2022/01/14 のログ
ご案内:「第二教室棟 屋上」に暁 名無さんが現れました。
■暁 名無 > 「……ううう、さっみぃ。」
時折夜風が容赦なく頬を打つ、そんな夜の屋上。
仕事を粗方終えた俺は、天気も良いし星空でも眺めようか、と思い立ち、こうしてベンチに座って震えている。
手には自分で淹れた紅茶の入った水筒。小刻みに震えるのは俺が小刻みに震えているから。
「引き返しても良かったな?何で居座ってんだ?
せっかく来たんだから星空見て帰る!とか意地になってんじゃねーぞ俺よ。お?風邪ひく気か?」
大丈夫、そんなバカは風邪を引かない。うっせーわ。
と一人漫才しつつ寒さをしのいでいる。ホントなんでこんなとこ居るんだろうね?マゾかな?
「まあ、温かいとこでぼーっとしてるよりは考え事も捗るし……」
独り言ちる言葉も奥歯がカチカチと鳴って非常に情けない。
コート無かったら致命傷だった……いや流石にこの時期この時間に上着もなしに屋上来る奴はそうそう居ないと思うけども。も。
■暁 名無 > こんこん、と水筒で軽く額を小突く。
切り替え切り替え、寒いのはしょうがないのでせめて身体の震えは止めてしまおう。
額に押し付けた無機質な感触に集中し、目を瞑って深呼吸。一回、二回……三回。
最後に大きく息を吐けば、寒い事は寒いけれど、身体の震えは納まっていた。
「ふぅー……さて、お茶にするか。」
額から水筒を離して蓋を開け、コップ状の蓋に中身の紅茶を注ぐ。
仄かな熱と、湯気と、紅茶の香りがふわっと広がってあたりに漂い、
唐突に吹いた強風に攫われていった。無常。
………、悪い やっぱ寒ぃわ。
「そりゃ寒ぃでしょ。真冬だぞ今。」
一人漫才を継続しつつ紅茶を口へ運ぶ。ちょっと蒸らす時間短かったかなー……。
これまで何度も淹れてきたものの、中々満足いくレベルに到達しない。水筒に入れて来ちゃったからかな……?
■暁 名無 > まあ出来はともかくとして、温かい飲み物で少しだけ身体が内側から暖まった。
さてあとはちょいちょい温かさを維持しつつ頭を動かそう。
頭寒足熱ならぬ腑熱それ以外寒、みたいな状態だけどこれくらいが丁度良い。……そう思わないと泣けてくる。
「まあ考え事っつっても……ねえ。」
視線を自然と、遠く歓楽街方面へと向ける。
落第街で発生したという暴動、その話は非常勤の俺の耳にも届いている。
普段ならかの街の事は風紀委員やその他腕自慢の面々に任せて引き籠り決め込むところではあるのだが
「………よりによって、なぁ。」
深く深く溜め息が口から零れた。
バイオハザード、レジデントイビルじゃない方。直訳すれば生物災害。
サメが竜巻に巻き込まれて空から降ってくるのも広義のバイオハザードだけど、ややこしくなるからいっぺん思考から追い出す。ばいばいアサイラム。
とまあ、くだらない冗談でも挟まないとやってられない程度には、精神的に参って来る内容だ。今年は何だ、厄年か。
■暁 名無 > どうして一介の非常勤が暴動の仔細まで把握しているかというと、
理由は簡単“生物屋としての知見を求められたから”である。それ以上も以下もない。
とはいえこちとら専門は幻想種、それは訊く方も分かっていたのか、詳細はなるべくボカされて、
これこれこういう植物が発生しているんですが何かご存知ですか~と訊かれた程度だ。
が、俺からしてみりゃそれで十分である。そもそも、何かに寄生する植物なんてのはそう種類の多いものでも無い。
「ましてや生物に寄生するなんてな。全く、何をどう弄ればそんなん出来るんだか……。」
紅茶を口へと運び、吐き出す息が紅茶以上の熱を帯びる。
先週、踏み入った倉庫の一件からこっちずっと臓腑の底で燻ってるものがゆらりと膨れる気配がする。
曰く、その寄生植物は違反部活が研究していた生物兵器、らしい。
生物兵器。耳にするのも口に出すのも胸糞悪い言葉だと思う。