2020/08/05 のログ
御白 夕花 >  
「はい、これが"ほし"でこっちが"せいざ"です」

児童向けなので小さく読み仮名も振ってある。
それと漢字を交互に指差しながら頷くと、笑ってくれた。
ナナちゃんも星という字がどう書くのかが分かって嬉しいのかもしれない。

「それじゃあ早速、星についてお勉強していきましょう!」

図鑑をナナちゃんに手渡して、意気揚々とテーブルへ向かう。
───けれど、椅子に座ったところで問題が発覚した。

「このテーブル、ナナちゃんにはちょっと高いかも……」

そのまま座っても顔だけ覗かせるような形になって、本が読み辛いだろう。
外で読むという手もあるけれど、他に読みたい本ができたら戻ってこないといけないし……何より暑い。


悩む少女の膝上に、ちょうどいいスペースが空いている……

227番 > 「……」

よく見ると、"ほし"と"せい"が同じ字だ。
同じ字で読み方が違う……ひらがなにはなかった。
この難しい文字は、まだまだ難しいのだと実感する。

「てーぶる」

そもそも、学校に課程が用意されているとはいえ、
基本の設計は子供向けではないのだろう。
たまたま児童向けの図鑑がこのコーナーにあっただけで、
子供向けの、それこそ絵本等があるコーナーもあるのかもしれない。

まぁ、そんなことは227は知らないが。
困った様子の夕花をみて、少し考えて。

「えっと……おひざ、いい?」

一つ提案をする。
発想ができるということは……経験があるのだろう。
ぴったりくっついたらそれはそれで暑いかも知れないが……、227はあまり気にしない。

御白 夕花 >  
「はぇっ、おひざ……!?」

おひざってお膝で、つまりは膝ってことだよね?
言われてみれば確かに座れそうな気も……いいのかなぁ、そんなことして。
でも他に方法もないし、ナナちゃんから提案されたなら断るわけにもいかない。

「わ、私なんかのでよければ……どうぞ」

少し椅子を引いて、両手で支えながら膝の上にナナちゃんを乗せる。
幸い館内にはクーラーが効いているおかげで、暑苦しさは感じなかった。
ちょっと効きすぎなくらいだから、こども体温が心地良い。
っていうか軽い……うらやましい……

「ど、どうでしょう? 大丈夫そうですか?」

肩越しに顔を覗かせながら座り心地を訊いてみる。
見た感じ高さは問題なさそうだし、ページをめくるのだけナナちゃんに任せれば読んであげられそうだ。

227番 > 「……ありがと」

支えてもらって、ひょいっと座る。
それから背中を丸めて、体を少し横に傾けて、なるべく視界を遮らない様に。
ちなみに体重は20kg強しかないのでマジで軽い。

「……うん、大丈夫」

しかし、この姿勢。相手の顔が見えないのでちょっと不安になる。
テーブルが高いということは椅子も高めなので、
あんまり体を傾けると夕花ごと倒れる可能性もある。……不安だが、我慢するしかない。

御白 夕花 >  
「よかったぁ……いえいえ」

座り心地が微妙、とか言われたら泣いてしまうところだった。
背中を受け止めるクッションがないのは許してほしい。

「それじゃあ、読んでいきましょう。
 私が解説を入れていくので、自分の読みたいように本をめくってください」

後ろからページをめくるのは難しくても、指差すくらいはできる。
両側から腕を回して、ナナちゃんが落ちないようにするのも兼ねて。
絶叫マシンの安全バーになった気分だ。乗ったことないけれど。

227番 > 「……だいさんかく」

とりあえず、持っている知識の再確認だ。
誰かに教えてもらったわけではないが、何となくそうする方が良いと思った。
デネブ、アルタイル、ベガ。

「さがしかた、おしえて」

ページがいっぱい有る。
とある人に前にもらった本は厚みに似合わず恐ろしいほどのページ数があったが、
この本は見た目どおりのページ数のようだ。

索引などの知識もないので、1ページずつ探していくという発想になるのだが、
流石にページ数を考えると、違う探し方があるのではないか、と思った。

御白 夕花 >  
「あっ、探したい星があるんですね。
 それなら後ろの方に、逆引き……えっと、名前で探せるところがあるので、それを使いましょう」

本のいちばん後ろを開いてもらえば、そこには索引がある。
この本に収録されている星や星座の名前と、それが書かれたページを示す数字。
つまり、ここに並んでいる文字列は全て星や星座の名前だ。
ということを説明しつつ、例によって読み仮名付きの親切な索引を見ていけば……

