2021/10/12 のログ
■阿須賀 冬織 > 「こことか雰囲気的にいたりしねえかな」
下校時に思い出した幽霊の噂。立ち入り禁止の時計塔の上とか雰囲気的にはいるんじゃないかと幽霊探しにやってきた。
呑気にそんな言葉を声を出しながら時計塔の階段を登る。時間帯的にも外まで聞こえるだろうか。
■レナード > 「…………。」
幽霊のような見てくれの彼は、まだそこにいた。
誰か来たようだが、振り向こうとはしない。
…幽霊騒ぎは知っている。
このまま、害のない幽霊だと思って去ってくれればいい。
そう思って、敢えて動かないことを選んでいた。
■阿須賀 冬織 > 「ま、別に何か事件があったなんて聞かないしいないか……な…………っ……」
コツコツと足音を響かせながら階段を登り切って。
懐中電灯代わりの手元の端末を色んな方向に向けてみて。
……何かを見つけて固まる。
「あ、えーっともしかして噂に聞く幽霊……?」
ごくりと唾を飲み込んで。
どこか見覚えのあるような気がする服の姿に恐る恐ると近づいてみる。
特に動く様子がないから大丈夫そうだろうかという考えもあるが。
逃げたりしないのが平和ボケというか、安全に過ごしてきた弊害だろうか。
■レナード > 「…………。」
ああ、この声は知っている。
前は見えてない。だが、来たのが誰かを知るのに、眼の力を使うまでもなかった。
…前にいるだろう彼は、彼女と幸せにしているのだろうか…
そう思うくらいには、はっきりと。
「…………。」
そう。
彼は、平和な日常の中にいる。
大切な彼女がいる。
こんな得体も知れない誰かを、むしろ興味深げに近づこうとさえする。
……彼に、自分の頼み事は、聞かせられない。
「………幽霊じゃないし。」
そこで初めて、言葉を向けた。
■阿須賀 冬織 > 「おわっ!?」
■阿須賀 冬織 > 「喋っ!………て、レナードじゃん。ったく驚かすなよ……」
返事が帰ってくるとは思っておらず。それなりの声で驚いてから、その声が聞き覚えのあることに気が付く。
そうだ、なぜか見覚えのあった服は確か以前ここで会ったときも来ていたものだったっけ。
「いやー、まっさかこんな所でまた会うとは思ってなかったや。……元気にしてた?」
何だかんだ進級して忙しかったのもあって最近顔を合わせてなかった気がして。
当たり障りのない話題をかけながら、横で同じようにもたれ掛ろうと。……大丈夫だよなこの柵。
■レナード > 「……元気ではあるけど。」
けど。
その後に続く言葉は、声にならない。
隣にくる彼と比較して、今の自分はあまりにもみすぼらしい格好をしている。
「……おめーこそ、元気そうじゃん。
彼女とはうまくやってるわけ………?」
■阿須賀 冬織 > 「んーー……。……はぁ。まあ、そう言うならいいんだけど。」
少々歯切れがわるく聞こえた答えに、本当かとしばらく疑いの目を向けて。
「えっ。……あー……。……んー、正式に付き合う…こと、にはなった……。」
その質問に今度はこちらが目を泳がせながら。そういえば確か伝えてなかったよなと。
……ちょっと前に同じ寝袋で寝ることになった(手は出していない)とかそういったことは黙る。
うっかり洩らそうものなら永遠と弄られる未来が見えた。
「んーで。お前の方は、思い出して真っ赤にならない程度には慣れたのか?」
およそ一年前の事を掘り返して少しからかう。
■レナード > 「………そっか。
付き合えたんなら、よかった……、……………。」
思い出して、真っ赤にならない程度……
その言葉で、つい頭の中にその姿が過る。
「………………。」
たった2度しか会えてないのに、今も脳裏に強く残る、あの鮮烈な記憶を。
たった2度しか知れてないのに、互いの気持ちを確かめ合った、あの屋上での出来事を。
……まだ、彼女とは2度しか会えてないことを。
「………会いたい……」
ぽつりと、言葉が漏れ出る。
「会いたい………、逢いたい……………
彼女に……、伽怜に逢いたい…………」
隣の彼のことなど、まるで忘れてしまったかのように。
ぽろぽろと、感情が口から溢れ出る。
「……逢いたいよ、伽怜…………」
いつもの反骨っぷりは、そこにはなかった。
まるで、待ち人をずっと待っている子犬のように鳴いていて。
弱音というものは、一度吐いてしまえば、止まらなかった。
■阿須賀 冬織 > 「っ…………」
彼が自分から、こうして弱音のような物を吐いているのを見るのは初めてかもしれない。
そのことに驚きつつ、落ち着くのを黙って待つ。
……もし拒まれなければそっと肩に手を乗せようとはするだろう。
その彼女の代わりになんては到底なれないだろうしなるつもりもないけれど。
友達として、寂しさをほんの少しでも紛らわせることなら出来るかもしれない…
なんてのは傲慢が過ぎるだろうか。
■レナード > 正直、既に一杯一杯だった。
追われる身になり、誰も信用できないまま、
文明からも身を置きがちになって、汚い道端を彷徨って、
人目を搔い潜りつつも、その日ぐらしに苦労しながら、
なんとかここまで心を折らずに、反撃の一手まで用意して……
「……逢いたいんだよ……僕も………」
一杯一杯だったのだ。
頼れるものも、弱音を吐露する先もなく。
心ははち切れる寸前までになっていたにも関わらず。
…ずっとずっと孤独に生きていたはずなのに。
唯一心を許しきった相手のことを思うと、こんなにも独りをつらく感じてしまう。
「………ふぅ……。」
フードを深くかぶる。その目元が彼に映らないように。
肩に手を置かれるが、それを払うことはしなかった。
そして……
「……………ありがとう、冬織。
今の僕が何をすべきか、わかった気がする。」
先の弱音を吐露していた時の声色と打って変わって、いつもの少年が戻ってきた。
■阿須賀 冬織 > 「ん、どういたしまして。……ならよかった。
俺も、お前のこと応援してるから。……あんま気張りすぎんなよ?」
何をしようとしているのかとかはわからないけれど。
無理はして欲しくないし、何より既に頑張っているのだろうからそう告げて。
「よっと。んじゃ、探してた幽霊も居なさそうだし、俺はそろそろ帰るわ。
……あ、そのうち夜の学校とか調べてみようと思うけど一緒に来るか?」
柵にもたれ掛るのをやめて。
お誘いは、まあ一人だとちょっと怖いのはあるから誘ってみた程度の軽いノリ。
■レナード > 「………全部落ち着いたら、そのときに。」
事情は詳しくは言わない。
でも、約束は取り付ける。
それくらいしかできないけれども、今はそういうものでも、希望にはなる。
その頃には幽霊騒ぎがなくなっていようとも。
「……僕も戻るし。
おめーも、ここは危ないからあまり来ないようにしろし。
じゃあね。」
そのまま、足早に去っていくだろう。
■阿須賀 冬織 > 「ん、じゃあ約束ってことで。
あー……でも怒られることないし時々来たくなるんだよなあここ。眺めいいし
んじゃまた。」
なんて従う気のない返事を返しつつ、後姿を見送って。
追うことはなくゆっくりと階段を下っていくのだろう。
ご案内:「大時計塔」から阿須賀 冬織さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からレナードさんが去りました。