2020/12/08 のログ
雨見風菜 > 「あら、ユラくん。
 良いことがあった、と言うか……私の異能の便利さを実感していると言うか、ですね」

あはは、と笑って答える。
右手の手袋はそのままだ。
使った『糸』は色の指定をしていないので銀色である。

ユラ > 「風菜の異能、便利そうだって最初から思ってたけど。
 ちなみにどんな感じ?」

ごそごそ紙袋をあさり、やはりたい焼きを取り出す。
一つ口に咥えてから、前回のシュークリーム同様風菜にも一つ差し出す。
あんこ多めの薄皮たい焼き、パリパリ食感。

雨見風菜 > 「温度を遮断できるのが判明しまして。
 鍋つかみにも使えそうです。
 まあ、掴む必要なく『糸』で運べるんですけど」

差し出されたたい焼きを、お礼を言いながら受け取る。
『糸』で編まれた手袋は、たい焼きの温度を伝えないので左手でも触ってみる。

ユラ > 「温度を遮断……んー、まあ暑い寒いには耐えられそうか。
 それなら風菜の趣味にも使えるんじゃない?
 この時期寒いでしょ」

がつがつたい焼きを頬張りながら、そんなことを。
食べ終わる前に、次のたい焼きを早速袋から取り出す。

「……それに限らず、夏場はみんなすごい薄着してたし。
 ほんとに便利そうなんだけど」

うらやましい、みたいな顔になった。

雨見風菜 > 「ええ、あまり寒いと風邪を引きますからね。
 これで寒さを気にせず楽しめます」

暖かいたい焼きにかぶりついて。
時折、確かめるように手袋を透明にしたり色を変えてみたり。

「夏場もそうですね、活用すれば涼しいかもしれません」

のほほんとした顔ができるのも、これが制御できる異能だからだろう。
自身に悪影響を及ぼしていないわけではないが。

ユラ > 「風邪引いたら遊べないしね」

相手の姿を見る。
今日は制服をきっちり着ているが、素肌をもう少し晒すと多分寒いんだろうなと。

「帰ったらお風呂場とかで試してみたら?
 サウナとかあればそれが一番いいんだろうけど」

あったかいお風呂場を想像しながら呟く。
そこで糸で体を覆う……多分不審者だ。

雨見風菜 > 「ちょっとした無茶もできそうですしね」

雪景色を思い浮かべて。
流石に溶岩とかは無理だろうし試したくもない。
ゲームとかでたまに見るが、アレで無傷なのはギャグ補正しか通らないだろう。

「そうですね、温度はともかく湿度が問題ですし。
 サウナ……大浴場にありましたね」

寮住まいなので銭湯並みの設備の大浴場が使えるし。
『糸』については透明にしておけばまあさほど違和感はあるまい。

ユラ > 「……この世界の夏、すっごい湿度で暑かったもんな……
 オレ気温の変化には強いんだけど、さすがにここの暑さは堪えた」

夏場からずっと冬服で居た男のセリフではない。
とはいえ、本人は夏でも大丈夫だと思っていたのだ。

「普通の人、この世界で生きられるのが不思議なレベルだったんだけど。
 異能でなんとかなるなら、風菜は勝ち組じゃん」

雨見風菜 > 「いやまあ、湿度が高いのは基本的にここや日本の特徴なんですけどね。
 暑い地域に慣れた外国人も音を上げるくらいですし」

体験しないことにはわからない以上仕方ない。
無知ゆえに対策できないのは本当に仕方がない。

「まあ、そういう地域に住んでいる以上対策はある程度存在するんですけど。
 対策しても暑いものは暑いので紛らわすだけですし……案外、熱射病でなくなる方もいますしね」

