2020/08/13 のログ
園刃 華霧 >  
「……マジか。ばっかだなぁ……」

ため息を一つ、ついた。
ああ、そうだ。

似た者同士

似た者同士だから、
アタシはコイツの事情に「知ったことか」とつっこんだし、
コイツはアタシの事情に「知ったことか」とつっこんできたわけだ。

ならきっとコイツは簡単に折れはしない。

何故って?
多分、自分だってそうだからだ。

本当にお互い……

「わーったよ。アタシの負け。
 ああ、いや。勝ち負けとかじゃないか……」

やれやれ、と……
ああクソ、まだ身動きできやしない。

「じゃ、これからお互い分かり合おうか。
 アタシは『馬鹿』だし。
 レナードも大概『馬鹿』らしい。
 『馬鹿』同士、仲良くしていこうな?」

しかしとんだ事故物件を拾っちまったなあ、コイツ。
せいぜい、よく分かってくれよ。
んで、分からせてみなよ。

「……で。とりあえず、最初の話通り、かな。
 まずは『友だち』から。
 ……その先は、うん。頑張ってくれ?」

抱きしめられているから、見えないかもしれない。
しかし、其の顔は悪戯っぽく笑っていた。

レナード > 「上等。」

まずは友達から。
それで、いい。そこから始めよう。
この関係が、果たして思った方向に行くのかどうか、保証はどこにもない。
でも、それはきっと、なるようになるだろうから。

そこまで聞き届けて、ようやっと、彼女を放す。
そうすれば、彼のその黄色い眼が覗けるだろう。
蛇のように、縦に細い瞳孔のそれが。

「……おめーは知ってるかもしれねーけど。
 蛇は執拗で、陰湿で、しつこいんだ。
 気を付けていねーと、噛みついて離れなくなるし?」

そう言って、笑った。

園刃 華霧 >  
ようやく離された。
やれやれ、苦しかったな……けれど
誰かからの抱擁は、悪くはなかった。

「そうだな。
 そいつは、アタシが一番良く知っている。
 蛇は『真理』に噛み付く……
 アタシらの象徴だったからな」

蛇の眼を臆せず見つめながら
にやりと、不敵に笑い返した。

レナード > 「………なんの因果かなー、ほんとに。」

こっちは生物的なものだけど、彼女は在り方がそうだった。
互いにしつこい蛇だったことも、同じ。
ここまで似ていると、いよいよ笑えてくる。

「…………。」

ふと、ゆっくり頷くようにして、思考を巡らせる。
…諦められたらどうしよう、とか。
…拒絶されたらどうしよう、とか。
…伝わらなかったらどうしよう、とか。
そういう不安がなかったと言えば、大嘘だから。
でも、それを乗り切って、今があるのだと思うと、
これからだというのに不思議と、達成感みたいなものが湧いてくる。
だからだろうか、気が逸ってるわけじゃないけど、

「……そーいえば。
 ご丁寧に姓まで教えたのに、おめーは僕のこと、名前で呼んでるし。
 じゃあさ。僕も名前で呼んで、いいわけ?」

少し、踏み込みに行った。

園刃 華霧 >  
「アん? こレでも遠慮しテんだけどナ。
 普段なら、レナっちとカ、レナおとか……大体、そんな呼び方すンぞ?
 そのまンま呼び、とかレアだぞ、レア」

流石に不義理を働いた相手に気安い呼び方もどうかと思って、普通に呼んでいた。
其の辺の空気は一応読む。
まあ、名字を呼んでないのは……確かに責められるのかもしれないけれど。
そんな堅苦しいのは好きではない。だから、間取ったんだけどなあ。

「ンで? ああ、名前? なんだヨ、そんクらい。
 好きに呼べっテ。」

踏み込んだその気持をまるで流すように、
気楽に、いつもの調子で応じる。
さして気にすることもなく。
それが当然であるように。

 

レナード > 「……レナっちに、……レナお………」

おお、かなり気安い。
寧ろこっちはそういうアプローチがかなり新鮮だった。
そのご提案にはこっちが逆にたじたじ、…だが、負けるわけにはいかない。自分は負けず嫌いだ。
彼女も、それはきっと知っているだろう。

「……レアなのは、喜ぶべきか、悲しむべきか。
 そっちこそ、呼び方なんて好きにしたらいーじゃん。
 僕だって、もう遠慮なんかしてやんねーわけだから。」

だから、遠慮のしあいは無しにしよう。
そう提案して。

「………じゃあ、僕、そろそろ帰るけど。
 一緒に帰る? 華霧。」

もう、この場所に用はない。
自分の嫌な思い出は、十分に雪げたから。
また、この前と同じように、彼女に声をかける。

園刃 華霧 >  
「ンー……なンだけどなー……
 なンかいマさらって気もすルし、レナード、でいいカなァ……
 ま、気が向いたラ変えるかモってこトで。」

ちょっと考えてみたけれど、なんとなく渾名だとしっくりこない。
だから、当面はもう、レナード、でいいだろうと思う。

なんでかな、やっぱり慣れちったからかなあ?

「で。ソだな、帰るカ。」

頷いてから……ああ、この間と同じだな、と思い出す。


「アタシと一緒にいるの、もし見られたりしたらマズかったりする?
 それでも問題ないって言うなら、とっとと帰ろっか?」


けらけらと笑いながら、以前言われた台詞を言い返した。

レナード > 「……そっか。
 呼び名の変更はいつでも受け付けてるから、どうぞご随意に。
 …その代わり、ちゃんと呼べし。」

名前を呼んでくれること。
つまり、会う機会は、それだけ増えること。
どうしてだろう、そういうことが、嬉しくさえ感じる気がする。
そうしていると、覚えのあるフレーズが聞こえてきたものだから。

「………いーや。
 僕がするって決めたから、それでいーわけ。
 なーんにも言わせねーし、言われてもだからどーした、だし。」

覚えのあるフレーズには、覚えのあるフレーズを。

「なんだったら教室棟内ぐるーって巡ってついでに学生街も通っていくルートを提案してやるし?」

なんて、じゃれるような冗談も尾ひれにつけながら。
彼女の方に、改めて手を差しだした。

園刃 華霧 >  
「へいへい。わーってルって、レナード」

はいはい、とぞんざいに手をふって名前を呼んでみせる。
言外に含まれた意図などは多分理解していないだろう。
それでも、名前を呼ぶ。

そして――
前のフレーズが、お返しとして返ってくる。
まったく、いい根性してる。
お互いにね。

「お、ヤるかー?
 泣きヲみンのはソっちダと思うケどな?」

けらけらと面白そうに笑いながら、差し出された手を取った。

レナード > 「ほーん? じょーっとーだしっ!
 夏季休暇明けに学内でウワサになってても後悔すんなしー?」

実に、実にバカバカしいやり取りだ。
…でも、どこか居心地がいい気がする。
これくらい気安い相手は、自分にとってとても貴重だろうから。

彼女の手を、柔らかく握る。
体格差は、僅か5センチ。どちらかがどちらかを気遣わないといけない差ではないだろう。
そうして気楽に、面白可笑しいままに、屋上を後にするだろう。

ご案内:「第二教室棟 屋上」から園刃 華霧さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 屋上」からレナードさんが去りました。