2020/06/30 のログ
レイ > 「...勝手に忍び込もうなんて考えたらダメですよ
図書委員会に怒られて出禁にされますから」

一応忠告しておこう。
変に忍び込まれると監視役の私が怒られるから...
釘を指しておかないと。

「異能を二つ持ってるんですか?
それと...お疲れ様です
...どう言う異能なんですか?やっぱり蛇に変身するみたいな?」

先祖のやらかし...私に先祖はいないから、あんまりよくわからないけど、被害者だと言うのはなんとなくわかる。

...やっぱり異能の内容が気になるから聞いてみよう。
なんて、尋ねる。

レナード > 「分かってるし。禁書庫に忍び込もうなんて、ふてえやつがいるもんだし。」

…そのふてえ奴はここにいるのだが、適当に流しておくことにする。
ただ、出禁は困る。やはり、慎重を期すべきだと改めて胆に銘じながら。

「…………あの、えっと。」

ちょっと、困る。異能はなにかと聞かれると。
とはいえ、説明するにも現物を見せながらの方が良いのか、言葉だけで足りるのか、なんて考えてしまうものだから。
まさか、透視できる。なんてこの場で言っていいものか。

「あー………蛇には、変身しないし。
 その、蛇の眼をした……邪視の類を使える感じで……」

ぼかす。透視の事は死んでも口に出せない。
ここで現物が視たいと来たら、覚悟を決めるしかないが。

レイ > 「忍び込まれると私が怒られるので...本当にお願いしますよ」

長時間突っ立って叱られるの、他の人より全然辛いんだから!

「蛇の目...ですか?
邪視...もしかして石化ですか?」

蛇の邪視といえばメデューサとかの石化とかかな。
似たようなもので毒の眼とかもあった気がするけど私はそんなに詳しくない。
\\本は捲るもの//
...読んでるわけではないんです。

「あとは...動きを止めるとか、拘束するとか...千里眼とか...透視...」

なんて、そんなわけないよね。なんて思いつつ、それっぽい視線を少年に向ける!

レナード > 「……へえ、結構知ってるわけ………」

確かに、その能力も蛇の眼の内の一つであることは、自分でも知っている。
発現したのは透視だが、そういう眼を持つ先祖もいただろうことも。

「………なっ、なんだし…その眼は………」

そして、透視。この言葉を出しつつ、彼女はこちらを見た。
とても、とても意味深に思えて、ついうろたえてしまう。
何とかボロを出さないように取り繕うも、様子はおかしく映るだろうか。

レイ > 「簡単に思いつくのはそこらへんで...なんですかその反応は...」

冗談のつもりだったんだけど。
もしかして透視の邪眼...?
なんて思いつつ服の上から両手で体を隠して。

「透視なんですか?もしかしてずっと透視してた...とかないですよね?」

もしそうだったら。エッチな人です。
出禁にしてやる。

レナード > 「……ちっ!ちげーしっっ
 そ、そんな異能なわけねーしっ」

吼えそうで、吼えない。特に彼女の前で大きな声はご法度です。
本当はそうなのだけど、当てられたことを認めてしまうと悔しいので、つい違うとウソを吐いた。

「ただの、なんでもねえ、蛇の眼だし。
 なんだったら見せてやってもかまわねーし。」

今度はこちらから挑発を一つ。
透視の魔眼だと思われているなら首を縦に振るまいという、打算も込みである。
汚い気はするが、自分の名誉のためだ。この手で打って出るしかなかった。

レイ > 「えー...」

こんな時まで声を抑えてくれるなんていい人だなあ...それとこれとはまた別だけど。
やっぱり透視なのかなあ、うろたえてるの怪しいなあ、なんて、まぶたをわずかに持ち上げてチラ見しつつジト目を向けて。

「さっき魔眼って言ってましたよね...
まあそう言うことにしておきます」

これ以上攻めても、きっと認めないし。
変に暴挙に走られても困るし。
そう言うことにしておこう、と小さくため息をつけば、疲れた、と言わんばかりに自分もソファにゆっくりと腰掛けて。