・夏の大三角形(なつのだいさんかくけい) ───14

と書かれているのを発見できるだろう。
デネブ、アルタイル、ベガの名もその下に連なり、同じページに載っているようだ。

227番 > 「これだけ、知ってる。教えて、もらった」

さくいんと書かれた、小さな文字が書かれたページ。
何がどこに書いてあるのかがわかる、なるほど便利だ。
こんなに沢山星がある……いや、もっと空の星はありそうだ。

そうして見つけた項目を見れば。

「じゅうよん……えっと……」

14ページ目、ということか。
つまり……14回めくればいいのかな。(違います)

表紙をつかんで、めくって、「これで、1?」と尋ねる。

御白 夕花 >  
「なるほど……あっ。
 ひょっとして、あの時も大三角を探してたんですか?」

夏の、と付くくらいだから今の季節に見られる星座のはず。
あれだけ星が浮かんでいる中から見つけられるのかは疑問だけれど。
その間に表紙へ戻り、めくられる。表紙の次にあるのが1ページ目だ。

「はい。その裏が2ページ目で、隣が3ページ目になります」

隅っこに書かれたページ数を示す数字を指差して答える。
ここからは1枚めくるごとに2ページ進んでいくので、14回めくったら27ページまで行ってしまう。
まぁ、めくっている途中にお目当ての大三角が見えるだろうけれど。

227番 > 「うん」

満天の星空の中から、少女はほぼ迷いなく見つけている。
そういうものだと思っている。少なくとも、少女は。

「……!」

ノンブルを指さされれば、はっとして。
これがそのままページ数なのかと理解する。
そこまでわかれば早い。素早く目的のページまで向かっていく。

「あった」

嬉しそうな声色で指をさす。

御白 夕花 >  
ページ数という概念に気付いてからは、あっという間だった。
めくりすぎることもなく『夏の大三角形』のページに辿り着いたのを見て、思わず笑みがこぼれる。

「わぁ、ありました! ナナちゃんは飲み込みが早いですね……!」

ここからじゃ顔は見えないけれど、その声から喜びが伝わってきた。
きっと今の私もそうだろう。嬉しさが顔にも声にも出ている。
そのページには、夜空の星を赤い線で繋いだ三角形が大きく写し出されていて───
下段には三角形を構成する三つの星についての解説が載っている。

「これがデネブ、こっちがアルタイル、そしてベガ……」

ナナちゃんの口からも聞いた星の名前を、ひとつひとつ指差しながら文字として伝える。
それはそのまま、私にも知識として吸収されていく。

227番 > 「デネブから……」

デネブを指差す。
カタカナもようやく読めるようになってきた。
これもあの謎の本のおかげである……。

「これが、はくちょう座」

十字に指をなぞる。持っていた知識は、ここまでだ。
どうやらアルタイルはわし座の一部で、ベガはこと座の一部らしい。

「……わし?こと?って何?」

御白 夕花 >  
「はくちょう……?」

はくちょうって、あの白鳥?
こんな星を十字に結んだだけの図がどうやったら白鳥に見えるんだろう……
わし座、こと座も似たり寄ったり。漢字が無かったらモチーフが分からなかったかもしれない。

「え、えっと……鷲というのは白鳥と同じ鳥の仲間で、琴は楽器の一種ですね。
 糸が張っていて、指で弾くと音が鳴る、音楽を奏でるための道具です」

星座って、もっと星をたくさん使って細かく描かれているのかと思っていた。
実際はすごく抽象的で、言われても見えないようなものばかりだ。
これを考えた人の想像力が豊かだったんだなぁと考えさせられる。

