2020/10/04 のログ
ご案内:「大時計塔」に雪城 氷架さんが現れました。
■雪城 氷架 >
靴底がコンクリートを叩く、甲高い音
階段の下から響く音の後に現れるのは薄い銀髪の少女の姿だ
吹き込む風に長いツインテールを揺らして、今日はなんとなく、常世の町並みを見下ろそう
「ふぁ……」
…まぁ、見下ろしてみたところで大して面白いものが見えるわけでもなく、欠伸が漏れる
■雪城 氷架 >
新学期が始まって、しばらく
何か変わったことがあったか、といえばそうでもなく
一応異能の講義だけはしっかり出ているけど、それだけ
父親からの研究区への呼び出しも、夏休みを最後になくなった
アレがきっかけで…もっと自分の異能をちゃんと使えないと、と思い直したのだけど
「……なんて言ってもな」
手摺に腕を降ろし、顔を伏せる
ヘンなことを考えてしまった。らしくない
あんまり異能のことを考えすぎると、気分が落ち込んでゆくので程々がいい
■雪城 氷架 >
父親の役に立とう、という気持ちが大きいわけじゃなくて、
父親の研究が完成すれば…父と母が一緒に過ごせる時間が増える
だから、少しくらい無理をしたって協力する
母、涼子が父を大好きなのは知っているし、父が異能の研究で忙しく滅多に家族の時間を過ごせないことにも納得している
だからこそ、自分はそれに協力する義務がある
家族のことが大好きだからだ
「………」
制服のポケットを漁る
ペットの蛇は、今は留守らしい
その代わりに、錠剤のブリスターパックを取り出して、眺める
父親から持たされた異能の制御薬、その試薬である
■雪城 氷架 >
自分の異能の力を完全に制御化に置くことを可能にする
それは異能の変化も含めての、自律的な完全制御
それを薬の力を借りてでも出来るようになれば、父の研究目的の一つは達成となるらしい
達成されれば、今よりも父と母が共に過ごせる時間は増える筈
「………」
ぎゅ、と薬を握りしめる
視線の先、見渡せる常世の街の中に見える大きな施設
異能の訓練なんかが行われる訓練施設である
異能の試験関係の時以外では、あんまり行かない場所だった
──今日はもう講義は苦手な座学ばっかり、サボって寝て帰ろうか、なんて思っていたけれど
ご案内:「大時計塔」にアンジェさんが現れました。
■アンジェ > 規則を守ることを尊ぶ彼女にとって、大時計塔は行く必要のない場所だった。
絶景という噂に興味はあるが、立ち入り禁止ならば、無理に入ることもないと。
だが、そこに躊躇いもなく入っていく少女を見た。
ならば注意しなければならないと、わずかに芽生えていた好奇心と共に時計塔へと向かっていく。
今日の日程は空きがあるからと、自分を納得させるように。
「…………あれは?」
そうして、いざ少女の元に辿り着いてみれば。
少女が錠剤を手に取って眺める姿が、ちょうど彼女の目に入る。
人前では出せない類の薬かと、赤茶色の髪が急に動いた。
「そこの君!こんなところで何の薬を持っているんだ?」
■雪城 氷架 >
この薬が完成すれば色んな人の役にも立つかもしれない
なんて自己犠牲を考えるつもりもないけど
小さく息を吐いて、さて…と振り返ると同時に、声がかかった
異能を持つ以外、単なる一般生徒である少女にはその彼女が時計塔に入ってきた事も、
後をつけられていることも、当然自分の真後ろにいることも知る由がなかった
「わあっ!?」
故に、唐突にかけられた声と、いつの間にかそこにいた彼女──自分と比べてば見上げるような──に、心底驚いたように、その手から錠剤のブリスターパックを落としてしまう
■アンジェ > 少女が落とした錠剤は、透明な素材で包装されていたもの。
またこの世界に慣れていないとはいえ、きちんと包まれているものならば真っ当な薬かもしれないということは彼女にも分かる。
「すまない、驚かせてしまったか?