「疲れたので休憩です。」

なんて言い放ちソファに埋もれて。

レナード > 「ほっ………」

彼女から出たその言葉を聞いて、ついため息が漏れ出る。
ひとまずこの場は切り抜けた。自分は賭けに勝ったのだ。
ソファにやってきた彼女を、ぼんやり眺めながらも一安心して。

「ん、ごくろーさんだし。
 声、さっきより近くなるけど問題ないわけ?」

とか言いながら、距離に応じて声量を変えたりはしている。
今の状態であれば、きっと囁き程度でも聞き届けてくれるだろうから。

「……僕の蛇の眼は、黄色。今の眼と全然違うわけ。
 それで見分けがつくし。ずーっと蛇の眼越しで見てたわけじゃないし。」

そんな個人情報も、囁きの中に紛れさせておく。
こうなったらその辺も話しておかないと、何かの折に出禁にされてはかなわない。

レイ > 「...大丈夫です」

ため息を吐く音が聞こえてくるけど...はあ...
なんて、やっぱり透視なのかな、ってこちらを眺める少年にジト目を向けて。
だけど、気を使ってくれるのはとても嬉しい。

「なるほど...
所でまだ名前を聞いていませんが。
お名前は?」

異能だの先祖だの聞いたけど、そもそも名前を聞いてない気がするし、どうせなら聞いおこう。

レナード > 「………レナード。」

それだけ伝える。実際、それだけ伝えても何の問題もなかったから。
本当は後ろにいくつか付くのだけれど、言いたくはなかった。
異邦人だから、知られているはずがないと思っているのだけども。

「……そういうおめーは、なんて名なわけ?」

じー。三白眼を向けてくる彼女を、こちらも見つめ返す。
互いにソファの上でのやり取りなので、思いのほか近かったり。
そのまま名前を聞かれたのなら、こちらも教えるついでに聞いておくことにした。

レイ > 「レナードさん、ですね。
私は...ってさっきも名乗ったじゃないですか。
私はレイです。幽霊の霊じゃなくてですね...」

まさか住み込み司書の霊、だとでも思われていたのだろうか...
酷い話です。私は生きてるって言うのに。
実体はあります。頬は抓れないけど。

「あっ少し近かったでしょうか?」

なんて、よく考えれば結構近い。人一人分ぐらい開けようと隣にズレようと立ち上がろうとして。

レナード > 「気にしねーし。」

彼女が立ち上がる前に、そう呟く。
届くかどうかも、分からないくらいに小さな声量で。

「……そういや名乗ってたっけ。
 やべーし。自分の異能に関する本のありかを聴けたってんで、つい興奮したし。」

ついうっかり、のめり込むと周りが見えなくなるのは彼の悪い癖である。
ともかくここまで喋れるし、影もありそうだし、本なんか探しに行くし、
話が分かるし、触ってないけど触れそうな相手を幽霊扱いなんかできようか。
これで本物さんだった日にはしばらく眠れない日々が続きそうなので、そんな可能性は除外である。
とはいえ、つねったりこそしないものの、幽霊幽霊と揶揄されてる相手に触れてはみたくなるもので。

「………。」

じー、と、何か言うこともなく、彼女を見つめている。

レイ > 「...なんですかその目は」

見られてる気がしたからと、半分立った姿勢で止まってレナードを見つめ返す。
そのまぶたはわずかに上がっており、瞳同士が合うであろう。

「なんですか?近くに座っていた方がいいのでしたら座りますが...
この姿勢ちょっと辛いので離れるか座るか早く決めてください」

なんて、足をわずかに震えさせながらそう聞いて見たけど...
特に近くにいる必要もないしパパッと離れればよかった。後の祭りだけど。

レナード > 「……それはおめーが好きにしろし。」

ぷい。そっぽを向いて、どこかつっけんどんな言葉を彼女にかける。
見つめ続けるのが気恥ずかしくなったのもあるけども、
自分から先と同じようなことを言うなんて、恥ずかしくてしょうがないので。

