2021/12/12 のログ
ご案内:「大時計塔」に霧島 孝介さんが現れました。
霧島 孝介 > 「さむーい、さむたーまーしー、さむぎょぷさるー…」

そんなことを言いながら大時計塔の最上階のフロアにたたずむ青年。
12月もすっかり中旬に差し掛かる頃。昼間はまだ暖かい日はあったりするが
夜となれば連日、極寒(青年基準)に見舞われる。

「…ってガチで寒いな」

風は少し強く、吐く息の白さが街のネオンによって証明されて。
しかし、静かに物思いに耽れる絶好の場所であるここに来ることは止めずに
暖かいカフェオレの缶を持って、それで手を保温しながらその場にたたずむ

霧島 孝介 > 「…はぁ…」

最近、この島は平和だ。
いやまぁ、落第街の怪盗の件は勿論あるのだが
1カ月前は戦争があって、ここに居ても戦禍の音が聞こえたんだが

平和が一番だ。このまま、何事もなくクリスマスを迎えられたら良いな、と思う。

「人が死ぬのは沢山だよなぁ…」

ふと目を閉じれば、『あの時』の光景が映る。
硝煙、曳光、爆音、熱風。
そして死体、死、死、死死死死死

「ッ!ぁっ…!」

あの光景が忘れられない。
もしかしたら、もっと早ければ
そんなことを考えてしまう

俺の力だったら…何もかも解決出来たのではないか、と

ご案内:「大時計塔」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > 「こーら、此処ァ生徒立ち入り禁止だぞ。」

暇にかまけて見回りがてら散歩をしようとやって来た時計塔。
このクソ寒い中でも意外と訪れる奴は多いらしく、
夜露や凍結で足元も滑りやすいからと教員の間で見回りを強化しようという流れもあったりなかったり。

そんなわけで来てみたら案の定男の独り言が聞こえた。
ホント、クソ寒い中元気だよなあと思いつつ、一応声を掛けてみる。

「知らなかったってんなら初犯は見逃してやるから、風邪ひく前に帰っとけ帰っとけ。」

まあ初犯じゃないんだろうな、とは思うものの、俺も立場上言っとくことは言っとかないとなので。
高圧的になり過ぎても何だから、ニヤリと笑みを浮かべてはみるが。

霧島 孝介 > (これがPTSDって奴かな?)

奥歯をギリッと噛みしめて、後悔を振り切る。
が、助けられなかった人たちの顔が忘れられない。
トラウマ。ではないが、心残りが…

などと考えていたら

「ッッ!!?」

ビクッ!

突如聞こえた男性の声に、そのような擬音が似合いそうな程肩を撥ねさせる。
え、マジ?生徒立ち入り禁止…ってことは先生?
冷や汗をダラダラ流しつつ、心拍数が上がる。

ぎこちない動きで、そちらを振り向けば、ワオ!大人のお兄さんが!

「っっ~~~っすよねぇ~!
 い、やぁ…ここで落とし物しちゃって、立ち入り禁止とは知らずに探してたんですよね!
 あはは、見つかって良かった!」

ん~、全部嘘!
相手の表情から、高圧的ではなく、業務として一応注意しているのは解るが
意味のない嘘をついつい吐いてしまい、アハハと笑いながら後頭部を搔く。

暁 名無 > 「吐くならもう少しマシな嘘吐けっての、小学生か。」

見事なキョドりっぷりに、一目でああコイツ初犯じゃねえなって理解してしまう。
危ないのは事実だし、だから立ち入り禁止にされてんだからあんまり侵入しないで貰いたいもんだが。
……ま、言う事は言ったし、いっか。

「ったく、このクソ寒い時期に更に寒い様なトコにまで来やがって。
 飛び降り志願なら別の手段にしろよ、掃除が大変なんだぞアレ。
 ……ま、見た感じそんな風にも……見えねーが。」

コートのポケットから煙草を取り出そうとして、ココアシガレットの箱が出てきて一瞬言葉に詰まる。
そういえば減煙中。外で無意識のうちに吸わない様にそれっぽいもの入れといたんだった。
とりあえず煙草っぽいことでお馴染みの駄菓子を一本取り出し、咥えて。
ついでにもう一本取り出して、嘘の下手な男子生徒へと差し出す。

