2020/08/16 のログ
ご案内:「第二教室棟 屋上」にレナードさんが現れました。
レナード > 夜もほぼ明けに近づいた頃、ふらふらと、まるで何かに誘われるようにやってきた。
服はよれよれ、表情は虚ろ、目からは一切の光が失せている。

ここは第二教室棟の屋上。
全ての始まりで、初めて自覚した思いを告げた場所。

「…………。」

ベンチに座って、ぼーっとしている。
口も半開きで、どこを見ているのか、最早皆目見当はつかない。

レナード > 思えば、全て彼女から始まった。

自分の運命が袋小路だと思い込み、精神的に擦り減っていたときに、初めてここで出会った。
トゥルーバイツのデバイスをちらつかされ、選択を迫られた。
救いを感じたが、死にたがりであることを見抜かれ、捨てられた。
彼女に対して、復讐の炎を燃やした。

全ての仕込みを完了させ、復讐の炎にて延焼させるべく動こうとした先に、大時計塔で出会った。
あの時放さなかった自分の身の上を話すと、一生かけて受け皿になると言われた。
……そこまで思い詰めて話す彼女の懇願を、自分は無下にできなかった。

そして最近、再びここで彼女と相見えた。
自分の血の話を、不老の話を聞かせて、受け皿になると言う話の是非を聞いた。
…それでも、彼女の意志は変わらなかった。嬉しかった。
だからかもしれない。
ここまで、自分に興味を持ってくれた相手を、もっと知りたい、もっと言葉を交わしたい、もっと触れ合いたいと思ったのは。
きっとそういう言葉をなんというか……あの時、自分の言葉で彼女に向けた。

始まった、はずだった。

「………」

思い出される、今となっては大切な風景。

なのに、さっきの、それは。

レナード > 「………だれのせいだ………」

心の中は、空っぽだ。
あの話で、全てを持っていかれたから。

瞳の奥は、闇が広がっている。
見つめるべき相手を、失ったから。

その表情は、張り付いたままだ。
もう、うまく笑うことさえできない。

「………彼女の、せいか………?」

いや、違う。

一生をかける。受け皿になる。

そんな彼女の言葉を信じてしまった、自分のせいだ。


「………そっかぁ………
 は、はは…っ、あははは、はははは、あははははははははっ……

 
 ………僕のせいだ………」

その耳に、もう言葉は届かない。
人を信じることを、やめてしまったから。

レナード > 彼女の言葉を、無下に扱えばよかった。
あの時の縋るような、彼女の言葉を信じなければよかった。

彼女に心を、開かなければよかった。
彼女に……"  "だって、言わなければ―――

「……あ、れ…………?」

思考に、靄がかかる。
それを、思い出してはいけないと。

「あは、あははっ……おか、おかしいな……っ……
 ぼく、なんて、いおうと………」

頑張って、思い返そうとする。
だが。

「………………あれ……?

 どんなかお、………してたっけ…………?」

レナード > 自らの頬を、その両手で覆う。
まるで、貌の形を、確かめているかのように。

「かおが、おもいだせない
 かお、が、おも、いだ、せない

 か、おがおも、おもいい、だ、だ、だせなあいいい
 かおが、かおが、かおが、かおがかおが――――――」

壊れた機械のように、ぼやきながら。

バジル > 呻く彼の背後から、手刀一閃。

「…いやな予感がしたと思ったら。
 もう、本当に駄目みたいだねぇ。」

私服姿…夏場でもロングコートな、教師の姿。
意識を失い、崩れ落ちる彼の身体を、片腕で柔らかく抱きかかえた。

バジル > 「ぁ~あっ。
 ボクが出てくるってことは、そういうコトなのにねえ。
 ま、しょうがないかっ。起こってしまったことは取り返しがつかないからねっ。
 …過去に戻って、未来をやり直す。そんな都合のいい権能なんて、存在しないのさ。

 キミは……間が悪かったんだねえ、何もかも。」

どこか、愛おしそうに、その髪を撫でた。

「さっ、片付けにいこっか。」

そのまま彼を抱えて、教師は軽い足取りで屋上から去っていった―――

ご案内:「第二教室棟 屋上」からレナードさんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 相談室」に紅葉さんが現れました。
紅葉 >  
第二教室棟の一画、カウンセリングルームとして使用されている部屋。
教室よりやや狭い部屋にソファとローテーブル、本棚、テレビ、ウォーターサーバー等が置かれている。

非常勤のスクールカウンセラーである紅葉の職場であり、夏期休暇中でも要請があればこうして白衣に袖を通す。
大抵は他愛もない相談事で、こちらは糸目に笑みを湛えながら静かに話を聞くだけ。
気を付けていることと言えば、決して相談者を否定しないことくらいだ。

「ほな、気ぃ付けて帰りや~」

相談に来た生徒を見送り、ソファに腰掛けたまま一息。
彼女の傍らの紙コップには水よりだいぶ高価な無色透明の飲み物が注がれている。
ほんのり紅潮した頬は最早トレードマークのようなものだ。

紅葉 >  
「にしても……みんな真面目やなぁ。
 進路相談、勉強の話、部活の話……もっとこう、浮わついた相談事が受けたいわぁ」

ひと夏のアバンチュール的なサムシングに励む生徒を揶揄いながら導いてあげたい。
そんな教師にあるまじき独り言を溢しながら、暇を持て余して一人リバーシに興じている。
ここには生徒とのコミュニケーション用にボードゲームも何種類か置かれているのだ。

「白、黒、白……くふふ」

だからと言って一人でやるリバーシほどつまらないものはないと思うのだが……
何が楽しいのか、くつくつと笑いながら駒を並べている。

紅葉 >  
そうして暫く一人リバーシに興じ、盤上が真っ黒になったところで満足したらしい。
今日はもう誰も来なさそうだ。この辺で切り上げて飲みに行くことにした。

ご案内:「第二教室棟 相談室」から紅葉さんが去りました。