2021/03/03 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」にレイさんが現れました。
レイ > 「...もう...こんな時間...」

夕方と言うには遅く、人影はなく薄暗い図書館。
図書館の住民かつ図書委員である少女が短く呟き、開いていた本を閉じる。
ここ最近は特に代わり映えのない日々だ。愛ちゃんはなんだか楽しそうだったりするけど、私の方は何も変わらない日々を送っている。

無論、本当に何もないと言うわけではないが、これといって何かに巻き込まれたり自身の境遇に変化があったと言うこともない...
強いて言うのであれば、前よりも多少魔術が上達した...程度
師匠に教わったものから多少毛が生えた程度である。

閉じた本をカウンターに置き、椅子にゆっくりと深く腰掛け、大きく息を吐いた。

ご案内:「図書館 閲覧室」にレナードさんが現れました。
レナード > 「…………。」

やってきた。
蛇のようにするりと音もなく。
ただ、ドアの開閉のみが人気のない図書館に僅かな音を立てるのみ。
それでも、自分の知る彼女が居れば、きっと気づくことだろう。
そう思って、敢えて静かな出入りを心掛けていたもので。

休学扱いではなくなってしばらくたつが、それでも勉学に間が生まれたことには変わらない。
それを少しでも縮めるため、今日もこんな時間に教科書の一つ読みにこようと考えたワケで。

独り言ひとつ漏らさないのは、そんな声でも分かる人には届くから。
動機なんか胸にしまいつつ、どの辺の書架を巡ろうかと周囲を見回した。

レイ > 「......なんだか...聞き覚えが...?」

図書館のドアの開閉音、そしてその後から僅かに鼓膜を揺らす足音。
なんだか聞き覚えがあるような、それでいて懐かしいようなそんな感じ。
...なんなら待ちわびていた気すらする。

そんな音の主を見つけたいと、懐かしさの正体を思い出したいと
椅子から立ち上がり、入り口の方へと、音のする方へと足を進め出した。

レナード > 「ん。」

さて、どこから手を付けたもんか…と入口の辺りで逡巡していると
気を遣った相手が向こうからやってきたものだから、つい喉が鳴ってしまったりして。
いるかいないか気にする必要がなくなったともいえるが、こうなっては勉学なんてどうでもいい気がしてきた。

「なんだし。
 久しぶりじゃん。」

いつ振りなのだろう?そんなことは気にしない。
挨拶なんてそんなものだ。
他愛ないその言葉は、自分から向けることにする。
その別段変わらない姿に、少し安堵した。

レイ > 「ぁ...レナード...」

声が漏れた。
耳障りにならないよう考慮された声量、特徴的な語尾、そして懐かしい音の全ては...
そう、彼だ、レナードだ。

「レナード...久しぶり」

つい頬を緩ませ、嬉しそうに微笑んでしまう。
普段無表情な少女らしからぬ幸せそうな表情を一瞬だけ見せて。
少しだけ早歩きで彼に歩み寄って行って。

「レナード、最近どうしてたの?」

レナード > 「僕?
 訳あって、ちょっとここを離れてた。」

ま、今はこうして戻ってきてるんだけど。と、小さく付け加えて。
自分の情緒不安定が齎したことをむやみやたらに掘り起こしても、気のいい彼女が不安になるだけだ。
こういうときは、嘘にならない程度の簡潔さで話題を締めるに限る。
今は戻ってきてるし、問題ないじゃん。そんな雰囲気でさらりと言い切った。

「レイこそ、こんな時間まで図書委員のお仕事だったわけ?
 なんだしなんだし、相変わらず働き者だし。
 そんな様子じゃ、肩とか凝ったんじゃない?」

彼女が独りで何をしているか、なんて、大体想像がつく。
労わる気持ちを少しは見せながら、両手をわき、わき。
茶化すつもりもあったのだろうが、それは明らかに肩を揉むような仕草には見えない。

レイ > 「そっか、うん...おかえり」

実際はそうでもないのだが、そんなことは知らないし、純粋にここで再び会えたことが嬉しくて。
彼にどんな事情があったとしても、戻ってきたのだからそれでいいと、偶然にも少年と少女の思いは噛み合った。
だからただ、おかえりと、そう伝えて。

「別に...どうせ座ってるぐらいだから。そんなに大変じゃない
...でも、ちょっと...肩揉み...お願いしよう、かな?」

少女の委員会としての業務はほとんど居るだけである。
それ以外の仕事も当然あるが、ほとんどの時間を図書館で過ごす彼女にとって、そして他にも図書委員がいる以上、仕事量は大したことはない。
でも、少年の手つきをみて、つい、以前の、少年と自分の行為を、思い出してしまって...
少し頬を赤らめながらそう、答えて。

レナード > 「……ただいま。」

おかえり、と言われたから、ただいま、と返す。
ただそれだけのやり取りなのに、どこか肩の荷が下りた気がする。
言いたいことをやっと言えたような、そんな気分だった。
仄かな笑顔が自然と浮かぶ。笑うなんて、いつ振りだろうか?

「ん。それならしっかりほぐしてやらねーといけねーし?
 座りっぱなしってのもあんまり身体によくねーし。くふふん。」

同じ体勢で居続けるのは身体に悪いのだ。なんて、ありふれたことをそこはかとなく自信ありげに口にする。
とはいえ、彼女の体質を忘れたわけではないのだから、相応に手加減はするだろうものの。
さてはて、なんだかんだ彼女のマッサージを請け負うことになって…
彼女が頬を僅かに染めた辺りで、思い出した。

「…………。」

そういえば、前にも似たような流れでイロイロしたなあと。
これがデジャヴというやつか。ともあれ、一度流れ出しては止まれない。
もう人気はないこの空間ではあるが、それでも念には念を入れておきたくなって。

「じゃ、じゃあ……どこか人目につかない横になれそうなとこは……」

少し気まずそうにしながらも、ここで始めて人目については事だと暗に提案する。
なぜ横になれそうな場所と付け加えて言ったのか、そこまであまり深く考えは及んでいなかったことだろう。

レイ > 「そう、だよね
座りっぱなしは確かにあんまり体によくない」

実際は体を痛めないようにしっかりと作られたいい椅子に座ってるため、よっぽど長時間ひどい座り方をしない限りそう体が凝ることはない。
でもそんなことはどうでも良くて。
彼の"マッサージ"を受けることが楽しみで、唇の端が歪む。

「人目につかないところ...中の方、いく?」

と、以前も一度いろいろした場所、居住スペースの方を軽く指差して。

レナード > 「ん。」

指し示された先は、彼女の居住スペース。
確かにあそこならば、誰かが入ってくるというアクシデントもほぼないだろう。
ならば、異論はない。肯定する言葉の代わりに二度三度頷いた。

「……じゃあ、行く?
 ちゃんと身体、ほぐしてやるし。」

きっと、彼女も分かっているのだろう。
彼女自身、そもそも凝るくらいに身体を酷使してはいないこと、その上で自分のマッサージを受けると言ったのだ。
で、あれば、その言葉に隠された仄かな期待を汲み取るに、時間はそれほど要しない。
まるで二人の間でのみ分かる暗号でやり取りしているようで、どことなくそそられてしまう。

後は彼女について行き、そこに向かうだけだ。
…念には念を入れるように、辺りを見回し誰もいないことを確認しながら。