「………僕は、どーこー言わねえし。」

近くにいる必要は、皆無。ただ、それを彼女がどう受け取るか。
そっぽを向きながらも、彼女の選択を待つことにする。

レイ > 「...だったら変に止められて疲れたので動くのはやめにします」

足が割と辛い無駄に敏感なだけあって、疲れも結構ダイレクトに響く。
あんまり急に座るとダメージになるため最後の体力でゆっくりと再びソファに腰掛けてふう、とため息をついて。

「気にしないみたいですし、もう少しのんびりすることにします」

無駄に体力を使ったわけだし。
そして、勿論レナードの呟きはこの兎耳が捉えている。そう言わんばかりに彼側の耳をピコッと動かして見せて。

レナード > 「………そっか。」

聞こえてるじゃん、とか思った。物音に掻き消えてはくれなかったようだ。
さっきまでそっぽを向いてたのに、ふんわりソファに腰掛ける辺りから、そちらに視線が届く様になっていた。
やはり近い、手を伸ばせば簡単に届きそうなくらいに。

「……つねらなきゃ、いーわけ?」

なんて尋ねがちに、片手が彼女の頬に向かって伸びる。
おずおずと、おっかなびっくりと言ってもいいかもしれない。
いつでも引っ込められるようにはしてるのか、ゆっくり、ゆっくりと。

レイ > 「...優しくですよ。たんぽぽにワタを崩さないぐらい優しくならいいですよ」

別にそこまでしないと痛い、なんてことはないけど。
これぐらい言っておかないとたまに雑に触れてくる人がいて嫌だから。
やれやれ、と言った様子で今日一番のため息を吐きつつ、目を閉じてその時を待つだろう。
別に触られることに乗り気ではないが、この場の空気に当てられ、それぐらいは構わないか、と。

レナード > 「………。
 善処、してやるし。」

不思議な気分だ。
普段だったら反発の一つするのだけれど、素直な気持ちが口から出てきた。
元より撫ぜる程度に済ませるつもりだったのも、あったからかもしれないが。
大きなため息交じりだけれど、彼女は良しとしてくれた。それには応えなければならない。

「…………。」

そっ、と、掌が頬に触れるだろうか。
柔らかい綿でできた塊を崩さないくらいに、ふんわりと。
ふに、ふに、指の付け根で仄かにほおっぺたを僅か沈ませたりしながら。

「……やらかくて、あったかいじゃん。」

なんて、素のままの感想が漏れ出た。
幽霊だったら冷たかったり硬かったりしたのかもしれないが、
こればかりは掛け値なしの誉め言葉に他ならない。

レイ > 「...頼みますよ」

本当に。
そう言う人ではなさそうだけど、痛かったりしたら味合わせてやる、なんていつでも触れられるようにだけしておくがー

「っ...」

まあ杞憂だったようだ。
頬に触れられたこと自体かなり久々だったため、少し驚いて身を縮めるが、特に痛いと言ったわけでもなく。

「...そう、ですか?」

なんて、慣れない温度が頬を凹ませたりしている感触がどこか気持ちいい。
その綿すら崩せないような繊細な触れ方に頬を赤らめて。
片目を開いて、少し熱っぽい視線をレナードに送る。
あったかい、なんて言われたのも嬉しかったようだ。

レナード > 「……幽霊なんて、大ウソだし。」

さわ、さわ、ふに、ふに。もどかしいくらいのフェザータッチの繰り返し。
それでも彼女は喜んでくれる、これがどうにも嬉しくなってしまう。
こんな空気に中てられているのは、彼女だけでもないようで、
平穏を装いながらも僅か生唾一つ呑む音が、彼女にも聞こえてしまうだろうか。

「…僕は、そう思うし……?」

更に声を細くしながら、指を顎のあたりに這わせてみようと。

レイ > 「言ってるじゃないですか...私は幽霊じゃないですよって」

優しい触り方です。
それに、落ち着いています。
いままでこんなに長く触れられたことがなかったので初めての感覚です。
なんとも心地よい...安心するような...
本をめくる音よりも癖になりそうな...

