2020/07/19 のログ
■白亜 愛 > 「ぅ゛にゃ……」
変な呻き声で返答する。
少年の上で、密着する形で。
「ぅぇ……ぇぇと、だぃじょぅぶです……。
クッションがあったので」
まだ混乱しているのか、口だけで動かない。
■レナード > 「……~~~っ…!!」
そして、気づいた。
自分の上でぴったりと、その身体がくっついていることに。
眼を開けなくたって分かってしまう。
そうすれば、どうしようもなく思い出されるあの姿。
…駄目だ駄目だと思えば思う程、イメージというものは濃くなるもので。
「そ…っ、れなら……よかったし……っ…」
ちょっと厳しいけど…今のうちに何とか、腰を引こうとした。
そんな心理状況故か、彼女を退かせるという選択肢が、まだ頭に浮かんでないらしい。
■白亜 愛 > 「その、お騒がせしました……へへ」
申し訳なくて苦笑い。
向こうが頭を打ってなくてよかった。
「え゛ぇと……んっ、何の話をしてたっげ……?」
そちらが動けば、それに合わせてこちらも身じろぎ。
弾力がベッドマットにちょっと似ている。
■レナード > 「……き、気に、すんなし…っ……」
こちらが身じろぎしたら、合わせるようにして彼女が身体を揺らしてくるものだから。
その何とも言えない柔らかさに…異性の香りだってする気さえして、思考が、ぼんやりしてくる。
やがて、彼女から離れないうちはいいかなとさえ、思い始めてきた。
「……あ、ん、んっと……
………ここに、住んでるって…はなし……?」
目を瞑ったまま、更に身じろぎしてみたりしながら。
そうして尋ねられると、自分の知っている彼女の情報を、そのまま口にして。
■白亜 愛 > 「ぉぁ、そうだった。へへへ。
私はここでレイちゃんと一緒に住んでてぇ、っん」
相手が動く度にいいポジションがずれていくので、それに合わせて動き。
「レイちゃん、かわいいよね」
同じ話題が始まった。
■レナード > 「……あぁ、そういえば…そうだったし……っ…」
ぽーっと呆けた表情のまま、彼女の話を聞いてやっと思い出す。
身じろぎすれば、擦れて、でも彼女の方も動いたりして。
そうすればはふ、はふと、身体は何かを期待するような高ぶりを、その荒い呼吸で現し始めて。
「……そうだし。レイは、確かにかわいい……
んっ……でも、おめーも、十分………」
ここでようやく瞳を開く。
彼女を見つめているのは、蛇の様な、黄色い眼だった。
■白亜 愛 > 「んゃ、私よりもレイちゃんだってぇ。
……ぅ?」
いつの間にか様子がおかしくなってることに気づき。
髪の隙間の紺の目と、黄色の目と視線がぶつかる。
そしてその荒い呼吸は。
「……」
何かを問うような目で、相手の顔を見る。
■レナード > 「……な、なん…だし……?」
はふ、はふ、荒い呼吸とほんのり朱に染まった頬のまま、
そして何より黄色い蛇の眼で、彼女を見上げる。
どうやら、今は透視をしていないらしい。
無意識なままに、そんな眼をしているようだ。
そのことに、本人すら気づいていない。
■白亜 愛 > 「んぇっと、さっきと目の色違うなぁとか、顔真っ赤だなぁとか」
私をいじめるのかな、とか。
突然浮かんできた言葉なので口にするのを阻止した。
■レナード > 「えっ………うそ、……っ…
そんなの、使ってないんだけどな……」
思わず自分の目元を、ぺたぺたと触った。
…見えるのは、いつもと同じ視界。目の前にいる彼女の顔。
そんあ合間も、二人の距離はぴったりとくっついているものだから。
「……顔真っ赤なのは…し、しかたねー…ことだし……」
何となく気恥ずかしい気がしたものだから、ついそっぽを向く様に。
■白亜 愛 > 「使ってない?目の異能なの?」
へぇーと流す。
遠距離を見渡せるのかな?それともビームが出るのだろうか。
そんな彼が顔を逸らし。
「仕方ない?顔真っ赤になるのが……っ!!!!?
