2020/09/05 のログ
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁地下勾留室」に織機 雪兎さんが現れました。
■織機 雪兎 >
「ひいいいいあああああああああ!!!」
地下拘留室に情けない悲鳴が響く。
続いてドンドンドン!と扉を連打する音。
その音のかき消されて聞こえ辛いが、拘留室にはカサカサカサ、と割と聞きたくない音が大量に聞こえてくるだろう。
「やばいやばいやばいって! 開けて!! たすけて!!!」
背中にボンベを背負い、ガスマスクを装着した少女――織機雪兎がわめいている。
ムカデの大発生が起きた地下拘留所、そこのムカデ駆除に駆り出された――と言うか様々なミスの帳消しと引き換えに押し付けられたのだ。
ムカデ駆除ぐらいなら、と思って向かってみれば、予想の二十倍くらいムカデが居た。
半狂乱で地上へ至る扉――どうやら向こうから抑えられているらしい――を連打し、ドアノブをガチャガチャガチャ!と回す。
■織機 雪兎 >
「ガサガサ! ガサガサいってるううううううううううううう!!!!」
背後から聞こえてくるあまり聞きたくない音の大合唱。
必死でガチャガチャガチャ!!!!とドアノブを回して全力で押すも、向こうからガッチリと押さえつけられていてビクともしない。
ドアの向こうからは『殺虫剤持たせただろ!!さっさと殺せ!!』『ガスマスクと酸素ボンベも持たせただろ!!早く殺せ!!』などと同じように必死な声も聞こえる。
「あ、ああ、ああああああ!!!!」
その声を聞いて思い出したかのように殺虫剤の噴霧器を取り出す。
いや取り出せない。
両手が、いや全身がガクガクと震えていて思うように動かない。
甘かった。
精々十匹程度のムカデを退治すればここ最近のミスが帳消しになると嬉々として飛びついたのだが、まさかこんな三桁に届こうと言う数のムカデを相手することになるとは。
「あああ!! あああああ!!!」
ガラン、と噴霧器を取り落とす。
慌てて拾おうとしたらムカデがわさわさと這い寄って来て、慌てて立ち上がる。
背中の殺虫剤のボンベに繋がったチューブを引っ張って、やっとこさ唯一の武器を手中に収めた。
■織機 雪兎 >
「こ、ころして……ころして!!!!」
もう四分の三狂乱である。
噴霧器のトリガーに指こそかけているものの、それを引くだけの指の力が入らない。
楽になりたいと言う気持ちから思わず口から漏れた言葉には『お前が殺すんだよ!!』と背後の扉の向こうからの声。
「んぐ、えぅ、あああおう!!」
吐きそうになるも、ガスマスクをした状態で吐いたら大変なことになってしまう。
がたがたと震える手で噴霧器を構えるも、一体どこへ向けて放てばいいのか。
正直密室なので何も考えず引き金を引けばいいのだが、正気度が残り五ぐらいの状態ではその判断が出来ない。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁地下勾留室」に日下 葵さんが現れました。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁地下勾留室」に燈上 蛍さんが現れました。
■日下 葵 > 「現場ってここです?
はぁ、すでに先に別の委員が処理にあたっている?」
『あのポンコツ中で逃げ回ってばっかりで全然作業進まないんスよ!』
ムカデが大量に発生したという情報があった。
そこに応援に行ってくれと上司に言われて訪れたのがここ。
扉の向こうからは何か映画でしか聞いたことの無いような悲惨な声が聞こえていた。
(この声って雪兎さんですよねえ……)
自分と一緒に応援に来た風紀委員をちらりと横目に見て、ガスマスクをつける。
彼がガスマスクを着用するのを確認して、扉を開けてもらう>
■燈上 蛍 >
応援に行ってくれと言われた人間その2である。
風紀委員ってこういう事もするんですねと思ったのは内緒。
白い花を頭につけた長身の青年は、憂いの表情に紅橙眼を細め、
指示に従ってガスマスクを装着している。
「……開けても大丈夫ですか、これは。」
安易に開けたら悲鳴の主と一緒にムカデ漏れてこない? 大丈夫??
一応許可が出れば、冷静に開ける男ではあるが…。
■織機 雪兎 >
「あああああああ!?!?」
扉を背にガタガタ震えていれば、その扉が開く。
震える脚では身体を支えきれず、ごろんと仰向けに転がって。
ムカデは扉の向こうからの光から逃げるようにガサガサガサッと散会した。
「あ、ああ、あ――?」
ガスマスクを被った風紀が二人。
顔が見えないので誰だかわからない。
仰向けに転がったままその二つのガスマスクをぽかんと見上げていれば、
『閉めろ閉めろ!!どけ!!』
室内に蹴り転がされ、扉を閉められた。
「あああああ!!ああああああああああああ!!」
ムカデのような動きで地面を這いずりながら閉まった扉に縋り付いてダンダンダン!!と扉を叩く。
■日下 葵 > 「……落ち着いてください。
あなたがムカデみたいな動きをするとうっかり間違って駆除してしまいそうです」
やっぱり雪兎さんだった。
フルフェイスマスクなので顔は見えなかったが、
動きと声でほぼ確信した。
地面を這う彼女をゴンッと軽く頭をどついて、
殺虫剤の噴霧器を構えた。
「えっと、燈上さんでしたっけ?
