2020/07/11 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」にレナードさんが現れました。
■レナード > 「ぁー、うー……」
人気のないところで死んでる。
否。ソファに座りつつ、机の上に上半身をうつ伏せに突っ伏している。
机の淵からしなだれた両腕が、なんとも哀愁漂う佇まいを演出してしまっている。
「…………はぁー……」
ため息しか出ていないが、彼に何があったかなど、
この時期、彼の身分、その辺りを鑑みれば答えにたどり着くことなど難儀しないはずだ。
つまり、そういうことなのである。
蓋を開けずとも酷い有様であると、この時点で理解しているようだ。
ご案内:「図書館 閲覧室」にアリソンさんが現れました。
■アリソン > こつりこつりと靴音を鳴らして図書館へと足を踏み入れた者。
カウンターに返却する本を置き所要の手続きを難なく済ませ、
閲覧室の混み具合を異能で確認したり。
(土曜日ですので混み具合は少ないと…一名、突っ伏し確認)
軽く閲覧室の人の流れやナニがどこにあるかを把握する為に
音波を発信し 返ってきた諸々の音を回収そして完了。
この季節柄 特有のアレと感じ取り、成程成程と一人納得?してしまうと、
新たに資料を借りるべく書棚の方へと歩き始める。
■レナード > 「ん。」
足音を検知した。ぐったりしていたい気分でも、反応してしまうものはしてしまう。
例え、既に彼女に存在を知られていたとしても。
「……………。」
こちらにやってくる。
図書委員の彼女のものではないだろう。
傍の書架に用があるのだろうか。足音はこちらに迫ってくる。
そうして、つっぷしながら、仄かに湧いた好奇心のままに聞き耳を立ててみる。
■アリソン > 足音が忍び足ではないにしても静かなもので僅かに布擦りの音がなければ
本当に大人しめの足音。忍び足でもないけれど突っ伏している彼の事は気にはしつつも
起こす事はすることなくその席の後ろをゆっくりと通過していく。
「…高度魔術式の応用編はどちらに……」
独り言を呟いて何かの香りを焚いていたのか仄かに香るのは甘いもの。
本棚に刻まれている点字を指でなぞってから一冊一冊確かめるように背伸びしたり、手に取って捲ったり。
暫くすると二三冊手に取ったのか、彼がいる席の近くに腰掛けただろう。
肩に乗っていた髪一房をさらりと指で掬い後ろへと流しながら、閲覧席の一角で本を読み始める。
■レナード > 「……………。」
蛇はじっと身を潜めていた。
彼女がその傍を通るときも、顔を見せないでおきながら、
しかしその気配は敏感にとらえ、彼女の一挙手一投足を目視なしに観察し続けていた。
高度魔術式、という言葉が聞こえる。独り言か…誰に向けたものかは定かではない。
ただ、こんなところで探しているのだ。禁書指定を受ける類のものでもないのだろう。
事実、傍を通った際に仄かに匂った甘い香りが失せないうちに、自分の近くでソファの軋む音がしたのだから。
「………。」
頭だけを、そちら側に向けてみる。
用心深い割には妙なところで好奇心には勝てない。
どういう本を読んでいるのか気になって、それを目視しようとした。
■アリソン > 彼に行動すべてを視られているとは感じていても何も言わないのは
異能や特殊能力、魔術を学んでいる学生が多いこの学園においては、
観察も一つの実践訓練ではないでしょうかと思うのでお互い様と思う事。
異能で色なき世界を視ている身としては彼の外見は分る物の
彼がどんな髪の色をしているのか服装の色は等は分からないから。
そしてどんな異能や諸々をお持ちなのかさえ分からない。
禁書指定を借りるためには確か諸々の複雑な手続きが必要であった筈、
そのようなものをここで借りる事は目的がなくば不要。
「…ふぅむ、なかなか奥が深い事です」
瞼を伏せ気味に眺めているようで視線が全く本に向けられていない。