あああああ!?いいい今どどどくどきます、どくからぁ!!!!」
自分の状態をようやく理解。
慌てて上半身を起こし、馬乗りの状態になる。
■レナード > 「…ま、まあ……そんなとこ、だし……」
言えるわけがない。
まさか会う直前で、その姿を透視してしまったなんて。
もごもご口の中で咀嚼できない言葉を空回りさせていると…
「ちょ、ま!まって今はそんな下半身に押し付けtyあわわああああああ!!!!」
言う間に上半身を起こして、馬乗りになられる。
そうすれば、必然と互いの腰と腰同士が、ぴったりと。
彼が慌てる理由は言うまでもない。
■白亜 愛 > 「えっあっほわああああああ!!?
いじめないでいじめないでいじめないでぇぇええ!!?」
慌てる彼と起き上がっあとの感触ですぐさま答えに辿り着き。
パニックでもたついて腰が浮かず、立ち上がった時には羞恥と困惑で息切れをしていた。
「……その、ぇぇえと、お騒がせしましたその2、ということで」
耳を赤くしながら、両手で顔を覆う。
■レナード > 「……~~~っ……」
なんて態勢で固まっちゃってるんだろう、自分たち。
だけど彼女が動かない限りは、こちらからも退けようがない。
「べ……べつに、いーけど……その…っ……
……いじめたり、しねーし……っ……」
彼女の反応に、そんな言葉がたくさん聞こえた気がしたから。
体躯は動かせないなりに、顔だけそっぽを向く様にして、彼女に言葉を投げかけた。
■白亜 愛 > 「ぅぇ゛っと、あ゛あ゛あ゛あ゛……死ぬ」
片足をどけて、近くの本棚にもたれかかる。
一生分の羞恥心を使い果たしたような。
忘れたい。
「……白亜 愛です」
顔を合わせられない状況でボソリと名前を呟く。
■レナード > 「……っ……」
彼女から片足が退いた。
多少、状況としてはよくなったのかもしれないけれど。
それでもこちらからは、まだ動ける状況にない。
「レナード………」
名前のようなものを聞いた気がしたから。
今度はこちらから、自分の名前を呟いた。
■白亜 愛 > もたれた本棚を利用して彼……レナードから離れる。
「……今日のことは忘れましょう。そうしましょう。
覚えていてもいいけども口にしないで欲しい」
そろり、そろりと離れていく。
全力ダッシュで逃げたいくらい無かったことにして欲しい。
■レナード > 「……く…口になんてで、できるわけ、ねーじゃん…っ……」
こちらものそりと立ち上がる。
彼女に見せるわけにもいかないと、背中を向けるようにして。
背後で本棚伝いに離れているのを、足音から察知はしていた。
「そ…そっちこそ、こんなの…レイに話したりなんて、すんなし……?」
■白亜 愛 > 「無理無理の無理。こんなん言えない」
ぶんぶんと顔を振る。
どんな顔されるかわからない。
「……あ゛。レナードさんてあのレナードさん」
レイちゃんが「みんながいるから幸せ」って言ってる中にいた人。
「お゛ぉ……もう゛……」
気まずいってレベルじゃない。
■レナード > 「……あ゙ぁ、よかった……」
流石にそんなことはされない…と期待してはいたが、
彼女からそれが明言されると、分かりやすいくらいに安堵した。
…そんな時に、自分の名前を言及されたものだから。
「……あのレナードってどのレナードだし?
レイが言ってたんなら……僕のことなんだろうけど。」
思わず気になったものだから、ついそちらに振り向いたりして。
■白亜 愛 > 「七夕前……?一回話題に上がりまして。
その時は誰?ってなってたけど」
そっとレナードの方を見て。
「レイちゃんを泣かしたら許さないですよ。おまけで私も泣きますから」
■レナード > 「……ん?」
泣かしたら。
なんでそんなひどい言葉が出てくるのか。よくわからなかった。
「泣かすつもりなんてねーし。何言ってんだし。
ていうかおめーも泣かすつもりねーんだけど?」
さも当然のように、そう言い返した。
■白亜 愛 > 「なら良し。
……なんで私も入ってるんだ?いいけど」
さらっと言われて疑問が浮かぶが、受け取っておく。
「それじゃ、私はそろそろ。へへ」
軽く頭を下げ、居住スペースに向かおうと。
■レナード > 「なんで、はこっちのセリフだし。
…おめーが泣くっていうなら、僕はそんなおめーも泣かせたくないわけ。」
その言葉の意味を、この少年は考えていなかった。
でもそれだけに純粋な、彼の考え方が伝わるだろうか。
「ん。
…やっぱそこに住んでるわけ。」
一度行ったことあるその場所を目指す彼女を見て、ぽそり。
ただそれ以上は何もせず、見送るだけにして。
「それじゃ、また。」
■白亜 愛 > 「あぁ、なるほどそういう」
ならレイちゃんは安泰だと笑う。
「はい。また」
ぱたぱたと走って去っていった。
ご案内:「図書館 閲覧室」から白亜 愛さんが去りました。
■レナード > ひらひらと掌を振って、彼女を見送った後。
首を左右に倒して、ぐーっと伸びをした。
「…………あのとき以外、僕は透視能力を使ってなかったのに。」
彼女は自分の眼が変わっていることを、確かに指摘していた。
「そうなるきっかけは何なわけ……?
