちゃんと友達になるつもりだ。
表情の起伏こそほぼないけど、何処となく嬉しそうに僅かに体が揺れる。

「俺は芥子風 菖蒲(けしかぜ あやめ)。宜しく、アンタは?」

高梨美子 > 視線を外してもらえないので、何となく
視線をスマホにやってみたら、たかみんがとんでもないエラーをして
二点入って逆転負けを喫していた。
思わずと、ため息が漏れた。

「あ、負けた……お、おう」

視線を再度戻してみると、まだ見つめる青い瞳とぶつかって
その青い瞳が傾いたと思ったら、思わずと吹き出しそうになって堪えた。

「ちがうちがうちがう、俺じゃなくてこっちな?スマホ見てみ
 ……今ハイライトだけど」

何かがずれているぞ、おかしいぞと数秒固まった後に勘違いに気づいた。

無遠慮に体を見られても気にはせずに
その視線の先に、ずい、とスマホを見せてみる。
スマホの中ではたかみんと思われる選手がホームランを打った場面が
映し出されていて。

「まぁ、言ってないってんなら……そうかもな」

それでいい、と言ってくれた少年に見せていたスマホの電源を落として
スカートのポケットに突っ込んで。

「……へぇ? 喧嘩得意なんだ。俺もちょっと得意
 おう、怪我なんてしてねえよ」

そして、自分の発言にきづいて硬直して
冷や汗をダラダラ流していたのだが、天使から、いいよ、との言葉が
脳内で何度も繰り返される。
え、いいの? トモダチダヨ? とか思考は混乱を極めたけれど。
嬉しそうに見えた様子に、思い切り立ち上がって椅子を倒した。

「まじかよ! ありがとな菖蒲! 俺は高梨美子!(たかなし みこ)
 美しい子って書いて美子! 名前で読んでくれていい!」

再び周囲から視線が集まるけれど
時間が立っているのでその視線も少数だ。
そして最初から馴れ馴れしくも名前呼びだぞ

そんな視線も気にしなくて。嬉しげに笑って。

芥子風 菖蒲 >  
「負け……?……ん、あ、へぇ。ふぅーん」

見せられたスマホには野球の様子が映っていた。
動画に収められるある選手のハイライト。
スポーツ自体には興味は無い。野球のルールも一般人程度の知識。
けど、何となくだけど伝わってくることがある。

「好きなんだ、この人」

確証はない。
何となくだけど、彼女は此の選手の事が好きなんだと思った。
誰かが抱く憧れの様な、きっとそんな感情に近いと思う。
言葉選びは、さておき。
電源の切れたスマホから目を話せば、視線は再びじぃ、と彼女へと向けられた。

「得意かな。その辺の奴には、負けられないように鍛えられたと思うから」

「だから負けないよ。アンタにも、誰にも……」

そうでなければ、意味は無い。
風紀にいる自分の意味は、そう言う事だ。
人並みの得意、とは違って、淡々とした声音だからこそ、何処となく言葉は重い。
戦いしか出来ないのに得意じゃないなら、風紀に居る意味なんてないから。
少しだけ目を細めたのも束の間。
急に相手が飛びあがったから「わ」、と声を漏らして一歩、後ずさり。

「マジだけど、どうしたの?そんなに嬉しかった?」

其処まで悦ぶことなのだろうか。
少年には今一分からない。
友達になるなんて、もっと自然な事だと思っている。
目をぱちくりしては、うん、と小さく頷いた。

「宜しく美子。それで、美子は帰らないの?
 自習するならわかんないけど、あんまり教室に長居する感じには見えないけど。」

高梨美子 > あ、興味ないやつですねこれ
菖蒲の反応を見て色々と察してしまって
いらないものを見せたと反省。
ふひひ、とごまかすように笑いつつも、次いだ言葉には
勿論と首が縦に動く。

「おうよ、小さい頃から見てんだぜ?
 今はいぶし銀って呼ばれててプレーが上手いんだ
 さっきはミスってたけど」

好きな人の話だからスラスラと言葉が出てくるけれども
興味のない話だろうから、ごほんと咳払いをして
再び女を見る視線に、真っ向から視線を合わせて。

「へぇ、誰にもとは強気だねー……どっちが強いか試してみてぇな」

それだけ、自信があって風紀に入っているのだろう
ということは分かって、その強さに、言葉に感じる重さに興味が湧いて
目を細めて、浮かべていた笑みは更につり上がって三日月のように。

それでも、友達発言を聞いたなら思い切り立ち上がったのだけれど。

「そりゃ嬉しいに決まってんだろ! 友達だぜ友達! 菖蒲で二人目!」

そう言ってから、少ねえだろ。と照れくさそうに頭をかいた
菖蒲と違って、友達の作り方なんてよくわからなくて
だからこそこんなにも嬉しそうで。

「よろしくな! いやまぁ、確かに俺は自習するタイプじゃねえし
 ておい、誰が勉強しないタイプだ」

びしり、片手を突き出すようにノリツッコミ。
教室の中は少し冷たくなったろう。

「菖蒲はそろそろ帰んの? それなら俺も帰るけど
 あ、勝負とかするか?」

なんて、冗談交じりに。

芥子風 菖蒲 >  
少年は特に気にする様子はない。
興味が無いのは事実だが、嫌悪を抱いたわけじゃない。
と言うよりも、おおよその事にはこんな感じだ。
興味が完全にないわけじゃないが、今一反応は薄い。

