2020/07/06 のログ
ご案内:「大時計塔」にソフィア=リベルタスさんが現れました。
ソフィア=リベルタス > 本来生徒は立ち入り禁止の区域、大時計堂。
ソフィアは生徒の立ち入りを注意したことはあれど、教師が入るこは別段禁じられていないので、
時々この場所に来る事がある。
別段大きな理由があるというわけではないが、眺めがよく、風が通るこの場所は不思議と落ち着くのだ。

「……んー……。 この前のスイーツ部の時は失敗したなぁ。
 まさか魔力切れで寝ちゃうなんてさぁ、変なこと起きてなければいいけど。
 正体の露見とか……いや、別に私にこれと言った正体なんてないんだけど。」

当然年寄りの独り言も多くなる。
先日、スイーツ部の顧問になった際の失敗を気にしていた。

ご案内:「大時計塔」にエインヘリヤルさんが現れました。
エインヘリヤル > 景色がいい。
それだけの理由でたまに来ることもある、そんな場所が時計塔だ。

ココから見下ろす島はそれだけで、独り占めできる。
特に夕暮れともなれば、他ではなかなか見られない景色が堪能できる。

そんな場所に先客。

「……おや」

しかも独り言だ。
ああ、コレは面白いかもしれない。

癒やすにしろ殺すにしろ囲うにしろ。

こんな場所での独白など、内容に関わらず、多くは心の棘に決まっている。

「これはこの間の……エインヘリヤルだ、改めてよろしく」

表面上は極めて礼儀正しくにこやかに。
金十字の瞳が嗤う

ソフィア=リベルタス > 「おや? ここは生徒は立ち入り禁止だぞー……ってあれ、見た顔だね。
 えーっと……あぁ! スイーツ店オープンの時の子かぁ!!」

少し思案顔で顎に手を当てながら記憶を掘り起こす、数秒もすれば思い出したように頷いて、エインヘリヤルのすぐ近くまで軽い足取りで近づいた。

「やぁ、私はソフィア=リベルタス。 この島で魔術学の教師をしているものだよ。
 きみはー……生徒……なのかな? あまり、見たことがないのだけれど。」

大体授業に通っている生徒は覚えているが、彼女のことはどうにも記憶に薄い。
年のせいで記憶でも鈍ったか?

「うちの神代くんがお世話になっているようで、これからもよろしく頼むよ。」

す、っと少しだけ頭を下げる、再び挙げて顔を見つめると、
にこっと少女のように微笑む。
教師とは思えない無邪気さだ。

エインヘリヤル > 「生徒といえば生徒でもあるし、そうでないといえばそうでもない。
 部外者なものでして、そういう微妙な立場にさせてもらってるわ。
 そのほうが、お互い都合がいいでしょう?

 とりあえず、学外組織からの協力、という立場を取らせてもらってるわ。
 籍はないけど権限はある……まあ、警備員みたいなものかしらね?」

特殊異能調査機構、特別顧問の名刺を出しながら再度会釈。

実際は公安と風紀の協力を得ているため、微妙どころか擬似的に警察権も所持していることになるのだが。
どちらかに偏ることもない代わりにどちらも牽制しあってくれる、良い関係だ。

どちらも別に、ウチなんかみたいな過激派には関わりたくもないだろうし。
なにかやらかしてその責任を相手に押し付ければいいくらいに思っていることだろう。

「そんなわけで、ストレスも溜まる立場だから気晴らしに来たのだけれども」

どうせ、そうなんでしょう、と言った感じの見透かした目で。

「……ソフィア先生も、なにか気晴らしなどに?」

ソフィア=リベルタス > 「なになに? とくべついのうちょうさきこうとくべつこもん?
 ははぁ、なるほどね。 異能について調べてる組織の頭って感じか。
 OKOK、そういうことなら詳しくは聞かないさ。」