こんなところに一人で薬のようなものを持っているから、スラム辺りの怪しい薬かと思ったんだが…」
床に落ちた錠剤をさっと拾って、少女の手にそっと渡す。
悩んでいるようにも見えた少女は、彼女にはとても小さく見えた。
■雪城 氷架 >
「そりゃびっくりするよ…此処、そんなに人来ないハズなのに」
はー、っと胸元に手をあてて深呼吸、おちつけおちつけ
拾い上げてもらった錠剤のパックを受け取れば、素直にそれは「ありがとう」と言葉にして伝えて
「変な薬じゃないよ。此処には……サボりに来ただけだ」
自慢できる理由でもないため、少し言葉のトーンを落とす
大きく見上げる彼女は学生服に身を包んでいはいるが、その右腕に見慣れないものをつけている
変わった格好だな…なんて思うけれど、この学園では珍しくない…のかもしれない
「…この学園の生徒?」
まじまじと、その顔を見上げる
■アンジェ > サボり、という言葉を聞いて少しだけ顔をしかめるが、立ち入り禁止の場所にいるという点では自分も同じ。
ならば咎めることはないだろうと、彼女は会話を続けていく。
「学べることは大事だと思うが…いや、まだ来たばかりだからな。
よく勘違いされるが、私はこの学園の一年生だ。元の世界から飛ばされてきたばかりで、これは私の…武器だ」
そう言って、銀色に煌く籠手を握りしめる。
「元の世界では騎士をやっていた、名前はアンジェ。
どうにも分からないことばかりだが、まずは君の名前も教えてもらえるかな?」
■雪城 氷架 >
学ぶことが大事、それは理解る
けれど苦手なものはあり、それを避けられないこともある
最低限の点数と、最低限の出席で回避したい…という学生の感性も、
異邦人である、と名乗った彼女にはまだわからない部分なのかもしれない
「き、騎士?…道理でいい体格してるわけだな…」
なんか大人と子供くらい違う彼女、ずっと見上げてると首が痛くなりそうである
「私も一年。氷架…雪城氷架。
異世界から…って結構見るけど、大変そう…だな」
別の国から別の国へ…というだけでも大変なのに
世界そのものが違うところから訪れたとなればより一層だろう
「武器…防具かと思った。…それで殴るのか?」
見慣れない、その右腕に注視しつつそんなことを問いかける
少なくとも氷架が普段遊ぶようなゲームに出てくるそれは、防具というカテゴリなのである
■アンジェ > 彼女のいた世界では、体系化された学びを得られる場所は少なく、知識は分散していた。
だからこそ魔術を悪用する者は地下に潜み、知識を独占しようと企んでいた。
しかしここでは、学びの機会は多く、知識は集積されている。
もし戻れるのならば、この学園の仕組みを祖国に伝えたいと思うほどだ。
「雪城氷架…うん、いい名前だ。
暮らしていくのは大変だが、言葉も読めて話が通じるんだ、あまり困ることはない」
だが「ケータイ」はまだ難解だと、付け加えたように話しておく。
どうもこの世界の人間ならある程度理解しているものらしく、知っていることを前提に話されることが多いからだ。
「殴る…それもあるが、まぁ見せる方が早いだろう。
距離を少し取って…この辺りか」
彼女が雪城から三歩ほど離れて、軽く両足を開いたかと思えば、籠手を握りしめて強く叫ぶ。
それは彼女が騎士である証明、異世界でもなお消えることのない加護を与える合言葉。
「騎士の誓いは、我が右手と共にッ!!」
その瞬間、彼女の姿は一人の甲冑騎士へと変身する。
幅広い両刃を持った大剣を右手に持ち、頭からつま先まで隙なく鋼に覆われた重装備。
兜のスリットからくぐもった声で、恥ずかしそうに彼女は少女に語った。
「戦うときにはこうするんだ、ここではあまり使う機会はないんだがね」
■雪城 氷架 >
暮らすにあたって不便はそれほどないと語る彼女
ケータイが難解だと付け加える様子は、世界観の隔たりを感じさせる
騎士にケータイ…確かに似合うものでもない
「ふーん…じゃあ制服なんかも、あんまり馴染みがないんじゃないか? ……ん?」
短いスカートの裾をひらひらとさせて見せて、
こちらの問いに答えるため、距離を取る彼女を見据える
勇ましい叫びと共に、一瞬で全身に甲冑を着込んだ姿へと変貌する彼女