……というか、星座って12種類だけじゃなかったんだ。
朝のニュースでやってる占いじゃ聞かない名前ばっかり。

227番 > 「はくちょう、らしい……」

正直227もよくわからない。
写真を見せてもらったものの、……よく分からなかった。

「わしは、鳥、ことは……がっき?」

やっぱりわからない。
……というか白鳥からして実物とはぜんぜん違う形なのだし、
あんまりイメージしなくても良いのかも知れない。
三角の近くにはいるか座やこぎつね座があるようだが……やはりイメージできない。

「うーん……わかんない……ほし、から、覚える」

御白 夕花 >  
「そうですね……こればっかりは図だけだとなんとも」

私も正直お手上げだ。星座って奥が深い。
モチーフについては置いておいて、それぞれを形成する星についての解説を読んでいく。
すると……ある項目に目が留まった。

「へぇ、星にまつわるお話なんかも載ってるんですね。
 織姫と彦星……あ、これなら知ってます!」

急に有名な名前が見えたのもあって、大きめに反応してしまった。
七夕伝説なんて言って、ナナちゃんに伝わるだろうか。

227番 > 「……よゆう、あったら、覚える、けど」

まぁ、慌てる必要は何処にもない。
早く知りたいという気持ちはあるけど。

「おりひめ、ひこぼし……なんだっけ……」

どこかで聞いた……ああ、短冊にお願い事を書いたっけ。
当時説明してもらったことは、あんまり覚えていない。
星座というものが有ることと、白く広がっているのが天の川であること、それらは全部星で出来ていること、ぐらいである。

御白 夕花 >  
「字がちゃんと読めるようになったら、自分で星座の本を持ち歩くのもいいかもしれませんね」

実際の星空を眺めながら星座を参照できたら、きっと覚えるのも早いと思う。
そのためには私が頑張って、一つでも多く言葉を教えてあげなくちゃ。

「ナナちゃんも聞いたことありますか?
 織姫、彦星という二人の男女が天の川によって分かたれて、7月7日にだけ会うことができるっていう伝説があるんです」

7月7日と言えばつい最近。耳にする機会があったのかもしれない。
私は『トゥルーバイツ』関連でバタバタしてたから、今年はなんにもしてないけれど。
大三角の、アルタイルとベガの間を走る星の帯を指でなぞる。

「ここにあるのが天の川で……アルタイルが彦星、ベガが織姫ってことらしいですね」

この二つを指していたことは私も初めて知った。
ナナちゃんに説明しているのは図鑑に書いてある事そのままだ。

227番 > 「ずかん、買って、もらおう、かな……」

おそらくそれが一番良いのだろう。
少女はまだ学生でないので、基本的に借りられない。

「きいたことは、あるかも……あんまり、覚えてない、けど」

ちなみに少女が短冊に書いたのは"じをおぼえる"である。

「……アルタイル、が、ひこぼし?」

星にも違う名前があるのか。ますます複雑だ。

御白 夕花 >  
「あはは……ややこしいですよね。
 例えるなら、ナナちゃんがニーナちゃんとかって呼ばれるようなものでしょうか」

星の愛称、のようなものという例え話。
呼ぶ人や場面によって名前が変わるということなんだと思う。

「図鑑が買えたら、今度は星を見ながら一緒に読むのもいいかもしれませんね。
 今の季節なら、まだ天の川も大三角も見られると思うので」

誘われた時はすっかり遠慮がちだったのに、自分からそんなことを言ってしまう。
それだけナナちゃんと過ごす時間を楽しいと感じているのかもしれない。
お友達……と言い表していいのかは、分からないけれど。
ナナちゃんも同じ気持ちだったらいいな、と心の隅で少しだけ思った。

227番 > 「……そっか」

確かに、人によって違う。説得力が有る。
そういうものなのだ、と納得した。

「うん、一緒に……」

同意の返事。
一人で見ているのでも十分楽しいが、人と話すのも悪くない。
相手がそれを望んでいるのは何となく読み取れたが、
しかしそれが自分とだから、とまでは思いつかない。
となると……これだろうか?