名刺を受け取り、胸元に仕舞っておく。
名前を知っておいて損はないだろう、今後何かあった時の目印くらいにはなるかもしれない。

「ま、うちの生徒に妙な危害を加えなければ私は口を出すことはないよ。
 この学園の生徒の思想や行動にはなるべく口を挟まないようにしている主義でね。」

教師は生徒を導く者であって、答えを教えるものではない。
ソフィアの教師かくあるべきという理念だ。
彼女もまた生徒……らしき立場だというのならそれは尊重すべきだろう。

「うん? あぁ、気晴らしね。 なるほど。 ここは気晴らしには良い。
 景色もいいし、生徒たちの動向もよく見える、 何かがあればすぐに駆けつけるのだってやぶさかじゃない。」

その立場ならストレスもたまるだろうね、と付け足し。
大きくうなずいた。

「んー……気晴らし、気晴らしとは少し違うな。
 私の場合は何というか、自己の存在の再認識、というか。
 そうだね、人間に分かりやすく言うなら、自分を整理する時間によく来るんだ。
 何をすべきなのか、何をすべきではなかったのか、何が良かったのか、何が悪かったのか、これからどうすればより良くなれるのか。
 そんな感じかな。」

思いのほか、清々しく言い放つ。
別に隠すようなことでもないと首を振りながら。

エインヘリヤル > 「……再認識? そんなもの、する必要が?」

別に、そんなもの、どうということでもないように。
あげつらうわけでも、貶めるわけでもない……そもそも、そんなところに関心がない。

自己意識が強い自分としては、そんな物が必要とすら思わない。
何をすべきかどうかなど、些細なことだもの。

「なるほど一般的にいえばそれはそうかもしれませんが。
 ……何をすべきか、何が良かったのか、どうすれば良くなるのか、など。
 吟味する必要、ありますか?」

風になびく髪をかきあげ、言った。

「良いことも、すべきことも、最初からわかっている。
 ただ、いつも手段のみがない。
 だからアプローチを探すだけでは?

 差し出がましいかもしれませんが……そこは確認するところでも整理するところでもなく。
 最初からわかった上で、比較するだけの話ではないです?」

弱い。そう叩きつける、強烈に。
何を迷うことなどあるのかと。

手段を探すことは大事だが、すべきでなかったかどうかについてなど、ほとんど意味はない。
しなかったしやらなかった、それだけの話。
たとえ悪影響が出たところで、それは相手の責任かもしれない。
タラレバなど、意味はない。

全ては事実と結果。
今できるのは最善をつくすことだけ。

必要だとわかって打った手に後悔や再確認など。
感想戦で次につなげたいのはわからなくもないが、それはナチュラルに日常的にすべきもの。

金十字の目が、再び嗤う。
そんなお前に意味はあるのかと。

ソフィア=リベルタス > 「あっはっは、これはまた厳しい意見だなぁ。」
 
 ソフィアは頷きながら大きく笑った。 君の言うことも間違いではないという風に。

「いや、失敬。 随分強烈にモノをいうものだから、珍しいと思ってね。 君の様な芯の強い人間ばかりであれば、その認識は間違いではないだろう。」

なるほどね、そうつぶやいて大きく体を広げる様にしながら、時計堂の端をゆっくり歩いてゆく。
スリルを味わうために危険な真似をする子供の様に。

「私たち生物は預言者ではない、同時に正確に組み込まれたロボットやプログラムではない。
 であるならば、『間違い』が起きるのは必然だ。
 間違いとは言わずとも、改良の余地がある、成長するというのが生物の、機械に勝る大きな利点だ。」

エインヘリヤルの方にわざとらしく子供っぽく手を振って見せる。

「もちろん、物事には全力で、最善を尽くして当たるべきだとも、
 だがそれ以上に、人間にはそれを糧として成長する時間が必要なんだ。
 僕たちはそれを『学ぶ』と呼ぶ。
 すべて最初から完璧にできるのならば、勉学すら必要はなかっただろう。」

