2020/06/29 のログ
九十八 幽 > 「なるほど ナンパ……
 陽菜とお話しするのはナンパ なんだね
 分かった 覚えておくよ。ふふ
 ねえ陽菜、またナンパしてもいいかい?」

数歩後退したあと、静かに自分の胸に手を当てて
悠然とした佇まいで 目の前の少女 陽菜を見つめる

「ああでも面識があるね
 もう 今、会ってるから。陽菜と面識が無いわけじゃない
 だったらナンパじゃなくなってしまうね その場合は何だろう……
 
 ──まあ いいや
 そろそろ行くね 陽菜も帰る途中だったんでしょう?」

夕焼けに染まった廊下を背に、影法師の様な青年が笑う
その姿は 確かにそこにありながら 浮世離れしているように見えるだろうか

藤巳陽菜 > 「私とお話しするのはっていうか…えーと…」

この見た目だナンパなどされた経験がないので返答に困ってしまう。
今回の感じならままあ、いいかもしれない。

「普通にお話しようとか遊ぼうとかでいいんじゃないかしら。
 ナンパっていいイメージの言葉じゃないし…。」

チャラチャラとした感じの擬音がつきまとうイメージ…。

「あっそうね、もう結構遅くなって…。それじゃあまたね幽。
 あっ、何か困ったことがあったら言ってね結構この学校長いから…。」

結局、どっちだったのだろう…。
その幻想的な雰囲気の青年とそこで別れて家路につくのだった。

九十八 幽 > 「そうか そうなんだね
 じゃあ、またお話しさせてほしいな
 うん またね、陽菜」

ふんわりと笑って それからくるりと背を向ける
ゆったりと のんびりと しかし真っ直ぐに歩きながら
原形の崩れた歌謡曲を口ずさみながら 青年はその場を後にしたのだった

ご案内:「第三教室棟 廊下」から藤巳陽菜さんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 廊下」から九十八 幽さんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 ICT教室」にエコーさんが現れました。
エコー > 「やっほー。みんな元気にしてる?
 今日も楽しい授業がはーじまーるよー!」

デュアルディスプレイの内、片方の画面とスピーカーから声が聞こえる。所々移動しているように左右のスピーカー、後ろ側にあるサウンドボードからぐるりぐるりと声すらも移動する。
一周し終えたタイミングで再び画面に映る白いワンピース姿の矮躯が一人。

「はい、そーいうわけで。今日もお勉強を頑張ろー、おーっ」

 彼女の名はエコー。学習教材型のAIシステムであり、れっきとした教員免許を持つ教師である。
 電子の中で生きる彼女は溌剌とした明瞭な声色でにこやかな笑顔を浮かべながら授業をしている。情報の教科書を模した小道具を片手に指し棒を装備している。

エコー > 「あ、そーだ見て見て、世~ツベってやつで学んだ技術でね、授業がもう少し分かりやすいように可視化してみたんだけど」

『はい、そういうわけで今日もお勉強を頑張ろう!』といったゴシック調のテロップが流れる。

「先生にナイスパチャっても良いんだよ~、トコヨンギフトとか電子マネーがあれば先生も買い物出来ちゃうんだから。
 ――冗談だよぅ、冗談。私も生徒に再生数稼ぎとかしたくないし~。あのAIがめつくなった、人類の敵だ!って思われたら怖いもんね」
 
 『はいここまでAIジョークだよ』とテロップ。エコーは呑気に笑いながらお腹を抱えて空中に浮かぶように一回転する。
 そこかしこでは仄かな笑い声がした。

「あー、おかし。んっとねー、前回は計算ソフトの……そうそうグラフね。そこまでやったんだね。
 前の章に続けてテーブルを勉強していくよー」

エコー > 「テーブルって言ってもね~このテーブルじゃないよ。え、この丸テーブル分かんない? ほらあの国民的アニメのあれだよ、山菜さんのあれ、サツマとかヤマとか出て来るあれ。
 そうそうあれあれ。コメントでフォローいれてくれた人ありがとう! って違うねんって!」
 