指で時々なぞったり、じっくりとその書面を眺めたりと目視しているようなもの。
ぱらりとあるページが捲れた時に 化学式の様な術式が見えたかも知れない。
陰陽術の様な漢字が描かれた複雑な内容の中身が。
■レナード > 目視する上でも、自分の特異な瞳は使わない。
相手は女性、そんな目で見ようものなら鼻血は免れない。
…使う理由はどこにもないのであれば、無用な騒ぎは起こさないに限る。
ただ…
「………うげぇ」
見えてしまった、その記述。
なんて書いてあるのかさっぱりわかりっこない。というか、自分の知る言語であるかさえ怪しい。
そんなミミズがのたうち回ったようなページがちらりと見えたものだから、ついつい口が辟易したような言葉を出してしまったのだ。
流石にしまったと思ったのか、次の瞬間には口を手で押さえる仕草をしたが。
■アリソン > 彼が秘めたる瞳の事も無論知らない、初見では分かりようがない。
彼と出会ったのはつい先ほどそして会話もまだと言う有様。
色なき世界を視て何とか人のように動ける少女はまだ気づかない。
静かにじっくりととある本を眺め感嘆の思いに身を浸し…。
「…はて。」
意識を彼の方に向ける、むくりと起きている様に形作っている彼の人となり。
何か呻いた後に口を手で押さえる仕草もしている事を異能で視てしまう。
首を傾げて 何かわたくしがしたのでしょうかと心の中で思い、
読んでいた本にしおりを挟んでから静かに本を閉じると。
「何かご用件でしょうか…?」
柔らかく少女特有の高い声で彼に微笑みを添えて問いかけてみよう。
■レナード > 「………。」
彼女がこちらを見た。
慌てて、突っ伏し直す。もうこの時点で無駄だろうけど。
だって、何か用ですかと問われて、その時点で言葉に詰まってしまったのだから。
見てただけです、なんて、デパートで家電製品を眺めるのと訳が違うのだから言えるはずもない。
やってたことそのものズバリを口にするわけにいかないから、返答に困るわけで。
とはいえ、無視するわけにもいかない…なので。
改めて、そちらに向き直る。
「……その本が、ちょっと気になった、だけ……だし。」
まるで頭に浮かんだ言葉を選びながら、問題なさそうなものだけを口にしたような、そんな途切れ途切れの回答を告げる。
事実は事実、なのだから。
■アリソン > 逐一彼の言動は観察してました。
一度気になったら気づかれない程度に異能で視ます。
ハイライトのない黒い瞳がまっすぐ彼へと注ぎ込まれます。
只管じっと見つめていました、僅かに彼というより彼全体を視ているようでいない瞳を。
此方の本を、と手に取ったのは先ほどまで読んでいた本。
それとまだ読んでいない本とを持ち、スタスタと少し歩いてから、
彼の隣かもしくはすぐそばの席に座ってしまいたい。
「お隣失礼致します、どうぞ。」
古びた表紙の表紙がすでに擦れているけど禁書でもない書物を彼に渡そうと差し出す少女。
ソファの片隅に残り二冊を置いて 甘い香りを漂わせながら距離を詰めてくる有様。
■レナード > 「む、う、う。」
空虚の差した瞳から、眼差しがこちらに注がれる。
その先は自分の眼…というより、自分の身体全体を視られているような気さえする。
最初に怪しい行動をとったのは自分だから、怪訝そうな目で見られても致し方ない部分はあった。
なので、何も言えない。ちょっとたじろぐ程度に声が出るくらいで。
「……ん。
す、好きに……しろし。」
どうやら、隣に来るらしい。それ自体は止めはしない。
本を渡したそうにしてたのが見えたから。目的もまだわかる。
取りに来いと言われないだけましかな、なんて思いつつも、
彼女から古びた表紙のそれを手渡されて、徐にページを読み解こうと開くものの…
「………やっぱなんて書いてあんのかわかんねーし。」
理解できるわけがなかった。
異文化の、稀なる術の記されたものであれば、猶更。