アプローチを持っていることは、先人たちの学びがあったからこそであり、私たちはその恩恵を受けていることを忘れてはいけない。
彼女はそう説いた。

「故に、私たちは新たなアプローチを探すため、もっとより良い道を模索するために、過去と今を比較する必要があるんだ。
 己を整理することで、足りない部分を認識し、是正する。
 それが人間の進化だというものだ。
 と、ぼくは思っているよ。」

少女は不敵に笑う。

 「僕たちは万能ではない、故に、理想に近づこと努力する、そのあがきが君には醜い、そう見えるのかな?」

エインヘリヤル > 「努力そのものは、尊いし素晴らしいものだと思いますし、誰にも必要と考えます」

そこを否定するつもりもないし、むしろそれはあるべきものだ。
そう考える。

その笑いには微笑で同意するものの。

「ただ……その方向はあまり余計なところに使うべきではない、というだけのこと」

夕焼けを照り返すように受けながら。
悩んでもいいし考えてもいいが、それはループすべきでも再確認すべきでもなく。
データとして蓄積して常時考えるべきこと。

「間違いが起きるのなら、最初から間違いを組み込んだ上で考えるべきで。
 わかっているものが起きた後、そこに悩む意味は薄いのではないか、という話です」

そして逆光。
夕焼けをバックに。

「もちろん、理解を深めるために復習が必要というのは理解しますが。
 再確認というのはよくわかりませんね。復習は新たな学びであって再確認ではないので。

 下手な再確認はともすればループに近い可能性があるし……なにより、それを考えている、悩んでいるという内容にすり替えがちで」

あがくのももがくのもいい。
だが、必要なのはアプローチであってループではない。

「さすがにそれは人間であっても機械であっても、バグでしょう?
 ……ただのループを、努力やあがきとはあまり呼びたくないので」

本人はさぞかし悩むだろうし、打開したときには開放感に満たされるだろう。
だが、そもそもそれは単に必要なデータがないか、実力がないかで。
要するに、必要条件を満たしていないだけのことを確認する意味もない。

ソフィア=リベルタス > 「確認はループか、君はそういう考え方をするんだね。」

なんとも、強敵だなとつぶやく。

「確認とループは似て非なるものだ。 我々は一分一秒ごとに思考も価値観も変化して行く。
 ループとは、君が言うようにまさにそのまま繰り返すことだ。
 時にはそれも必要なこともあるとは思うが、まぁそれは置いておこう。」

これはまた別の議論を呼んでしまう。
しかし、そういいながらどこか少女は楽し気で。

「考え方や価値観が全く変わらないのであれば、君の言う通りまるきり同じことの繰り返しだ。
 武道のようにそれをしみこませる、という意図がなければそれは必要のないことだろう。
 しかし人間とは少々弱い生き物でね。
 君のようにいつでも真っすぐ目標を見続けられるわけではないんだ。」

縁に座り、日光を眺める。

「私たちは今自分が居る立ち位置を知らなければ、そこから前に進むことすら困難だ。
 真っ暗な洞窟を明かり無しで進むことが難しいように、そこには導が必要になる。
 己、という道標だ。」

そのまま床に寝転がる様に、大の字になる。
空を見上げて物思うように。

「我々は自分が今どこに立っているのかを確認するために、己という存在を再定義しなくてはいけないんだよ。
 君にとっては、それはひょっともすれば弱い生き物の考えに見えるかもしれないがね。」

少女はニシシと嗤う。

「それに、そうすることで、己以外の、他人のことも刻み付けることができる。
 思い出としてね。
 人間は忘れがちなものだ、他人や、物事、果ては自分ですらも。
 それを補完することが再認識という必要性だ。」

「私はそれを不必要だとは言えないよ。 何せわたし自身がそれを必要としている。」

エインヘリヤルの瞳を覗き込む。

「君は私が弱いと思うかい?」

エインヘリヤル > 「ああ、そこですか」

と。
つまらなそうに言う。

「弱いですね。
 せっかくだから表現をお借りしますが。
 自己確認はことさらにするものではなく、常にバックグラウンドで走らせておくものでしょう?
 アプリでいえば常に起動させておくものでは?

