2020/06/27 のログ
レナード > 「……ふぅん?
 良いと思うし。僕相手だったら、電気をいくら浴びせても平気だし。」

その提案自体は断る理由などないもので、少し間を置いてから練習相手になってもよいと彼に告げる。
ただ、どうにも彼のことをじーっと目を細めながら見つめているのは、例え大き目の声で言ったところでやはり気のせいではないらしい。

「…………。」

ぽそり。何かつぶやいたような、そんな口の小さな動き。
彼は気づくだろうか、ゆっくり、ゆっくりとこの男が距離を詰めていることに。

「……やっぱ、ものたりねーし。
 手からじゃ駄目だし。どうせなら………」

人一人分の隙間を挟んで、小さな男の両手が、目の前の彼の肩に迫った。

阿須賀 冬織 > っ、気が付けば最初から比べて随分と彼の顔が近くなっている。

「あ、えっと。今日は多分さっきよりも電気出すの無理だからさ……また今度にしてくれないか。」

肩に迫ってきた両手をつかんで答える。さっきから息を整えたはずなのにまたドクンドクンと心臓が早鐘を打っている。

「連絡先交換してくれねーか?」

そういってスマホを差し出す。

レナード > 「……っ!」

両手を掴まれ、その言葉に我に還ったのか、びたっと動きが止まった。

「あ、あぶねーあぶねー……
 良質な電気を求めて、つい身体が……おほん。」

ふるふるふる、と頭を数度振って煩悩を払うと、彼のスマホを覗き込む。

「……ん? そこまでやる必要、あるわけ?
 まー、いーけど……」

手を離してもらうと、同じようにスマホを取り出す。
異邦人であってもスマホを操るくらいはできるのだ。
そうであればと搭載されてるアプリを使って、名刺交換よりも早いやり取りで互いの情報交換を済ませようと。

阿須賀 冬織 > 「ありがと……」

連絡先が一つ増えただけなのに、なんだろうか、無性にうれしくなる。

「じゃあ、俺さっきので腹減ったし帰るわ。また、今度な!」

ちょっとわざとらしい感じになったが、意識して大き目の声でそういって元来た道を戻る。こうでもしないと、なんだかおかしくなってしまいそうだった。
……また今度会ったときなら大丈夫かといわれると困るが。

レナード > 「…お、おう。また今度だし。」

何やら大げさにも思えるくらいに明るい様子で、ぱたぱたと彼は駆けて行った。
こちらはというと、それに少し気圧されるくらい。
彼にとって慣れない全力に加えて抜けた電気も戻っていなかろうに、よく無茶をしたもんだと思ってさえいる。

後は追わない。別れを告げられればそれまでだ。
元々電気を溜めねば調子の悪くなる体が、その電気を作ることが叶わないくらいに空腹を訴えていたものだから。
電気的な空腹は満たされたがどちらにせよ、物理的な空腹は何とかしなくてはならない。
…そこに、彼を巻き込む必要はないのだから。

「………適当に、なんか買って帰るし。」

そう呟いて、彼とは反対側の道を歩んでいった。

ご案内:「第二教室棟 廊下」から阿須賀 冬織さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 廊下」からレナードさんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 食堂」に雨見風菜さんが現れました。
女子生徒 > 「風菜、あんた一体ヨキ先生と何があったの?」