見ての通り彼女は色々限界そうですので、
私たちで駆除することになると思います」
よろしくお願いしますね。
と笑って、再度カサカサと這い寄ってくるムカデに殺虫剤を吹き付けていく>
■燈上 蛍 >
光景に流石に一歩たたらを踏んだ。
虫にそこまで抵抗がある訳じゃないが、流石にこの量はヤバイ。
それに発狂している同年の子もヤバイ。
燃やした方が早いんじゃないかなんて思ったけれど、
ここは室内だ。冷静になろう。なりたい。
「ああ、ええ……最近刑事部へ配属になりました…。
燈上 蛍(とうじょう ほたる)です。」
思わず異能の本を出そうと髪に手を伸ばしかけたのを止めて、
殺虫剤のトリガーに手をかける。
「大丈夫でしょうか、彼女…。」
哀しくも一度出れたのに、
外の風紀委員によって戻されてしまった雪兎の状態を見て葵に聞く。
■織機 雪兎 >
「あぁ。ああああ……」
扉が開かないことに絶望し、ずるずると扉に縋り付いたままペタリと座り込む。
ゴン、と頭を小突かれても頭が僅かに揺れる程度。
「ふえ、は、まもまも、せんぱ……?」
しかし知り合いの声を聞いて僅かに正気を取り戻す。
華麗に噴霧器を構える彼女と、もう一人知らない声の――恐らく男性――風紀委員をゆっくりと見て。
「うおおおおおおおおん!!」
泣き喚きながら葵に縋り付く。
足元をカサカサとムカデが走る。
「ひゃあああいああ!!!」
ずびゃび!と立ち上がって葵にがっちりとしがみ付いた。
■日下 葵 > 「はい、葵です。
あなたの手伝いをしろといわれたものですから」
本当は私、刑事部なんだけどなぁと内心ため息。
虫すら殺せないのかこの後輩は。
とそちらにも呆れた表情を浮かべるが、その表情は見えないだろうし、
彼女が発狂しているのは虫の多さに対してだろう。
「彼女……織機さんはそのー…優しい子なので」
虫にも慈悲を感じてしまうんでしょうねえ。
なんてフォローをいれる。
フォローのつもりだ。
さて、さすがにこの量のムカデは想定外だなぁと思って這い寄るムカデに向き直る。
容赦なく殺虫剤を吹き付ける様子は落ち着いているように見えるが、
内心は驚きやら呆れやらいろいろごたついていた>
■燈上 蛍 >
虫ってね、機敏な動きに対して反応する。
だからね…この3人の中でムカデが誰に対して一番反応するかというと…。
そう、葵に縋りついた発狂している彼女相手なのである。
ぐしゃぐしゃの顔であられもない声を上げて葵に引っ付いた同年の子に、
蛍は思わず仰け反ってしまった。
「……えぇ、まぁ、……そう、みたいですね…。」
女性に対して取る態度じゃないのは分かってはいるのだが…、
彼女に慣れていない側からすると、どうしても。
「しかし、数が多いですね……なんでまたこんなにわいたんでしょう…。」
ざっくりと殺虫剤を吹き付ければ、
それから逃げるように部屋を動き回る。
踏みそうになってガスマスクの奥の眉を顰めた。
■日下 葵 > 「そうですねえ。
そんなに不衛生にしているようにも見えませんし」
自然発生にしては確かに数が多い。
私に引っ付いている雪兎さんがガクブルしているせいで
探さなくてもムカデが寄ってくる状況。
ムカデホイホイゆっきーなんて形容したらまた彼女の汚名が増えてしまうのだろうか。
「もし何か特別に原因があるなら根本的に原因をつぶす必要がありそうです」
ムカデに引いているのか雪兎さんに引いているのかわからない彼と談笑(談笑?)
しながら、手際よくムカデを駆除していく>
■織機 雪兎 >
「ああ、あうあうあう」
二人が淡々とムカデを処理していくのを見て、ただひたすらガタガタ震えながら葵にしがみ付いている。
殺虫剤の効果でボトボト落ちてくるムカデを大げさな動きで葵にしがみ付いたまま避けて、それに反応して寄ってくるムカデからも逃げる。
葵にしがみ付いたままその周りをぐるぐるぐるぐる回っている自身の動きは、葵からしてみれば邪魔この上ないだろう。
「お、おり、おりは、織機、ゆき、ゆきと……ゆっ、ゆっきー……」
それでも初対面であろう蛍に対して自分の名前を告げる。
ガタガタ震えているし呂律が回っていない上にガスマスク越しなので酷く聞き取りづらいだろうが。
■燈上 蛍 >
うーむ、混沌としている。
淡々と処理する葵、発狂している雪兎、それに引いている(?)蛍。
「え、えぇ……織機さん…よろしくお願いします……。」
どうにか名乗りを聞く。
先程も葵が名前を言ってくれていたのもあってなんとか認識できる。
しかしこれは談笑なのか?
談笑ととっていいのか?
「原因……巣みたいな発生源とか…あるんでしょうか……。」
逃げ回るように動き回る少女に殺虫剤をかけてしまわないように気を付ける。
■日下 葵 > 「さぁ、どうなんでしょう?