 なんでそんなものを、あらたまって確認しているんです?
 ゲームでだってステータス確認は改めてするものではなく、常時確認するものだと言うのに」

するとして、先行きの方針に大きく分水嶺があるときくらいで。
それにしたって再確認ではない。

どうも必要性が微妙な気がする、そこをついてみることにした。

「だからもしそれをするとすれば……不安だからでしょう?
 それは、一般的に言って弱いとされるものに思いますし。
 なにより、当人が自身のステータスを塞いで絶望し、心配することで不安になるものでは?

 先生のおっしゃるように学びが必要なのであれはそれは再検証や検分であって。
 そういったところでの再確認は、一つ間違えばむしろ、無限後退じみているのでは?」

当然の話だが。
ステータスを見るのを怖がっているものがそこにハマるものが多い。統計的に。

インディアンポーカーによる自己確認に不安になった挙げ句。
自分のカードを伏せた上であれこれ悩む。

現実とゲームの違いがあるとすれば。
現実ではステータス確認もひとつのスキルだということだ。

「ああ、この際だから聞いておきましょうか。
 ……何が怖いんです?」

金十字の瞳が、夕焼けに昏く光る。

ソフィア=リベルタス > 「きっついねー。 ふふ、まぁそうだね。 君にとって比べれば僕は弱い存在だろう。
 そこを否定するつもりはないよ。
 なにせ僕は確認という作業をしなければ安心できないんだ。」

厳しいなぁと笑いながら、とことこと小さな歩幅で歩み寄る。

「そうだね、僕が特に再確認を必要とするのは大きな不安感からに他ならない。
 君の慧眼には感服するばかりだよ。」

生徒、というには鋭すぎる着眼点だ。
頂点を、強さというものを極めるとこういった挙動になるのか、と、素直に感心する。

「うーん、ステータス、と言い換えることができるのかは私にはわからない。
 私は自分の行いを間違いだと思ったことはない、力不足だと嘆いたことはあっても。
 だからいつだって学んできたのだしね。」

其処だけは誇らしげに。
叡智の名は伊達ではないのさと軽口をたたきながら。

「私にも弱点がある、と言うだけの話さ。Ms.エインヘリヤル。
 それ、言わないとダメかい? 学校や異能学会にも秘密にしている事なんだが。」

ご案内:「大時計塔」からソフィア=リベルタスさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にソフィア=リベルタスさんが現れました。
エインヘリヤル > 「もしかしてこの間の、存在がブレるようなあれです?」

夕焼けをバックに、柱にもたれかって微笑するそれは。
さながら魂を集める死神のようでもある。

「どうにかしたいなら、する方法もなくはないですけども。
 解決するなら、そういう意味ではいくつか提案できますが。

 弱点どうこうという以前に、私からしたら普通に死にたがりに思えますけれど。
 だってそれ、もしかして……直したがっていなくありません?」

もちろんこれは一方的な想像で。
タダの憶測にすぎない。

わずかに目を細める。
想像による勝手な言い分なんだから間違っていていい。
それをわからないものが多すぎる。

「だから、弱いというより。
 ……脆いし、崩れかかってるだけでは?」

別にそれがどうということでもないかのように。
エインヘリヤルにとって、これは世間話でしかない

ソフィア=リベルタス > 「はははぁ、そうか、やはり見られていたかぁ。」

何処か恥ずかし気に頬を指先で書いて見せる。

「うん、そうだね。 僕の存在はひどく脆くて曖昧だ。
 まぁ、理由はいくつかある。
 その様子だともう知っているだろうが、僕は人間ではなく怪異だ。
 それも異邦のね。」

