2020/09/15 のログ
ご案内:「大時計塔」に黒髪の少年さんが現れました。
ご案内:「大時計塔」に持流 童男さんが現れました。
ご案内:「大時計塔」から持流 童男さんが去りました。
黒髪の少年 > 展望スペースに、彼はいた。
手すりに身を乗り出し気味に、街の光景を眺めていた。

秋の夜風が、無地のローブをはためかせながら。
深く被ったフードでさえ、払われてしまいそうなほどに。
それでも、他者からの認識を阻害するその仮初の着せ物は、外せなかった。

「………。」

ローブを、ぎゅっ……と握り込む。
これまでこんな奇特な恰好をしていた人物が闊歩できたのは、このローブがあったからだ。

このローブは借り物であった。
"化生の皮膜"という、とある旧友の持つ複合能力の一つ……そこから生み出してもらったもの。
だがその認識阻害の効果は、これを着る人物…つまり、レナードという存在を直に知る者に効き目はない。
だから、自分を知る者はレナードに気づけたし……結果、当初の目的はあえなく頓挫した。

どうやら自分は、思った以上にここに居たかったらしい。

黒髪の少年 > 「……まだ、学生に戻ってもいないんだよね……。」

友人から、その名で手続きを進めようかと提案された。
でも、あの時の自分の心は揺らいでいたから…どちらとも取れる返事をしたに過ぎない。
本当は、あの名前…"レオナルド・オディノ・テスラ"は、こことは別の世界で名乗るつもりだった。
だが、ここに居る限り…自分は"レナード・ウォーダン・テスラ"でいい。
……レナードが、いい。

「…………うん。
 復学するなら……レナードを、名乗らなきゃ……」

まだ、復学の手続き自体は済ませてない。
もう9月だ、授業も始まっているだろう。あまりまごついていては、自分の成績がまずくなるだけだ。
……そもそも、本当に復学などの手続きが必要な状況なのだろうか?
そこは、確認する必要はあるだろう。

あの蛇が、自分のことをどれだけ慮って後始末をしたのか……
それによっては、きっと、研究施設に残してきたアレでさえも…

元々、ここに残るつもりはなかった。
だから、最後にちゃぶ台返しをやらかしたツケが、周りまわって自分にやってきただけの話だ。
だが、もう…逃げるわけにはいかなかった。

「……はぁ。前途多難だし………」

少年はため息を吐く。
それでも眼下に広がる街の光景は、いつもと変わることはなかった。

黒髪の少年 > 「…………そういえば。
 あいつ、明らかに僕のことを知ってたな……」

これまでに、自分が"ウルトール"として風紀委員の前線で働いていたこと。
それは事実だからいい、だが、それを知っているのはほんの一握りのはずだ。
研究所の面々に、あの蛇、そして…あの公園でその話をした友人。
だが、神社で出会ったあの先輩は、明らかに自分がそうだと分かった上で話をしてきた。

……ああ、そういえば……
彼女の目的は、自分に会うことだった。それは、別れる直前に分かったことだ。
…だが、自分に会って何をさせたかったのか?そこまでは考えていなかった。

「……あれは、明らかにウルトールが僕だと知っていた。
 でも、あれは……人との関りを断ってきたはずだし。
 戦闘情報とかから、僕だと気づいたのか………?」

或いは、情報を流す誰かがいたのか……だが、
ここで犯人捜しを始めるのは不毛であるし、無駄だ。
そんなことを考える時間も余裕も、ない。
それよりも気になったのは……

「一度は辞めた人を、再度呼び寄せようとしていたようにも見えた…
 ………風紀委員、そんなに今大変なことになってるわけ…?」

黒髪の少年 > 「…………風紀委員か…」

目を細める。
所属する個人は別として、正直あまりいい思い出がない。
尤も、あの頃の自分は歪んだ正義を抱き、望んで機構になろうとしていたからそれも道理なのだろうが。

「…僕は、前線に行く気ないしー。
 やるとしたら書類仕事だしー。
 ……流石に"彼"に頼るのは、避けたいんだよね。」

そもそも風紀委員に所属するつもりは、ない。
だが、もし?そうなるときが来るなら…
そんなくだらないIFを妄想し、力の抜けた声で未来を紡ぐ。

「…………。」

ふと、何かに気づいたように辺りをきょろきょろと見回した。
誰もいない、きていないはずだ。

「………言質取られてないよね?」