見た瞬間疲れるくらいに謎の記号が走ったそれを目の当たりにして、ついそんな言葉を口にする。
「……僕にはやっぱこんなの早すぎるし、さっぱり理解できねーし。」
ただ、今はそんなものよりも、隣の彼女の方が意識に訴えてくるものがあった。
微か漂う甘い香りが、気配が、どうにも目の前の書籍から意識を引っぺがそうとしているような気さえする。
■アリソン > 「どうかなさいまして?」
そう声をかけてから何かに察すると空虚の瞳を瞼が閉ざす形で彼へと注がれることはなくなる。
瞼を開いていたのは普通の人とはを実践するために開いていても
閉じていても意味がないのにそう振舞っていただけでどちらも変わらない。
「目を閉じておきますね…気づかずに申し訳御座いません」
座ったまま姿勢を正して会釈を丁寧に彼へと致し、
手渡した書籍を彼に見て貰っている間は手は膝上に置いていたとか。
「理解をするよりも感じ取る事が大事ですね、応用なものなので基礎が出来ていなければ応用は適いません」
反対側に置いていた書物は術式の本ではなく地理の本だったりする。
立体地図の見方とかいう謎の雑学本の様な専門書。
「早すぎるという事は御座いません 学ぶ心さえあればだれにでも出来るのではないでしょうか?」
やる気がひとかけらでもあれば叶いますよきっと、と何故か
彼へとぐいぐいと迫ろうとする少女。(ただし座っている位置は変わっていない)
■レナード > 「や、べ、別に気にしなくていーし……」
所作の一つ一つはそれこそ、完璧なメイドさん…なんだろうけど。
そもメイドという職業の方々について詳しくない。細かなマナーも知らない。
それでも、ごく自然に丁寧な振る舞いへと繋げる彼女は、きっとそうなんだろうな。と、感想を抱かざるを得ない。
だから彼女はこちらに気を遣うのだろうけれど、それは不要だと。そんな言葉を、おずおずと告げる。
この手を相手取ることに慣れてない、自分の無作法さが際立つだけなのだけれども。
「………むー、むー、むー……
もじょもじょがいっぱい走ってるようにしか見えんし……」
感じ取ること、その時点で思考回路はショート寸前になっているような。
無駄に年月だけを重ねた体だけれども、分からないことは分からない…
それは、頭が固くなってるのではなくて、純粋にこの手の知識に欠けているからだろう。
片手が頭を掻く。さっぱりわからないなりに読み解こうとはするが…
「……むぅー。たしかに、確かにその通りなんだけどもー……、…っ………。」
分かりやすくむくれた。なんだか自分の無知を指摘されてるようで、悔しい。
…ふと、隣の彼女がやたら近いことに気づく。
座ってる位置はそのままに、身体をこちらに乗り出しているような…そんな気がした。
それを指摘するのは…これ以上下手な気を遣わせたくないと言った手前、しないことにして。
■アリソン > 「そうでございますか?閉じてても視えるので終始問題は御座いません」
メイドというのは洋風メイドさんが一番わかりやすいのだけど、
残念ながら古の書物で拝見か異邦人ネタで見つけてしまったか和風メイドというものに手を染めた少女。
メイドについては語るも長くなるので割愛するとして自然体に彼と接するつもりらしい。
「言語 一文字一文字からバラバラにしてから意味を理解する事から
始めていかれては良いのではないでしょうか、…こちらは召喚術式のようですね。」
理の違う境界ら呼び寄せる組み立て式の術式のページを捲ってから、
懐からメモ帳を取り出し、挟み込んでいた筆記を手に取るとさらさらと表面に文字を描いていく。
「このようにバラバラに致します。地 を 這う 獣 と一つ一つの言語は読めますか?
…字が読みにくければ申し訳御座いませんが…」
一つ一つ丁寧にメイドはメイドなりに彼に教え始めた模様。
説明する度に綺麗に術式を描いていくという説明を添えて。
■レナード > 閉じてても見えるってどういうことだろう?
