2021/10/11 のログ
ご案内:「大時計塔」にレナードさんが現れました。
レナード > 「………………。」

時計塔の一番高い階層。
柵から少し身を乗り出せば、島の全景が見渡せる場所。
少年は、人目を忍んでここまでやってきていた。

「……相変わらず、無駄に高いところだし。」

レナード > ここに来るのも、いつぶりなのだろう。
何かをするための決意を確かめたいときは、いつもここで景色を眺めていたっけか。
つまり、何かをしたくて…ここに来た。そういうルーチンなんだろう。
もう、遠い記憶だ。ぼんやりしてはいるが……
それでも身体は覚えていたかの如くここに来た。まるで帰巣本能か何かのように。

「……ここから見る景色も、あんまり変わってない……」

柵からわずかに身体を乗り出して、夜の常世島を眺める。
いつか見た景色…変わらない常世の日常が広がっている。そんな気がした。

レナード > 「…………。」

指サイズの記録媒体を、徐に取り出す。
自分を追うもの達が、何を企んでいるか…
それを明かすための、重要な情報をつかんでくれるかもしれない、銀の銃弾になりうるもの…
そのためのプログラムが入った、とてもとても重要なもの。

「……このプログラムを載せて、メールを送る必要がある……
 でも、僕のアカウントなんて使った日には、何をしようとしたのかがすぐに特定される……
 それに、僕がログインしたなんて知れた瞬間、恐らく多数の追手が配備されかねない……

 さて………どうするか………。」

こうやって、自分の状況を整理するために、自分はやってきたのかもしれない。
誰もいない。誰にも聞かれていない。そんな安心感は、熟考に向いていた。

レナード > そのプログラムの送り先は、例の研究所に世話になっていた頃に作った、自分のアドレス。
そのアドレスは研究所内のサーバに今も残っている。
それは、自分への追跡が激しくなる前に、自分のアカウントからの空メールの送信で判明した。
もう、同じ手は二度も使えない。使おうものなら、今度こそ捕まるだろう。
……そしてその時には、まだ準備ができていなかった。

「………はあ。
 でも、それを誰かに頼むなんて……できようわけもないし……」

そう。それは、
自分の代わりに、頼んだ誰かが拘束されるリスクを負うということ。

「自分の代わりに、誰かを犠牲にするか………
 最後まで過去からの因縁を、自分の手で断ち切る努力をすべき、か……」

レナード > 少年は迷っていた。
自分を奴らに売り飛ばさないと信頼できる誰かが、自分にいただろうか。
自分のために、リスクを負ってくれる誰かがいただろうか。
……そんな誰かがいたとして、こんな虫のいい話が、できるだろうか。

「…………どうすれば、いいわけ……」

柵にもたれかかるように項垂れる。
経年劣化が進んではいるが、彼の体重程度かけたところで外れはしない。
ふいに夜風がその頬を撫でる。
……どこまでも冷え切った風だった。

ご案内:「大時計塔」にレナードさんが現れました。
ご案内:「大時計塔」に阿須賀 冬織さんが現れました。