2020/07/01 のログ
レナード > 「んぐ、んくっ、…ふ、んん、……っ……!」

彼の制止なんて聞く耳持たず。
吸いつくした分を補うために作り出す電気でさえ、残らず吸いつくしてしまう勢いで食らいついている。
彼の抵抗が次第に弱弱しく、身体を支えることが困難になってしまうその寸前まで、そうして一方的に蹂躙し続けた。

阿須賀 冬織 > 永遠かに思えたそれは、ようやく……俺の限界が先に来た形で終わった。予想していたことではあったが、彼に勝つことはできなかった。
さっきまで限界を出し切った、なんて思っていたがどこかでセーブが入っていたんだなと実感する。
辛うじてその場に倒れ込む事こそない。ないのだが、先ほどはあった動く余裕といったものは今回ない。
結局、自分を苛め抜くときに全力を出し切るのは非常に困難なことであったのだ。

「ごめ……なに…か……食べ…」

脱力、空腹、安堵感、そして快感といった様々な情報がごった返し、朦朧とする意識の中、何か食べさせてくれと伝えようとする。

レナード > 「……っはぁぁ……」

倒れ込むまではいかなかったが、吸いつくされて満身創痍な彼を余所に、ほぉ、と満ち足りたように息を吐く。
こんな状態まで追い詰めた元凶は、美味しいものを堪能した後に浮かべるような、柔らかい笑みで以て彼の後ろに立っていた。

「……ごちそうさまぁ、阿須賀ぁ。
 おめーの電気、おいしかったし………?」

ほんのり紅潮している頬をそのままに、再び顔を寄せると小さな声で耳打ちをする。
どこか熱っぽい感情の籠ったそれは、別の色を持ったようにも聞こえてしまっただろうか。
そうして自分の欲をしたい形でしかと満たしたことで、ようやっと周りが見えて来たのか、彼の懇願を思い出す。

「……ぁあ、何か食べたいんだっけ……
 いいし、これ、全部もってって。」

彼の荷物のその隣、自分の持ってきた食料やらを指さした。
この場では、もう自分にとっては不要の長物。関心の一欠けらもないらしい。
意識の朦朧とする彼に、そんな言葉は届いただろうか。

阿須賀 冬織 > どこか恍惚と取れるような顔でその場に立ち尽くす。
お粗末様でした、なんてこの前のように軽口を叩ける気力なんて当然なく――そもそも、その言葉を聞き取り、理解できていたかも怪しい。
ただ、その耳打ちでようやく意識が戻ったのだろうか。
残った力を絞り、示された食糧を、乱雑に手に取り口へと運ぶ。

「……唐突になにすんだよ……」

しばらくすれば、ようやく喋りだす気力が出てきたのかそう呟くだろう。

レナード > 「……………。」

時間が経ち、落ち着いてきた。
次第に自分のしでかしたことを自覚するにつれ、流石に申し訳ない気持ちにこちらが襲われてしまう。
こうしてどうしようもない衝動に襲われることが多いので、何とも罰の悪い顔をしているが。

「………まあ、その、なんだし。
 おめーも自分の中の電気が枯渇させられるなんて経験、ないと思っただけだし。」

自分のやったことを繕うつもりはないが、せめてそれらしい言い訳を考える。
中途半端に蓄電を止められたから、我慢できなくなって襲いました。なんて、口が裂けてもいえないから。
流れとは言え彼に自分の持ってきた食料を分けたのは、ファインプレーだと自画自賛している。多少は罪の意識があるのだ。

阿須賀 冬織 > 「ん……まあ、そうだな……。こんなこと、今まで経験したことなかった。実際、全力って言ってたけど出し切れてなかったしな。」

"気持ちよかった"なんて言えない。いや、よく覚えてないがあの時の反応で相手は気付いていたかもしれないが……
何とも言えない雰囲気になる。なんとなく相手の様子から察するに、向こうにも言いにくいことがあるのだろう。
……逆は気持ちいいのだろうか。なんて思ってしまうが。そんなことも言い出せず……。

「……いい時間だし帰るか。その、家まで送ってくよ。こんな時間まで付き合わせちゃったし。」

このままだとお互い話出せないじゃないかと話題を振ってみる。実際、陽はだいぶ傾いてきている。

レナード > 「……あー。」

家。その単語がここで出てきてしまったか、と、困ったような表情で答えに詰まってしまった。
教師などは知っているだろう。ただ、同じ生徒という立場の相手に、ありのままを伝えることに抵抗がある。

「僕、家、ないわけ。」

簡潔、明瞭、単純に言葉を伝えた。
意味は通じてくれただろうか。

阿須賀 冬織 > 「ああ……そっか。」

家がないなんて考えてもいなかった。余計気まずくなってしまったじゃないか、と自分を叱責する。

「そのさ……余ってる部屋あるから。よかったら家見つけるまで使うか?」

なんて、言ってみるが。よく考えたら、定住といったものを好まないタイプなのかもしれないと言ってから気付く。

「すまん、今のはちょっと押しすぎだよな……。」

相手がそれを望んでいるかなんてわからない。さっきの言葉には、確実に、どこか下心があったのだからなおさらだ。

レナード > 「……ん?」

あまり想定していなかった提案が、彼から示される。
どうやら彼の家に住まないか、というものだった。
別段、今の生活に不思議と苦労しているわけでもなければ、
そこまでして一緒にいたいとも思う関係でも、ないものだから。

「のーさんきゅー、ってやつだし。
 生憎、僕は今の生活で満足してるわけ。」

なんて、軽い口調で彼の提案を蹴った。
ただ、それくらいの方がきっと後にも残らないだろうから。

阿須賀 冬織 > 返ってきた言葉と、その軽い口調にどこか安堵する。

「ん、そっか。今日はありがと。じゃあ、もしまたあったらそのときはよろしく。」

こちらもそう軽く返し、鞄を背負って屋上を後にする。

阿須賀 冬織 > 【何も起こらなかった】
レナード > 「ん。じゃあ、また。」

軽い挨拶と共に、彼が駆けていく。
こちらはというと、その背が見えなくなったころに一つため息を吐く。

「はぁ………。
 どうにかやりようがあればいいんだけど………」

先の襲撃が頭によぎる。
途中で落ち着いたからよかったものの、もし、離さなかったとしたら……
そう思うと、少し背筋に冷たいものが走った、そんな気がして。
先の提案こそ断ったものの、折角できた"友人"なのだ。こんなことで、失いたくはなかった。

「……僕も、帰るか。」

辺りを一度見回して、自分も屋上を後にしたのだった。

ご案内:「第二教室棟 屋上」から阿須賀 冬織さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 屋上」からレナードさんが去りました。