私は虫に詳しくないので何ともわかりませんが、
駆除がひと段落したら別に調査してもらったほうが良いかもしれませんねえ」
再発したらどうせまた雪兎さんが何かのミスの帳消しで駆り出されるか、
私みたいな手の空いている風紀委員が駆り出されるかするのだろうから。
それにしても数が多い。
これ殺虫剤の量足りるのだろうか。
私一人のボンベでは間違いなく足りないだろう。
そうなったら彼女(ゆっきー)のボンベをブン取r…拝借することになるのだろうけど>
■織機 雪兎 >
「お、ぉうふ、んんふ」
二人が淡々と冷静にムカデを駆除していく姿を見て、そして確実に数を減らしていく動くムカデを見て少しずつこちらも正気を取り戻していく。
がくがく全身を情けなく震わせながらも殺虫剤の噴霧器を手繰り寄せ、引き金を引いていく。
「な、なんか、こないだしゃふ、釈放した、おんなのこ、のあと、に、いきなり、だいひゃ、発生したらしい、けど……」
情けなく震える声で発生した経緯を説明。
いや経緯でも説明でもないのだが、自分も聞いた話なのでよくわからない。
へっぴり腰で殺虫剤を噴霧。
■燈上 蛍 >
「…僕も専門外ですね。
本に載っているような知識なら多少はありますが……それにしてもこんな量は…。」
せいぜい毒がある、素肌を這われたら痛い。
それに光から逃げる負の走光性を持っているというぐらいだ。
細かい種類までは頭に入っていない。
「……なん…なんですって…?」
雪兎の言葉が聞き取れずに、近づいて少し中腰になった。
そこに、二人の間に、ムカデが上から強襲をかけた。
どこに落ちたかというと……哀しいかな、ムカデホイホイ状態の彼女の方に。
■日下 葵 > 「釈放した直後に。なるほどねえ……」
さすがに慣れているのか、呂律が回っていない彼女の言葉を聞き取って見せる。
燈上さんの方は聞き取れなくて聞き返しているが。
もしその釈放された学生が原因となると、
異能や魔術で発生した可能性を視野に入れる必要が出てくるのか。
それが持続性のものだとすれば、
今私たちがこうして駆除をしても徒労に終わる可能性がある。
「おやおや、これはまた随分大物を引き寄せてくれました」
ドサッっと音がすれば、大層立派な大きさのムカデである。
ゆっきーの上に落ちてきたそれはまぁ……形容しがたいものだった。
ゆっきーに殺虫剤がかかることなんてお構いなく吹き付けるが、
身体の大きな虫は毒が効くまで時間がかかる。
耐えてくれ>
■織機 雪兎 >
「しゃくひょ、釈放した、おんなの――」
もう一度同じセリフを言おうとしたら、ボトリと肩辺りに軽い衝撃。
がさがさと動き回っている感触。
ギギギ、とそちらを見れば、クソデカムカデが居た。
でっけぇ。
しばらくそれを眺めて、ギギギ、と二人の顔を見る。
■織機 雪兎 >
「――あーーーーーーーーーーっ!! ああーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
■織機 雪兎 >
がちゃん、と噴霧器を取り落とし、大声。
余りのことに動くことすらままならず、へっぴり腰のまま両腕を軽く前方に突き出し、がくがくぶるぶる震えながら叫ぶ。
■織機 雪兎 >
「あーーっ!!! あああーーーーーーっ!!!!! あぁーーーーーっあっあっあーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
■織機 雪兎 >
中途半端な空気椅子みたいな体勢でひたすら叫ぶ。
■燈上 蛍 >
「ああ、えぇ、釈放……し。」
漸く聞き取ろうとした時だったんだ。
黒くて細長いソレがもう やぁ! と言わんばかりに蛍と視線を合わせた。
「うわ、って、せんぱ、うわわっ」
流石に物静かな蛍からもある程度焦った声が出た。
いやそれ以上に冷静に殺虫剤を吹き付けている葵の方にも驚くが。
「あぁ、ぁ……ぁぁー…。」
クソデカムカデは……
どう足掻いても殺虫剤の効きが悪いとなれば、そう…逃げ回るのである。
叫ぶ少女の上を、逃げるのである。
嗚呼、南無。
この光景に蛍は固まるしか無かった。
地獄絵図かな?