食堂にて、目付きの悪い少女が、向かいに座る豊満な胸の少女に問いかける。

雨見風菜 > 「ええとですね。
 簡単に言うと大混乱しました」

風菜の席には、彼女から奢られた昼食。
素麺セット。

先日、ヨキ先生に保健室へ担ぎ込まれたことを聞かせる代わりに奢られているものである。

女子生徒 > 「大混乱したのは分かる。
 あたしでも普段から考えられない表情してたし。
 その前段階に何があったのよ、あんたヨキ先生苦手だって言ってたじゃない」

友人の席には冷やし中華。

雨見風菜 > 「まず、掲示板を見に行くとヨキ先生がいました」

素麺を啜る。

「ポスターの内容について結構早口で捲し立てるのはまあ愛嬌ですね」

女子生徒 > 「わかる。
 あたしの弟もサッカーの話になると饒舌に早口になるし」

冷やし中華を混ぜていく。

「でもそれだけであんたが大混乱するわけ無いじゃん?」

雨見風菜 > 「ええ。
 ……音楽ゲームの話に上手くそらしたと思ったら見破られてまして」

水を一口飲む。

「暴かれたと言うか、自白したと言うか」

女子生徒 > 「ああ、あんたの趣味ね。
 で、お説教食らったんでしょ。
 ……ますますその流れでどう混乱すんのよ、あんたちょっと説教された程度でもケロッとしてるじゃん」

雨見風菜 > 「説教されたほうがまだマシだったかもしれないですね」

ふう、とため息をつき。

「なんというか、秘密を明かしたことに感激されて。
 ちょっと意味わからなくなって……ヨキ先生が格好良く見えたから現実逃避していたら」

頭を抱える。

「汁が垂れまして」

女子生徒 > その風菜の一言に、飲みかけていた水を吹き出し。

「げほっ、げほっ、ちょ、おまっ!?
 だからぱんつ穿けとあれほど……」

深呼吸して気を取り直し。

「……でもあんた、液体収納でごまかせるんじゃなかった?」

雨見風菜 > 「それが出来ないほど混乱してまして」

またため息。

「気づいたら顔を覗き込まれてまして。
 ダウンしました」

女子生徒 > 「……マ?」

鳩が豆鉄砲を食ったように目を見開く。

「それは落ちるわね、ヨキ先生なんだかんだ格好いいし。
 っていうかあんたもそこら辺無頓着かと思ってたけど」

冷やし中華を一口。

「あーその場に居合わせたかったなぁ」

雨見風菜 > 「流石に──ちゃんが居たら冷静で居られたとは思うのですが」

風菜が友人の名を呼んだかと思えば、その発音が混濁する。
だが当の二人はそれが当然かのように話を続ける。

「あー、しかし本当次に一対一で会ったとき一体どういう顔すれば良いのでしょう」

女子生徒 > 「いやそこは普段どおりでいいじゃん」

呆れた顔をしながら冷やし中華をすする。

「いつもどおりのあんたでいつもどおりに対応すればいいじゃん。
 もうあんたの趣味はバレてるのはどうしようもないっしょ」

雨見風菜 > 「ですよねぇ。
 ……そういえば『今はまだ』とか言ってたような」

素麺をすする。

女子生徒 > 風菜の発言に硬直し。

「いやいやいやいやそれは絶対アレでしょ。
 卒業したら相手してやるってやつ」

気を取り直して冷やし中華をすする。

「でもあんたを満足させれるのかしら」

雨見風菜 > 「ああそういう……
 私の身を案じてくれてるようなんですよね」

そういうの求めてないのになーとそうめんをすすり。

「まあ次に会ったときにはもっと突っ込んだ話ができそうです。
 ありがとう、──ちゃん」

また発言が混濁する。

女子生徒 > 「毎度思うけどあんたのそういう図太いところ感心するわ」

呆れたような目で風菜を見つめる。

「ま、あんたらしいっちゃああんたらしいわ。
 友人やってて面白いし」

雨見風菜 > 「あはは……」

こうして、この日の昼休みは過ぎていくのであった……

ご案内:「第二教室棟 食堂」から雨見風菜さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 屋上」にアルフリートさんが現れました。
アルフリート > 「ふむ……」

屋上庭園の一画、数冊の本をテーブルに置き難しそうな顔をしてページをめくる青年の姿があった。
もうすぐ勉学の習熟度を測る期末テストなるものがあると言われその対策に頭から熱を出しているのだった。