クーラーや扇風機、涼をとる知恵はあれども結局気温が下がるわけでもない。
温度に感覚の鈍くなる老人なら尚更危ない。

「本当、便利な異能に当たったものです」

ユラ > 「やっぱ死んでんじゃん、人」

やべーじゃん、と呟く。
この地域に人がなぜ住めるのか。
クーラーが無い外では人が死ぬのに。

「……オレもそれくらい便利な異能が良かったな、マジで。
 せめてこう、デメリットのないやつがよかった」

ぐぬぬ、と八つ当たりのようにたい焼きを食べる。

雨見風菜 > 「ええ、亡くなる方もいます。
 まあ、住んでいるから仕方ないですよ」

なぜ住めるのかなんて、環境に対応したからで。
無論、対応しきれなければ死ぬし。
のんびりとたい焼きを味わう。

「まあ、私の異能にデメリットがないわけではないんですけどね」

ユラ > 「……あれ、デメリットあんの?
 風菜の感じからして、別にそんなの感じなかったけど」

たい焼き半分くらいで口を離し、不思議そうな顔になった。
便利な異能一本道だと思っていた。

「……それ、聞いていい?」

ちょっと迷ってから、それでも聞いてみることにした。

雨見風菜 > 「あるんですよー。
 まあ、そのデメリットも結構都合良かったりするんですけどね」

ユラが少し迷ったのはわかった。
その上で問われれば。

「生理来なくなってるんですよね」

サラッと言った。
だがこれは『糸』のデメリットではない。
もっと奥の異能のデメリットだ。
しかし、今の風菜にとってそれを訂正する必要性はない。

ユラ > 「……はー……なるほど……
 そりゃ都合良いとか言えるわけだ」

納得した顔。
この子にとってはだいぶいいことなんだろう。

「でも女の子の体って、そういうのでバランスとってるとこあるでしょ。
 風菜の体って、それで何も問題出てないの?」

内容を聞いたら、そこから踏み込むことをためらわない。
とはいえ、ここは興味というよりは心配の色の強い声色だ。

雨見風菜 > 「まぁ妊娠できないのはちょっと残念かなと思いますが。
 逆に言えば妊娠の心配がいらないわけですし」

くすくすと笑いながら。
風菜にとっては笑い話だ。

「んー……まあ、今のところそれについては問題はないですね」

問題がある、にはあるのだが、それは今言っていないもう一つのデメリットのほうだ。
とはいえこちらの対処はできているため、さほど重篤ではない。

ユラ > 「ふーん……確かに残念なようなそうでもないような。
 まあでもそれはオレも似たようなもんか」

ふすー、と落ち着いた様子。
楽しそうだし、やはり彼女にとってはメリット寄りなんだろう。

「体に異常が出ないならいいでしょ。
 将来に関わらないように出来るなら、ね」

ちょっとだけ煙に巻かれてる気がする、という感覚はあった。
けれどそれなら相手が隠したいことなのだろう、そこは掘り下げないでおいた。

雨見風菜 > 「いやあ、子供ができないのは将来に大きく関わるような気はしますけどね。
 大きく支障をきたすわけではないだけで」

遠い目。
一抹の寂しさを感じているのは見て取れるだろう。

「ま、それならそれで養子を取るなりすれば良いんですけどね」

なお、もう一つのデメリットについて別に隠したいわけではない。