よっこいせ、と、エインヘリヤルの背中に寄り掛かる。
少々喋るのが疲れたよとぼやきながら。

「僕は自分の存在を書き換える力を持っている、これは異能というより、僕の存在の力、んー、いや、存在するための力と言ったほうが正しいのかな。」

背中合わせになっていた少女が、まったく同じ背丈になったような感覚を感じる。
横目に見ればそこにはエインヘリヤルが生き写しになった姿に、変化したソフィアが見えるだろう。

「存在を書き換える、一歩間違えば自分という存在を落としかねない恐ろしい力だ。
 うん、まぁ、別に今まではどうってことなかった。
 この世界に来るまではね。」

存在の書き換わった己の手を見る、それは歪に、古いビデオテープにノイズがかかったように揺らめく。

「存在というものは他者が認識することで初めて立証される。
 シュレディンガーの猫、というのは分かりやすすぎるたとえだと我ながら思うよ。
 僕はまさにあれだ、他者からの認識がなければ存在を維持できない。
 今は、僕という自己認識を確固たるものにすることで、危うい均衡を保っている。
 なんとなくわかってもらえるかな?
 本来なら、そんなことをする必要はない。
 けれど、ここは僕の世界ではないからね。」

異邦人、異世界からの訪問者。
この世界には存在しなかった者たち。

「僕は、この世界に拒まれている。 僕という怪異は消えてしかるべき、おそらくそういうことなんだろう。
 この世界の人々の記憶では、僕は自己を保てないんだ。
 きっと、僕が消滅すれば僕の記録は全てこの世界から失われるだろう。」

「そ、僕は壊れかけの化け物なのさ、脆くて崩れかけのね。」

自嘲するように笑って、元の姿へ戻る。

エインヘリヤル > 「なるほど……そこまではわかりました。
 で?」

ただの事実だ。
どうとなるものでもないし、そもそも【どうでもいい】。

事実に、感傷など浸る理由もいらない。
少々、人間的ではないかもしれないけれど、そんなものは大衆に任せておけばいい。

だから、背中越しに。
単刀直入に聞いた。

「それのどこが弱点なのかよくわかりませんが。
 ……で、どうしたいんです?

 大事なのはそこじゃないですか?」

問題は消えることじゃなく、何のために何をするかで。
そのためのリスクとして消えることがあるならわかるが。

それだってリスクではあっても、弱点ではない。
単なる、自分の使いにくさでしかない。

どうにかしたいのなら。
罠を紹介してやってもいいし、解決策を提案してもいい。

彼女の、そう言いながらの特殊な自己紹介から察するに。
ずいぶん力のある变化の化生が、戸惑っている以上の理由を感じない。

ソフィア=リベルタス > 「僕の今の異能はね、この不安定だからこそ発揮できる物なんだ。
 呪術、ネクロマンシーと呼んだほうがいいかな?
 過去の英霊、存在したものを呼び出して憑依させ、己と同化、存在を書き換えることで、
 その人物、生物、怪異になり替わる。
 私という存在がここで『固定』された場合、もうそんな荒業はできないだろう。

 うん、そんな物騒な力、要らないとは、思うんだけど。」

横目で眺める様に、値踏みする様に、エインヘリヤルを見やった。

「もし、僕の大事な生徒に手を出す輩が居た時に、そういった力はいくらあっても足りることはない。
 そうは思わないかな?」

一瞬だけ発する、威圧。 君がどう思っているのかは知らないが、もし、そんなことがあったら。
その気配はそう雄弁に語る。

エインヘリヤル > 「降霊とかそういう類ですか。
 どちらにしても、基本的には、甘さがそのままでているだけな気がしますね。
 ……単なる個人の所感ですが」

この圧。
ふふ、可愛らしい。
愛おしいと言ってもいいかもしれない。

そんなごちそうを見せられれば、嬉しくなってしまう。

「だって。
 それを良しとしておいて、不安定などという時点でごまかしてるだけでしょう?