「ゆーかも、星、好きに、なった?」

ふと思いついたように聞いてみる。

御白 夕花 >  
最近、暇さえあれば空を見上げるようになった。
寝付けなくて散歩に出た夜は、決まって星空を眺めながら過ごすことにしている。
それも全部、ナナちゃんが星を見る楽しさを教えてくれたから。

「……はい。星、好きになりました。
 私もいっぱい勉強するので、もっともっと星について知っていきましょうね、ナナちゃんっ」

振り向かなくても笑顔が伝わるくらい、精一杯の明るさでそう伝えた。
これからも一緒に星を見たい。そんな気持ちを込めて───

227番 > 「よかった」

真っ白で空っぽなゆーかに、好きなものができた。
それが自分のことのように嬉しかった。

「うん、私も、頑張る……」

声の明るさに気付いたのかどうかは定かではないが、
応えるかのようにそっと手を夕花の手に添えた。

こうして、夏の星空のいくつかの名前を覚えて帰る。
自分のためと、星空が好きな人と時間を共有するときのために──。

ご案内:「常世大図書館 ロビー」から御白 夕花さんが去りました。
ご案内:「常世大図書館 ロビー」から227番さんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」にジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエさんが現れました。
ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「うーーーーーーーーーーーーーん」

唸りながら、ドサ、とまた机に本を運ぶ。
本の山に埋もれそうになりながら、小さな声で唸り声を上げ続ける。

「どうしたものかな……いや、うーん……」

首の捻りすぎて世界が横向きだ。うーん。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > とりあえず、持ってきた山のような本をぺらぺらと捲る。
そして、そのたびに溜息をもらす。

「まあ、こういった分野はどうしても秘伝とか口伝ばっかりになりがちなのはわかるが……」

これもだめ、これもだめ、と本を次々右から左へと受け流し、タワーを移動させる作業。
若干のげんなり感が隠せなくなってきている。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「これも、これも、これもだめか……全く、不可思議なものを怪異として定義することで『不明』から逃避するのはわかるが、そこで安心してその先の解明に行かないというのはどうなんだ。
――いや、これは寧ろ錬金術師の職業病なのかな?」

右にあったタワーが左へ移る。移る。それに比例して表情が曇る。曇る。

「専門家に直で当たるしかないのかね……あっ」

肘が左に積んだタワーに当たり、タワーが崩れる。

「わ、たたたた!?あぐ……」

当然タワーは崩れ、書籍流に呑まれた。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「ああ、くそ……自分の仕事じゃないとはいえ、整頓という概念を遠ざけすぎているのも問題か……?」

書籍流の中から顔を何とか出し、溜息。若干周囲の視線が痛い。是非もない。

「ううー……専門家と言っても、何処を当たればいい……?」

神社か?墓地か?と首を傾げつつ唸りつつ、落ちた本を拾う。結構な量である。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 山のように積み上げ直した本を、ううんと腕を組んで眺める。
素直に整理して元に戻すべきなのだが、そうすることを厭うように、そうすべきではないかのように、うーーーーんと唸り声をあげる。

「(流石に司書に頼むのもなー……しっかし、整理はなー……)」

まあ、厳密に整理と言えるかは悩ましいが。
チラチラと題名を見直しつつ行き詰まりに溜息。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「――今回は許してくれよ」

そう言って、諦めて本を片付ける。
そういえば、今はカルヴァーレではなく常世学園にいるため、そういった機会は増えてしまうのだな、と思い至り、さらに溜息をつく。

『―――――――』

何か聞こえた気がした。首を振って、それを振り払った。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 渋々と言った風情で山ほどあった書籍を何往復もして本棚に戻す。
そして、さしたる成果を得られなかったことに盛大な溜息を吐いて、周囲の視線を集めてしまいつつ。

「困ったな。この図書館でダメなのか」

そんな愚痴を零す。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「あ、そういえば」

ぽん、と手を打つ。
禁書庫、というものがあったはずだ。
生徒は許可が必要だったはずだが、教師はどうだったか。

「今度、入れそうなら入ってみるかな」

うん、と一つ頷いてその場を後にした。











帰るとき、司書さんに怒られた。是非もないね。

ご案内:「図書館 閲覧室」からジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエさんが去りました。