「一本食うか?」

霧島 孝介 > 「あ、はは……」

同年代や少し年上の生徒と話すのはようやく慣れたものの、明らかな大人相手には
1人を除いてまだまだコミュ障を発揮してしまい、相手のツッコミには苦笑いを浮かべる。

この人は、校舎でチラッと見た気がする。
確か、非常勤の先生で、その陽気さと顔立ちの良さから女子生徒に人気だった気がする。
つまり陽キャ。自分とは正反対の存在でついつい萎縮してしまい

「と、飛び降り…そ、そんな勇気はない…ですね…はい」

ビュービューと風が吹き荒れる中、手摺越しにチラッと下を見る。
地面までは数十mほどあり、飛び降りれば即死、あるいは苦しみながら十分死ねる高さだ。
そんなことを想像した身体が凍り付いて、ゆっくりと手摺から離れる。

「え…あ、はぁ…」

何故か差し出されたココアシガレットを受け取る。
え、なんでこれ?と疑問に思いつつ男性の方を見れば、タバコのように咥えていて
微妙に食べ方が分からないので自分も真似するように咥えてみる

暁 名無 > 「おっ、ようやく実感したか?
 見ての通り、落ちりゃあ十分死ねるような場所なんだ、
 飛べるわけでも無いんならあんまり気安く立ち入るんじゃねーぞ。」

飛べるからと言って立ち入り禁止の場所に侵入して良いのかと言われるとダメと答えるしかないが。
まあ、生徒に注意するたびに思うが来たくなる理由は解らなくもない。俺も学生の頃ちょいちょい忍び込んだから。

「ふー……寒っ。
 そんで、お前さんこのクソ寒い中わざわざ入ったら怒られるような場所に来てなーに呻き散らしてんだ?
 上ってくる途中、下からでも聞こえたぞ。期末の勉強がさっぱり出来てないとか?」

口に何か咥えてるだけでも少しは落ち着くのが喫煙者の悲しいサガ。
転落の危険があるのを注意しに来て誤って俺が落ちたんじゃ洒落にならんので時計塔の壁に寄りかかって男子生徒へと訊ねる。

「と、その前に名前も知らん相手と話すのもアレか。
 俺は暁名無、あー、えーと、幻想生物に関する研究と、担当の先生の補助をしてる。まあ、シラバスとかに載ってるから知ってるか。」

ニィ、と笑いながら自己紹介。
正直まだ実感は無いからちょっとたどたどしくなってしまったけれども。

霧島 孝介 > 「…は、はい…」

異能的に、飛行をすることは不可能ではない。
だがここでそれを口に出すと話がややこしくなるし、反抗していると捉えられそうで。
とりあえずは男性のいうことを聞いて、落ちないように縁からは離れよう。

「そこまで呻いてないですよ!?
 …や、もしかしたら、期末の勉強より難しいかもしれません…」

そんな聞こえる程呻いてはいないはず、とツッコミを入れつつ
内容を聞かれれば、期末の勉強でないことは否定しつつも、明らかにはせずに

「あ、俺は……あー…」

暁 名無。そうだシラバスで見た事ある。
当時は『ビーム兵器反射しそう』などと冗談のつもりで考えていたが
実際目の前にするとそんな冗談は言えずに

そして、男性の自己紹介を聞けば、こちらも名乗ろうとするが
名乗ったら処分を食らうのでは?と思い、名乗るのを躊躇してしまう

暁 名無 > 「ん、解れば宜しい。
 やるなって言われてる事ほどやりたくなる年頃だと思うが、
 まあやっちゃいけない事ってのは往々にして理由があるわけだからな。」

コンセントにシャー芯突っ込んじゃいけない、とか。
混ぜるな危険の洗剤を混ぜちゃいけない、とか。
大抵の場合は命に関わる事柄だから禁止されてるというのは理解して貰いたいもんだ。はぁ。

「ほーん?学生の本文は学業だろ、それより難しいとなると大概だな。
 まあ変に悩んで勉強が疎かになられるのも困るだろうし、俺で良けりゃ悩み相談くらいは受けるが。」

ポリ、と咥えた煙草風菓子の端を齧りながら。
近年は教師としての仕事に追われて疎かにしていたが、元々そっちの方が得手ではある。
本職のカウンセラーには負けるが、生徒の話を聞くくらいは苦じゃ無いし。

「何だよ、別にチクったりはしねーさ。
 非常勤の、謂わば仮免みたいな先生だしな、お前さんをとやかく出来る権利も無いし。
 ……入っちゃいけないとこに入るな、って注意すんのが関の山さ。」

ぽりぽり。一度齧ってしまうとそのまま食べてしまうのがこの菓子の悪いところ。
いやまあ、本物のタバコも時間経過で無くなってくから、ジェネリックとしてはある意味正常かもだが。