「それならよかったです...のでしょうか?」

顎へと這わされる感覚がくすぐったい。
ソフトタッチかつ、敏感な肌がくすぐったさを増幅し、つい笑ってしまいそうになりつつ。
やっぱり心地よい。気持ちいいなんて思いながら赤くなっていて。

レナード > 「知ってるし。
 今もこうして、実感してるし。」

心地いい、気持ちいい、そんな表情が見て取れるものだから、こちらもつい調子に乗ってしまいそう。
囁くくらいの声量で言葉を交わしながら、さらさら、さわさわ、顎の下を撫でてみる。
どこをとっても敏感なのは、会った時に言っていたような気がしたけど、どうやら本当だったようだ。

「……レイはいいわけ? こうして、触られてても……」

眼を細めて、見つめてみたりしながら、ふとそんなことを聞いてみる。
彼女から悪感情は見られないように思えるのだけど、ここまでやってしまうと、つい不安になって。

レイ > 「触れられるのって...意外と気持ちいいんですね」

顎の下を撫でられれば、その姿はまるで人懐っこい兎のようで。
時折「ん...」と声を漏らしつつ、くすぐったいようで僅かに逃れるような動きをとっているが、嫌がっている様子はない。
きっとそんな気がしているからなのだろうけど、囁かれる静かなその言葉一つ一つも、耳をソワソワさせてなんだか落ち着かないけど、悪い気はしない。
むしろ、何だか安心する。

「...うん。何だか...安心する...」

まるでペットのような。
だけど、ここまで丁寧かつ継続的に触れられなかったレイはそれだけで随分と懐いたようだった。

レナード > 「……そっか。」

それに対して、たった一言だけ。
だけどもその一言には、その答えにほっとした気持ちがありありと表れているように聞こえたかもしれない。

時折彼女が声を漏らして少し逃れようとするものの、反射的なもののようだと理解はしていた。
それをすぐに追うことはしないけれど、いつの間にかまた触れていて。

しばらくそうして不思議な雰囲気に中てられていたけど、
少し迷うように視線を泳がせてから、口を開いた。

「………ね。触られてみたいとことか、あるわけ…?
 今度会ったら、そこ、触ったげるし。」

レイ > そのまま、ずっと撫でられていても幸せだった気がするが、まあそんな都合いいことはなく。
レナードの「今度」の部分で少し理性が戻ってきて恥ずかしくなってきて顔が別の意味で赤くなる。

「つ、次...次...触れて欲しいところ...」

その理性を持った上で、その撫でられ心地の良さには、到底敵いそうがない、なんて。
理性を持ってしても、また撫でられて兎のようになりたいと。そう思ってしまう。

「耳...とか
次があったら...お願いします」

なんて、照れながら、そしてその撫でられ心地の良さに負けながら呟いた。

レナード > 「……分かった。
 時間かけて、やってやるし。」

彼女の顔色に、理性の色が仄かに戻ったところで、ゆっくりと手を離していく。
少なくとも次があると思えば、この幸せそうな顔がくすんでしまうのも多少は免れるだろうか。

耳。ぱっと見たその様相からして、最も特徴的ともいえるだろう箇所。
そこを触ってほしいと言われると、次ではなく、今からでもしてみたい衝動に襲われる。
……そこはぐっと、ぐーっと堪えて。次という機会に持ち越すことにした。

「今日は、これでおしまい。
 ………それで、いーわけ…?」

こちらでさえ、ちょっと名残惜しそうだけど、そんな本音をしまい込みながら終わりを告げる。

レイ > 「はい...わかりました」

冷静さが戻ったため、先ほど見せた敬語の剥がれた自分ではなく、しっかりと敬語で、ただしその表情は赤いが。
理性と羞恥、心地よさが同居した表情は何とも言えない色っぽさを持っており。
次がある、と思えば次が今から待ち遠しくなろうか。

