2021/10/20 のログ
ご案内:「大時計塔」にセレネさんが現れました。
■セレネ > 月に一度の楽しみ、満月。
幸いながら晴れの天気、黒い空に煌々と丸い金の月が輝いている。
冷たく澄んだ空に満月は一段と映え、時計塔の最上階に到達した少女は満足げに笑みを浮かべた。
『今夜も良い月ね。10月の満月は…狩猟月、だったかしら』
月も、その満月の名も、己に似合うものであろう。
冷える風を受けながら、転落防止用の柵まで歩き体重を預けるように肘をつきながら蒼を細めた。
島の夜景と空には見事な満月。そして己の気に入る場所。
こんなに気分が良い事は無い。
月光を受ける床には一人の影と、双翼が一対。
ご案内:「大時計塔」に暁 名無さんが現れました。
■暁 名無 > 「誰かしら居るだろうかと思ったが、まさかお前さんとはな。」
月明かりに照らされた時計塔、その最上部。
本来生徒は立ち入り禁止であるはずのその場所に佇む人影へと、相手にとっては聞きなれているであろう声が掛かる。
「生徒は立ち入り禁止って言われてるはずだぞ。
まあ、昇りたくなる気持ちも分からんでもないけどな。」
階下から人が上がってくる気配など無かったはずで、もしやすると驚くかもしれない。
実際、その男は今まさにこの瞬間、時計塔の最上部に現れたのだった。
伴うのは僅かな周囲の魔力の乱れ。転移魔術を行使したであろう痕跡のみ。
■セレネ > 「……。」
耳に誰かの声が聞こえれば、蒼を何度か瞬かせ。
聞いた声がやけに聞き慣れたものだったから、声の主が誰だかすぐに分かった。
「……すみません。
分かっては居ましたが一度は上ってみたいと思っていたので。」
謝罪と共後ろを振り返れば、少し厳しい表情で相手を見る。
そうして物影に重なるように立ち位置を変えるだろう。
視える魔力は乱れており、唐突に来た事を鑑みるに転移魔術でも使ったのだろうか。
…だが、彼の使う転移魔術は人一人移動させられるものだったろうか。
それに、彼の髪や目は何時も見る色とは違う。
若干の警戒をしながら、無難な答えを相手へと投げかけて。
■暁 名無 > 「……一度、か。
まあいい、多少目を瞑ってやろう。折角の十三夜……は過ぎたんだっけか。
まだどうにも日にちのズレが直らないな……」
うっすらと発光を伴う髪は紅く、眼鏡越しの瞳もまた同様。
やや熱に浮かされてるかのように肌が上気しているが、それら全てこの男の普段の姿を知る者には異質に見えるだろう。
「何をそんな怖い顔をしてんだ、別に怒りゃあしないよ。
お前さんのこった、月光浴に来たんだろ?咎められるようなものじゃない。
うっかり落ちることも無いだろうしな。」
ふぅ、と息をついて目を閉じる。
髪や瞳の色もそうではあるが、今最も暁名無を異質たらしめている事象がある。
大気中に満ちた魔力、満月の光を受けて活気づくそれらが彼の周囲数センチから全く存在しなくなっていた。
「ま、改めて。良い月夜だな、セレネ。」
■セレネ > 相手の日にちのズレについては、今年ひと月もズレていたのを知っているのであえて指摘する事をしない。
……彼が纏う紅、己としては嫌いな色だ。
過去何度も彼に満月を見ようと誘っていたが、頑なに研究室から出なかったというのに。
「――あぁ、良かった。怒られるかと思ってました。
咎められないのなら安心です。えぇ、落ちないように気を付けてますから、そこは大丈夫。」
相手は教師。生徒を指導する側。
特に彼は教師と生徒を明確に分けて接している節が見える。
だからこそ、こういった場所に己が赴いている事を知られたくはなかったのだが…それなりに長い付き合いだ。
理解してくれているようで助かった。
ただ、引っかかるのが彼の周囲の魔力が消え失せている事。
視える目を持つからこその違和感か。蒼を細めつつ
「…えぇ、とても良い夜ですね、先生。」
■暁 名無 > 「今夜だけだぞ、日頃から入り浸る様になられたら困るからな。
……ふぅ。」
どこか浮ついた足取りで進んでくると、柵に肘を乗せ夜風に目を眇める。
話をしている間も紅の髪は鮮明さを増していく。
「満月の夜に出歩くなんざ何年振りだ……?
少なくともお前さんと知り合ってからは一度も無いから、もう一年半以上は前か。下手すると二年以上って線もあるな。」
夜風になびく髪は普段の様に束ねられておらず、髪紐は男の手首に括られていた。
再度息を吐いてから、静かにセレネへと視線を向け。
「散々誘ってくれたのに尽く断って悪かったな、しょうがないんだよ、こうだから。」
真っ直ぐに蒼を捉える、朝焼けの様な赤。
視線を合わせれば、その瞳の奥には夥しいほどの魔力が渦巻いていることが覗えるかもしれない。