…自分のように、特殊な目を持っているのかもしれないし、別の感覚器官が優れてるだけかもしれない。
だが、今はそれに言及するつもりはなかった。
「……召喚術式………」
すっかり、教師と生徒のワンオンワン…みたいな雰囲気に。
新たな学び自体は、こちらとしても僥倖。普段の授業のカリキュラムにないならそれも一入である。
ならばこちらは生徒役に徹するまで。
「……へぇ………字は分かるけど、見たことねえ繋ぎ方をしてるし。
じゃあ、なんだし? この繋ぎは……なんか法則があるわけ?」
術式とは、言ってしまえば法則の塊であろう。
それを細かく分けていけば、小さな法則たちに別れて…更にその要素要素の塊が、一つの大きな術を為す。
そんな発想は今の頭脳に定着してはいないだろうが、僅かにつかんだ偉人達の英知の尻尾を、逃すまいと食らいつこうとする。
■アリソン > 初対面の彼には伝えるわけにいかない。
色なき世界の特殊な異能については話せる時が来れば、
もしくは彼が独自に推理して当ててくれば考えない事もない。
それよりも今は臨時の教師と生徒のような雰囲気になっているのでそちらに意識を向けていきたい。
「召喚術式基礎から始めていきます。応用は後にしましょう。」
あれ、空気が教師と生徒という謎の雰囲気になってしまっている。
召喚術式自体は元々持っていたけれどこの体になってからは宿る
機関からエネルギーを消費して使えるようになった。
そこから少々組み込みつつ 例として彼の前に顕現させる事に思考が纏まった。
普段の授業では割と術式が複雑すぎて専門授業になりがちのそれを今ここで。
「異なる境界から異なる質量と異なる存在を此方に呼び寄せる為の関門と制限ある時間を調整する役割を示します。
丁度ここからここまでの間です。基本はこの部分は変わりません。
代わるとしたら この部分がその呼び出すものに置き換わるものです。」
一つ一つ丁寧に教えていきながら また新たな紙に術式を書き連ねていく。
「命なきものは制限は特にありませんが、
危ない物 命あるかりそめのものを呼ぶ場合は贄が必要と思って頂いて結構です」
贄とは供ものだったり、呼び出すものと対等それ以上になるべく調整するもの、と書いていく。
■レナード > 「お、おぅ………」
仰々しい名称だ。でも、相応に学の有ることなのだろう。
…理解したことと言えばやっていること自体は、何か媒体か、特殊な力でもなければ、
とても個人の身体だけでやれるとは思えないものだった。
だが、この召喚技術とやら、どこか頭の淵に引っかかるものを感じる。
「……境界、質量、存在………関門、時間、調整……」
彼女の言葉の中で、キーワードになったものを復唱していく。
文字にされるとしり込みするが、言葉を聴けば不思議と分かった気になるもので。
真の意味で理解しているかと言われれば怪しいが、それでも、とっかかりにはなるだろうか。
今の話は召喚術式の、恐らく基礎を為す部分。そこから、彼女の話は応用へと。
そこまで話が進んでいる頃には、頭の中に一つ、浮かんでいるものがあった。
…原理と手段は別として、目的を類する、似た者同士の顔が。
「質問、いーわけ?
………呼び出した後のそれは、どうなるわけ?