本来なら静かな図書館で勉強するものらしいがどうにもあの静かな空間は落ち着かず、こうして風を感じられる場所で勉学にいそしんでいるのであった。

テストで結果を出したいのなら問題集をとくのが一番だ、という知人の勧めに従いそれらを適当に見繕い借りてきたのだった。
表紙にはこう書かれている「これで君も名人に。 ナゾナゾ博士99の挑戦」と。

ご案内:「第二教室棟 屋上」に緋嗣紅映さんが現れました。
アルフリート > 「上は大水、下は大火事……相反する精霊を同居させる?いやこの世界だと魔術になるんだろうか」

のっけから高度な問題をぶつけられてしまった。
これが初級クラスの本棚にあったというのだから侮れない。
やはりこれくらい自然を意のままに操れてこそこのような文明を築けるのだろうか。
それにしてもヒントの「身近なものだよ!」という一文がまた恐ろしい。
高度な理論ではなく民間に普及しているということなのだから。

緋嗣紅映 > 「―――……お風呂じゃン。」

幼い声が青年の真後ろから紡がれた。
その声とその気配は今しがた突如として現れ、その予兆を一切感じさせなかっただろう。それもその筈、今しがたこの場所に瞬間移動してきたのだから当然である。
声の主である狐娘はといえば、青年の後ろで屈んで膝の上で頬杖を突きながら青年の背中を見上げていた。

アルフリート > 「……君は天才か?」
なるほど言われてみればお風呂だ。
大きな火を燃やし大量の水をわかす、設問の指す通りの答え。
これほどまでに腑に落ちたのはいつぶりだろうか。
尊敬の視線を声の方向に向け……ぴたりと固まる。

「きつね?」
お面もそうだがもっふもふであった。
そわっと挙動不審に手があがり、いや怖がらせてしまうかと引っ込め、中途半端な位置に固まったまま小首をかしげて。

緋嗣紅映 > 「寧ろお兄さんの方がヤバくなイ?そんなノ、小学生だって分かるヨ!」

天啓を得たりとばかりに呟く青年の声に、クスクスと笑いながら首を傾げて振り返る顔を見上げた。
流石にこの位置では青年の首と腰が辛そうだから、立ち上がってテーブルの上に行儀悪く腰を下ろし、足をブラブラと揺らす。スカートから伸びるのは柔らかそうな足だけではなく、柔らかくもっふもふの尻尾も同じように伸びてスカートを持ち上げては、毛量の多さに反してふわふわと軽そうに揺蕩う髪に紛れている。

「ソ!キツネだヨ!キツネの野良神デ、緋嗣の紅映って言うノ!ふふン、触りたイ?触りたいんでショ?触りたかったらお供えしてネ!こんな美少女をタダで触ろうなんテ、罰当たりだかラ!」

頭頂部から生えたふわふわの耳を弾ませ、尻尾を左右に振りながら、だぼだぼぶかぶかの袖で完全に隠れて見えない右手でぼふんと自分の胸を叩く。

アルフリート > 「小学生……ああ、たしかここでの教育課程だったか。俺は異世界から来たんでこっちの常識というのをあまり知らないんだ。
 だからまあ、そこらの子供よりかは物を知らないな」

だからこそ色々と知る喜びがあるのだ。
自分が物を知らない事を自覚しているので笑われても確かにその通りだとどこか楽しげに笑う。
それよりも耳だけでなく尻尾も、尻尾もあるのか……獣人と呼ばれる種族が居るのは知っていたがよもやここまで…と揺れる動きに合わせて視線で追ってしまって。

「ああ、名乗るのが遅れた。俺はアルフリート・フィン・アステリオ。アルでもなんでも適当に縮めて呼んでくれ。
 おさわり可……?いや、待て俺が手を出したら驚いてふしゃあああ!となったりしないか?どうも…その、嫌われる体質らしくて……。
 クリームパンでいいだろうか」