……感情の、昂り………?」
自分の身に起こったことを整理するように独り言ちながら、図書館から出て行った。
ご案内:「図書館 閲覧室」からレナードさんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」に阿須賀 冬織さんが現れました。
■阿須賀 冬織 > ふわぁーあ、とあくびがこぼれる。
あっという間に7月も中旬。期末試験も残すところあとわずかだ。
「んーと、この問題は……んー……二次不等式の解で……えーっと……。」
ここは昼過ぎの図書室。
テスト期間とはいえもう終わった人も多いのか、時間も相まってかあまり人の姿は見えない。
静かな環境、心地よい温度、今までのテストでの疲労、さっきたべた昼食……昼寝条件数え役満である。
眠気を覚ますようにぶつぶつと呟いてみるがあまり効果は見られない。
■阿須賀 冬織 > 「えーっと、だから……判別式……D、が……0より…………小さ……い……時……に…………」
難しい問題でもなんでもないのだが、眠気のせいで手を動かすよりも考える時間のほうが長くなる。
ノートを見れば睡魔との格闘で徐々に文字が崩れている様が見て取れるかもしれない。
「……だめだ……寝よう。」
このままでは勉強は一切進まない。わずかに残った意識がそう判断して彼は机に突っ伏した。
少しすればスースーといった寝息が聞こえるかもしれない。
ご案内:「図書館 閲覧室」に白亜 愛さんが現れました。
■白亜 愛 > 「暑い日のアイスは格別……外に出たなぃ……っぁ」
棒アイスを食べながら夕飯の買い出しへ向かおうとして、進行ルートに誰かの気配。
見知らぬ人と関わりたくなくて、ルートを変えようとするが、知ってる人っぽい。
何をやってるのかな、と様子を見に近くへ。
■阿須賀 冬織 > 昼寝のため、それほど深い眠りではない。
が、常に背後を気にして生きているバトル漫画の住民でもあるまいし、
図書館で普通に発生するような物音程度で目が覚めることはあまりないだろう。
スヤスヤと――時々寝言があるかもしれないが、参考書を枕に寝ている姿が見えるかもしれない。
■白亜 愛 > 開かれているノートや参考書の山を見て納得。
「ほうほう……?」
習ったわけではないが、なんとなくわかるような気がする問題の数々。
それに対して段々と崩れている回答。
これは寝落ちかな?
起こした方がいいのか悩んでいると、食べかけのアイスが寝ている彼の手にぽたり。
■阿須賀 冬織 > 突如手に感じた感覚にがばっと起き上がる。
「んあ!?…………?んー……なんだ、これ。……甘い。……アイスか。…………なんで?」
手の甲を見ればなんだか白い物体が。
寝起きで頭が回らず、ハンカチを取り出すという選択肢にたどり着かなかった。
ペロリと手についたものをなめてみる。甘い。どうやらアイスのようだ。
ここにきてようやくなぜというところに考えがいき、首を後ろに向ける。
■白亜 愛 > 「あ、こぼしちった」
慌てて垂れそうになってるアイスを舐める。
舐めてる最中に視界の脇で誰かが起きたのがわかり。
「……ぁむ。おはようです阿須賀さん。
お勉強大変そうですね……ぺろ」
彼を起こした元凶であろうアイスを舐めながら挨拶。
■阿須賀 冬織 > 「ん……、白亜か。んんーっ……っと、おはよぉ。」
振り向くと見知った顔が見えた。体を伸ばして挨拶を返す。大分目が覚めたが眠気は少し残っている。
「あー、さっき落ちてきたのそれか。……て、なんでこんなとこでアイス食ってんだよ。」
図書館の中でなぜかアイスを食べる彼女に聞いてみる。
■白亜 愛 > 「食べながら外へ行こうとしたのですが。
知り合いを見つけてつい。へへ」
行動が子犬か子猫である。
「確かにこっちまで来てアイスはあれですね。
全部食べるとしましょう……んっ」
溶けている部分をてちてちと舐めていたが、上の方を咥え、口をもごもご。
■阿須賀 冬織 > 「ん、ああ成程って、図書館ってなんか反対側あったっけ?」
立ち入り禁止のところなんかはあったと思うが……
彼女が図書館に住んでいるなんてことを知らないため、
何を言っているのかいまいち理解しきれない。
「っておい、そんな急いで食わなくても……。」
……食べ方がちょっとえっちい気がしたけど気のせいだろうか……?