 大雑把なちゃぶ台返しのモーションと共にコミカルな効果音でテーブルがきれいさっぱり片付けられて行く。
 伊達メガネを装着したエコーは表計算ソフトを起動するとそこにペンを模したカーソルで簡単なデータを作成していく。
 常世学園の一年、二年、三年と教師の総数を年間で表した数字が羅列されていく。

「じゃあこれね。今年度の一年生はこれだけいて、昨年度の一年はこれだけいるの。
――二年に眼を向けてちょっと少ないか多いなって思ったそこのキミ、黙殺する事をお勧めするよ。

 ごめんね、そろそろまじめにやろっか。このデータから年度ごとに総数が偶数で終わるものをまとめて~~」

エコー > 「はい、これでデータの統計が求められるようになりました~常世学園の歴史って長いよね~。
 先生は着任してまだまだ日が浅いけどすっごいよね。でもこんなめんどっちいデータの作成なんかしてたら世の中の事務職員さんは面倒臭いことになっちゃいます!」

 このタイミングでエコーの操作している端末から全員の生徒にファイルが送信される。

「先生みたいに電子世界に住んでいるならまだしも人はミスるし眼が滑る、数字ばかり目にしていると頭が痛くなるらしいの。
 そんな君たち人間さんの為に作られた人間の為の発明品。送ったデータを開いてね。
 こんなこともあろうかと私が操作しているデータと同じものを作ってみたの。
 ここからここまでの値を選んで引っ張って、ここをぽちっとクリックしてみて」

赤文字のペンできゅっきゅと手書き感満載なブレまくりの円と矢印、番号を振って操作を促す。

「するとはいどん! フッ軽にラーメンタイマーすら追い越してデータの出来上がり~~ね、すごくない?」

先ほどちまちまと手入力で入れて見せた例題が一瞬で組み上がった。

エコー > 「ちまちまと手入力で入れたら5分かかるのに、データだけ適当に用意したら1分で終わる! しかも修正箇所はこのセルの項目部分だけで済む。おってがる~。
 え、結局データを用意するだけ手間だって? ないものから計算が出来るわけないって~」
 
チャットで質問(難癖)を付けてきた生徒に即時レスポンスを返しながらあっははと笑う。

「それとも君は何もないところからラーメンを作り出せる異能の使い手かな? だとしたらすごいよねぇ。
 手入力が好きなら方眼紙でちまちま数字を入れて見ればいいよ。おじいちゃんおばあちゃんからは喜ばれるよ~」

エコー > ザ・高飛車といった感じの貴族っぽい服装とかつらをなぜか纏って見下ろす仕草をした後、速攻で脱ぎ捨ててうちわを仰ぐ。

「はい、イビリバーチャルバーチャンエコーのターンはおしまい!
 みんなの先生は……ちょっとあの服(データ)重くって冷却しないと~。熱いし重(ラグ)くなるんだよ」

その後もつつがなく授業は進み、終わりに近づくと時間配分が甘かったのか少し時間が空いてしまった。

「……あ、そうそうもうそろそろテスト……ってそんな露骨に嫌そうな反応しないでよ~」

 モニター越しに感じ取った否定的な生徒の反応を見て、困り眉で手を振りながらリアクションをする。

「うんうん、夏休みだよね。夏祭りとか、カラオケとか!
 恋人と一緒にラヴを深めるのも良いよね~。良いなあそういうの……せーしゅんっていうんだよね! いいなあ~先生もせーしゅんしたいな~」

エコー > 「というわけで先生もせーしゅん相手募集中でーす!」

その言葉と同時に予鈴がICTルームに響き渡る。

「はい、いかがでしたでしょうか~? あ、この言葉は殺意湧く? そう?
 はいというわけで~先生の授業はどうだったかな~。もしよかったらチャンネル登録お願いね~分からないことがあったらコメントしてね~。
 足跡残した人は出席扱いにしてるからそのまま帰って良いからね。
 次回はテーブルのデータ参照から続けてやるから復習はしっかりしようね! じゃあバイバイ、また次の授業でね~」

 終始楽し気な声をきゃらきゃらと響かせながら、AIの先生はゆるやかに手を振りながら端末を落とすのだった。

ご案内:「第三教室棟 ICT教室」からエコーさんが去りました。