なんと愛らしく慈悲深い……と希望を胸に目を輝かせ、いや待て期待するなとぶんぶんと首を振る。
自分の身体は微弱な電気を纏っているらしく動物には大変嫌われてしまうのだ。
でもそれはそれとかばんの中に糖分補給用に備えていた購買のパンをノータイムで取り出し捧げてみて。

緋嗣紅映 > 「うんうン!ま、紅映たちは違うらしいけどネ!」

この世界の、そして島の外の普通の学校。もっと言うなら狐娘の住んでいた世界の学校でもあるが、青年はどうやら異邦人な上に違うらしいからピンと来ないのも仕方がないと流した。この世界の文化や歴史は狐娘の住んでいた世界に近いものがあるが、この島はさらに特殊なようで通じたり通じなかったりして未だ慣れなかった。
とは言え青年はそれらを悪い意味では気にしていないらしく、屈託なく笑う顔を見て尻尾を振る。実に好ましい人柄をしているようだ。

「じゃあアルだネ!紅映の事はちゃんト、紅映さまって呼んでネ!この世界のじゃないけド、神様だかラ!」

テーブルの上で背を反らすようにふんぞり返ったが、ノータイムで差し出されるクリームパンの袋に少し驚いてさらに仰け反った。

「うワ。必死過ぎじゃン?いきなり勝手に触られたラ、そりゃビックリすると思うけド、捧げものしてくれればオッケー。マー、もうちょっと味の薄いものが良かったけド、次に期待してあげル!」

フフンと鼻を鳴らしてクリームパンを受け取ると、尻尾を振りながらそれに齧りつく。食べれない訳ではないし、甘いのも嫌いという訳ではないし、なんだかんだ満更でもなさそうな様子だ。

「じゃア、好きに触っていいヨ。」

流石に一口で食べきるサイズではない為、テーブルの上に座ったまま両手の袖で支えるように持ちつつ、少しだけそっぽを向いた。髪、尻尾、立ち上がれば耳だって触れるように。

アルフリート > 「ふむ、まあ自分が変わり物で済む範疇で色々居るとは聞くからなあ……懐が広すぎる……」

そういえばここに迷い込んだ時も対処がやけに手馴れていたがそれだけ異邦人が迷い込んでいるという事かとうんうんと頷いて一人納得する。

「紅映…様?神様……ふむ、なるほど、なら経緯を払わねばなりませんね」
故郷ではそれこそ神は神話で聞く程度、それも精霊たちに世界の運用を任せいずこかへ去っていったと聞く。
なのでピンと来なかったが言葉を話せる高位精霊のようなものかと認識を整え終えて言葉遣いを改めて。

「いやあ……故郷でもここでも了解を得ようと色々手を尽くして一番接触出来たのが噛まれた時という……
 味の薄いもの、では次はお豆腐でも用意して置きましょうか」
初めて出会ったときは白さに驚き、何も考えずにそのまま食べて面食らったものだと懐かしげに遠くを見て。

「はい、では失礼します」
おお……と宝物に触れるかのようにそっと尻尾に指先が触れ、続けて手のひらが押し当てられる。
ふわふわと柔らかく体温を受け止めほんのり温かく、夢にまで見た感覚が今手の中に。
何度も頭の中でシミュレーションしたように毛並みに浅く指を立て、引っ掛けてしまわないように丁寧に丁寧に、ブラッシングでもするかのように梳いていく。

緋嗣紅映 > 実際のところ生態としては特殊能力を持った獣人と言うのが正しいのだが、それをいちいち説明するような慎ましさはこの狐娘には存在せず、青年の誤解は解かれぬままに調子づくのだった。

「動物相手に了解を得ようとしたノ?通じないのニ?……エ、流石にお豆腐はヤダ!!果物とかでいいじゃン!なんで何がなんでも加工物なノ!?ヒトの悪いとこだヨ!!」

青年の予想外のチョイスに渋い顔をして、口周りをクリームで汚したまま憤慨した。

「……ンン?なんかピリピリすル。」

微弱な電気でピリピリする毛皮の下の皮膚。然し痛いという訳ではなく、分かっていれば心地良い刺激に思えた。加えて青年の手付きが優しいのもあっただろう。これで乱暴だったら即座におさわり終了となっていたところだった。
クリームパンを食べている間は大人しくもふらせる事にして食べる事に集中していたが、食べ終わるとピリピリした刺激が気になってしまう。

