2020/06/08 のログ
金剛 経太郎 > 「うっす……じゃない、はぁい。」

ちょんちょん、と爪先を地面へとつけては顔をしかめる。
そうしている間にも、目の前の女性はてきぱきと次の行動へと移っていく。

「あ……ありがとうございま……って。」

いやいやいや近い近いでかい!と声に出しそうになったのをぐっと堪え。
こちらに寄り添ってくれる彼女へと戸惑いの視線を向ける。
小柄、というよりは幼い、という形容が当て嵌まる体躯の経太郎は、事務員さんよりも頭一つ分以上小さい。
自然、顔の近くには大きく柔らかな塊があって……。

織機セラフィナ >  
「いいのよ、ぶつかっちゃったのはこっちだし」

くすりと笑う。
こちらも曲がり角でぼんやり歩いていたのがいけないのだ。
無頓着に無警戒に身体を寄せる。

「こう見えて結構力持ちだから、寄りかかってくれて大丈夫だからね」

もう一度にこりと笑い、ゆっくり歩き出す。
彼の右足に体重がかかりそうな時にはぐっと彼の身体を引き寄せるように力を入れながら。

金剛 経太郎 > 「そ、そんなことはっ!」

先の衝突事故は10:0で自分が悪いと言う自覚はある。
その挙句足首をくじき、介抱までさせるのは非常に格好悪い。
格好悪いが……

「え、ええっと……じゃあ、お邪魔しま……す?」

下心には勝てないお年頃。見た目は子供、中身は思春期。
半ば抱えられるように肩を借りれば、顔の半分と視界の半分が大変に柔らかい。

(ほ、本人がどうぞって言ってるんだから遠慮する方が失礼だよな……!)

足の痛みも再びどっか行きつつ、みみっちく心の中で言い訳中。

織機セラフィナ >  
「大丈夫、歩けそう?」

彼の心の中などさっぱり知らず、こちらは彼がちゃんと歩けるかどうかを心配している。
歩けそうならこのまま歩くし、

「無理そうなら、おんぶするから遠慮しないで言ってね」

歩きにくいのは我慢してほしい、と言いながら笑う。

金剛 経太郎 > 「だい、じょぶ、でっす……!」

運動神経が悪ければ体力も無いもやしっ子。
ただでさえ歩きにくいのに、彼女が進むたびに体が押し付けられて集中も出来ない。
しかし、このままで良い、と断固として譲らないだろう。

「無理、じゃない、です。お姉さんの……お陰。すみません、本当に。」

少しだけ顔を動かして詫びるも、事実上胸に頬ずりでもしてるかのような体勢で非常にバツが悪い。
おまけに半ば屈む姿勢を強要させてしまっている所為か、服の緩みが加速している気もする。
助平心が見せる錯覚だろうか。

織機セラフィナ >  
「そう……? もうちょっとだから、我慢してね」

なんだか声が苦しそうだ。
そんなに痛いのに、我慢をさせて申し訳ない気持ちが込みあがってくる。
なのでせめて彼の右脚に体重がかからないようにと、ぐっと引き寄せる左手に力を入れて。

「――はい、ついた。靴と靴下、脱げるかな」

そうこうしている間に水道までたどり着いた。
一度身体を離し、彼の靴と靴下を自分で脱げるかどうか聞いてみよう。

金剛 経太郎 > 僅かな筈だった水道までの距離が大変長く感じる。
いやいっそこのまま終わらなくても良いか、と不埒な考えが頭を過る。
(……いやいやいや、流石にそれは)