今まであの人と同居人以外にはロクに触らせたことがないこの耳が次どうなってしまうのか。
今から少し怖くも、とても楽しみで。
...なんなら今からでもいいけど、それではよくない、なんて思ってたり。

「レナードさんこそ...これでおしまいでいいんですか?」

なんて、解答権を押し付けあって。

「次、楽しみにしてますね」

なんて、ずっとあまり表情を見せなかった少女が、らしくない笑みをレナードにむけた。
その笑みは純粋で、幼い...

レナード > 「…………へぇ。
 面白いこと、言うもんだし。」

にや、と口角を僅かに上げた。
次を期待するのは彼女だけではないと、僅か染まった頬を向ける。
…ふと瞳を見つめてみれば、黄色い虹彩に縦に細い瞳孔が、目の前の彼女には捉えられたかもしれない。
ただ、本人は無意識だったか、その眼で以ても視てはいなかったのか、平然と振る舞っていたが。

「いやだと言ってもなかせてくれるし。
 精々、覚悟しておくことだし。」

どこからどこまで本気なのやら、単なる言葉遊びに違いないのだが。
…はたまた本気で、痛みとは別の方向で、そういう目に遭わせるのだとも聞こえるかもしれない。
眼を細めて笑むその姿は、幼く…澄んだ彼女の笑みとは対照的に、
蛇が獲物を見つけたときのように、どこかねちっこくて、官能的なそれだった。

「……んじゃ、今日は帰るし。
 この辺は僕が片付けとくから、気にすんなし。」

すいとソファから立ち上がると、机の前に積まれた本を全て一度に抱えて。
元あった場所に返しに行く流れのまま、図書館を後にしたのだった…

ご案内:「図書館 閲覧室」からレナードさんが去りました。
レイ > 「果たして、そうなるでしょうか?」

なっちゃいそうな気は少しするけど、そうはならない...で済むといい...いやでも泣かされるのはそれはそれで...なんて、やっぱりまだ跳んでる理性。
少なくとも、次回への期待を込めた瞳はレナードの蛇の瞳を見つめ返して。
その様子は正に、仕留められることを期待してる兎。
一度獲物となって逃れがたい何かを与えられてしまったようだ...

「お気をつけて。また会いましょう」

なんて、どことなく機嫌良さげの、やっぱり無表情をレナードに向けて手を振って。
カウンターの奥へと少し冷静になるために照れ気味に引っ込んでいった。

ご案内:「図書館 閲覧室」からレイさんが去りました。
ご案内:「図書館 自由記入」にレイさんが現れました。
ご案内:「図書館 自由記入」からレイさんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」にレイさんが現れました。
ご案内:「図書館 閲覧室」に白亜 愛さんが現れました。
レイ > 「はあ...ちゃんと片付けてくれないと困るなあ...」

呆れた様子の少女の小さな小さなため息と独り言が反響する間もなく図書館の空間へと溶けていく。
少女からすれば普通の声量ではあるが。

今日の図書館利用者の中に本を片付けなかったルールのなっていない人がいたらしく、その片付けを終えたところで。
幸いなのはその冊数が少なかったことか。

ソファに腰掛けて疲れた様子でため息を再び吐いた。

白亜 愛 > 「にへへ……ただいま」

一仕事終えたぜ。という表情で図書館に入ってくる。
何かを入れた袋を持ち帰ってきたらしい。
そんな彼女は顔も服も汚れている。

「ちょと大変だったけど死守できた……喜ぶかな。
レイちゃんー」

小声で知り合い……図書館の同居人を呼びながら、
入り口のカーペットで泥を払い、よたよたとソファに向かう。

レイ > 「....あ、おかえりなさい」

図書館の扉が開くとともに耳に届く今年度になってからほぼ毎日聞いている声がその耳に届き、俯いていた頭をあげる。
まだその姿は見えないが、図書館の同居人である愛の声だ。
愛の声は私に届くけど、小さな私の声は彼女に届かない。