「アルは電気人間なノ?そりゃ逃げられるよネ。てっきり変態すぎて怖がられてるかと思ッタ。」

感慨深そうな様子を振り返って見ながら、とてつもなく失礼な事をしれっと口にした。
その後ちらりとテーブルの上の本を見て。

「っていうカ、なんでなぞなぞの本を読んでるノ?なぞなぞ好キ……、って訳じゃないよネ?」

あんな初歩的な謎かけにすら精霊がどうたら魔術がどうだらと言っていたのを思い出して、なぞなぞ好きとはなにか違う気がして首を傾げた。

アルフリート > 「いや、もしかしたら誠心誠意訴えたら思いが通じるかも知れないでしょう?
 それに長生きして知恵を得た獣という場合も……知り合いの鮭は結構おしゃべりでしたし」
本来ならもう少し突っ込んで聞くところなのだがもふもふの魅力に意識が持っていかれ。彼女の言葉を完全に鵜呑みにしているのだった。
故郷の川に棲んでいた物知り鮭のマスヲさんは元気だろうかとほんのり懐かしげな表情を浮かべて。

「失礼自分の思い浮かぶ中で一番味が薄いのがあれだったもので……
 ああ、甘いものは好みではないのかと。ふむ、桃とか?」
なら今度は自分の中で思い浮かぶ一番美味しい果物を口にして、これでどうだろうかと。

「変態!?いやまあ女性にいきなり触らせて欲しいとお願いするのは確かに我ながらどうかと思わなくも……!
 雷光の精霊と契約をして加護を受けているのですが、どうもその気配が嫌われるらしく……」
可愛らしい猫に思い切り威嚇をされた記憶がフラッシュバックをしてほんのりうつむく。
まあ落ち込みながらも手は休みなく動き尻尾の毛並みのフワフワを楽しみ、流れるように今度はふんわりした髪型を乱さないようにと手櫛を入れ、耳から髪の毛のラインを撫ではじめて。

「ああ、もうすぐ期末テストでしょう?とりあえず簡単な問題がたくさん載っている本を化して欲しいと司書さんに頼んだらこれが」
不思議そうな反応に何かおかしかっただろうかと反対側に首を傾けて。

緋嗣紅映 > 「モモ!モモスキ!」

次に出てきた果物の名には、耳をそばだて、尻尾を振って喜んだ。まだ貰っていないがもうすっかり貰う気でいる。

「精霊ト?ヘー。紅映の世界だと精霊なんて御伽噺だったけド、アルの世界には居たんダ。そリャ、こんなピリピリ、いきなり来たら普通の動物は逃げるよネ。ちなみにサ?年的には紅映のが絶対上だと思うけド、傍目ちっちゃい女の子を触りまくってるんだヨ?変態っぽいよネ。」

目尻を持ち上げニタニタ笑いながら揶揄うが、実際それもまた間違いではないから青年危うし。少なくとも今の光景を他人に見られたら言い訳のしようが無いのである。
触れる耳と髪、その付け根は一番フワフワと柔らかく、毛の流れが全く逆だからか余計にふわっ!もふっ!としている。

「……司書さんが抜けてるのカ、アルの言い方が悪かったのカ、紅映は分かんないシ、紅映ヒトの事めっちゃ詳しいわけじゃないけド。……その本の問題はほぼ絶対出ないと思うヨ。」

先生がめっちゃお茶目!とかじゃない限りは出ないだろうと、少し残念そうなものを見る目で振り返っていた。耳も垂れてしまっている。
テーブルの上に片足を完全に乗り上げて青年に向き直ると、本を袖越しに手に取る。