「は、はい。がんばり、ますっ」

足の痛みを忘れかけつつも、うっかり足をまともにつけば痛みが走る。
その都度引き寄せられて、を繰り返しているうちにどうにか水道へと辿り着き──辿り着いてしまい。

「……あ、ありがとうございました、はぁ。」

色んな意味で有り難い思いをさせて貰った、とは伏せて。
ぺこり、と身体を離した彼女へと頭を下げた後は、問われた事に応えるように靴と靴下を脱ぐ。

案の定、右足首は薄く赤く腫れ始めていた。

織機セラフィナ >  
「あー……」

結構腫れている。
あんまり大丈夫と言った感じではなさそうな。

「とりあえず冷やそうね。足、上げられる?」

もう一度彼の身体を支え、流しまで脚を上げられるかどうかと問う。
その間に空いた方の腕で蛇口をひねり、水を流して。

金剛 経太郎 > 「ああ、なるほど。」

ここでようやく何のために水道まで来たのかを理解する経太郎。
さっきの話なんて殆ど耳に入ってなかったので、今更納得する体たらく。

「足を、上げる。……それくらいなら、多分大丈夫、です!」

よいしょ、と右足を持ち上げてみるも、ふらふらとどうも覚束無い。
支えられているお陰でこの程度で済んでいるのか、それとも支えられてるが故に集中できないのかは不明だが。
悪戦苦闘しつつも、どうにか流しに足を乗せる。体勢的に、結構キツそうだ。

織機セラフィナ >  
水流に足首を移動。
ざばざばと水を掛けて冷やしていこう。

「んー、乗っちゃおうか」

彼の身長が低いのもあって、結構つらそう。
ならば流しに乗っちゃえ、と。
後ろから腰に手を回し、抵抗が無ければひょいと持ち上げる。
ぎゅっと密着した状態で。

金剛 経太郎 > 患部に水が掛かれば、ひんやりとした心地に小さく溜息をもらす。

「はぅ、気持良い……。」

少し体勢はきついけど、と言うよりも早く。
背後に圧が掛かったと思えば、軽々と持ち上げられてしまった。

「えっ!?……わ、ホント、力持ち……」
(それとも俺ってそんなに軽かったか……?)

驚いた拍子に無事な左足も流し場へと下ろしてしまい、
まずい、と思った時には半分ほど濡れてしまっていた。

織機セラフィナ >  
「あっ」

しまった、左脚は靴も靴下も脱いでいなかった。

「あわわ、ご、ごめんね!」

慌てて蛇口を捻るも、時既に時間切れ。
アワレにも彼の左足はべっちょり濡れてしまった。

「あ、あぁ、ご、ごめんなさい……」

金剛 経太郎 > 「大丈夫、これくらい。すぐ乾く……かなあ。」

油断していたこちらにも非はある。
途轍もなく申し訳なさそうに謝られると、むしろこちらが悪い気がして来てしまう経太郎。

「大丈夫、ホントに大丈夫だから!
……すぐに脱いで乾かせば……痛っ」

慌てて左の靴下も脱ごうとするが、右足だけで支えられるはずもなく。
足首の痛みによろめき、そのまま事務員さんへと倒れ込んでいく。
咄嗟に何かに掴まろうと縋る手は、はてさて空を切るか、事務員さんの服へと掛かるか──

織機セラフィナ >  
「あっ、無理しない――」

右足を怪我しているのに左の靴下を脱ごうとすれば、当然。
止めようとしたが間に合わず、彼がこちらへ倒れ込んでくる。
咄嗟に受け止めようとするも、伸ばされた腕は服へと引っかかる。

「――っ、わ」

このまま彼が落下すれば、間違いなくポロリする。
それはまずい。
まずいので、彼をガッチリと抱き留める。
服を掴まれてもその腕がずれなければいいのだと言う理屈。
両脚でしっかり二人分の体重を支え、一歩あとずさりするものの、倒れはしなかった。

「――ふう、大丈夫?」

自身の腕と胸の間にがっちり捕まえられた彼に怪我は増えていないかと問う。

金剛 経太郎 > 「だ、大丈夫……」

ではない。正直ちっとも大丈夫では無い。
怪我は無い。事務員さんはしっかりと受け止めてくれた。
しかし、だからこそ、大丈夫では無いのだ。

「え、と。ごめんなさい。それと、ありがとうございます……」

大胆に大きく開かれていたのに、引っ張られ大胆さを少しましたショルダーネックの胸元へと飛び込むとどうなるか。
一言で言えば、むっちりしていた。

この時を振り返って後に経太郎は語ったとか語らないとか。
良い子のみんなは倒れそうな時に無暗に腕を振ってはいけないぞ、そんなナレーションが流れたとか流れなかったとか──

