2020/06/08 のログ
ご案内:「屋上」に金剛 経太郎さんが現れました。
ご案内:「屋上」にシュルヴェステルさんが現れました。
■金剛 経太郎 > 「煩悩……煩悩よ去れぇぇぇぇい!!」
屋上に声変わり前と思しき声が響く。
そして同時に重たい何かを振り回す様な風切音。
梅雨時にしてはすがすがしい程に晴れ渡った空の下、その場に不釣り合いな漆黒鎧の騎士が、身の丈ほどの大剣を振っていた。
「勉強第一!今の俺は勉強第一ぃぃぃ!!!」
そしてそのすぐ傍のベンチで、ぐったりと崩れながらも声を張り上げている少年が居る。
一目見て異様な光景である事は間違いが無かった。
■シュルヴェステル > その異様な光景を見て、パーカーのフードを目深に被った青年は一度思考を止めた。
ざんばらに切られた白い前髪の間から、その漆黒の騎士をちらりと見やり。
珍しく今日は天気がいい。むしろ少し汗ばむくらいの時節だ。
つまり、屋上で食事をすると気分が晴れやかになることは知っている。
だが、先約がいることは知らなかった。1人で静かに食事でもと思ったはずだった。
「なるほどな、そういうやつも、いるんだな」
きっかり5・7・5の音に合わせて、どこか現実逃避するような視線を向け。
だが、屋上で食事をするという決定を覆すわけにもいかない。
ぐったりと崩れる少年の横の席に一言も言わずに座り込んで、鎧をじっと見つめた。
そして、安っぽい購買のパンの袋を開きながら事後承諾と言わんばかりに声を掛ける。
「失礼」
短く一言だけそう言って、もそもそとパンを咀嚼し始める。
梅雨時の晴れ間に、いやに黒鎧の騎士が映えていた。地球らしくない光景だった。
■金剛 経太郎 > 「あっちいけ煩悩!!煩悩退散!!中間試験近いんだから!!」
きゃんきゃんと小型犬の様に喚き散らしていた少年だったが、不意に現れた人影に、ハッと我に返る。
すると同時に黒騎士もその動きを停めた。大剣を振りかぶった姿勢のまま、微動だにしなくなる。
「………いや、失礼くは無いけど。」
ぐったりと、酒におぼれた中年サラリーマンの様なだらしなさでベンチに半ば溶けかけていた少年、金剛経太郎は青年へと顔を向ける。
燦々と陽の光が降り注ぐ中で叫び続けていたので全身がほっかほかだ。
■シュルヴェステル > 「ここでは子供も中間試験を受けるんだな。煩悩に困っているのか?」
説明はされたが、と呟きながら薄っぺらいパンを丸めて口に放り込む。
そういえばそんなものもあった……と思いながら視線は黒騎士に向けられたまま。
薄っぺらいパンを適当に口の中に放り込んで、のそりと立ち上がる。
「失敬、貴君はどこの異世界の出身だろうか。
門を伝ってこの世界へとやってきた異邦人だろうか。……若輩の身に一つ、教えては頂けないか?」
固まったままの黒騎士の前に立ち、じっと見つめる。
返事が返ってくるまで、本人も微動だにしない。
真面目そうな表情で、「いかにもそれらしい」姿に丁寧な言葉を選んだ。
■金剛 経太郎 > 「あ゛ーーー、まあ、そんなとこ。」
子供、と言われ少し思う所はあったが、甘んじて受け入れて頷いた。
困っている。大変に困っている。
しかし、青年の興味は傍の黒騎士の方にある様で、声を掛ける姿をどこか遠い目で見ながら、
「あー、そいつは喋んねえよ。
話しかけても通じない。何処の出身かって話なら、VRゲームの出身、かなぁ。」
と、問われても居ない経太郎が応えるのだった。
■シュルヴェステル > 「…………」
人間を横目に人間らしくないもう一人に話しかけたはずだった。
が、返ってきた答えは「子供」と形容した相手からで、思わず困惑の表情を浮かべる。
「なるほど。貴殿の連れ立ちということか。
……非礼を詫びる。失礼な物言い、すまなかった」
「VRゲーム」という世界の出身者をこうして連れ歩き、訓練をさせている。
つまるところ、彼はおそらくこの黒騎士の主であり、おそらく相当の実力者であると考えられる。
青年は申し訳なさそうに頭を軽く下げてから、少年へと視線を向ける。
「失礼の詫びになるかわからないが、その煩悩とやらを斬ろう。どこだ?