 私にはどこかで死に場所を探してるようにしか思えませんよ?」

自分でなくなることを最初から良しとしている前提。
そもそもどこかずれている。

観念の使い方が下手だと言ってもいい。

「私に言わせれば自分かどうかなんて最初からどうでもいいですよ。
 そういう自己なんでしょう?

 なんで不安定や安定を諦めた前提みたいに言うんです?」

それを良しとしているなら、その不安定さそのものを自己という観念になる。
納得しているなら、難しいのかもしれないが別にそれで構わないはず。

それで乱れるなら、迷いと不安、もしくはエネルギー不足など、他の要因だ。

そんなに不安ならいつ消えてもいいよう、ファミリアでバックアップでもとってみればいい。
別にそんな方法じゃなくてもいくつかありそうな気もする。

だから、背中越しに金十字の瞳で見つめ合う。

ソフィア=リベルタス > 「生徒に、頼まれたんだ。 先生は先生のままで居てほしい。 ってね。
 うん。 僕は今不安定だ、いつ消えてもおかしくない。
 だからって代わりを用意することはできない。
 例えば、僕の代わりのもう一人の僕のを用意したとして、それは本当に僕なのか。
 答えはNoだ。
 それは僕じゃない、僕をコピーしただけのまがい物だ。
 では記憶をコピーした体に入れこんだとしたら?
 それもNoだ。 この記憶は僕の、このソフィア=リベルタスだけのものだ。」

にやりと微笑んで、不安定は化け物はそれでも嗤う。

「安定や不安定? そんなもの、生き物であればどんなものだって大差はない。
 人は脆い、車にぶつかっただけで死ぬような脆い生き物だ。
 それと何ら変わらない。
 ならば? そう、ならば。
 僕は今の僕を手放さない、この。ソフィアとしての存在をね。」

「僕は僕の魂のありかをここだと決めているのさ。 だから、それを是とする。 たとえ僕が滅びようとも。」

それは執念。 己を誰にも渡さないという、だれにも侵害させないという、意地。

「ほかに質問は? Ms.エインヘリヤル。」

エインヘリヤル > 「私としては先生には先生のままでいてほしくないですね。
 だって、もったいないですから」


「役割のために役割になろうとしているのは窮屈でしょう?
 順序が逆です、必要だから手段を選んでいたらたまたまこうなった、なので。

 自分の欲求に生徒の願望を使う、というのは一見美談ですがただの傲慢ですし。
 なので、選択肢として

 【先生に先生のままでいてほしくない】

 というのを提出しておきます」

自分など所詮はどろどろに腐ったごみためのようなものだ。
まずそこから。

「自分は自分のために自分であるだけなので。
 人のためというのは美しいですが、自分の泥に他人を巻き込むのはやめませんか?
 そこに他人の言い訳を入れ込むと、濁りかねませんよ、先生?」

自分のエゴの理由に他人を巻き込むべきじゃない。
特に不安定で自分がなくなってしまうというのならなおさら。
きっかけではあっても、それは自分自身と対決すべき話で。

「だいたい、紛い物かどうかを気にするなら。
 自分を紛い物にすることで力を得ようとする自分を恥じるべきではないです?
 だから言ったでしょう、前提の順序が逆だと」

だからこんな自転車操業に追い込まれているというのに。

そっと、おでこをつけ。
そのつまらない意地に、張り方を提案する。

「先生。
 先生はそのコピーを選び、器の移し替えも選んだがゆえの先生です。

 だって、いま私になったように……体にこだわらないことを選んでるんですから。
 体にこだわっている精神の不安定のほうも、もっと受け入れてみては?」

でないと。
身を任せたら流される恐怖で、緩やかな自殺願望になりかねない。

そっと手をとって口づけをする。

ソフィア=リベルタス > 「……君は優しいのか厳しいのかわからないね、エインヘリヤル。
 あぁ、矛盾だと言いたいんだろう?
 己を保全することに依存しているくせに、己を改ざんしている、
 僕だってわかっているさ。
 それくらいわかっている。