それは文字通り氷架にとっては非日常的な存在の姿であり、同時に彼女の言葉全てを信用せざるを得ない証左となった
「…すっご…ほんとに異世界の騎士、って感じだ。
はは、確かに此処は比較的平和…だからな。危ないトコもあるけど、普段はいかないし…」
戦う時には、と語る彼女に、そう答える
もちろん氷架達が享受している平和は、風紀委員や公安委員の人間の陰ながらの戦いに裏打ちされたものではあるのだけれど
そういった情報は、あまり表立って頻繁にニュースで報道されるものでもない
■アンジェ > 「制服は……この世界で一番驚いたかもしれないな。
スカートがそこまで短いなんて、私のいた場所ではありえないだろう」
すぐさま変身を解いて元の制服姿に戻り、彼女は自分の制服を見下ろす。
サイズは合っているとはいえ、どことなく恥ずかしそうにスカートを見ている。
それから壁に寄りかかるようにして、会話を続けていく。
「平和なことはよいことだが、それは支えている者がいるから。
最近は車輪の化物がいるとも聞くが、被害を聞かないのは彼らが頑張っているからだ。」
自分の言ったことが説教くさいと感じたのか、額に手を当ててため息をつく。
「いや、すまない。つい偉そうなことを…本来ならば、私もこの力を振るうために風紀委員に入るべきなのだからな。
力を持つならば、責任が伴う。…と、また説教めいたことになってしまった」
■雪城 氷架 >
「そういうトコはなかなか慣れなさそうだな」
恥ずかしげにスカートを見る彼女に小さく笑う
いくつかの制服があるとはいえ、大体の女子制服は脚を大きく露出する
「車輪の化物…ってアレじゃん、SNSでちらっと見た程度だし、単なる噂じゃないか?」
別にニュースにもなっていないし、と続ける
情報統制がされていることで一般生徒である氷架には、ただの都市伝説という認識でしかない
「いいんじゃないの、別に。
風紀委員なんて堅苦しい、って思うヤツもいるだろうし…
大体戦える力があるならそういう組織に入るべき、なんてなったらそういうヤツばっかりになる」
力があったって、戦いを忌避する人間はきっと多いはずだ
自分のように
■アンジェ > 情報が絞られているとはいえ、彼女には騎士としての経験からくる直感めいたものがあった。
とは言っても、確実に存在するという確信には至らないが。
「噂には元の情報があるものだ、例え9割が嘘だとしても、1割には真実がある…
私と戦っていた魔術師どもは、そこに身を隠していたからな」
異能と魔術と科学が入り混じるこの島ならば、何が起きてもおかしくはない。
彼女はそう思いつつ、少女を見つめる。
「この島は何かが常に起きている。異世界からいきなり人や物がやってくるんだ、化物がいないという保証はないだろう。
ならば戦うことは避けられない、いつかは力を振るわなければならないときがやってくる…私はそう思う」
■雪城 氷架 >
彼女の弁に、そんなもんかなあと思いつつも、都市伝説というのはそういった経緯があるものかもしれない、と一定の理解は示す
まぁ、本格的にヤバい何かなのならそのうちちゃんとニュースなんかにもなるんだろう、と
一般生徒らしい比較的平和ボケした結論には至るのだが
「まぁ、そうかもしんないけどさ」
手摺に背中を預けて、じっと彼女の顔を見つめる
「力があったら戦いに立つべきっていうのはなんかな…。
私だってこんな力は在るけど、戦えるかって言ったら、多分無理だ」
少女もこの学園に住まう者、生徒としての例外に漏れす異能者である
その証となる、煌々と燃え盛る炎を掲げた手のひらの先へと灯して見せた
何の準備もなく、手品でもない。魔術が働いた様子もない、自身の力として得たそれだ
■アンジェ > 前触れもなく、最初からそこにあったように現れる炎。
雪城の手が焼かれないまま燃え盛るそれに、彼女は強力な異能を感じた。
「……力はなくとも、戦うことはできる。
戦う者を支えることも、前に出て戦うことも同じだ」
それを持ちながらも戦えないと語る雪城の身体は、触れば折れてしまいそうなほど華奢な身体に見えた。
だからだろうか、彼女は少しだけ雪城に近づいた。
「君はそれを悪事に使うつもりはないのだろう?