「死守...
...今日も...」

『ちょっと大変だったけど死守できた』
ああ、今日もまた...私が彼女を守ってあげられたら。なんて何度思ったことか。
彼女は今日の記憶も忘れてしまうのだろうかと思うと、さらに悲しくなる。

彼女がやってきてから今日まで。彼女が夢だと思い込んでいる全てが実際に起きたことだと。私は知っている。
そのたび彼女が泣いている姿も声も、私は知っている。
『喜ぶかな』
私を喜ばせることよりも自分を守って欲しい。
でもそんなことは言えない。彼女の優しさを無碍にはしたくない...

「おかえり、愛ちゃん」

ソファへとやってきた愛の姿を目にして、悲しさが表情に出そうになるが、そんな表情は見せられない。
少し微笑んで見せて。

「服が汚れてるよ。
今タオル持ってくるから少し待ってね」

と、居住スペースに濡れたタオルをとりに行く。
...もう慣れた動きだ。
30秒ほどで帰ってくるだろう。

白亜 愛 > 「レイちゃん、みてみて。ようかん」

袋から箱を取り出し、さらに中に入っている半透明の直方体を見せる。
タオルを受け取った私は自慢げに。

「異邦人街の中にね、舌が敏感な人用に色々作ってるおじさんがいてね。
レイちゃんに合いそうなものを選んできたんだ。
私、食べても味しなかったけどレイちゃんならわかるのかな」

嬉しそうに、今日あった出来事を話す。

「おっきなワンちゃん2匹が飼い主から逃げ出してね、へへ、あちこち舐められたり、のしかかられたりで大変だったけど、こっちは無事だったよ。ふへへへ」

さあ!と付属していた爪楊枝を差し出してみる。

レイ > 「私のために選んできてくれたの?
ありがとう愛ちゃん」

きっと今日も酷い目に会ったんだろうに、なんでこんなに元気に...
箱の中の羊羹。こんなに汚れている愛と違って綺麗な羊羹。
しかも私のために選んできてくれただなんて...
その優しさに嬉しくも悲しくなってしまう。

「そうなの?気を付けないとダメだよ?あとで診てあげるね」

怪我は彼女の異能か何かですぐ治ってしまうけど。それでも心配になる。
わかってはいても、何回同じような会話を繰り返しても。
心配なのだ。

一口サイズのその羊羹を一口で。
そう言った食品を作っている人が作っただけあって、口の中に程よい甘さが広がる。とても美味しい。

「美味しいよ。愛ちゃん。
ありがとう」

と、微笑んで見せるだろう。

「今度私もお返しに何か買ってきてあげるね」

きっと彼女は今日のことは忘れてしまうのだろうけど。
それでも少しでもこの時間を楽しんで欲しい。

白亜 愛 > 「へへ!ど!、ぅぃたしましてへへへへ。
そっかそっかぁ。おいしかったかぁ。これはいいお店だなぁ」

喜んでくれた。思わず声が大きくなり、慌てて口を抑えた。
へへへ。

「わ私ケガなんかしてないよ?レイちゃん、心配性?お世話好き?」

『出会ってそんなに時間が経ってない』けど、なんかとってもお世話してくれる。
私よりも、レイちゃんの方が大変なのに。

だから、こうやって喜ばせるんだ!