「そうなんだ。俺、あんまりスポーツとかやってこなかったから、よくわかんなくて。
 けど、それだけ魅力的な人……選手?って言うんだっけ。っていうのは、美子を見ればわかるよ」

スラスラと魅力を語れると言う事は
その選手はそれほど魅力的なものだと思う。
少年にその魅力はまだわからないけど、語る彼女は嬉しそうだった。
友人として、と言うよりは少年はそう言う事が好きだった。
好きな事を好きと言える自然さ、良い事だと思ってる。

「いいよ。けど、俺加減はしないけど、いい?」

挑戦は歓迎だが、少年に加減は無い。
加減を知らないのか、しないのかはさておき、手心がないのは確かだ。

「けど、また今度ね。……友達になった後に、すぐ切った張ったはよくないよ」

よくない。
流石にこういうのは分かる。もっとのんびり行きたい。
こくこくと頷けば、少年は彼女を見上げている。
今更だけど、こうして立つと自分より大きいみたいだ。
ちょっと、羨ましいと思う男心。
ほんのちょっとだけ、つま先立ち。届かないからすぐ諦めた。無念。

「二人目?美子、少ないんだね。友達」

尚、ストレートの投げ方は剛肩の模様。
悪意がない分切れ味は妙に鋭かったり鋭くなかったり。

「……勉強するタイプなの?意外。
 じゃぁ、今度教えてよ。上級生なら、一年の寡黙なんて簡単じゃない?」

そして、割とちゃっかりしていた。
風紀委員で単位が補充されると言えど、学生らしいことはする。
それ以前にまだまだ少年、知りたい事は、学びたい事は多い。

「勝負はまた今度。だから、一緒に帰らない?
 帰りに適当に、色々買い食いしてさ。俺、友達とそう言う事するの好き」

高梨美子 > イマイチ反応が薄い様子にごまかすように笑っていたが
菖蒲の無表情を見ていれば段々といつもこんな感じなんだろうか
とか思ってしまって小首をかしげた。

「そうなんか。じゃあ今度一緒に野球見ようぜ
 ん、そうか? それなら良かった。菖蒲は純粋で好きだぜ」

菖蒲の発言と様子に、純粋、という文字が頭をよぎって
そう話して、眩しいものを見るかのように少し目を細めた。
ああ、いい子だな、とこの出会いに感謝して。

「ふはは、加減なんてしてみろよ。怒るからな」

勿論のこと大歓迎だ、と笑みを向けたまま
だったのだが、また今度、の言葉とその次の言葉に
たしかにと納得した様子を見せる。

「菖蒲の言う通りだわ。焦りすぎた。悪いな」

見下ろす形となった菖蒲をじっと見下ろして
三日月を描いていた笑みは緩やかなものへと変化していく。
そして、なぜかつま先立ちをしたのを見て、悔しいのかなと
屈もうとしたけれど、それは良くないかな、と思い直したものの。

「……お前切れ味良いストレート投げるの上手いね」

心に思い切り傷を追った女はしっかりと屈んで
目線を合わせて微笑んでみせた。
プライドよ傷つけとばかり。

「意外とはなんだこらー さっきから聞いてればお前
 俺でも傷ついちゃうんだぞー? ま、教えてやるけど」

割とちゃっかりしながらハートにブローを叩き込むその姿勢に感服。
これでも三年生になれてるのだから知識は詰まっていて。

「おう、了解。また今度楽しみにしとくぜ?
 じゃああそこ行こうぜ。新しくできたクレープ屋。
 美味いって有名なんだぜ?」

一人で行くことができなかったところへと誘って
倒れた椅子をもとに戻したのなら、すっかりと人気がなくなった
教室を菖蒲を連れて後にするのだろう。
リクエストした所に行けたかはわからないけれど。
行けたなら此方はクレープを堪能したはずで。
そして、心のアルバムにこの出来事を刻みつけたらしい。 

芥子風 菖蒲 >  
「野球……いいけど、俺本当にちょっとしかルールわからないよ?」

球を投げて、バットで打って走って、その程度。
かと言って、誘いを断る理由も無い。
相手がいいならそれでいいけど、楽しさは確約できない。
野球、ちょっと勉強しておこうかな。

「しないよ。けど、負けないから」

強さにだけはこだわりがある。
だから、友人だろうと誰であろうと、負けるわけにはいかなかった。
自負ではない。一種の責務のようなものだ。
そう思った矢先、見上げた視線が平行線で目が合った。

「……………………」

何時も通り、何変わらない無表情。
……でも明らかに顔を顰めている。
やっぱり身長がちょっと低いの、気にしていた……。

「クレープ。甘いものは、嫌いじゃない」

それでもそう言うのにはしっかりつられるのは子どもっぽい。
口いっぱいにクリームをつけて、甘味を堪能し
気づいた時には無意識に、その口角は上がっていたという。

ご案内:「第一教室棟 教室」から芥子風 菖蒲さんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 教室」から高梨美子さんが去りました。