2022/08/02 のログ
ご案内:「第一教室棟 屋上」に出雲寺 夷弦さんが現れました。
出雲寺 夷弦 > ――晴れの向こう、目を焼いてくる程に、蒼い。

ベンチに腰掛けた彼の横顔は、その強すぎる陽射しが濃く陰を刻む。
頬に当てたスマホの向こうから聞こえる声に、言葉に、
横顔をあおいだ風が、揺らぐ瞳を見せる。


「…………そ、っか。……鍛冶の、爺さんが……」

『――――?』

「……いや、そう、そうだな。そしたら、また、連絡頼む。
……こっちも色々、準備しないと、いけないからな」

『――――、――――。』

「……最期に、槍を預けてくれたんだって思うことにするよ。
……生きてるうちに、それを受け取れてよかったって、さ」




…………暫く通話は続き、やがて、彼が軽く挨拶を告げて、切る。
手の中のスマホから天を仰ぐと、息を吐いた。

「…………じっちゃん」

出雲寺 夷弦 > 「……」


――気持ちが曇り、何処か上澄みで隠された水底のような心地。

空は、こんなにも青く、太陽は焼けるほど照り付けて、生命の息吹に溢れたこの屋上景色の鮮やかに反した、灰色の心模様。

おのずと、片手で顔を覆った。

眩し過ぎる。今は、何もかもが鮮やかで、そして、鬱陶しい。



「……八つ当たりも、いいところだってのにな」


……風は吹かない。じりじり、次第と、汗がにじむ。
ぼうっとした昼抜けの正午を、噛み締める。

出雲寺 夷弦 > 「……」


――空を雲が通り過ぎていく。
広がった影と、薄暗くなった蒼に混じり、歩みを一歩。

ベンチから立ち上がり、屋上の出口へと歩く。

「……喪服、仕立てにいかないと」


……再び陽射しが戻ることは、それからなかった。
午後は、やがて曇りから雨へと、変わっていったからだ。

ご案内:「第一教室棟 屋上」から出雲寺 夷弦さんが去りました。