2020/06/18 のログ
ご案内:「大時計塔」に幸道 千鳥さんが現れました。
幸道 千鳥 > 大時計塔―――、
危険のため生徒立入禁止のこの場所に、少女が一人で周囲を気にしながらながら忍び込む。

学園の生徒に模範的な格好として販売されている制服を着込んだ少女は、今年からこの学園に通う生徒一人で間違いない。

一学年、幸道 千鳥(ゆきみち ちどり)。
それが少女の名だ。
これと言って良くも悪くも目立った容姿ではない。

ただ、特徴的なのはその首の黒いチョーカーだ。
チョーカーには緑色の枝や葉をイメージした小さなガラス細工のような装飾が一つつけられている。

そんな彼女の表情は苦痛に歪められていた。

「……っ!う、るさい!」

地上から少し離れた大時計塔内部で千鳥は両手で頭を抑えるようにしてその場に膝をついた。
ここには大時計塔の内部に響く絡繰りの音があるのみで、少女が苦しむような雑音はないように思える。

幸道 千鳥 > けれど―――『■■■、■■■■■■■■■』。

聞こえている。
これは、ヒトではない。触れてはならない存在の声/思考だ。
しかし内容は何一つ理解できない。
少女だけには、聞こえている。

少女には持病と言っても差し支えのない厄介な異能がある。
学園に入学する際に提出してはいるが、医療や薬療といった現代の力ではそれを解消する事ができていない。
彼女は現在観測されている《異世界》とは異なる《外なる世界》からの干渉を受けていると予測されている。

幸道 千鳥 > 彼女の異能をみた研究者は、その異能を「魂の氾濫<アニマ・オーバーフロウ>」と仮称した。
制御不能ではあるが、制御できなくともたかが少女一人が廃人になるだけだ。
研究材料としては、そちらの方が便利だと考えていたくらいであったが、
彼女は誰も知らぬ間に異能を制御する『何か』を手にしていた。

「マテリアル……アライズっ!」

首元のチョーカーこそがその『何か』だ。
―――第七四八一四号不特定物質。

少女がその物体に名付けた名を今現在の仮称とする。

「『ミスティルテイン』……!」

幸道 千鳥 > 原理は解析不明。
材質は《災異》にて出現した物質の一つオリハルコンに似た性質を持つ事以外が全く特定できない未確認物質。
判明しているのは、その物質の『起動』に膨大な燃料が必要であること。
―――その燃料を少女は持っている。
―――異能によって受けている《外なる世界》の干渉を燃料にして。

ソレは起動命令を受諾し、チョーカーの装飾が輝き少女の意思に従い右腕に顕現する。
ソレは腕甲のカタチをもって少女の腕に現れる。

その瞬間に、自身を苛む『雑音』が消えたのを感じる。

新緑の葉ような白と緑の腕甲。
制服姿の少女の右手にあるには不似合い。
しかし、それが今少女の精神を守るためには必要なものだ。

幸道 千鳥 > しばらくすると、役目を終えたと言うかのように腕甲は緑色の光の粒子となって消える。

「……このままじゃ、ダメなのは分かってる」

どうにかしなければならない。
今は、危なくなったら『起動』して対処しているだけだ。
これはタイムリミットの先延ばしだと言うことは理解している。

「探さなきゃ……」

―――チカラの使い方を、使い方が上手いヒトを。

見つけなくてはならない上手く制御する方法を。

「こんなもの、なければよかったのに……」

呪詛を吐くように、そう呟くと
少女は立ち上がり、大時計塔から出ていった。

ご案内:「大時計塔」から幸道 千鳥さんが去りました。