「いイ?これはなぞなぞって言っテ、遊ぶための問題集なノ!お勉強用じゃないノ!」

流石に此処で嘘を重ねて揶揄うのは可哀そうだった為、真面目に説明した。

「借りるなラ、試験勉強用の問題集が欲しイ、ってせめて言わないト!」

尻尾をブンブン上下に振ってテーブルを叩きながら頬を膨らました。

アルフリート > 「そんなに!?じゃあ今度用意しておきますね?」
なるほどそんなにテンションが上がるほど好きなら今度購買で買っておこうかと。
傷みやすいので懐に忍ばせられるものではないと知るのはまだ先の話し。

「精霊と共にある生活が当たり前だったので混乱する事ばかりですよ……ふむ、神が居るのに精霊が御伽噺とはまた面妖な……」
ほんの一瞬、妙だな?という表情が浮かぶ。
もっともそれは疑問以上の物にはならずにすぐに意識化へ消えていくのだが」

「いや、確かに女性を撫で回すというのは不躾な行為にあたるでしょうが
 あ……いえ、大丈夫、不純な気持ちはなく純粋な気持ちで撫でているだけなので」
子供を可愛がっているだけに見えるのでは?と口にしようとして慌てて言葉を切り替える。
女の子は皆レディ、この年頃の子供は難しいのだと実は年上という発言を綺麗に聞き流し、曇りのない瞳で見つめながら、耳を手で包みながら柔らかく倒してふわふわと。

「馬鹿な……こんなに高度な問題が並んでいるというのに……遊び?
 長い呪文の横にたぬきの絵が描かれた問題なんてヒントすら見つからずに挫折したんですよ?
 うう……かたじけない、紅映さまはいいきつねの人ですね……」
愕然とした表情を浮かべこれを遊びにするとはなんて文化レベルだと戦慄する。
しかしもふもふとさせてくれるだけでなく助言もくれるとはなんと優しいのだろうかと無意識に膨らんだ頬を指でちょいと押して。

緋嗣紅映 > 「そんなハッキリ言わなくてモ……。見た目は小さくてモ、ヒトにしてみればずっと大人なんですけド!」

バサバサと尻尾を振って憤る。
言葉にされなくてもニュアンスで伝わってるんですけど!というか妙な間があったんですけど!
果たして小さな子を愛でる変態と見られるか、小さな子と戯れてる優しいお兄さんと取られるか、それは全て彼の普段の行いと実際に目撃する側の第三者によるだろう。

「キャウッ……!?」

耳を包まれるとピリピリとした感触を強く感じた。耳は皮膚が薄く過敏だからだろう、刺激を強く受けて声が出た後、振り払うようにブンブンと首を左右に振った。

「そレ、今ヒント口に出てたヨ?たぬキ。つまリ、タ、ぬキ。タを抜けばいいノ。呪文ってあれでショ?どうせたって字がいっぱい書いてあっテ、それ以外の文字が途中で出てくるやつでショ?」

これまた定番中の定番の謎かけを出され、呆れたような顔をして解き方を教えた。
もしかしたら彼の世界では娯楽という文化そのものが無かったのでは?と少し憐みすら感じてしまうが、流石にそんな事は―――無い……、とは言い切れないから眉を寄せて渋い顔をする。
そうしていると頬をちょいと押されて、もちもちぷにぷにの頬に指先が埋まる。

「あト!キツネのヒトじゃなくテ、キツネの野良神さまだかラ!神様は自分を崇めるヒトには優しいものなノ!……あと流石にちょっと可哀そうだシ。」

最後にぽつりと本音を零しつつ、少し視線を逸らすのだった。
とはいえ良い狐と言われて悪い気はせず、尻尾をブンブンと降って喜んでいた。

「とにかク!」

視線を戻すとだぼだぼぶかぶかの袖を垂らした手で、ぼふっと相手の顔を挟む。

「次借りるなラ、ちゃんと目的と用途を告げるこト!そしたら流石に司書さんモ、なぞなぞの本なんて出さないでショ!」

うりゃうりゃと相手の頬を捏ねようとして。

アルフリート > 「いえ確かに紅映さん……様は非常に可愛らしくて魅力的でこのままずっと触れていたい……と思いますがね?
 傍から見た場合、だと少女とじゃれているように見えはすれど不埒な行いをしているとは思わないのでは?」
見抜かれてしまったので素直に認めるが、少女相手にそんな邪推はしないだろうと面白い冗談を聞いたかのように笑って。