それと、……例えば、
別の世界に居る、生き物をこっちの世界に引っ張り出すことは………できるわけ?」
■アリソン > 「名称は各々方が使われる術式コードによって変化致しますので
仮称で此方が書物を基に噛み砕きまして付属させて頂きます。
わたくしが仮に致しますと召喚術式特殊顕現となりますが…」
本来ならばお外でやった方が危険が少なくて宜しい代物。
そして媒体か特殊な力 頭脳なり犠牲にした何かを糧にして
個人の技量で呼び出すという特殊めいた魔術召喚術式。
この世界にある術式とは少々異なってくるのは彼は気づくでしょうか。
「はい。では続けます。」
どれか一つでも欠けるともれなく爆発します、と
後で彼に二枚渡すうちの説明書きの方に脅しの様な文字も書面の隅っこに書く。
完成しつつある綺麗な術式の書かれた紙を置きながら、説明書きの方を埋めていく。
「どうぞ。
呼び出した後は それが宿る魔力なり内蔵している燃料、
まぁ精気なり力その他というのが尽きるまではそこに居ります。
尽きれば自然とこの世界から存在する事が出来なくなり元の境界へと戻ります。
別世界にいる生き物…ものと質量とそれが何なのかにもよります。
しかし代償になるものが尋常ではありませんね、
それを構成する素材、対等になる力、仮に使い魔とするのならばいるだけかかる制限条件と魔力なり力が減ります。
命の危険は保険掛けてますか? どちらにせよ引っ張る自体は可能です。」
ぴたっとペンがメモの上で止まり、
解答はしたものの、なぜに?と閉じていた瞼が開きハイライトのない瞳が彼を射抜くようなものを向けて。
■レナード > 「……へえ。できちゃうわけ……」
期待通り。しかし、それ相応のリスクはある。
そこに命の保険が出てくるあたり、自分を犠牲にして呼び出すとか、そういう類のものになるのだろう。
さて、ここまで話を聞いて、抱いたものを口にする。
「………術式について僕はさっぱりわかんないけど……
これがやべーやつなのは、僕でも分かるし……」
流石に、代償の質が違う。それくらいは彼でさえも分かる。
それを彼女は個人の能力だけで成そうというのだから。
…やはりそういう特化した異能を持っているのか?と、思い立ったが……
違う。
彼女はこれを、"術式"として自分に伝えている。
であれば、時間と努力さえ重ねれば自分にだってそれが出来るハズなのだ。
異能による権能じみたものではない、そこにある普遍的なものとして、彼女は自分に教えている。
で、あれば――――
「………これ、まだこの世界に流通してる知識じゃなかったりするわけ……?」
話を聞いたこれ自体、危険すぎるもの。
しかし、そんなものを使うことのリスクとリターンが、大きな方向で釣り合っている。
…個人で使う分にはあまりに危険すぎて、教科書があれば禁書指定待ったなしだろうか、そんな感想さえ抱くくらいだ。
■アリソン > 「できます。リスクは対等に存在します」
出来なかったら描かない。説明に嘘偽りはやれない。
画竜点睛をしていたのは最後まで書き終えてしまうと発動してしまうから。
とある文字だけ書いていなかったが果たして彼は気づくか否か。
薄く微笑み続けていたメイドはそこで微笑みを深めて。
「半分は私が独自に構築している術式であります。
世界自体には流通はしていると思われます、ただし、マイナーな術式として。
何しろ 代償が割に合いません、よほどのマッドな方々か命が惜しくない者が使う代物です。」
お話は以上です、と半ば書いていた術式の説明書きは彼に見える様に置く。
見本に書いていたものも添えて。そこから描けばあら完成 何かが呼び出される恐れも孕む。
「大いなる力を求める物には 覚悟が必要なのです。と、以上となります」
ご清聴ありがとうございました、とぽつりと聞こえる範囲で言葉を零すと再び会釈を。
■レナード > 「………。」
流通はしている、が、彼女のそれはほぼ自分の独学によるものという。
そもそも代償がつり合わないし、こんなものが広まれば世の中もっと渾沌としているだろうから。
ぼんやりそんなことを考えながら、説明書きと、見本で添えてくれたものを見やる。
「………あれ?これ、最後まで書かない………―――」
そこまで言って、気づいた。完成させたら、何が起こるかも。
これをもし自分が加筆した場合…引っ張られるのは自分の腕か、足か、それとも命そのものか。