ならば後は、使い方を学ぶだけだ。つまりは…勉強だな、お互いに」
視線を逸らすことなく雪城に目線を合わせて、彼女はそう語る。
そして携帯端末を取り出すと、両手で慎重に操作していく。
「来たばかりの私は騎士としての力はあった。だがこのケータイの使い方を知らず、
メールも通話もできなかった。だが今はこうして…こうだ!」
彼女が雪城に見せた画面。そこにはメモ帳に打ち込まれた、兜を被った騎士の顔文字が一つだけ表示されていた。
「戦うことが無理でも、使い方を知ればやれることは増える。
私は…そう思うんだ」
■雪城 氷架 >
「知ってるよ。だから異能に関する講義だけはちゃんと出てる」
近づく彼女に微笑み、灯していた炎をかき消す
「誰かが代わりに戦ってることは知ってるし、感謝もしてる。
なんかヤバいことが起こって、助け合わなきゃいけないってなったら、そりゃ吝かじゃないさ」
近づけられた携帯にどれどれ?と顔を近づけて覗き込む
こうだ!と自慢げ?に見せられたそれはややオリジナリティ溢れる顔文字だった
異文化だとこういうことすら、勉強しなければいけないことなのだということがよくわかる
「アンジェの言うことは理に適ってるよ。
でも戦うことにも、知ることにも一歩踏み出す勇気っているからさ、
案外、その勇気が出せる人間って限られてるんだぞ」
そういう場合に、背中を押したり押されたりするのもまた必要なのだろう
大体の人間は、その勇気を出す必要もなく生きていけるものだから、余計に
「アンジェは──」
言いかけた時、時計台の鐘が鳴る
時計台の中にいるのだから、当然音も大きい
鳴っている間は、さすがに何かを口にしようが、相手には声が届かない
小さく肩をあげるようにして
「鐘も鳴ったし、そろそろ行こうかな」
最後に言いかけた言葉は、少女にとって無理に伝えることでもなかったのかもしれない
脇に置いてあったショルダーバッグを肩へとかけて
■アンジェ > 勇気、それは持つ者よりも使う者がはるかに少ないものだ。
騎士として戦い続けてきた彼女ならば使い方を分かっていても、この世界ではそうではないのだろうと彼女は思う。
だからこそ、異能を持つ雪城には使ってほしいと思って前のめりになったが。
「最初の一歩こそが最も重い。確かにその通りだな。
だが、その一歩を君はきっと踏み出してくれると思う」
最後まで説教くさくなったなと思いながら、続ける言葉は雪城と同じタイミング。
島全体に響き渡るその音色は、真下にいれば何も聞こえることのない音だ。
「雪城も――」
言葉は時計台の鐘に遮られ、文章は途切れて終わる。
彼女もまた、それほど伝えることではなかったのか、手を軽く振って階段を下りていく。
「また会おう、できれば今度は、時間があるときにでも」
その声に込められた気持ちは何なのかは、誰にも分かることはない。
■雪城 氷架 >
「ガッコだと、常に時間に追われちゃうけどな」
講義という名のスケジュールに追われる場、なかなかゆっくりとは難しいのかもしれないが
また会おうという彼女にこちらも手を振って、その日は時計台を後にするだろう──
「(勇気、ねー……)」
ポケットの中でこっそり握りしめた異能の制御薬
少しだけ背中を押された気がした
ご案内:「大時計塔」から雪城 氷架さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からアンジェさんが去りました。