織機セラフィナ >  
「ごめんね、私が迂闊に乗せちゃったから」

彼を抱き留めたまま申し訳なさそうに。
もうちょっと考えていればこんなことにはならなかったはずだ。

「あ、ごめん、苦しいよね」

ふと自身に埋もれさせていることに気が付いた。
声を掛けて彼の準備が出来ればそっと彼から離れよう。

金剛 経太郎 > 「だ、だいじょうぶ──」

辛うじて状況を伝える言葉を捻り出すが、実際は軽いパニック状態である。
柔らかいし暖かいし良い匂いはするしで思考が上手くまとまらない。
その証に服だって掴んだままである

「だ、大丈夫。うん、大丈夫。だいじょう――」

これ以上このままで居るのは拙い、とそう思いつつ壊れたスピーカーのように繰り返す。
大丈夫だけど大丈夫じゃない、新たな危険を孕んだままであることに事務員さんが気付けるかどうか──

織機セラフィナ >  
「?」

何やら様子がおかしい。
身体は離すが、両手は彼を支える様に肩に置いたまま。
足が痛むのだろうか。

「どうしたの、大丈夫? 足、痛むの?」

彼の新たな危険には一切気が付いていない。

金剛 経太郎 > 若干、茫然自失とした状態で大丈夫と言っている経太郎。
心配する事務員さんが身体を離せば、抑えられていた経太郎の腕も重力に従って落ちる。
服を掴んだまま、ぐいん、と落ちる。
しかしそんな自覚は無く、声を掛けられれば我に返って状況を再確認する。

「ハッ……いや、本当に大丈夫で……痛い事は痛……」

はてさて少年の目に映るものとは。

織機セラフィナ >  
引っ張られて落ちる腕。
掴まれている服。
当然、

「――。」

ばるん、と零れ落ちる胸。
勿論と言うかなんというか、下着は付けているので隠すものが何もないと言うわけではないが。

「……っ、――、はな、……して、ほしい、な?」

彼から手を離し、自身の胸を隠す。
思わず叫びそうになるのを耐え、赤い顔で困ったように笑いながら。
彼も悪気があったわけではないはずだし、大事にするのはかわいそうだ。

金剛 経太郎 > 経太郎が目にしたのは。
あまりにも重厚な質量を持ちながらも躍動するそれ。
突然の事に何を見ているのか一瞬理解が遅れる程。

「───ぁ。」

事務員さんが自らの腕で隠すまでの僅かな間だが、脳裏に焼き付くには十分だった。

「ひ、ひやぁぁぁぁぁ!?
ごごご、ごめんなさい!本当にごめんなさい!ごめ、ぐげっ!」

同じく真っ赤になりながら、服から手を離し跳ねるように距離を取る。
しかし水道の流しがすぐ背後にあって思うほど退けなかったうえ、背中を強かに打つというおまけつき。
天罰というものが実在すれば、まさにこの瞬間であろう。

織機セラフィナ >  
「大丈夫!?」

ものすごい勢いで後ずさって流しに直撃した彼。
思わず声を上げる。
とりあえず手を離されたので、そそくさと服を直して。

「気にしないで、大丈夫だから。それより怪我とか……」

流石に背中となれば服を脱がすわけにもいくまい。
背中を触って大丈夫かどうか確認しようと。

金剛 経太郎 > 「う、うう、だ、大丈夫ですぅ………!」

正直背中と足の痛みよりも、彼女に近づかれる方が何かと気が気でない。
しかしそんな事は本当に意にも介してない様に背中に触れる彼女にどう対応したものかと目を白黒させて。