身震いを覚える。
なんて爆弾を寄こすんだ、という視線を彼女に向けた。
「……ご高説、どーも。
お蔭でちょっとは勉強になったし。」
いやほんと……と続けつつも、頭の中には、この術式で出来そうなことを模索する。
きっと、いや…もしかしたら、なんて、淡い希望を胸に。
「……ねえ。
これ、誰かを呼び出すなら……どこの世界か、も…指定しなきゃならねーわけ?」
質問の多い生徒は、まだそこにいた。
■アリソン > この世界の「門」という現象でやってきた者としては
この体を得るのに相当な代償等を払ってきた。持つ技術にしろ何にしろ。
世の中に出回ればそれこそ大事件大惨事混沌と化すのは間違いない。
「書いたら…お判りでしょう。」
書くのも書かないのもあなた次第です、とぽつり。
そして見本としてと教材諸々のこれらを即刻処分するのもよし。
身にいらぬ恐怖を頂きたくなければ即これらの爆弾を処分する事も勧めたいが言わない。
あくまでも彼が選ぶのだ 少女はあくまでもきっかけを齎したに過ぎない。
「どこの世界の名称 空間座標、時、その人物の身長体重性別諸々細かく指定がいります。」
その質問に答える混沌な教師メイドがそこにいる。
■レナード > 「……今の話聞いて、やる阿呆はいねーし。」
はふう、と一つため息をついた。
書かなきゃ何でもないただの紋でも、完成させれば話は別。
…持っている分には問題ないかとは思うものの。
「…あー……やっぱり、そこまでいるんだ……」
ちょっと期待していたのだ。
特定の情報を表すものがあれば、術式を略することはできないか…という裏技の有無について。
ただ、その答えは考えていたその悉くを打ち砕いてくれるもので、一気に全身の力が抜けてしまった。
「………あー、力が抜けたし……」
いつの間にか隣にいて、そこから直接授業を受けていた…なんてシチュエーションも、
誰かのためとあれば意識に入ってすらこなかったのに。
「…………っ…。」
張りつめていた意識の糸が切れて、周りが見えるようになってしまったからだろう。
隣の彼女が、教師ではなく、女性であることを再認識してしまったものだから。
思わず別の意味で、緊張してしまった。
■アリソン > 「そうですか ではこちらは差し上げます。
どうぞその後は処分するなり…燃やすのが一番ですね。」
未完成の術式紋。完成させればナニが出て来たかは未知数。
飾るなり持っている分にはただの模様の綺麗な家紋みたいなもの。
「はい、必要です。特定しないと同名の違う人が来ます」
呼び出すものとは同名の違う物が来る恐れすらある。
特定の情報が人物に限って細かいのはそのためであった。
裏技自体はあるけど 今の基礎的な説明では端折った。あれは危険すぎるから。
力の抜けた彼を視た、シチュとしては男女のかりそめの教師と生徒という
いかがわしいというか甘酸っぱい雰囲気でしたのに。
「どうかなさいましたか…?」
元のメイド染みた言動と振る舞いに戻った少女。
そっと差し出した時に体か肩か手が彼の体にぴとっと付いたかもしれない。
少女は緊張している風がないので 彼がなぜ挙動不審になったのかを分かっていないのでぐいぐいと。
■レナード > 「ひぅ…っ……」
彼女がこちらに迫ってくる。
動くたびに甘い匂いなんかして。
ぴと、と、その柔らかみのある肢体が触れると、ぞくりと身体を震わせてしまう。
…他人のぬくもりなんて、この場あの場所で感じたあの時以来だ。
それに、豊満と一言で表すに惜しい淑女が迫ってくるとあれば、この年齢帯の健全な男子なら、
色々思いが至るところがあるだろう。
「……な、んでも……ないし…っ……」
そんなに寄られたら、なにか、やわらかいものが当たるかも。
なんて口にはとても出せない。それに、近寄るなというのも、ニュアンスが違うだろう。
だから、自分は平静を装うしかない。
途切れ途切れの口調で、不自然な言葉のつなぎになってしまうものの、そう告げるのが精いっぱいだ。
■アリソン > 彼が何にそんなにぞくぞくしているのかが分からない。
甘い匂いは香水という代物というか服に移した香木から移したもの。
人工的に作り出した香水とは違い自然で出来上がった代物は匂いとしては不自然ではない。
人間そっくりに生体パーツを組み合わせたこの少女の中身は
かなり精密なもので見抜くには…透視しかない。