■日下 葵 > 「これは殺虫剤では効率が悪いですねえ……」
地獄絵図、と言われればこれが一例だろう。
一番の地獄を味わっているのは雪兎さんなんだろうけど。
さすがにこれには燈上さんも驚いたようで、
2人と1匹で仲良くお戯れのようだ。
固まる彼と逃げる1人と1匹の様子を見かねて、
一度噴霧器を仕舞って太ももからナイフを取り出して――
ザクリ。
ムカデの頭をナイフの先が落とす。
もちろん、頭を落とした程度で動きは止まらない、ので――
ザクリ、ザクリ、ザクリ。
ガスマスクをつけた風紀委員が巨大ムカデを刻んでいく。
「もう少しかかりそうなので、お二人で小さいのをお任せしても?」
そろそろ私の殺虫剤も切れそうですし。なんて>
■織機 雪兎 >
ガサガサガサ!!!と苦しむムカデが暴れまわる。
肩の上で。
当然その感触は全て感じられて。
■織機 雪兎 >
「あぁぁあああああああぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!! あっ!! あっ!!!! あっああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!! あああああぁぁぁぁぁああっ!!!! あぁああーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
■織機 雪兎 >
動きに合わせて叫び声が跳ねる。
中腰の中途半端な空気椅子のような体勢のままで殺虫剤に塗れながら。
そのまま固まっていたら、ムカデの頭が落とされた。
ザクリと。
制服の肩にムカデの体液がびしゃりとまき散らされる。
「あ、あぁ、ああぁああぁ――――」
呆然としたままその様子を呆然と眺める。
そのまま言われた通りに殺虫剤をまき散らして。
言われたままに動くことで精神をギリギリ保っているような動き。
■燈上 蛍 >
「 」
状況のせいで、思わずぽとぽとと地面に赤色が広がった。
それは、"赤い彼岸花"。
混乱で異能が発動するなんて思わなかった。
蛍にとっては赤い彼岸花は、火薬。
思わず火薬を生んでしまうほどの混乱だったようで。
なんだろうな、この状況。
■日下 葵 > 「いやー、手こずりました。
この大きさになるとなかなか刃が通らないんですねえ」
何等分にしただろう。
綺麗に細切れになったムカデを足でどける。
細かいムカデは切るのは面倒だが、ここまで大きいと切ったほうが早いですねえ
なんていうと、二人の様子が悲惨だった。
ゆっきーは……いつも通りだ。
気になったのは燈上さんのほうだ。
「燈上さん?大丈夫ですか?」
グロテスクなのは苦手だったろうか、なんて今更の心配>
■織機 雪兎 >
「 」
ガスマスクに隠れて見えないだろうが、その目は完全に死んでいる。
機械的に噴霧器の引き金を引いて殺虫剤をバラ撒いているだけだ。
ぶしゅーばしゅーとひたすら無言で。
「 」
ばしゅー。
ぶしゅー。
まだ動いているムカデを見付けてはそちらに噴霧器を向けて引き金を引く。
ばしゅー。
動いているムカデに噴霧器を向けて引き金を引く。
ぶしゅー。
動いているムカデに噴霧器を向けて引き金を引く。
ぼしゅー。
■燈上 蛍 >
大丈夫ですかと聞かれて、意識が回復する。
「……す、すみません、散らかしてしまって…。」
落ちた彼岸花を足で寄せ集めながら、殺虫剤を撒く。
女性の方が咄嗟の場合に虫に対して強いというのはこういう状態なのだろうか。
いやそれにしたって『なかなか刃が通らない』では無いんだけど。
とりあえず雪兎の方も……なんというか、眼が座ってしまった。
「ええ、えぇ…大丈夫です…。」
■日下 葵 > 「いえいえ、何か驚かせてしまったのかなと思いまして。
……こんなに大きなのが落ちてきたら驚くのも無理はないですよ」
そんな的外れな気遣いをする。
足元に広がる彼岸花。
恐らく彼の異能なのだろうが、何か引き金になったのだろうか。
「雪兎さんは大丈夫ですか?」
突然静かになってしまった彼女。
無言で殺虫剤を淡々と散布する彼女は一周不気味である>
■織機 雪兎 >
動いているムカデに噴霧器を向けて引き金を引く。
ぶしゅー。
動いているムカデに噴霧器を向けて引き金を引く。
ばしゅー。
動いているムカデに噴霧器を向けて引き金を引く。
ぷしゅー。
動いていないムカデに噴霧器を向けて引き金を引く。
ぷすー。
動いていないムカデに噴霧器を向けて引き金を引く。
すかー。
もうとうに動いているムカデなどいないのに、ひたすら地面へ向けて殺虫剤がなくなった噴霧器の引き金を引いている。
「 」
問いかけには一切反応せず、ひたすらかちかちと引き金を引き続ける。
否、大丈夫かと聞かれて葵の方を見て、葵の顔に向けて引き金を引いている。
反応だけはしているようだ。
■燈上 蛍 >
落ちた彼岸花はただの生花だ。
「ええまぁ、いろんな意味で驚いてしまって……。」
言及は避けた。
「僕よりも、彼女の方が大丈夫じゃないかと、思うんですが…。」
ムカデはもう粗方が殺虫剤により死がもたらされた。
床に大量にムカデと彼岸花が転がっている…。
それに向かってカチカチとトリガーを引き続けている彼女と葵を交互に見る。
■日下 葵 > 「なるほど。まぁ絵面が絵面ですからね。
気分が悪くなったら休んでいても大丈夫ですよ」
自分の解体ショーが彼をそうさせているとは露知らず。