霧島 孝介 > 「は、はい…つ、次からはやらないようにします」

確かにやるなと言われてやりたくなる年頃ではある。
実際、ここは立ち入り禁止だ、と言われるのは2回目。
それは頭では分かっているつもりで、目立たないようにしてたが
今回、教員という立場の人間に注意を受けてしまった。

いい場所だったのだが、暫く…もしくは二度と来られないか、と落胆したように肩を落とす

「…人に話せる悩みじゃないから、悩んでいるんですよ…」

ぼそりと呟く。
そりゃそうだ。落第街で人の死が、どうのだなんて
まず一般生徒が落第街に入るな。という所から説教を食らうだろう。
頭を抱え、眉間に皺を寄せつつも、それ以上のことは言わずに

「だ…、な、なら…
 き、霧島 孝介。2年生…です」

唇の煙草風菓子を取って、自己紹介をする。
そして、ぺこりと小さくお辞儀をする。
嘘を言ってる感じではないし、何となく、この教師は生徒に寄り添うタイプだと信頼して
こちらも菓子をポリポリと食べ始めて

暁 名無 > 「まあ……他の先生に見つからんようにな。」

そこまであからさまに落胆されると、何か俺が悪いみたいじゃーん。
立場上、生徒から嫌われる様な事をしなきゃならない事もあるとはいえ、凹まれるとそれなりにこっちも凹む。
いっそ転落防止を徹底して時計塔を展望台くらいに改造しちまうか?流石にそれは無理か。

「そりゃまた大層な悩みだな。
 ……でも気付いてるか?
 お前さん、それはもう人に言えないような事に足突っ込んでるって白状してる様なもんだぞ?」

全くもう、この学校の生徒は本当にまあ……いや、振り返ってみれば俺もそんな生徒だった気はするけども。
もう少し大人になって、心配する側の立場に立つって事をして貰いたいもんだ。

「おう、霧島……孝介か。2年って事はもうすぐ3年だろ?
 同じ学年にゃ将来について考え始めてる奴も居るってのに、一体何を悩んでんだ?……あー、シモの話?」

だったらあんまり相談に乗れないかもしれない。

霧島 孝介 > 「っ……はい」

他の先生、という単語に視線を泳がせる。
目の前の男性より前に、正規の教師にここで見つかった事がある。
その教師とは仲が良かったから強く言われなかったが…
厳しい先生が偶々、見回りに来たらどうなるかわかったもんじゃない。気を付けようと固唾を飲み込んで。

「んなっ…さ、察しが宜しいようで…!」

自分では小さく呟いていたつもりだったが、聞かれていたようで
焦ったようにしつつも、深呼吸をしつつそう返す。
これ以上ボロを出すわけにはいかない。落ち着け、落ち着くんだ霧島孝介…!

「はぁ…将来、確かに将来のことも考えなきゃ…
 ってシ、シモは健康ですけど!?」

将来という単語を聞けば、神妙な表情をして天を見上げる
自分は進学するだろうが、どこの大学に行くかも決めていない。
俺は何をやっているのか、何をしたいのか…と考えていれば、変な発言が飛んできてすかさずツッコミを入れる。

暁 名無 > 「お前さん嘘も隠し事も下ッ手だなあ。」

既に注意を受けてるんだな、と相手の反応から手に取る様に分かる。
やっぱりもう生徒を入れない事より生徒が来ても問題ない様にするか、
あるいは……来たくなくなる様なテイストに改造するか。
ドギツイ極彩色の照明でビカビカ照らしたりしたら来ようとも思わなくなるだろうか。うーむ。

「こんだけ静かな場所なのに、小声で呟けば分からねーだろとでも思ったか。
 まあそういう馬鹿な奴は嫌いじゃないが、あまり関心はしないぞ。人に要らん心配を掛けることにもなりかねんしな?
 まっ、自分の保身の方が勝る様な悩みなら、そのうち自然と解決するだろ。」

俺の察しが良いんじゃなくて、孝介の目論見が甘過ぎるだけだと思うが。
まあ、これ以上踏み込むのは止めとくか。無理に詮索する事でもあるまいし。

「学生である期間なんてあっと言う間だからな。
 一応自主的に留年して別の授業も受けたりとか出来るけども……それでも、ただ漠然と時間を浪費するのだけはオススメしないからな。
 まだ考える余裕があるときに考えとけ。
 なんだシモの話じゃないのか……良かった、シモなら何相談されても『ごめん、わからん』しか返せないとこだった。」

