2021/03/20 のログ
ご案内:「大時計塔」にレナードさんが現れました。
レナード > 春の気配が強くなりゆくこの頃に、高い高いその天辺の空間にて佇む少年が独り。
何かするでもなく、外界とを仕切るための柵に手をついて、ぼうっと景色を眺めていた。

「なんか、ここにきたのは久々な気がするし。」

思い返せば、なにか悩んだり困ったときにはよくここに来たものだ。
最近ここに来ることはめっきりなかったが、何も悩みがなかったわけではない。
単純に、ここに来る気が起きなかっただけだった。

「…………なんでだろ?」

レナード > 「………。
 高すぎるところは寒いから、かも。」

自分は濃かれ薄かれ蛇の血が流れている。
それが、自分が寒さが得意ではないという結論にたどり着くに、そう時間を要しなかった。
自分自身を納得させるかのように、はたと独り言つ。

「……あったかくなったからって、こうして出てくるようじゃ…
 本当に蛇そのものじゃん。」

まるで冬眠だし。なんて、自嘲気味に呟いた。
実際冬眠なんてしたこともなければ、そもそも自分が意識する程蛇らしいところなんてほとんどない。
せいぜい舌が人より長いのと、極端な暑さ寒さには弱いことくらいだ。

レナード > 「……春先かあ。」

もう、桜なんか咲き始めているんだろうか。
まだ自分の目で確かめたわけではないが、ここ最近の暖かさはその予感を告げさせる。
そんな時期なんだと意識すると、つい余計なことも考えてしまう。

「………。
 そういえば、ホワイトデーなんてのもあったんだっけ。」

一週間くらい前が旬の話題だろうか。
今こうして思い出すくらいに、自分の中では薄いことだった。
結局、個人的にも大してそのイベントに関われたわけでもなかった。

「…………とくに、誰かから貰えたってワケでもないから……
 こっちから返すものなんてありゃしねーし。」

誰に弁解するわけでもなく、言い終えた頃に小さくため息を吐いた。
夜風もどこか暖かい気さえする塔の天辺で、少年はぼんやりと独りの時間を過ごしている。

レナード > 「ん――――」

ふいに、寒気を纏った夜風が一陣吹き抜ける。
まるで、心のスキマを撫でるように。
身体の冷えか、それとも別の感情か、少年は思わず身震いした。

「帰ろう。ここ、そんなに長居するような場所じゃねーし………」

辺りに誰もいないことを確かめてから、するすると立ち去っていった。

ご案内:「大時計塔」からレナードさんが去りました。