……関係ないけど寝汗とかあるし寝起きってなんか暑いよな。
■白亜 愛 > 「あぁ゛、えぇと、まぁそんな感じです。はい。
……?どうした?」
本人は食べ方に気づいていない。
時折音を立てて口に含んだものを溶かし、棒に残っている部分を舐めにいく。
「?……ぷは。おーい?」
じっと見ているのを気にしつつ、全部食べ切った。
■阿須賀 冬織 > 一度そうみると思考が引っ張られ……一人で悶々とする。
相手の言葉は半分くらいしか耳に入ってないのではないだろうか。
相手が読心系の異能なり魔術なりを使えたら死んでいただろう。
いやまあ、そうでなくてもどうしたのか聞かれるくらいには態度に出ていたわけだが。
「へっ?んあっ、ああ。あ、えと……なんでもない……です。」
大き目の声で呼ばれてようやく意識が戻る。
反応はぐだぐだで、最後はなぜか敬語になっている。
「えーっと……、お前の来た方って立ち入り禁止みたいなのしかなかった気がするんだけど。」
露骨に話題をずらそうとしてみる。
……アイスを館内で食べる図書委員は流石にいないだろう。
■白亜 愛 > 「そっかぁ?ほん、そっかぁ」
深く聞くのもあれなので流すことにした。
「ん゛っと、あっちの方には、普通の寮で暮らすには大変な人がいて。
わ私は学年とか合わなくて気まずいからこっちにいるんだぁ゛」
あんまり言わないでね?と手を合わせて上目遣い。
■阿須賀 冬織 > (ふう、流してくれた……)
深く追及されなかったことに安堵のため息をつく。
「へえ、そんなのがあったのか。まあこの学園って色々事情あるやついるしなあ……。
……おっおう、そんな頼まなくても、別に広めたりしねーよ。」
どうにも出会うたびにどこか暗い雰囲気があると思っていたが、あんまり人間関係が上手くいっていないらしい。
伝えてくれたってことはそれなりに信用されているのだろうか。嬉しい。
(っ!……広めるつもりなんかは元々ないが、その上目遣いは卑怯だろ……。)
今日一日で何回も顔を赤らめている気がする。
「あー、もしかしてだけど。この前いってたレイとかいうのもそこのやつだったりすんのか?」
内心のドキドキは努めて抑えようとしつつ、そういえばこの前から気になっていたことを聞いてみる。
■白亜 愛 > 「レイちゃん?そうだよぉ。とってもかわいくて優しいんだぁ。
私の一番仲良し。へへへ」
にへら、と笑う。
「今日もレイちゃんのために夜ご飯をねぇ……おっと。買い物行くんだった。
ゴミ、ゴミ箱……あ。阿須賀さん、はい」
今になって主目的を思い出す。
食べ終わってでてしまったゴミを捨てようとして、阿須賀に渡す。
『当たり』と書いてあった。
■阿須賀 冬織 > 「そっか、仲いいやつがいるならよかった。」
あまりにも幸せそうな顔を見てこちらも頬が緩む。
「んあ、おい当たってんじゃねーかこれ。流石にんなもん貰えねーよ。」
なんだか当然のようにこちらにアイスの棒を渡されたので受け取ってしまったが、よく見れば当たりである。
流石に貰うのは気が引けるので返そうとする。……これ気づいててやってるのかどっちなのだろうか。
■白亜 愛 > 「どうせ私にはゴミですし。
アイスと交換するなり、とっておくなり、お好きにお使いください。へへへ。
外あっづいですし勉強の気分転換になりますよ」
自分のアイスは居住スペースにまだあるので、とさらに押し返す。
ゴミを捨てに戻るのが面倒なだけともいう。
「そんなわけで、お買い物に行ってきますね」
また返されないように理由をつけて距離とり、その場から離れようと。
■阿須賀 冬織 > 「ん、じゃあありがたく受け取っとくよっと。
……なあ、気分転換もかねてその買い物ついてっていいか?