気遣いのポイントがズレているのは……今に始まったことではない。
「雪兎さん?それは私をからかっているんですか?」
彼女の噴霧器から噴き出すガスが髪を揺らす。
マスク越しの彼女の眼はとっくの昔に色を失ったようで、
特別揶揄っているとかではないのが見て取れた>
■織機 雪兎 >
目の前の先輩に噴霧器を向けて引き金を引く。
ぷすー。
目の前の先輩に噴霧器を向けて引き金を引く。
ぽすー。
目の前の先輩に噴霧器を向けて引き金を引く。
ぺすー。
殺虫剤を押し出すガスだけが彼女の前髪を揺らして。
「 はっ!?」
正気に戻った。
かちかちと引き金を引いても殺虫剤が出てこないことに疑問を抱きつつ状況を確認するために後ろを振り返って、
「うわあああああああああああ!?!?!?!?」
大量のムカデの死体に驚いて葵に飛びついた。
■燈上 蛍 >
急に出た叫び声にまた青年が仰け反った。
唐突な音が苦手なのかもしれない。
「ええまぁ、だい、じょうぶです……。
粗方ムカデは死んだみたいですし、後は片付けをするだけかと…。」
しかしまぁ量が量だから取りこぼしがありそうでならない。
これ…箒とチリトリで集めるんだろうか。
隙間から生きている個体が這い出てきそうでならない。
何か別の処理方法があれば良いのだが。
■日下 葵 > 「そうですね、一旦はここで一区切りでしょうか。
殺虫剤も殆どなくなってしまいましたし」
足であらかたのムカデの死骸を集めると、
その量はなかなか悲惨な量になった。
今すぐ片付けられる量ではなさそうなムカデの山に、どうしたものかと立ち尽くす。
正気を取り戻して抱き着いている後輩にかまわず、
そのままずるずると後輩を一緒に出入口まで引き摺って行く。
「すみません、あらかた片付いたので、後片付けをお願いします」
扉の向こうで待っているであろう風紀委員に扉越しに声をかける>
■織機 雪兎 >
「ひい、ひいいい」
尋常じゃない量のムカデの死骸に腰を抜かしている。
ずるずると引きずられていくが、途中でべちゃんと床にへばりつくように落ちた。
「は、はひ、たしゅ、たしゅけ」
そうして残った彼の方に助けを求める。
ムカデの死骸を避けつつ地面をずるずる這いずりながら彼の元へたどり着き、その脚に縋り付く。
ガクガクとマッサージ機のようなバイブレーションが彼の脚から伝わってくるだろう。
■燈上 蛍 >
「あの、あんまり床に座ると死骸と殺虫剤が…とりあえず、立って…。」
最早今日が初対面ということすら彼女は忘れているのだろう。
死骸を避けたとしても、千切れた足とか落ちて居そうであるし、
何より殺虫剤の撒かれた床を這うのは肌によろしくない。
外で待機している風紀委員に声かけをしている葵を後目に、
脚に縋りついている雪兎にしゃがみ込み、手を取って立たせようとする。
「先輩、彼女はどうしましょう…。」
■日下 葵 > 『ほ、本当に全部処理したのか?』
「処理しましたよ。
”大きいものは刻んであるので動きませんし”」
『お、おおきいのってなんだ!?』
「……いいから早く開けてください」
扉越しにビビってなかなか開けてくれない風紀委員に圧をかける。
恐る恐ると言った様子で開く扉。
「後片付けは他に任せて私たちは帰りましょうか。
ほら、雪兎さん。立ってください」
「すみません燈上さん、雪兎さんがそんな状態なので肩を貸してあげてください。
服も汚れてしまいましたし、さっさとシャワーでも浴びましょう」
それこそ肌が荒れてしまいます。
なんて言ってガスマスクを外した>
■織機 雪兎 >
「あうあ、あうあうあうあう」
ガクガクと全身を震わせつつ、彼の手を掴んで立ち上がる。
ちなみにこの女、初対面であろうとそうでなかろうと誰に対してもだいたいこんな感じである。
「お、おぉ、ふぉおおぉぉおお」
ガクガクぶるぶる膝を残像が出来るほどに震わせつつ、ガスマスクを外す。
生まれたての小鹿とかどうとか言うレベルではない。
膝にモーターが仕込まれてるんじゃないだろうかと言うぐらい。
ずるずるとすり足でゆっくりと出口へ向かう。
■燈上 蛍 >
「恐らく全部処理出来たはずです。」
開いた扉の向こうにそう声をかける。
何せ数が数故に、保証しきれないのだが…。
「…これ、肩を貸して歩けますかね……。
あぁ、"白"を外してから来れば良かったですね…。」
何かの怪異か? と言わんばかりに震えている彼女を見ながらガスマスクを外す。
「………。」
髪に差している白い彼岸花を軽く気にしてから。
「……、…織機さん、少し失礼します。」
ひょい、と少女を抱き上げた。
身長差、実に36cm。
蛍は細身とはいえ、流石にこの身長差と性別差があれば、持ち上げられるだろう。
暴れなければそのまま連れて行けるだろうか?
■日下 葵 > 「まぁ、取りこぼしがあっても問題になる数ではないでしょう」
さすがに全部完璧にとなればそれなりの装備と人数をそろえる必要があるだろう。
マスクを外して宗谷っと満足に息ができるようになると、
髪をはらって二人をみやる。
「おお、さすがは男性と言った感じですねえ」
大柄な蛍さんと小柄な雪兎さんということもあって、
軽々と抱きかかえる様子を見て感心する。
まぁ、機械顔負けの震え方をしている雪兎さんを抱きかかえるのは
それなりに大変そうではあるが>
■織機 雪兎 >
「わひゃぁ!?」
急に持ち上げられた。
これはもしかしてお姫様抱っこと言うやつでは?????