 でもね、エインヘリヤル。 それだけじゃないんだよ。」

口づけされた手とは、反対の手で髪をなでるようにして。

「人間はエゴの塊だ、こうあってほしいという、酷く歪な生き物だ。
 あぁ、エインヘリヤル、僕はね。
 その不安定さに、美しさを感じるんだよ。
 あのはかなげで、愚かで、弱い人間たちに、僕は近づきたいんだ。」

優し気に微笑んだ。
君の好意はとてもうれしいけれど、その思いには答えられないと。

「消えてしまいそうで不安で眠れない夜も、また、人間らしさだと、僕はそう思っている。 それだけの話なんだ。」

エインヘリヤル > 「ああ……気づかれました?」

クスクスと嗤う。
年頃の少女らしいくせに、ゾッとするような笑みだ。

「これくらいやれば再確認になりますかね?」

最初から、世間話でしょう、というように。
肩をすくめてみせた

ソフィア=リベルタス > 「あぁ、十分だとも、 ありがとう。 されど、君は美しいな。」

存在を変換するということは、断片的に理解するということ。
ちょっとした、表面的なことしかわからないが。

美しいとは、その在り方ゆえに。

「また暇があったら、世間話に付き合っておくれよ。」

エインヘリヤル > 「ええ、私程度であればいつでも」

スカートをつまんで一礼。

不安定と言うなら、自己を揺さぶってみればいい。
そういう付き合いが少ないと言うなら喜んで。

チェックバックは、他人がやるほうが楽だ。
他者認識を必要とするなら、余計に。
個人的には、立場でも何でも、もう少しエネルギーを強化するなにかがあればいい気もしなくはないけれど。
いまのところ、彼女は先生という存在にそれを定義したいらしい。

それでどうにかなろうと知ったことではない。

ただまあ、拾えるものがあるなら拾わせてもらうかもしれないが。

「美しくなりたいのであれば、そうあらんとするだけですよ。
 外見はおまけでしょう?

 日は沈んでも美しい」

長話ですっかり夜になってしまった。
夜の帳が落ちるように、この話にも時計の針を落とそうかしら。

ご案内:「大時計塔」からエインヘリヤルさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からソフィア=リベルタスさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にアーヴァリティさんが現れました。
アーヴァリティ > 「うーん...いい景色だなあ。本当に随分と遠くまで見えるねえ」

時計塔の淵に腰掛け知らないものに触れる幼子のような視線を下界に向けるワンピース姿の幼女。
そう、アーヴァリティである。

この島に来てからずっと気になっていた場所がある。それはここ、つまり時計塔である。
高く聳え立ち、遠くへとチャイムの音を響き渡らせるこの建造物にずっと興味はあったのだ。
だけど、時計塔の場所や、他の場所などへの期待度や重要度を考えると、どうしてもここに来るのは後回しになってしまっていた。

「この景色で...何か思いつけばいいんだけど」

ならなぜ来たんだって話だが。
ここ最近胡散臭い彼の言葉が頭を離れない。
『何に憧れてそうなった』
この景色を見れば何か少しでもわかるだろうか、なんて。
淡い期待とともにふらふらと飛んできたわけだ。
ただ、すぐにとは行かず。足を空中でぶらつかせながら島を見渡しており。

アーヴァリティ > 「あぁ...いい景色だなあ...」

言葉のこもっていない『いい景色』は高所に吹く風に流されて消えてゆく。
他にもっと何か言葉が出てきてくれればいいのだけれども、それしか言葉が出てこない。
やはり淡い期待だったのだろう。
最近の長い悩みがここにきただけで解決するなんて、まあ淡い期待だったわけで。
体を倒して夜闇を見つめて。