「ちょっと痛いだけで、大丈夫だからっ!
それよりちゃんと直して、服、服の方が優先!」

勿論、少しだけ距離を取りたいための方便でもある。

織機セラフィナ >  
「だ、大丈夫、もう直したからっ」

流石に胸丸出しで動き回るほどではない。
顔を赤くし、慌てて告げて。

「それに、君怪我してるでしょ、そっちの方が優先だよ」

恥ずかしいのは恥ずかしいが、自分はそこまでダメージはない。
それよりも彼の脚の方が心配だ。
捻挫は甘く見ると一生引きずることになるし、骨に異常がないとも限らない。
背中だって、身体のバランスが崩れて他の場所を悪くすることだってあるのだから。

金剛 経太郎 > 「そ、そうですかっ!」

直してある事は見れば分かる。
だって直してない場面を見ているのだから。違いは瞭然だ。
優先度合いについてぐうの音も出ず、優先されてしまえば一気に疲れが来てその場にへたり込む。

「頭は打ってないし、ちょっと痛いだけで大丈夫ですよぅ……」

いっそ頭を打ってさっきの光景を忘れられれば、と思うほどにはフラッシュバック。
真っ赤な顔を合わせる事も出来ずにごにょごにょと呟いた。

織機セラフィナ >  
「そ、そうだよっ」

こちらも赤い顔。
十歳かそこらの子供だと思っているが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
服を着ているのにまだ胸元を隠してしまう程度には。

「あ、足、だいじょうぶ?」

へたり込んだ彼に視線の高さを合わせる様に膝を付く。
一応少しの間冷やしたけれど、腫れと熱はそれで引くようなものでもないだろう。
彼の足を気にするように、やや前傾姿勢。
顔は近くなるし、胸元も低くなる。

金剛 経太郎 > 「い、今更落っこちそうになった時の事怖くなっちゃった……」

たはは、と苦笑いをしつつ適当な言い訳を並べる。
実情は精神を何度も殴られてグロッキー寸前という状態が膝に来たといったところ。
何処も痛くないの、だが。

(さっきの今でまたそうやって無防備に―――!!)

せめてもう少し恥ずかしさは保ってて、と言えるはずもなく。
ただただ深い谷間を目の前に目のやり場に迷う経太郎である。

織機セラフィナ >  
こうも無防備なのは性格と言うこともあるが、それ以上に彼の見た目が幼いと言うのも大きい。
小学生ぐらいにしか見えない相手にそこまで警戒する必要もないだろう、ぐらいに考えている。

「うーん……」

ともあれこちらは彼の足首の具合の方が気になるようだ。
骨に異常はなさそうだが、かと言って放置するほど軽いわけでも無い。

「――よし。ちょっとごめんね、っと」

彼の正面から背中と両足の下に腕を回す。
そのまま彼を抱き上げる。

「恥ずかしいかもしれないけど、我慢してね」

正面から抱き合うような体勢でだっこ。
水道で冷やすよりも保健室まで行った方がいいと言う判断。
だからと言ってこの状態で保健室まで歩かせるわけにもいかない。
そうして辿り着いた答えが抱っこ、と言うわけだ。
有無を言わさぬ調子で抱き上げたまま、保健室まで運んでいくだろう――。

金剛 経太郎 > 少し調べれば経太郎の境遇については知る事が出来る。
正しそれは教師であればの話。あるいはニュースなどで目にした事もあるかもしれない。
ゲームの世界から帰還した男の子。
見た目は10歳かそこらだが、立派な高校男子である。

そんな思春期真っ只中にとって、今日の事は大変な衝撃だった。
相手はそんな事は知る由も無いだろうが。

「ね、見た通り大丈夫だか……え?え?」

少し離れてくれると大変助かる。
そんな事を願っていたが、現実は真逆の方へと進んでいく。

「えええええええ!?」

しっかりと抱っこされたまま、保健室へと搬送される。
診断結果は足首は軽い捻挫、背中の打ち身。
しかし精神に大きな大きな爪痕が残った経太郎であった。

ご案内:「廊下」から織機セラフィナさんが去りました。
ご案内:「廊下」から金剛 経太郎さんが去りました。