2020/08/31 のログ
ご案内:「第二教室棟 教室」に耳守 聴乃さんが現れました。
■耳守 聴乃 > 「よし、これから異能応用工学の講義を行う。担当の耳守だ。」
ガチャリ。
講義室の扉が開かれると、
書類の入ったカバンとチョークケースを持った教員が入ってくる。
閑散とした講義室を見渡して、教卓ににもつを置くとさっそく黒板に文字を書き始めた。
「今日は初回の講義だが、前半にイントロダクションとして講義の説明、
後半はさっそく講義に入る。
まだ教科書を購入していない者もいると思うで、
今日の講義は教科書を必要としない内容とするが、
次回以降が教科書を使うので各自書店などで購入すること」
そう言って、講義の形態、評価基準、テストの概要、出席基準、
その他講義の説明をつらつらと述べていく。
説明が終わることには何名か転寝をしている学生が見え始めるが、
そこで異能を使った。
『寝ている学生はここから起きてしっかりと内容を聞くこと』
すると寝ていた学生が飛び起きる。
他の学生には声が聞こえなかったようで、
飛び起きた学生の様子を不思議がっていた>
■耳守 聴乃 > 「今私は異能を使って寝ている者だけに音を聞かせて起した。
さて、異能の使い方に長けている者なら、今の様に道具を使わずに異能を行使して、
目的を達成することができるだろう」
教卓に両手をつくと、体重をかけて学生たちを一瞥する。
今この瞬間に、異能応用工学の講義は始まったのだ。
「しかし世の中で異能を発現している全員が、
自分の異能を自由に使いこなせるとは限らない。
喉以外から音を出すことはできるが指向性や大きさを操作できない者、
炎を出せるが火力を調整できない者。
この様に使いこなせれば便利な異能であるにも関わらず、
実用の域まで達していない異能者は多数だ。
こういった者たちを支援する道具の作成、
また異能を十二分に発揮するための基本的な考え方、
そういったことを学ぶのがこの講義の目的である」>
ご案内:「第二教室棟 教室」に霧島 孝介さんが現れました。
■霧島 孝介 > 講義室の座席。
上から見てちょうど真ん中に位置する場所に少年は座っていた。
メガネをかけ、学生服をしっかりと着こなし、ノートに目の前の教師が言っていることをメモしていく。
重要そうな部分は赤ペンで書いたり、マーカーで線を引くなど。
講義に対する姿勢は真面目な優等生のそれである。
ただ、一点、不自然な点を挙げるとすれば、頭…額に位置する場所に包帯を巻いていることだろうか。
しかし、少年も大人数が呼吸をする密閉空間にて
二酸化炭素の濃度が高くなり、温度も、所謂『快適な』ものになっていくにつれ
次第に意識が遠のいていき、視界がブラックアウトしていくが…
「…ッ!」
正しく、彼女の異能を受けた少年がビクッと体を震わせて起きる。
何をされたのかわからず、心臓が激しく脈打つ感覚が全身を支配しながら戸惑っていれば、彼女の説明を聞いて
恥ずかしそうにノートにメモをする。
(…『この授業は絶対寝ない』っと)
■耳守 聴乃 > 「さて、では異能を便利に使うにはどんなことが必要だろうか。
――ああ、この講義は諸君に質問を積極的にするので心しておくように。
そうだな……そこの君。霧島君といったか。君に質問してみよう。
異能を便利に使おうとしたときに必要なものは何だと思う?」
先ほどまで船を漕いでいた男子学生。
名簿をみて名前を確認すれば、質問を投げかけてみよう。
眠気覚ましにはちょうどいいだろう。
なぜ彼を指名したか?
それは他の生徒よりも目立っていたからだ。
寝ていたからというのもあるが、何よりも頭に巻いた包帯が目に付いたから>
■霧島 孝介 > (は、恥ずかしい…授業ではあんまし目立たないスタンスで行きたいんだけどなぁ…)
最近は演習場に通って、運動がてら異能のトレーニングを行っていたんだが
これが中々上手く行かず、服の下に痣や傷を数か所作る結果となった。
考えた結果、やはり教師の講義に頼るのが得策だろうと考え、現在に至る。
そして単純に寝た理由としては疲れた身体でそのまま寝ればいいものを、夜遅くまでゲームしていたからだ。
「え、お、俺ですか?あ…あの~…えーっと…」
目立たないスタンス。
それは頭の包帯と授業中の意識消失によって一気に砕かれる。
心する準備が足りませんよ!先生!
