2020/08/09 のログ
■レナード > 「……やっぱり。
罠じゃん。ま、おっさん掴んで歩いていく趣味ないから。」
まあ、ここで騒ぎを起こそうものならそれこそ本職の方々が数分足らずでご到着になる。
隣に付く形になりながらも、ひとまず歩く。
「…名前。」
ああ、彼は名乗っている。
だが、自分は名を名乗っていなかった。
当然だ。繋がりを探られることが、まずいのだから。
「…………。」
思案する。考える、考える。
この場を穏便に切り抜ける方法を。
…そうか、生徒指導部なら、少なくとも教えられる…委員に精通するだけのキャリアはあるわけだ。
教育係として、彼はもしかしたら、縁があるかもしれない。
ついでに、学園の生徒のようにも思えない。
それに自分の情報は上層部と一部の関係者しか、残らない。
そして、ここに来るのは、一度だけ。
なら、いいか。
「ウルトールです。幌川教官。」
■幌川 最中 >
「当たり前のように先輩を逮捕しようとするんじゃありません」
自分でもダル絡みだと理解しているし、
それ故に同じようなリアクションをされることが多いのでどうにも慣れてはいるが。
女子学生なんかは5回くらいつきまとって私人逮捕寸前で教えてくれたりするが。
それにしても、どうにも妙なリアクションに少しだけ首を傾げた。
まあいいか、ワケアリの学生結構多いし、と一人で納得しながら肩を竦め。
名乗りたくないコたちはマジで呪術師の才能あるよな~。諱~。
……みたいなことをゆるゆると考えながら、短く息を吐く。
「ウルトールちゃんね。猫みたいな名前してるな……。
あ、これ褒め言葉だから。俺猫派だし。猫。これハラスメントになる?」
彼の心中を知ってか知らぬかそう言ってから、笑い。
いくら“それっぽい”幌川でも、初対面の相手を疑うほど不躾ではない。
「やだなあ幌川先輩でいいよ。最中先輩、でもね。
教官なんて大層なもんじゃないとも。……つーか事実として俺いま謹慎中だし。
あ、でも今日までだから。今日までだから明日からは教官でもいいかも」
ふ、っと息を抜いてから一足彼に先んじる。
そして、ゆっくりと振り向いてから、アロハシャツのまま。
「声掛けとくけど……誰かと時間とか、約束してる?」
アポとってるんなら、と。
なんでもない日常風景の一つ。遠巻きに「まだ謹慎しときなよオッサンー」と声が掛けられ。
自分の愛すべき日常の一つの中にあっさりとウルトール少年も組み込んだ。
■レナード > 「……ハラスメントになるかどうかは、個人の裁量に依るところが多分ですから。」
まあ、同性だから。
それに委員会入りする前に、関係者を査問会送りにしたら心証が悪い。
ここは個人の裁量という言葉で、明確な判断を避けた。
そんな、彼の軽いノリに付き合わされながら歩いていると、彼が一歩前に出た。
アポはあるか、という話だった。
考えるまでもなかった。
「ええ。刑事部の方と。
待合せ場所の指示は既に受けています。
幌川教官との共連れもここまでです。」
簡潔に、情報を伝える。
そこに、隙がないように。
■幌川 最中 >
「アハハハ、もしハラスメントだったら相談ダイヤルによろしく」
どうにも距離を取られてしまった。
案外自分に敬語を使う学生は、そう多くもないのだが。
なんか怖がられるようなことしちゃったかな。幌川さん本日のしまったその2。
彼からその言葉を聞けば、「相わかった」と片手を上げてからひらひらと振る。
「刑事部のほうに『ウルトールちゃんが待ってるよ』っつっとくから。
いやあ、そうか。刑事部のほうってんなら、お疲れさんだなあ。
ほんなら俺はこれで。もしなんかあったらいつでも連絡してよ。
俺にできることならなんでもやるし、俺にできないことはなんもしないからさ」
多分デバイス支給されるだろうから、と。
風紀委員会内の統括連絡用デバイスには委員の連絡先が収められている。
「“風紀委員会”の悩みでも、“それ以外”でも。先輩は案外使えるもんだよ」
赤いアロハシャツの男が庁舎内に消えていく。
歩いていく。歩いていく。歩いていく。そして、ふと立ち止まって。
人気の少なくなった廊下で、小さく呟く。
「……俺なんかミスったかな……?」
もしかしたら呪術師だったのかも。悪いこと聞いたなあ。
はー、諱、諱。
ご案内:「委員会街 風紀委員本庁舎前」から幌川 最中さんが去りました。
■レナード > 「相談ダイヤルに掛けあうよりも、ここで声を荒げた方が即効性があるかと。」
どうやら、距離を感じられているらしい。
ここで多少、ユーモアのあることでも言っておこうか。
…彼からすれば、自分が突然"敬語になった"のが、引っかかっているようにも思えたが。
立場というものもあるだろう。だが、今回はそれが功を奏した。
「恐縮です、幌川教官。」
端的に、そう言葉を返す。
…言葉は、そのほとんどが余分になりがちだ。
必要なことだけ、端的にそれを伝えればいい。
少なくとも、"ここ"ではそうしていくつもりだから。
「では、縁があれば。
私もここで失礼します。」
庁舎内に消えていく、アロハシャツの男に対して、その場で一礼しながら見送っていった。
■レナード > 「………。」
独り、刑事部のエリアに足を踏み入れる。
廊下をこつこつと規則正しいリズムで、指定された場所へと向かっていた。
迷いはなかった。事前に場所を聞いていたのも、時間を指定されていたのも本当だから。
一度入ってしまえば、切り替えてしまえば、
後はプログラムのように動くだけでよかったのだから。
その決心がつかない間に、幌川と遇ってしまった。
…だが、もう大丈夫だ。
レナードは、自分を欺き続けられるという類の自己暗示が得意だった。
「帰りは、誰にも会わないよう計る必要がありそうだな。」
変わったのは、敬語だけではなかった。
■レナード > コン、コン。ドアをノックする。
少し遅れて、中から声が聞こえた。
ドアを開けて、後は中に入るだけ。
…紆余曲折あったが、ここから始まるのだ。
ご案内:「委員会街 風紀委員本庁舎前」からレナードさんが去りました。