「ほは、ふひゅう……」
持ち上げられた瞬間震えが止まる。
胸の前で両手を抱えるように、脚はきゅっと縮こまらせて。
顔をちょっと赤らめつつ借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。
「ふぇ、あの、――ありがとうごじゃいまひゅ……」
消え入りそうな声。
■燈上 蛍 >
「いえ、不快でしたら下ろしますので言ってください。」
雪兎を横抱きにすれば、ガスマスクを外した蛍の顔が間近に来る。
長めの黒髪に、うっすらと混じる青い髪。
紅橙眼は、静かに炎を湛えている。
そしてガスマスクで少しくしゃくしゃになってしまった、
髪に差された白い彼岸花。
「僕も殺虫剤を落としたい所ですし、上の仮眠室の所まで…。
確かあそこ、シャワーありましたよね…?」
そう葵に確認を取る。
■日下 葵 > 「なかなか男前じゃあないですか。
雪兎さんもはや男前……じゃなくて一人前になれるといいですねえ」
どうにもこの後輩は現場が苦手らしい。
彼女らしいといえば彼女らしいので、
この抱きかかえられている光景も面白いものである。
「ええ、確かにあそこはシャワー室がありますから、そこへ行きますか。
雪兎さんを運ぶのは……せっかくですからお願いしましょうかね」
そう言って山積みにされたムカデの山を同僚たちに任せて、
我々は血やら粉末やらを落とすために仮眠室へ行くのであった>
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁地下勾留室」から燈上 蛍さんが去りました。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁地下勾留室」から日下 葵さんが去りました。
■織機 雪兎 >
「わひゃい、しょんな、不快だなんてごにょごにょ」
お姫様抱っこなんてされたことが無かったのですっかり小さくなってしまっている。
その後は何か聞いてもごにょごにょとしか喋らず、シャワー室でも無言のままシャワーを浴びていたことだろう。
ちなみにミスは帳消しになったが、一人で解決できなかったと言うことで三分の一ほどしか減らなかったとかなんとか。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁地下勾留室」から織機 雪兎さんが去りました。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁小会議室」に織機 雪兎さんが現れました。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁小会議室」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁小会議室」に妃淵さんが現れました。
■織機 雪兎 >
数枚の書類をテーブルに並べてペンを走らせる。
書類の漏れはなし、記入漏れもなし。
数人の先輩に見てもらって用意したものに漏れがないことも確認している。
面談の相手にもちゃんと連絡もしたし、時間も間違っていない。
「――よし!」
最後のチェックも終わらせ、椅子の背もたれに身体を預けて。
もうすぐ約束の時間、そろそろ到着するはず。
■水無月 斬鬼丸 > 書類は提出を終えている。
沙羅ちゃんに確認もしてもらったし、間違ってはいない。
この面談が通れば…
フェイは二級学生ではなくなる、ハズ。
自動ドアをぬけ、庁舎に入るさい、隣のフェイの顔をちらりと見た。
■妃淵 >
パーカーに袖を通した、いつもどおりの少女
特に物珍しい建物でもねーな、とありきたりな内部を眺めたりしつつ、
斬鬼丸の後ろを一歩遅れる形で、ついてくる
「?」
視線を感じて斬鬼丸の顔を見上げる
いつもどおり、普段どおりの、少女の赤い視線が交差する
どうした?と言わんばかりの、気がつけばいつも隣にいるような、
…なんかちょっとだけ傲慢なペットじみたものを感じる反応
■織機 雪兎 >
今いるのは面談をする会議室。
そろそろ時間なので迎えに行くかぁ、と書類をファイルにまとめて入り口へ向かう。
ロビーについて辺りを見回せば、見たことのある顔が二つ。
「あ、いたい――ん?」
二つ?
あれ、こないだ来たのはざんきっきの方だけだったような――?
「――あっ!! こないだの!!」
そうだ以前自分が歓楽街の路地裏で自分の手錠で拘束されてた時に動画撮って帰ってった奴だ。
思わず大声を出してしまい、そこにいる全員の注目を浴びてしまった。
■水無月 斬鬼丸 > ロビーにたどり着けば軽く周りを見回す。
たしか連絡があって…
このあたりで待ち合わせだったはず。
すると、奥からやってきたポテト女改め雪兎さん。
「あ、どうm…」
声をかけようとしたが、それは彼女の大声で遮られる。
いきなり注目を浴びることになり少し困惑してしまう。
■妃淵 >
「ン?」
斬鬼丸が挨拶しようとした矢先に大声をあげる風紀委員らしき女
「知り合い?」
なんということでしょう
少女はあんな仕打ちをして起きながら完全に雪兎のことを忘れているのでした
■織機 雪兎 >
「お、おま、なん……!」
まさかの覚えられていない、だと。
しばらく指差してぷるぷるしていたが、やがて諦めたように溜息。
深く大きいため息。
「――いやもういいけどさ……とりあえずこっちどーぞ……」
うなだれたまま会議室へ向かおう。
その背中からは哀愁が漂っている。
■水無月 斬鬼丸 > 「え?」
今の、俺が言われた?
わけじゃないよな?むこうが連絡してきたんだし。
フェイも知らないようなので一体どうかしたのか。
首をかしげる。
「あ、ああ、この人がなんか書類の担当って…」
説明しながら会議室までついてあるく。
何がどうなってるのかはよくわからないが。
■妃淵 >
「ふーン」
さっぱり思い出せていない少女はとりあえず斬鬼丸とともに、
案内されるまま会議室までついてゆくだろう
こんな担当で大丈夫なのかとか、そういうことすら思わない
なにせこんな場所も環境も、まったく縁がなかっった
案内してくれている少女がなんで項垂れているのか結局ふたりともわからないまま話は進む
■織機 雪兎 >
とりあえず会議室に戻って来て元居た場所に座る。
二人にも自分の前の椅子を示して座るように促そう。
「えー、じゃあフェイさんの正規学生証発行のための面談始めまーす。担当の織機雪兎でーすヨロシクオネガイシマース」
まずは挨拶。
ぺこり、と頭を下げて。
「――んで、まず最初に聞くけど、前歓楽街の路地裏で僕が捕まってた時に動画撮って助けてくれずに帰ってったよねキミ」
ジトっとした視線。
■水無月 斬鬼丸 > 左側の椅子に腰を掛けて
彼女の挨拶とともに軽く頭を下げた
「よろしく、おねがいします…」
やはり目の前に座っているのがポテト女だったとしても
こういう場は緊張してしまうのか、少し声が硬い。
というか、初手からなんかぶっこんできた。
知り合いだったの?