彼女に名前を呼ばれ、案の定オドオドしつつ、正解を考えつつ…
「…えー、道具?」
さっきの彼女の説明していた部分のギリギリメモしてあった場所が目につく。
何も答えないよりかは外れてても何か答えようと思って、疑問形でそう答える。
■耳守 聴乃 > 「そうそう、君だ」
まさか当てられるなんて。
そんな表情でおどおどしている学生を見る目はいたって真面目だった。
「道具か。悪くない発想だ。
だがもう少し視野を広く持ってほしい」
想定していた回答に、よくぞ言ってくれたと嬉しそうな表情を浮かべた。
『わかりません』と答えられるより何万倍も”良い答え”だ。
「道具はあくまでも手段だ。
あえて誤解を恐れずに言えばまず必要なのは目的だ。
何を持って便利とするか。そこをまず定める必要がある。
ここではあえて不便を解決することを目的としよう。
異能を使って不便、つまり問題を解決する方法はいくつか考えられる。
異能の訓練を行うこと、
今霧島君が述べたように道具を使うこと、
はたまた自分の異能がどういったものなのかをただ正しく理解することも含まれる。
君たちには小手先の技術ではなく、
異能を使う上で必要とされる発想を学んでもらいたい」
そう言って、学生たちから黒板に向き直ると、
黙々と板書を取り始めた>
■霧島 孝介 > 「ふぅ…」
まるでホラー映画でロッカーに隠れているときに目の前を殺人鬼が通り過ぎた後のような安心感に
包まれながら、息を吐いて胸をなでおろす。
一応、正解ではないものの、答えることが正解だったようで安堵する。
彼女の言葉を聞きながら、自分の異能に当てはまる部分を探す。
『蒼装』…武器や防具、道具を生成する。創造に近いが、また違った異能。
まずは『訓練』。これはつい最近はよくやっている。ただ…訓練方法が正しいのか微妙にわからない。想い付いたものを只管作り出す。効果を試す。そして結果として怪我が増えている。
頭の包帯とは別に幾つもの傷がすでにできている。そのたびに絆創膏の数が増えて最近は辛い。
『道具』…なのだが、自分の異能を使う上で道具の必要性を感じない。
っつか自分の異能が道具を作り出すものだし…
最期に『理解』。これは気付かなかった。
(俺の異能って…『何だ』?)
自分の異能について改めて考える。
何故、発現したのだろう。前は『昔から映画やアニメ、テレビを見て触発された』で片付けたが…本当にそうなのだろうか?
もっと深い部分に……【何か】があるのかもしれない
特に俺の異能には発想が必要だ。
この講義にちょっと…いや、かなり興味が沸いてきた。
先ほどの羞恥など忘れて、じっと板書を見つめて授業に集中する。
■耳守 聴乃 > 「さて、この講義は全15回で構成される。
初回の導入、7回の中間テスト、15回の期末テストを除いた12回の講義、
今日から5回までは”異能への理解”を題材に講義を行う」
そう言って黒板への板書を終えると、
再び学生たちへ向き直った。
「さて、君たちは何らかの異能を持っていると思うが、
それはどんな異能だ?
場合によってはセンシティブな内容になるので無理に答える必要はないが
――君、三品君か。君の異能はなんだ?」
『発火能力(パイロキネシス)です』
「ふむ。発火能力、これは異能人口の中でも多い異能だ。
しかしよく見てみると発火能力としてくくるには無理がある。
具体的に例を見てみよう。
発火能力とは純粋に”燃えている”という結果だけを見ているに過ぎない。
物質を酸素と結合させる能力なのか、
熱を生み出す能力なのか、
熱を移動させる能力なのか、
これらはすべて違う異能だが、結果だけ見れば発火能力とくくられてしまう」
黒板に板書をしつつ、また学生たちに向きなおった。
「君たちは本当に自分の異能を
”正しく”理解しているだろうか?
異能を使って何かをやろうと思ったら、まず正しい異能への理解から始まる」>
■霧島 孝介 > (むむ、テストか…)
中間テストがあるなんて、かなり真面目でお堅い先生なのだなぁと気合を入れなおす。
あんなクソださTシャツ着てるのに
とはいえ自分もあの手のださTは愛用しているから悪口は言えないけど。
「おぉ、発火」
小声でそう告げる。
発火能力者は確かに沢山いる。
演習場や訓練施設でもよく見かける。
しかし、確かに単に炎を放ったり、火球にして投げたり、手足に付けて身体能力を上げたり
いろんなタイプが居たな、と振り返ってみる。
(正しい理解かぁ…)
うーん、腕を組んで考え込む。
俺の異能は武器などを作り出す異能。想像したらそれが生成できる異能。
(…じゃない?)
悩みつつも彼女の講義をじっと聞いて、板書をメモる。
■耳守 聴乃 > 「クソださTシャツ、
って思った学生は私に似合いそうなシャツを選ぶのに付き合ってもらうぞ。
そうだ、自己紹介をちゃんとしていなかったから今言うが、
私は君たちが何を考えているか思考が読める。
プライバシーに関わるから全てを読んでいるわけではないが、
クソださTシャツというワードは読めるようにしている」
そう言って霧島君をチラり。
ここからさらに講義を続けようとすると、終了のブザーが鳴った。
「今日の講義はここまでとする。
来週は異能の発現理由による個体差の話をする。
次回からは教科書を使うので購入しておくこと。
ではまた来週会おう」
そう言って黒板の板書を消せば、荷物をまとめて教室から出ていった>
ご案内:「第二教室棟 教室」から耳守 聴乃さんが去りました。
■霧島 孝介 > 「えっ?」
明らかに自分が思考したのと同じタイミングで先生の発言が飛んでくる。
さっき起こされたのといい、テレパシーとかそういう形の異能か。
それじゃあクソださTシャツは元より、授業に関係ないこととか考えられないじゃん!
「あはは…」
苦笑いで彼女の視線に答える。
しかし、俺はこの先生に似合うシャツを選びに行かないといけないのか?
メガネとださTをしているけど化粧とかすれば絶対美人になる年上教師と?
そう考えると、それはそれで…
などくだらないことを思考していればブザーに反応して講義が終了する。
教室から出ていった彼女を見送れば、自分も荷物を纏める。
「…教科書、買わないとな」
最期はくだらないことを考えてはいたが…
異能。それをよく考えるチャンスになる授業かもしれない。
俺の異能はなんなのか、何のために、俺に―――
これから見つけていこう。この授業も踏まえて。
そう決意して、他の生徒と共に教室を後にした。
ご案内:「第二教室棟 教室」から霧島 孝介さんが去りました。