着やせする性質の肉体を持ち肌面積の少ない服装で尚且つ心配心で近づいて手なりが重なり触れたり。
健全な男子ならばただの毒、彼の腕とかに豊満な何かが押し当てられてもそれは演技でも何でもない。
「心配です 私目が何か粗相したのでありましたら それこそお詫びを致さねばなりません」
途切れ途切れの彼の言葉に耳を澄ませる感じでずいずいっと近寄って迫る少女。
■レナード > 「ちょっ、ま……やめ、んん……っ…!」
甘い匂い。それが例え人工物であっても、人の匂いと区別がつくほど、今は冷静な精神状態ではない。
例え人間そっくりであっても、何も知らない彼は隣の彼女を人間として見ている以上、おいそれと透視は使えない…
こんな状況なら、それも猶更。
彼女はぐいぐいこちらに迫ってくる。
その度、触れ合う場所、面積、部位、…柔らかみを感じる部分が広がっていく。
心臓が早鐘を打っている。ここまで異性の感触に中てられては仕方のないことなのだけれども。
「お、お詫びって……こ、これはっ、男として…その、防げないっていうか……っ……」
耳元に彼女の声がかかる。それだけでも、ぞくりと身体を震わせる。
頬が真っ赤だ、だが隠せる余地は一つもない。
困った。とてもとても困った。
だが、それを口にすれば、彼女は確実に容赦なく踏み込んでくる…そんな危うさを感じる。
■アリソン > 「…お待ちする事は適いません。体を自由になさって下さい。
緊張を解さなければなりません、この身に委ねて頂ければ…」
彼の斜め後ろ側から包囲する様に近づくというか包囲してくるメイド。
耳元に甘ったるい雰囲気を伴って言葉を悩まし気に囁く様は先ほどの真面目さよりも違う物が漂う。
人間のように振舞うというか人間じゃないもっと違う何かの様な雰囲気を以て状況を徐々に
図書館という真面目な空間が背徳感をそそる様に―
「緊張を解して差し上げたいと思いますわ、
男として……男として?畏まりました。そんな事もございましょう?」
何かを勘違いしたような気がする。彼の耳元に言葉を囁く少女。
頬の染まりは残念ながら分からない。言葉の途切れ途切れから過緊張で過呼吸になっていると勘違いしたらしい。
早急に落ち着かせなければ、とより密着度を増そうと軋むソファ。
彼がとある願いを口にしたら最後 恐らく確実に蹂躙しそうな勢いがすぐそこに。
■レナード > 「…っ……!!」
駄目だ、彼女は最初からその気だった。
耳元で囁くその声色が、元より色香の灯ったそれであると気づくのが遅すぎた。
密着度の更に増す、そのソファの上で、
いつの間にか彼女の範囲に囚われてることを漸く悟るに至ったのだ。
「…ぅ、あ……ぁう……っ……」
狼狽える。例え人間そっくりであっても、人間と何ら変わらないその感触に、言葉に、雰囲気に。
更に、"男としての緊張をほぐす"その意味を、彼女は十二分に知ってさえいるように思えて。
後一言、二言口にすれば、本当に叶ってしまいそうなくらいに、その願いは近いところにあった。
耳まで赤く染まった顔に、おめめはぐるぐる…もう、脳みそがフットーしそうだった。
「………~~~っ…!!」
その瞬間、しゅるり、とまるで蛇が腕の中から抜けるように、その身体は机の下へもぐりこむ。
これ以上ここに居たら自分がどうにかなってしまうと、脊椎反射的に行ったのは緊急脱出だった。
そのまま滑るようにして、図書館の中を走り抜けていった。
たまりにたまったリビドーを、その全身で現すように。
結局、彼女に名前は教えてないし、彼女の名前を知ることはできなかった。
ファーストアプローチにしてはかなり強烈だったことだけが、よくよく脳裏に残ったのだった。
多分、後で図書委員に怒られたけど。それは別のお話…―――
■アリソン > 逃げられた感じがする。
逃した獲物は大きかった。俊敏に無駄なく撤退をしていた彼を
気配のみで文字通りお見送りする形で呆然と見送ったが、
呼吸を整え真面目に切りかえると何事もなかったかのようにいそいそと
図書館で元々借りようとしていた書物たちを脇に抱え 手続きを済ませると
自然に ごく自然に少女は出入り口からその場を辞していく。
彼との会話から彼の気配や人となりは名称不明のまま記録に残したという―。
ご案内:「図書館 閲覧室」からアリソンさんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」からレナードさんが去りました。