「ああすいません……やはりこの腕には祝福の代償として決して拭えぬ呪いが……」
ぶんぶんと振り払われてしまえば悲しげに自分の手を見つめ謝罪の言葉を口にして。

「なるほど……知識や学問を前提にした問いかけではなく、機転を利かせて読み解くものだと……」
完全に理解したとばかりに余裕の笑みを浮かべこれはこれで持ち帰って解き明かしてしまおう……とひそかに決意して。
哀れみの表情には気付かず勉強になったと喜ぶばかりで。
故郷の娯楽と言えば歌と音楽、そして技自慢による曲芸などで書物は知識層のものであり、こういった庶民も楽しめる遊び的な物が未発達だったのだ。

しかし毛並み以外も素敵な触り心地とかさすが神だなあと最早遠慮など欠片もなくもちもちの頬に指をうりうりと押しあて。

「ああ、失礼。どうも気安く話し安いものでつい態度が……友人気分になってしまって」
申し訳ないと笑う頬をもにんと挟まれ捕らえられてしまう
妖精の祝福で肌は十代前半の少年のような柔らかさと滑らかさを持つが、さすがに変顔は防げず愉快な顔になってしまう。

「ひゃい、ありがとうございましゅ」
思うさま捏ねられ妙な喋り方になりながらもお礼の言葉を口に。
敬うべきなのだろうがとても癒されてしまうなぁとこね回されながらもどこか満足げに微笑ましげな視線を送って。

緋嗣紅映 > 「んナッ!?……ム、ムー……、そこまで言うなら触らせてあげない事もないけド!」

じゃれて見えるか見えないかという問答をしていた筈だったが、可愛らしく魅力的で、という言葉に意識が釣られてしまい、頬に紅を刷いたように赤らみ、にまにまと口元を緩ませて問答にズレが生じた。
この狐娘は褒め殺しに弱い。

「んな大袈裟ナ……。ビックリはしたけド……、耳以外なら良いヨ。」

決して拭えぬ呪いという大層な言葉に思わず眉を寄せて首を傾げた。とはいえよっぽどそのビリビリで、動物に好かれなかったんだろうなと思うと、ちょっと可哀そうだった。
動物好きなのに動物に好かれない、或いは動物アレルギーだ、とか。そういえばそう言うのを直してほしいなんてお願いも、祠に居た時はされてたなぁと思い出した。アレルギーはともかく、好かれない、っていうのは流石にどうしようも無かったからアドバイスくらいに留めたけど。

「あア、紅映は確かに神様だけド、神様としてはまだ全然若いシ?此処の世界でも狐の神様は居るみたいだけド、偏見やばばって感ジ。」

実際はそもそも神様と呼ばれてるだけの獣人で、お稲荷様でも無いのだから違うのは当然だったが、それはそれとしても気安い方だという自覚はあった。かと言って厳かに、なんて出来る程年食っても居ないと首を左右に振る。
だがそれはそれとして敬いの心は忘れるな!とばかりにほっぺたを揉む。もとい、面白いから揉む。

「ウケル。めっちゃやわらカ。ア、そうダ。そんなに欲求不満なラ……」

言い方がなんかアレな言い方した後、手を引っ込めてテーブルの上に行儀悪く立つ。短いスカートの中身は幸い夜だったので多分見えなかっただろう。多分。見えてたら薄桃色のフリフリのローライズが見えてたかもしれない。
立った後はその場で跳躍して空中で一回転すると、バサバサと着ていた服や鞄が落ちてくる。そしてその服の中から、もこもことピンクブロンドの混じったブロンドの毛並みの子ぎつねが出てくる。