「いゃーでも今日は洗濯しないと駄目だね。スカートの中までカッピカピ。乾燥機使ってもいいかな」

あのわんちゃん達、服の中まで頭突っ込んでくるから離れるの大変だった。許さん。

レイ > 「ところでどこにこのお店あったの?
ほら、私あんまり外に出れないから。
よく知らないんだ」

少し耳が痛かったが、愛が喜んでくれたのであれば私は構わない。
いつ行けるかはわからないけど、せっかく彼女が見つけてくれたお店なんだし、いつか行ってみよう。

「愛ちゃんが可愛いから。お世話したくなっちゃうんだ」

なんて誤魔化すけど。
ただ彼女が可哀想で、少しでも辛い思いをして欲しくないだけで。
あなたも大変なのに構ってる余裕ないでしょ、なんて同級生に言われたことはあるけど。
それでも、放っておきたくない。
可哀想だから。

だからこうやって、少しでも喜ばせたい。

「疲れたでしょ?私がやっておくよ。籠にまとめておいてくれたらやっておくから」

私は乾燥機うるさいから嫌いだけど、それでも彼女のためなら。
例え忘れられるとしても彼女のためなら。

白亜 愛 > 「えっと、へへ、まず駅を出たら……地図、地図」

よたよたと自分のスペースに向かい、急いで戻ってくる。
入学式で貰った、この島の地図帳を持ち出して。
地理を調べるより、こういういい感じのスポットをメモるために使われてる。
なんか描いた覚えのないものもあるけど。

「駅をでたらね、この通りを信号で曲がって……そうここ。へへ」

いつか彼女が自由になったときのために、丁寧にペンでなぞって、印をつけて。

「私よりレイちゃんの方がかわいいのになぁ。
乾燥機ごめんね。ありがとう」

聴覚も視覚も味覚も触覚も痛覚も鋭くなってる彼女に、抱えさせたくないなぁ。
洗濯機も音嫌いなの知ってる。
だから私にできることは何度でも……何度も?
助けたくなっちゃう。

レイ > 「ふむふむ...あ、そんなところもあるんだ〜」

愛が地図帳に走らせるペンの音がはっきりと聞こえる。
騒がしくないけど、普段なら嫌に感じる音。
でも、彼女の優しさだと思うと、途端に本をめくる音よりも美しい、優しさの音に感じられる。

「ありがとう。今度行ってみるね」

今度がいつになるかはわからないけど。
いつか、彼女の優しさのペンの跡を辿って行きたい。

「そんなことないよ。愛ちゃんの方が可愛いよ
気にしないで」

愛は私のことをどれくらい覚えていてくれてるんだろう。
最初に会った日と、他にも何日か覚えてくれてるみたいだけど。
私の体質もちゃんと覚えてるみたいだし、変に気を使わせていないか心配になってくる。
でも、いつでも彼女には少しでも喜んでいて欲しい。
夜に泣いている声は出来るだけ...聞きたくない。

白亜 愛 > 「へへ、一緒に行こうなぁ」

レイちゃん、笑うとこんなに可愛いのになぁ。
並んでる私、浮かないかな。

「……と、そろそろ体洗わないと夜遅くなっちゃいそう。
お風呂いただくね」

羊羹を一口こっそりといただいて、伸び。うーん。服が気持ち悪い。
自分のスペースに地図帳を戻し、お風呂セットを用意。

「ごめんね。お願いー」

居住スペースに入り、カピカピの制服とかを籠に入れてお風呂に入った。

レイ > 「うん、一緒に行こうね」

いつか、愛が心の底から楽しそうな笑みを見てみたい。
その為に私にできることがあるなら...なんでもしたい。

「うん。行ってらっしゃい」

...愛はこの羊羹に甘さを感じるのだろうか。
私にとってのちょうどいい味は...普通の人にとっては無味らしい。
いつか、同じ感覚を共有したいなあ。

「うん。任せて

....さて」

愛がお風呂へと行った音を聞き届ける。
図書館にお風呂なんて湿気のもとだから。
湿気が漏れないように、しっかりと隔てられている。

「乾燥機回さないと」

本当はやりたくないけど。彼女のためならやれる。
なんて、思いながらソファーを立った。

...乾燥機のスイッチを押すレイの姿はひどく滑稽な物だったとか。

ご案内:「図書館 閲覧室」からレイさんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」から白亜 愛さんが去りました。