「あー...ロケーションは最高なんだけどなあ...
うーん...覚えてないんだよなあ...昔のことなんて...」

一体僕は何を見てこうなったのか。
それを思い出せないから考えているのだけれども。
誰か、ヒントをくれないか。なんて、淡い期待をこめて階段の方を見つめて。

アーヴァリティ > 「うーん...ダメだね。やっぱり場所なんかに頼っちゃ」

むくりと上半身を起こしながらやれやれと言ったジェスチャー。
今まで僕はどうやって育ってきた?そう、努力だ。
ならば今回だって場所なんかに期待するんじゃなくて自分で努力して答えを見つければいい...

「...違う気がしてくるのはなんとも不思議な感覚だね。
僕のやり方を誰でもない自分に否定されるだなんて」

この島に来た時、来ようと思った時の僕の考えとは大きく違って。
僕はこの島で少し変わったかもしれない。

人の姿を得て、戦いながら言葉を交わして、それ以外にも揶揄って、僕より強い相手から言葉をもらって。

「一人で悩むのが間違いなのかもね」

そう呟けば、時計塔から体を投げ出し、常世島の夜の空へと消えていった。

ご案内:「大時計塔」からアーヴァリティさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に黒藤彩子さんが現れました。
黒藤彩子 > 七夕。
短冊にお願い事を書いて、竹に飾って、多分にきっと、お星さまにお願いする日。
だから、お星さまに近ければもっと良いんじゃないかって思ったの。

「……おー……」

周囲をぐるりと見回せる高い高い時計塔。
本当は入っちゃいけない所の最上段。大きな文字盤を見上げる先には星々の瞬き。
観る人の眼を奪う程に輝いて、その心に穴を開けるように煌めいている。

「いいなあ」

なんて、羨ましい。
手を伸ばすけど当たり前に届かない。そんな事知ってる。
でも伸ばして、伸ばして、伸ばして、
そうして風が吹いて、姿勢を崩して、背が転落防止の柵にぶつかって、そこで漸く手を降ろす。

黒藤彩子 > 「トダーリンも誘えば良かったかなあ。でもなあ、見つかったら怒られちゃうし」
「友達をそーゆーのに巻き込むのってよくないもんね」

姿勢をくるりと変えて柵に頬杖を付く恰好。
近くや遠くに見える街の光もなんだかお星さまみたい。
あの光の下にも色んな人達がいて、七夕さまのお空を見上げているのかな。
そんなことを想う。想って、ポケットの中から短冊を取り出す。
裏に金の色紙を貼った沢山の短冊。何も書いていない短冊。
彼方此方折れてちょっと格好悪いもの。そういうのを時計塔の上からばあっと撒き放つ。

黒藤彩子 > 「ぬはは、結構勢いよく飛ぶなあ!達者でやるんだぞ~う」

差別も区別も無い。
夜空を見上げたら誰の瞳にも星が映るように、異変は誰かに忍び寄る。
だから、ちょっとした悪戯をしてみたかっただけ。
風に巻かれて飛んで、飛んで、落ちて、落ちて、見えなくなった短冊が誰かの目を奪って、誰がこんな事を?
なんて思ってくれたら、少しだけ楽しくて、愉しいかもしれないから。

「………へっくし」

くしゃみが出て自然と身震いが出ちゃう。
早速と誰かが短冊を拾って首を傾げたのかな?それとも、思ったより風が強いのかな?
考えるけど判らない。私の視力は随分と良いけれど、流石に街中までは解らないもの。

「よし、そんじゃあ彩子ちゃんは帰りま~す!帰って……何しよっかな?」

考えてたら欠伸も出て来て、まあいいかって思ったから、そうする。
危うく門限ギリギリで、叱られが発生しかかったけれど、ぎりぎりおけまるおけまる。
鼻歌混じりに七夕様を諳んじて帰るのでした。

ご案内:「大時計塔」から黒藤彩子さんが去りました。