おおよそ男子高校生が抱えるそっち系の身体的な悩みとは無縁だったからな、昔っから。
自慢に思われるかもしれないけれど、実際自慢である。ふふん。

霧島 孝介 > 「んな、急に、何を言ってるんですか…?」

実際、こういう駆け引きに関しての経験値は低く。
表情や視線から嘘だとバレやすいし、そもそも隠し事が苦手である。
だから嘘が必要な場面では顔を隠したりするが…
こういう言葉の端々からも嘘であるという証拠を見せてしまっているため、結局意味ないのだ。

「た、確かに…
 ………自分の保身…」

確かに、風の音以外鳴らないこの場所で、相手の聴力がどれ程の物かわからないのに。
言葉を発すれば拾われてしまうのは自明の理。しまった、と頭を抱える。
そして、相手の言葉を小さく復唱すれば、悩みが解決する処か、頭の中でぐるぐると循環してしまって

「それは…強く思います。もう2年の12月。
 まだ12月、という人は居ますけど…。はい、わかってます。
 
 そ、それなら何で振ったんですかその話題!」

自分の将来のやりたい事、それが未だに決定せずに漠然とした不安に包まれる。
異能で誰かの役に立ちたい。そうは思うが、いい方法が思いつかない。
『考える余裕があるときに考えとけ』。自分では必死に考えているつもりだが…

と、何故かシモの話で自慢気の男性に突っ込む。
何なんだこの人は!?掴みきれんぞ!!

暁 名無 > 「はっはっは。
 まあ俺の観察力がレベチだってのもあるけどな。
 幻想生物なんて一秒後には何するか、どうなるか分からん生き物を普段から観察してんだ。
 まだまだ青臭い学生の腹芸なんて簡単に見抜けるさ。」

これは純然たる自慢だ。
いや、まー、元をたどれば学生時代の人間観察が発端だから順序が逆転してるかもだけど。
それを抜きにしても孝介の嘘や隠し事の下手さは、よく言えば年相応だと思う。

「人に言えない悩みの人に言えない理由なんて大抵2つだ。
 単に恥ずかしくて言えないか、言う事で自分に何らかの不利益が起こり得るか。
 お前さんの様子を見る限り、どうも前者じゃあ無い気がしてな。」

別に責めるつもりもない。むしろ当然だろうと思う。
ただ、自分の保身が勝る様な悩みであれば、悩みとして抱えてるのは時間と思考の無駄だ、とは思う。
けどそれはあくまで俺個人の考えでしかない、抱えていたいのなら、まあ抱えていれば良い、とも思う。

「年取ると時間の経過が加速度的に増してくぞー
 こないだの事だと思ってたらもう4~5年経ってたりするからな。
 ……いやマジで。怖いぞー、これは。

 え?いや……ナニがデカ過ぎて生活に困ってる、とかならアドバイスできるかな……って……。」

はてさて同じくらいの年の頃の俺は進路をについて何か悩んで……ねーや。
進路とか一切考えてねーや。めちゃくちゃ自主留年重ねてたわ。受けられる授業全部受けようとしてたわ。
……まあ、極論そういう進路というか、将来もアリと言えばアリということだけど。
積極的に勧めたい生き方じゃないよな……我ながら……。

霧島 孝介 > (さっすっが…暁先生、幻想生物の研究もしているって話を聞くが
 確かに観察眼が鋭い。俺なんて赤子だな…!)

純然たる自慢を素直に受け止めて感心する。
たまにだが、人生二週目か?って思えるほど駆け引きやメンタルの強い同年代の奴を見かける
恐らく、『そういう場面』に慣れているのだろう。
そう考えれば、男性が思うように、この青年は年相応なのかもしれない。

「…鋭い、ですね」

紡がれた言葉に、息を呑む。
俺の悩み?言えるか。言える訳ないだろ。
恥ずかしいなんて次元の悩みじゃない。それだったらナニのサイズの話をした方がマシだ。
今はまだ、悩みを抱えていることを選択して、口を閉ざす。

「あ、あぁ…動画で見ましたよ。
 ジャネーの法則、って奴ですね…話を聞くだけでも恐ろしいですよ

 ってデカすぎませんし!?というかそれ自分のが大きい自慢ですか!!」

時間の経過とか体感速度は動画で色々と見たが、どうやら体感での人生の半分は20歳前後だとか何だとか。
恐ろしい話である。
そういえば、自分の恋人は3年だが進路について聞いて居なかった。
卒業するように自分からは言ったが…一応、先輩としてアドバイスを聞いておこうかと考える。