……剣の腕には自信がある。任せてくれ」
どこかから箒を持ってきて、黒騎士同様に素振りを始める。
「黒騎士遣い」の少年に、異邦人はどこか憧れの混じったような表情を浮かべてみせた。
■金剛 経太郎 > 「………。」
困惑の表情を浮かべた青年を真顔で見つめる。
それから一連の言動を同様に眺め続け、箒で素振りをし始めた辺りで、ふぅん、と頷いた。
(……なるほど、こいつ面白いやつだ。)
「いや、別にそこまで失礼くもなかったし?
この暑い中、あんたまで暑苦しくなるの止めて。いや、ホントに。勘弁して。」
気怠そうに答えながらベンチに座り直す。
先程からの青年の言をそのまま受け取れば、つまり彼は異邦人で、しかもこちらに来て日が浅いのだろう。
「そいつは喋んないけど、代わりに俺が話相手になるよ。
なあに、単なる気晴らしだから。結果それが煩悩退散につながりそうだし。」
ニヤリ、と幼い顔立ちに不釣り合いな笑みを浮かべる。
■シュルヴェステル > 「……そうか。貴殿ほどの男が言うならそうなのだろう。
斬らば消えるものならば私がと思ったが……ああ。気晴らしになるのなら」
丁寧に屋上の入り口に箒を立て掛けてから、少年の横に座る。
そして、フードとキャップは被ったまま、視線を熟練すら感じさせる笑みに合わせ。
ごくりと生唾を飲む。実力者の気晴らしとやら。
それなりに自分はできる男であると自負しているが未だ未熟の身。
この異世界の「年齢不相応な」「従者すら従える」「謎の少年」にどこまで打ち合えるか。
まるで不要な葛藤をひとり、ひとしきり繰り返してから再び頷く。
「彼は、『VRゲーム』とやらからやってきたのか?
一人で門を潜ったのか? それとも異世界からの召喚か? して……」
「貴殿は、一体何者だ……?!」
ひとり、熱が入っている。
■金剛 経太郎 > (……あー、やっぱり面白いやつだ。はいはい、オッケーオッケー。
大丈夫、こういう手合いっぽい奴らは散々相手して来た事あるわ。所謂RP勢みたいなもんでしょ、こいつは多分ガチだけど。)
「むしろアンタが何者だって聞きたいとこだけどまあいいや。」
こほん、とわざとらしく咳払いをして、ベンチの上で少しばかり偉そうに座ってみる。
片膝を立てて、その上に頬杖ついて。こっちもこっちで調子に乗ったら止まらないタイプ。
「そうだなあ、俺は元々この世界の住人さ。
異世界からの従者をこの世界に招く力を持った、凡庸な人間だよ君ぃ。」
ふふん、とほくそえみながら片手を振れば、黒騎士が動き出す。
大剣を天へと掲げるように持ち直し、恭しく経太郎へと向き直って片膝をついた。
「“彼”はその従者のうちの一人。こうして俺の傍で俺の身を護っている、というわけだ。」
■シュルヴェステル > 幾ばくかの沈黙を経てから、青年は視線を少しだけ逸らす。
キャップのつばをぐいと下げてから、「そういえば名乗っていなかった」と呟く。
「私は……私は、シュルヴェステル。
呼びにくいと何度も言われたが、こちらの言葉に合わせるなら『そう』なる。
……シュルヴェステルだ。先に名乗るべきはこちらだった」
二度ほど自分の名前を繰り返してから、その仕草に手に汗を握る。
名乗らなかった身である自分を「まあいいや」で流し、そして、更に。
「……凡庸な人間だと? 貴殿が?」
異世界からの従者を、自分のいる世界に招く。
そんな所業を、「凡庸」と嘯かれてしまっては明らかにこの世界は異常であると認めるほかない。
門を経て荒野に放り出された自分を拾った職員の寛大さを思い出す。
あれは、あの人物が寛大だったのではなく、この世界の人間が全員「こう」なのではないか?
「な、なるほど。
つまり、貴殿は契約者でありながら学生生活を送り、そして……。
身を護らせているということは誰ぞに狙われるような人物であると」
真剣極まりない声音でそう言ってから、数度瞬き。
キャップの下から、赤色の視線が少年に向けられる。
「……こんなに射線の通る屋上にいるのも何ぞの策略であるのだな。
これは失礼。……本当に邪魔をしたようだ。寛大な対応、改めて感謝する」