2019/06/21 のログ
ご案内:「禁書庫」にモルガーナさんが現れました。
モルガーナ >   
書庫は一種の異次元である。
著者の思考が、世界が反映される本という世界において
読者は名もなき観測者でありその世界の真理を垣間見る放浪者だ。

しかし……この場所を管理する者にとってその言葉は比喩ではない。
禁書庫ではどんなことも起こりうる。
封印を施さなければ周囲を作り替えてしまう様なモノがあふれる此処は
まさに何があっても可笑しくない場所であり、「空想しうるすべての出来事が体験しうる」場所でもある。
その為、生徒の多くがこの場所を噂するに留まり、足を運ぶことはない。
ある意味では最も身近で隣にある理外の世界であり、非日常の具現を押し込める場所でもあるとも言えるだろう。

そんな一室では今夜もまた、常ならざる光景があった。
部屋中に大小さまざまな本が浮かびあがり
風に吹かれているかのように頁が捲られている。
それに連動するように様々な魔術陣が浮かんでは消え、浮かんでは消え
その合間に天球儀に浮かぶ星のような不思議な光が時折浮かび瞬いては
灯一つ付いていない室内に淡い光を投げかけ立ち並ぶ本棚と
その中心に浮かぶ人影を照らしている。

その人物は眠っているかのように瞳を閉じたまま空に浮き
ゆらり、ゆらりと揺れる様はまるで深海に漂うようで……
癖の強い白髪が化石を思わせる白さのままに広がっていた。

モルガーナ >   
ふらふらと漂う人影がうっすらとその瞳を開く。
僅かに開かれたその瞳はぼんやりと赤く発光していた。
浮かび上がる様な光を湛えた瞳はゆっくりと目だけで周囲を見渡す。
その口元は僅かに弧を描き
気だるげながらも柔らかな笑みを浮かべている。

『――、――、―――』
「……、………。」

彼女はヒトのモノではないコトバで彼らと語らっていた。
基本押し込まれ、対話どころか開かれる事すらない彼らは暇でしょうがない。
意思を交わすことができる相手にはとかく饒舌。
元々誰かに伝えるために書かれた物ともなれば尚更だ。

『――、―――――、――』

これは途方もない停滞のうちでの細やかな息抜きであり、同時に一種の延命行為でもある。
意志ある奔流というものは水と同じ。
留まれば腐り、そして時には命すら押し流す激流ともなる。
特に一部の写し身ともなればそれ自身が強力な流れを持っているものも少なくはない。
適度に流し、廻らせてやらなければいつしか枷ごと歪み弾けてしまう。
……その行為を封印を解くと評する者がいる事は確かではあるが。

問題はその行為が時には自我さえ押し流し、書き換えるような情報量であるという事だ。
もし情報を視覚で捉える事が出来るものが居たならば
部屋内に流れる洪水のような情報量に眩暈がするような心持になるだろう。