2021/01/11 のログ
ご案内:「第二教室棟 廊下」に杉本久遠さんが現れました。
■杉本久遠 >
教室棟に渡されているありふれた廊下。
そんな廊下の随所にある掲示板。
その一つの前に、大柄な少年が大量のチラシを持って立っている。
「よし、次はここだな!」
掲示板には多くの掲示物が張り出されているが、隙間が無いというわけでもない。
そんな中で、何とか少しでも目立ちそうな場所を探して、やや大きめのチラシを貼り付けた。
■杉本久遠 >
貼り付けたのは、「エアースイム常世島冬季大会」と書かれたチラシだ。
実は毎年恒例の、年二回開催される大会であり、去年も、冬と夏と貼りだしていたのだが。
残念ながら話題に上る事はなかったと言える。
「だが、今年はよもやという事があるかもしれんからな!」
去年、秋には世界大会が常世島で行われた。
メジャーなスポーツではないにも関わらず、少しとはいえ一時的に話題の一つになったのは喜ばしい記憶だ。
少年──久遠とその妹が実況解説を担当していたという事もあり、声を掛けられる事もあったくらいだ。
「ま、新入部員はいなかったんだがな!」
だはは、と一人で笑ってから、少しだけ肩を落とした。
そう、残念ながら、一過性の話題にはなったモノの、エアースイム部の門戸を叩く学生はいなかったのだ。
それでも、一人、やる気十分な生徒が入部してくれた事は、去年の最大の成果ともいえる。
■杉本久遠 >
「しかし、どうすれば興味を持ってもらえるんだろうなあ」
去年の大会を思い返せば、一部ではだが、確かに盛り上がっていたように思える。
それは大会後の体験会を思い出しても間違いないように思えた。
素質のある参加者も多くいたと言うから、案外、個人で始めている島民も居るのかもしれないが。
「ああ、そう言えば彼女も随分と見どころがあったな!」
久遠が担当した体験グループに参加した、リタという一人の少女。
彼女は随分と呑み込みが早く、所謂、素質という物を感じさせてくれた。
学生であるなら、ぜひとも入部してもらいたい物だったが――未だに彼女の訪問はない。
「うーむ。
やっぱりもっと大々的な宣伝が必要なのか?
いやー、運営委員の広報費も少ないからなあ」
チラシを作る、CMを流す、などなど。
宣伝もタダではできないのだ。
哀しい事に非常にお金がかかってしまう。
運営委員の末席に連なっている身ではあるが、広告費をよこせと言えるような立場でもない。
というより、そもそも運営委員の資金が潤沢とは言えないのだ。
世界大会のようなプロシーンならともかく、今回はアマチュア大会なのである。
世界大会ですらスポンサーがなかなかつかないのだから、なおさら、お金がないのだ。
ご案内:「第二教室棟 廊下」にリタ・ラルケさんが現れました。
■リタ・ラルケ >
――誰だっけ。
というのが、目の前で盛大に独り言を言う大きな男の人を見た時の印象であった。
見たことがあるような気はするんだけど、それがいつのことなのか、どこでのことなのかが思い出せない。
うーん、誰だっけ。なーんか引っかかるんだよなあ。なんか、あまり遠くない過去に見た気はするんだけどなあ。
他人の空似だろうか、と傍を通り過ぎようとしたところで――つと、その人が貼っていたチラシを目にする。
エアースイム、という文字を目にした瞬間、自分の脳裏に一つ思い当たることがあった。
「……思い出した。あの時教えてくれた人」
去年の秋ごろの話である。細かい経緯は省略するが――エアースイムの体験会に、自分は参加した。
その時に飛び方や器具の着け方を教えてくれたり、練習用のS-Wingをくれたりと、色々と便宜を図ってくれた男の人だった。
■杉本久遠 >
「しかしなあ。
エアースイムは面白いっていうのは、やっぱりやらないと伝わらないのが難点だな。
うむ、やはり体験出来る機会を作らなければならんな!」
と、腕を組んで大きく頷いている久遠だが。
通りがかる生徒たちからは、くすくす笑われていたりする。
しかし、ほんのわずかにもこの男、揺らがない!
「となると、学園祭が延期してしまったのは痛いところだなあ。
パフォーマンスの一つでもできればよかったんだが――」
さて、この男。
常世の学生の例にもれず異能持ちなのであるが。
その五感の感度を自在に調整できる、役に立つようで役に立たなかったりする異能の所持者だ。
「ふむ、その声は!
あの時の少女だな!」
ばっと、威勢よく振り向くと、前歯が見えるような笑顔を少女に向けた。
細い目は絵に描いたようににこやかな曲線を描き、今にも笑い出しそうな様子だ。
「だはは!
こんなところで会うとは奇遇だな!」
笑った。
少し特徴的な、しかし快活な笑い声が廊下に響く。
■リタ・ラルケ >
半ば呟くような言い方ではあったものの、声はしっかりと男の人に届いていたようで。男の人は勢いよく振り向き、こちらに笑顔を向けてきた。
やはりとはっきり思い出した。確かあの時も、こんな感じに笑っていたんだよなあ。
「ん、お久しぶり、なのかな。あの時の体験会以来だから。ああ、あの時はS-Wing、ありがと」
貰った時から何度か、気が向いたときにちょくちょく飛んではいた。このところの色々なイベントに親友と遊びに出ていたり、あとは最近寒くなってきたものだから少々億劫になってご無沙汰してはいる。
久しぶりに飛んでみるかなあ、と考えてみたところで、そういえばと男の人が貼っていたポスターに目が行った。
「それ。えっと……今貼ってたの。何?」
エアースイム、冬季大会と書かれているから、おそらくはそういうことなのだろうが。
そういう気分でもあったので詳しい話を聞いてみようかと、そう口に出す。
■杉本久遠 >
「おお、あけましておめでとうだな!
なあに、あれはスポンサーのイメージアップ戦略の一つだ。
ありがたく貰ってくれたのならなによりだぞ!」
だはは、と笑い答える。
わざわざ礼を言ってくれるという事は、少なくとも数度は泳いでくれているのだろうと思う。
気が向いたとき、の選択肢にエアースイムが含まれるようになったのなら、嬉しい限りだった。
「うむ、これか?
見ての通り、来月後半に行われる、エアースイムのアマチュア大会のチラシだ。
常世島で開催される、年二回の大舞台だな」
そう言って、大会の概要が描かれたチラシを、少女に一枚差し出した。
【http://guest-land.sakura.ne.jp/tokoyo/pforum/pforum.php?mode=viewmain&l=0&no=659&p=&page=0&dispno=659】
■リタ・ラルケ >
「アマチュア大会……なるほど」
貰ったチラシに、目を通す。なるほど言う通り、エアースイムの大会の概要が書かれていた。
秋の大会は、確か世界大会だっただろうか。それよりは少々気軽なように思えた。
「……参加資格、条件なし。当日エントリー可、装備も、当日レンタルでいい」
大会の概要を、一つ一つ読み上げる。
アマチュア最大、ということもあって、自分が思っている以上にずっと門戸は広いようだった。
「そんなんでいいんだ。なんだか、思ったよりも気軽なんだね」
例えば自分が当日、気が向いたからとふらりと立ち寄ってエントリーしたとしても、問題はないということだ。思ったよりもこのスポーツ、カジュアルなものなのかもしれない。
初めてエアースイムの試合というものを見たのが秋の世界大会だったからか――そして身近でエアースイムをしている友人がアレだからか、基準が少しだけ高すぎるのかもしれないが。