言っていないだけだが、それを同年代に、それも男子に読み取れというのは酷であろう。

ユラ > 「……んん……」

じっと風菜を見つめる。
首をひねって、軽く唸って。

「オレもどうも子供作れないっぽいから、まあ……ちょっと気持ちはわかる。
 ……オレも異能じゃないけど、先天的に無理っぽいから、似たようなもんだ」

たい焼きをかみちぎる。
両親のことを恨んではいないが……少しだけ、運命を呪うことはある。

「……風菜はいいお母さんになりそうだし、いいんじゃない?
 オレなんかは……多分そういうこと出来ないし」

雨見風菜 > 「……そうなんですか」

残念でしたね、と言いかけたが思い留まる。
もしかしたら、慰めのつもりが逆撫でしてしまいそうな気がして。

「ふふ、ありがとうございます。
 でも、やる前から決めつけてちゃダメですよ。
 ……まあ、簡単に試せるものでもないんですけど」

ユラ > 「いやー、オレの場合はやったんだよね、だいぶ。
 ……何年も前だけど、半年くらいぶっ通しで毎日やることやってたし」

最後のたい焼きを食べきって、両手をぱしぱし叩く。

「まあでも、結果として出来なかったんだよね。今思えば幸運だけど。
 キメラみたいな体してるから、生殖はもう無理みたい。
 ……って考えると、風菜とは違うけどね。
 普通の人間なのに子供が出来ないって、風菜のほうが深刻だろうし」

じっと相手をもう一度見つめる。
素敵な女性なのに、惜しいなと思う。
きっと引く手あまただろうに。

雨見風菜 > 「そうだったんですね……軽々しく言ってしまって、失礼しました」

ユラの口ぶりなら、もしかすると気にしていないかもしれない。
けれども、謝らなければならない気がした。

「普通の人間でも、子供ができない体質というのはよく聞きます。
 この世界では不妊治療も発達してるわけですしね。
 子供が作れない程度、私にとってはあまり深刻とは思えませんし」

引く手数多ではある。
告白されたこともあった。
だが、風菜は自身の性癖を考えた上で断ってきている。
今のところ、誰かとの一途な恋愛というものは望むべくもないし応じられないのだ。

ユラ > 「んー、まあキメラには無理なもんはしょうがない。
 人間じゃない以上、純血の誰かと子供ってのはね」

気にするな、と手を振って見せた。
とうにあきらめのついていることでもある。

「……変な話にしちゃったな、ごめんね。
 まあなんだ、お互い体質に恵まれたとも言えるわけだし。
 好きなだけセックスしても、ある意味安心なんだから」

都合がいいという解釈はお互いに出来ることだ。
子供が出来るだけが未来じゃないのだから。

雨見風菜 > 「そう、ですか」

人間じゃないから、純血じゃないから。
そんな理由で子供ができないことには納得できない。
だが、それをぶつける先はない……

「……話の発端は私ですしね。
 確かに、やるだけやれる、やりたい放題なのはある意味では恵まれてますよね」

清楚な顔してとんでもないことを言い放つ。
風菜のことを知らない人間からすれば驚きの発言であることは間違いない。
子供にしたって、必須でもなければすでに言ったように養子を取るのも良いことだし。

(……まあ、愛する人ができたとして。
 その人との子供が望めないだけですが)