暁 名無 > 「まあ、人間を観察して得する事なんてほぼ無いんだけどな。
 気付いてないフリとかも必要になったりするし、そんでその結果損する事もあるし……」

むしろ損する事の方が多い気もする。多いな。多いわ。
まだ学生の頃なら良かったが、今や立場ある大人だから、何かとしがらみがね……。
ちょっとだけしょんぼりした気持ちになりつつ、俺は大きく伸びをした。そろそろ身体も冷えてきてしまった気がする。

「年の功ってやつかな。経験の賜物だよ。
 ま、折り合い付けるか抱えきれなくなったら話に来ると良い。
 俺で良けりゃ大抵学校の何処かに居るし、呼び出すなら職員室に行けば一発だ。
 これでもこの島には学生時代と併せて10年は居るんだ、島内に関する事なら多岐に亘って力になれるさ。」

そう言っても悩みを語らない以上、詮索は不要だ。
抱えきれなくなった時に彼なりに打ち明けられる相手に打ち明けたりするのだろう。
ただ、その結果相談相手を同じ坩堝に落とさないかだけが、少し心配ではある。
だから一応、選択肢としては提示しておく。

「原因は9割9分仕事ってヤツなんだけどね……
 ま、ともかく若い内なんて一瞬だぞ一瞬。
 悩みを抱えてるのも良いけど、即断即決も出来るようにならんとあっと言う間におっさんだからなー。

 いや、俺は流石にそこまでは……一応人類の範疇には収まってると思うし……。」

どうだろう、他の男と較べた事ないから分かんねえな。
ちょっと確認してみる必要はありそうだ。方法は……まあ伏せるとして。

「さて、そろそろ俺は学校に戻ろうかね。
 孝介も、気が済んだら見つからない様に降りろよ、あと階段ですっ転んだりすんなよー?」

霧島 孝介 > 「人間の観察、ですか…」

そんなこと自分はした事ないと目を丸くして思考する。
やはり、自分と目の前にいる男性とでは含蓄が違う。
こちらも寒さを背筋に感じて、手に持っていたカフェオレの缶を一口飲んで

「……はい、ありがとうございます」

2人目だ。自分に相談しろと、頼っていいと言ってくれた大人が。
苦悩し、自分で抱えきれなくなった時に頼れる存在が居るというのは大きい。
それを痛感したのもこの場所で、相手も暁先生と同じく教師だった。

(やっぱり、敵わないな…)

そう考えつつ、感謝を述べてお辞儀をする。

「た、確かにそうかもしれませんね。
 はぁ…肝に銘じておきます。

 っていうか…男子生徒相手にもセクハラって成立しますからね?」

目の前にいる人物がおっさんには見えないが、とりあえず困りながらも頷いて、アドバイスを聞き入れる。
そして、ちょっとだけ反撃のつもりで、ジト目でその様に返して

「俺をどんな奴だと思ってるんですか…?
 暁先生こそ、風邪引かないでくださいよ」

そうして、暁先生を見送り、自分はその後に周囲の目を警戒しつつ、時計塔を後にするだろうか。
悩みが解決したわけではないが。もう少しだけ、もう少し。自分が潰れる寸前までは抱えてみよう―――

暁 名無 > 「言うほど大層なもんじゃねーけどな。
 何かする前はこう動く、とか何か考えてるときはこんな顔をする、とか。
 まあ経験則も多分に含まれるから、一概に型に嵌められるもんでも無いけど。」

元々は戦闘時の予備動作を知る事から始まった観察、という癖。
長く続けていればそれなりに応用も利くようになるもんだ。

「ん、良いよぉ礼なんて。
 先生、ってのは先に生きるって書くだろ、先に生きてる分、経験や含蓄を後続に渡すのが仕事だしな。」

ひらりと手を振って一足先に階段へ向かう。
さて校舎に戻ったら何をしようか。そもそも暇だからここに来たんだったし……研究室カッコ仮の改造かなあ。

「アッハッハッハッハ。
 褒められたもんじゃないが、学校にセクハラで訴えても『ああまたか……』って顔されるだけだぞ。
 それじゃーな、孝介。学生生活、エンジョイしろよー」

ココアシガレットをまた一本口に咥えて、俺は階段を降り始める。
まあ、訴えられれば相手が男子でも女子でも怒られるっちゃ怒られるんだけども……

ま、慣れたもんだし!

ご案内:「大時計塔」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から霧島 孝介さんが去りました。