というか、初っぱな悪印象。
知らないところでそういう事になってると流石に味のある表情しかできない。
■妃淵 >
椅子に腰を降ろす少女
かしこまった様子もなく足を組んでみたりやや行儀が悪い
「ン?歓楽街?」
首をかしげる
その後にまるで記憶を探すように幾度か視線を天井に向けたりなんだり
「忘れた。なんかそういうコトあったような気もするナ」
言われてみれば、といった顔
■織機 雪兎 >
「そっかぁ忘れたかぁ」
へら、と笑う。
不自然なほどにニコニコ笑いながら彼女の顔をじっと見て。
「忘れたならしかたないなぁ。そうだねぇ二級学生からすれば風紀も一般生徒も関係ないし、良くはない事してるって自覚もないならしかたないよねぇ」
めちゃめちゃニコニコしているが、額には青筋が浮かんでいる。
■水無月 斬鬼丸 > 「えぇ…いや、ちょっとまって…」
なんかしらんけどやばい。
このままでは私怨でこの話がなくなってしまう可能性すらある。
かと言って事情は知らないし、フェイもすっかり忘れていること。
だが、彼女の言い分からすれば…
「えーと、捕まってる状況でたすけるって…
見ず知らずの相手にそんな事できる人って、そんなにいないと思いますけど…
そりゃ、された側からはそううつるかも知れないけど」
警官がつかまって一般市民がそれを助ける状況。
それはそれで異常だろう。
それを当然のこととして求めるのは間違っている。
■妃淵 >
「覚えてねーししょーがねーじゃん」
悪びれもしない少女
態度もやや横柄である
いや少女からすればいつもどおりのスタンスなのだが
とはいえ、斬鬼丸がフォローに入るのを見れば、
この状況があんまり好ましくないのだということはわかる
「それでどーすりゃいいンだヨ」
■織機 雪兎 >
「まぁそりゃそうだ。風紀が捕まってるのを一般生徒が助けろって言うなら風紀なんていらないよ。捕まってたって言っても不良の遊びで自分の手錠取られてその辺に繋がれて放置されただけだし、それは僕がポンコツだからそれに関してはこの子が悪いわけじゃない」
すっと真顔になって。
「でもそう言うことを言ってるんじゃない。その僕が助けてって言ってるのにニヤニヤ笑ったまま動画撮って、やめろって言ってもやめずに、しかもたまたま通りがかった別の風紀をからかう様な事して、それを覚えてないって言う様な人に、はいどーぞってポンと学生証渡してもらえると思う?」
別に助けてくれなかったことを恨んでいるわけではない。
いや恨んでるけどそうじゃない。
人として最低限の礼儀とかマナーとか、そう言う話だ。
ましてや彼女のことをこれだけ思っている人を保証人にすると言うのだから。
「別に謝って貰わなくてもいいけどさ、あれは僕がポンコツだから起きたことだし。これから似た様な事があって、もし僕らんとこにそう言う話が来るようだったら君だけじゃなくて隣の彼にも迷惑掛かるんだってこと、覚えておいてねってこと」
そう言いながら書類をテーブルの上に並べていく。
■水無月 斬鬼丸 > 正直、そういう事をする人間が一般生徒にいないとは思えない。
むしろ、大多数がそっち側。
被害者としてはたまったものじゃないだろうが、人間なんてそんなもの。
とはいえ、フェイに非がないわけではない。
「それは……すみません」
深々と頭を下げる。
これ以上何かを言えば、それこそ双方に問題ありと判断されてもおかしくない。
■妃淵 >
マナーとか礼儀とか言われれば、あからさまに面倒くさそうな表情を浮かべる
「似たよーなコトって。不良のアソビで手錠とられて繋がれるような風紀委員が他にもいンの…?」
再びコテンと首を傾げるが、斬鬼丸が頭を下げる様子を見れば渋々自分も頭を下げる
ただし、下げつつ……
「オイ大丈夫なのかコイツ。俺ラも生活預ける以上
そこそこ信用のおけるヤツに相手してもらわねーといけねーと思うんだけど。
他に手続きできるヤツいねーの…?」
横に座る斬鬼丸にそっと耳打ち、ひそひそ
ポンコツを自称されながら真顔になられても、やや信用が陰るというものである
■織機 雪兎 >
「一般生徒なら注意で済むようなことも、二級学生からの引き上げだと「やっぱり二級学生か」で印象悪くなることもあるから気を付けてねってこと」
何枚かの資料を並べつつそう告げて。
二級学生引き上げの手続きは初めてだが、先輩たちから大変だと話は聞いている。
なんとなくそれが分かった様な気がして。
「はい、じゃあ説明してくよー。ちゃんと聞いとかないと苦労するの自分たちだからねー」
そう告げて、制度の説明やら保証人の説明やら、必要なことを説明していく。
書いてあることを自分なりにわかりやすく、かつ間違って伝わらないように。
「はいじゃあ説明はこのぐらいかな。んで次はこっちからいくつか聞かせてもらうんだけど……」
数枚の資料に書いてあることをあらかた説明し終え、しかしちょっと困った様な顔。
ペンの先で机をトントンと叩いて、
「――君、異能殺しの妹だって話ホント?」
■水無月 斬鬼丸 > フェイの耳打ちを受ければ、言いたいことはわかる。
正直カギリ先輩とかリンカ先輩あたりにお願いしたいのは山々なのだが