そんな秘密は、明かしていない異能は風菜の表情からは読み取れないだろう。

ユラ > 「いやー聞いたのはオレだし。
 ……ダメだな、風菜と会うとこんな話しちゃう。
 セックスの話なんて、今んとこ風菜くらいしか出来ないし」

がりがり、頭をかきながら呟く。
髪の毛を乱しながら、話しやすい相手に依存している自分を恥じた。

「異能が便利って話で終わりにしときゃよかったな……
 変な話に持ってくの、マジで悪いクセなんだけど」

雨見風菜 > 「あら、私としては別に構いませんよ。
 なんなら、押し倒されるのも吝かではありませんし」

己に恥じるユラに対して、恥じることなく。
他人の助けになれているなら、恥じることもない。
下半身事情も、あまり秘めすぎるのも良くないだろう。

「いやあ、異能のデメリットからこういう話に流れるなんて予想できないでしょう。
 変な話に持っていったのはお互い様、ということで」

本来なら変なデメリットを持っている自分が切欠だと思う。
だがそこを言うと、自分が悪いのだと言い合うことになりそうだ。

ユラ > 「なんか申し訳ない……っていうか情けない感じしてヤなんだよね。
 んー……押し倒すのもいいけど、今日はやめとこ。また今度付き合って」

ヤるのにいい場所あったら紹介して、などと付け加えながら。

「ちょっと予想外だったね、さすがに。
 まあでも、私生活に影響が出続けるようなデメリットじゃなくてよかったけど」

話の流れを一気に引き戻していく。
なんとか察したようだ。

雨見風菜 > 「ユラくんの考えはユラくんのものですしね。
 ええ、機会があれば呼びつけてください」

いい場所、なんてそれこそ自分も探している。
まさか女子寮でやる訳にも行かないわけだし。
……なお、他の寮生の事情なんて分からないわけだが。

「ふふ、そうですね。
 そういうユラくんは支障があったりするんです?」

口に出してないもう一つのデメリットを遠回しに言っても仕方ない。
そう言えば風菜はユラの異能を知らないのだった。

ユラ > 「……歓楽街のほう行けば、遊べそうなとこくらいあるでしょ。
 昔はもうずっと森の中とかでヤってたけど、これからも屋外でってわけにはいかないだろ」

子供の頃は結構やりたい放題してたなーとか思う。
相手の女の子もよく付き合ってくれたもんだ。

「んん……まあ、風菜に聞いておいて答えないのもアンフェアだな……
 オレの異能がまず、不幸を誰かに呼び寄せるってものなんだよね。
 それでちょっとだけ制御できない部分がオレに当たって……常に少し不幸になるって感じ」

買ったものの不良品率が高いとか、そういうちょっとの不幸例を挙げていく。
言葉通り、少しの不幸だ。けれど、それが幾重にも積み重なっている。

雨見風菜 > 「まあ、そうですね……お金はかかりますが。
 屋外、私は構いませんよ。
 そもそも、それが駄目ならあんなことはしませんし」

あんな、誰が見てるかわからないところでの一幕。
きっと、ユラ以外にも誰かが見ていたことだろう。

「なるほど、それは大変ですね。
 ある意味でその少し不幸、異能の代償なのかもしれませんね」

人を呪わば穴二つ、的なものかもしれないが。
なんにせよ、軽く話を聞いただけではそこまではわからない。

「……そろそろいい時間になってきちゃいましたね」

気づけば、夜の帳が下りかけている。

ユラ > 「別に金は……オレもそんな困窮してるわけじゃないし……
 外でダメじゃないにしても、寒いでしょ、今は。
 ……って思ったけど、それこそ異能のいい使い方見つけたんだっけ」

さっきの話を思い出した。
外でも寒くないなら、別にそれはそれでいいのかもしれない。
ぶっちゃけ外のほうが楽しい。バレなければ。

「ま、だから風菜の異能なんかはうらやましいんだけど。
 使い勝手良さそうだし。誰かに嫌がられなさそうだし」

不幸を与えるというだけで近付かれなくなるという経験を考えても、風菜の異能はうらやましいのだろう。
小さなため息が一つ漏れた。

「あ、ほんとだ。
 オレも一回帰って、天体観測の準備しなきゃ。
 付き合ってくれてありがとう風菜」

ここからがユラにとって楽しい時間。
話し込んでしまった相手に礼を言って、来た時と同じように飛ぶ準備をする。

雨見風菜 > 「体を動かすのですからすぐに温まるかとは思いますが。
 私の異能を使うのも一つの手、ですね」

どうしても寒くて無理ならともかく。
とユラを見れば、野外でするのもまんざらではなさそうな顔。

「どんな異能を持つかは誰にもわかりませんしね。
 私のような使い勝手の良い異能もあれば、運用上外にしかなってない異能だったりもするでしょうし」

被害の声が大きくないだけで、自分の異能に悩まされる異能者は多い。
先にもそういった生徒が多数亡くなった話も聞いた。
……果たして、彼らの結末は幸せだったのだろうかと考えてしまう。

「ええ、ではまた会いましょうね、ユラくん。
 たい焼きも、ごちそうさまでした」

こちらもたい焼きの礼を改めて述べて。
校舎内へと歩いていくのであった。

ご案内:「第三教室棟 屋上」から雨見風菜さんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 屋上」からユラさんが去りました。