「コレデ、ドウ!アコガレノ、スガタッテヤツ、デショ!オモウ、ゾンブン、モフモフ、デキルヨ!」

テーブルの上にちょこんと座ってちょっとふんぞり返るようにマズルを持ち上げた。色違いの目や、頭にワインレッドの毛が混じっているのは変わらない。

アルフリート > 「ええ、ちゃんと供物はまた持ってくるのでよろしくお願いします」
快く受け入れてくれるなんて本当にいい人……きつねだなあと。
……そして褒めれば結構許してくれるな…とほんのり強かな思考をちらりと浮かべて。

「驚かせてしまったのに?優しい人……いや神様ですね。
 はい!今後は気を付けてぴりっとさせないように……気を付けられたらいいのにな……」

彼女は許してくれたがどうしてもこの体質ばかりはどうしようもないと一瞬暗い顔が浮かびそうになるも
それを彼女の前で見せてしまうのは違うなと気を取りなおして。

「なるほど……まあ俺の、っと私の世界でも歳若い精霊は子供のように振舞う事もありましたしね、納得」
神という存在は物語で知った程度だが慈悲深い存在なのだなぁとすっかりと彼女の主張を信じ込んでいて。
ただ敬おうとするのだが言葉を交わすうちについ気安くなって砕けた言葉が混じってしまったり。
しかし自分の頬など触れて楽しいのだろうか、ふわふわの毛並みのほうが素晴らしいのでは?と思いながらされるがままに捏ね回され。

「む?は? えっ!?」
雷光は闇を切り裂く、それゆえスカートの闇を見通し思い切り直視してしまった。
なるほど大人だ……いや邪念よ去れ!と平静をなんとか取り戻し……そして目の前に飛び込んでくるパーフェクトもふもふに理性はぶっちぎれた。
そっと壊れ物を抱くように丁寧ながら有無を言わさぬ勢いでぎゅっと苦しくない程度に抱きしめ、毛並みに頬を擦り寄せ……

「……これが、幸せというものか」
ワンポイントの赤い毛並みを撫でながら、目にはほんのりと涙が浮かんでいた。

緋嗣紅映 > 「驚いたけド、悪気が無いのは分かるシ。まぁピリピリはちょっと気持ちいいかラ。」

入った事は無いけど、例えるならきっと電気風呂が癖になってるヒト。このピリピリが心地良くもあるから、耳とかあまりに過敏な場所でなければ平気と念を押しておくのは、余り気にしないようにさせたい為。

いざ変化を解いて狐の姿に戻れば、言葉を紡ぐ余裕もなく抱きしめてくる。よっぽど、もふもふに嫌われてたんだなと少し遠い目になる。多分今の青年には、獣人とはいえ仮にも女の子を抱いているという自覚はまるで無いんだろう。

「ンン……、オオゲサ、ダナ!デモ、ソンナニ、ヨロコブ、ナラ!ワルク、ナイネ!」

尻尾をブンブンと左右に振って腕の中に抱かれていたが、自分からも擦り寄るように身じろぐ。全身で抱かれているからさきほどよりピリピリするが、少しくらいは我慢してあげないと可哀そうだ。

「クレハ、ネコジャナイ、ケド、トクベツ、ダヨ!」

それに此処まで大袈裟なくらい喜ばれるとやはり満更でも無いのも事実。
特別だと告げながら一度腕から降りると、テーブルの上のなぞなぞの本を前足でちょいちょいと退かして、彼の目の前でごろーんっとお腹を上にして寝転がる。いわゆる、ヘソテンである。

「アンシン、シテ!エキノコックス、ナイカラ!」

そう言ってくねくねしながら魅惑のお腹を見せて尻尾をバサバサ振る。