荷物持ちくらいならすんぞ。ちょうど眠気覚ましに外出たかったし、交換するものも出来たしさ。」
そこまで異様に押されると断るのも変なので受け取っておく。
この棒をどうしたものか……。今交換しに行かないといつまでも行かなさそうだなと思い、提案してみる。
■白亜 愛 > 「そういうことであれば、お付き合いいただきましょう。
メニューは決まってるから、すぐ終わっちゃいますけどね。へへ」
本棚の隅に放っていた買い物鞄を肩にかけ、外出の準備は整っている。
彼の準備ができ次第、一緒に外に出るだろう。
■阿須賀 冬織 > 「おう、ちょっとだけ準備するから待ってくれ。なんなら重くて買てなかったものも買ってもいいぞ。」
なんていいなが、そそくさと開きっぱなしのノートや参考書を閉じ、筆記具をしまって鞄から貴重品を取り出す。
彼女の準備は終わっているようだし、終わったと声をかけてそのまま出かけるだろう。
ご案内:「図書館 閲覧室」から白亜 愛さんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」から阿須賀 冬織さんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」に天月九郎さんが現れました。
■天月九郎 > 昨日は思い切り現実逃避をしてみたがやはり勉強は大事。
今日一日を頑張って明日の結果に繋げればそれは夏休みの平穏となるのだ。
たった一日の補習と言うなかれ、夏休みと言う真っ白なキャンバスに落とされた補習という名のインクの染みは完全を不完全へと貶めるのだ。
そう思うのなら前から勉強やっておけよ、というのはナンセンスだ。
普段からそれが出来る奴はそもそも補習の心配なんてしないのだから。
そんなわけで苦手な日本史の勉強をしようとそれらの本が並ぶコーナーに足を運んだわけだが。
「……いいのか、これは…」
かれこれ5分は本棚の前をうろうろとしていた。
広い図書館は閑散としていて近くに人影は見当たらない、だがそれでもきょろきょろと視線が周囲を意識し、そして本棚に戻る。
そこには一冊の本があった。
『江戸の風俗』
と。
■天月九郎 > いいのだろうか?いや本当にいいのだろうか?
だって風俗だぜ?
つまり、その、ほらエッチなお店とかそういうのが載っているのだろう。
そういう知識が無いからわからないけれど、あれだろう太夫とかいう綺麗な着物来た人とエンジョイする的な。
それとももっとアンダーグラウンドな!?
「ごくり……」
どうする、これはテスト勉強に必要なんじゃないか?
もしかしたら先生はそういうちょっとエロスな問題とかぶつけてくるかもしれない。
現国もやたらメロス押してきたし。
これは、そう、必要な本のでは?
周囲をきょろきょろと見回してからそっと背表紙に指が伸びる。
ぶるっぶる震えていたが。
■天月九郎 > そろり、指が古びた背表紙を撫で本棚から音も無く引き抜かれていく。
どこか古びた、それでいて傷みの無い外見からはらどこか風格すら感じられる。
表紙はごく普通の江戸の街並みを行きかう人々を描いた浮世絵?というやつだろうか。
なるほどカモフラージュも完璧というやつだ。
席に持ち帰るのはリスクが高い、まずは様子見と表紙をめくる。
そこには銭湯の二階で将棋を楽しむ人たち、大道芸を楽しむ人たち、相撲、歌舞伎などさまざまな江戸の生活が色鮮やかに紹介されていた
ふうぞく
【風俗】
1. 衣・食・住や行事など、その社会集団の生活の上のさまざまな仕方やしきたり。その有様。
「クッソが……」
少年は膝から崩れ落ちた。
あまりにも強い希望は容易に絶望へと転化されてしまうものだ。
■天月九郎 > また一つ勉強になりましたね?
そんな小賢しい声が脳内に響く。
あまりのショックに一瞬胸の奥、魂に埋め込まれたアルカナの力がハングドマン行っとく?と疼きを訴える。
やめろこんな事で新しい力に覚醒なんてしたくねえ……。
「ああ……なんか、色んな雑念発破処理された感じだわ…」
全てを吹き飛ばされた後に残るのは真っ白な地平。
死んだ魚の目となった今の少年に感情のムラという要素は存在しない。
ただひたすら冷めた感情で、希望を捨てたがゆえに揺らがない心で本棚から何冊か抜き取っていく。
そうして勉強室で黙々と、周囲からちょっと大丈夫?という視線を向けられるほど勉強に打ち込む少年の姿があったという。
ご案内:「図書館 閲覧室」から天月九郎さんが去りました。