こうなってしまった以上、チェンジとはもう言えないのだ。
「手続きさえ通ればなんとかなるから…たぶん…」
小声で、我慢してとフェイに伝えつつも更に深く頭を下げて。
頭を上げる頃には話が進んでいく。
いくつかの説明、結構長いが…まぁ、書類にも書いてること
わからなければ後で確認すればいい。
だが、困った顔をしたポテト女は重々しく口にする。
『異能殺しの妹』
少しだけ眉間にシワが寄る。
「……それ、フェイになんか関係あるんですかね」
■妃淵 >
一般生徒ならただの不幸で済むことも
風紀委員だと無能って思われて印象悪くなることもある
うんうん頷く
気をつけないとな
それから投げかけられる言葉については、まあある程度予想はついてた
だから別段迷いなく答えることもできる
答えようとした、が…斬鬼丸が言葉を発していたので、口を噤んだ
■織機 雪兎 >
「そりゃあるでしょ。あの『異能殺し』だよ。風紀委員として警戒しないわけないでしょ」
さらりと答える。
異能殺しは特級とも言える監視対象の一人だ。
その妹となれば、警戒して当たり前だ。
「ぶっちゃけ斬鬼丸くんが本気だってわかってるから言うけどさ。キミが保証人の審査通ったのは君が本気だってのももちろんあるけど、風紀委員に身内がいるってのもあるの。家族が何やってるかって、結構本人の信用に関わってきたりするんだよ」
彼が怒るのもわかる。
自分だって自分の大事な人がそう言う目で見られたら怒るだろう。
だけどこれはそう言う作業なのだ。
ちゃんと調べて、ちゃんと「彼女自身」に何も問題がないと確認しないと先に進まない。
理不尽だろう。
わかる。
すごくよくわかる。
■水無月 斬鬼丸 > 「……ないですよ」
『異能殺しの妹』じゃあだからなんだ。
異能殺しの妹も異能殺しだとでも言うのだろうか。
馬鹿げている。
「そんなことだったら。
はじめから、俺に保証人の資格なんて無いです。沙羅ちゃんだって風紀委員の資格はないでしょう。
だって、俺達の家族がやってたことは、異能殺しどころじゃないんだから。
家族が何やったがが、俺達の評価になんか関係あるなら…
はじめからこんなの茶番でしか無い。
そうだったからって、それがなんなんです?」
■妃淵 >
「ていうか、風紀委員って不良に手玉にとられるようなお前でもなれるんだろ?
別に身内が風紀委員だからって大して人物評価あがらなくねえ?」
三度、首をかしげるフェイ
「あと俺と兄貴はもう数年あってねーからソノヘンはよくわかんねーぞ」
ややダルそうに椅子の上で姿勢を崩す
おそらく自分のため、と
引っかかるところを感じた斬鬼丸が言葉を連ねてゆく様子を横目で見ていた
■織機 雪兎 >
「そもそも僕は内勤担当であって本来外回りするような立場じゃないからね????」
人が足りないから無理矢理駆り出されているのだ。
いや内勤にしたってミスが多いけれど。
「――例えば、例えばだよ。彼女が正規の学生証貰って、それをお兄さんに流して悪用する可能性もある。だから聞かなきゃいけないの」
手元の資料に何事かを書き込んでいく。
別に隠しているわけではないので「本人は異能殺しとは数年交流がないと証言、学生証悪用の危険性はないと思われる」と書かれているのがわかるだろう。
実はその辺も事前の聞き込みで判明していることだったりして。
「悪いと思ってるよ、面白くない事聞いて。でも必要なことだから。納得してくれとは言わないけど、理解はして欲しい」
■水無月 斬鬼丸 > 「…………」
口をつぐんで、すわる。
顔には苛立ちがくっきりと浮かんでいるし
手も拳を握っているが。
今はああ言っているが彼女が言ったのは信頼や評価の話だった。
身内がいるから審査が通ったとか、家族のやったことが信頼に関わるとか…
自分のミスには言い訳して、こちらに吐いた言葉はそらしてなかったことにする。
面白い、面白くないではない。納得も理解も、できる話ではない。
学生証の譲渡とかなんとかそんなことは兄が『異能殺し』であることなんの関係があるのか。
そんな特別な存在じゃなくてもやるやつはやるしやらないやつはやらない。
だが、それでも、それを口にしたところで相手が握っているのだ。
こちらの望みの綱は。
だから、黙っているしか無い。
■妃淵 >
「いーヨ。別に正規学生になれなくても」
ぎし、と椅子の背もたれに背をあずけ、両手を頭の後ろ手に組み上げそう宣う
「こんな奴に媚び売って、オマエにそんな顔させて我慢させてまでなりてーモンでもねーし…」
「別に俺が正規のガクセーじゃないからって、オマエと遊べねーわけでもなんでもねーじゃん」
ゆらゆら、と行儀悪く身体を揺すりながら、隣の少年に話かける
「そもそも最初から信用も信頼もねー二級学生の俺に
口だけでなんか言わせたトコで意味あるかヨ。
どーせ聞く前から調べなりなんなり、ついてんだろ?」
■織機 雪兎 >
「……」
こちらも黙る。
まぁ、信用はないだろうな、と言うのはわかっていた。
ポンコツだし。
「まぁ、それはそうなんだけどね。でも君、嘘吐かないでしょ。こんだけ想われてて、自分のために怒ってくれる人がいて、そんな人に嘘吐くような人じゃないでしょ。そうじゃなきゃ、斬鬼丸くんこんなに怒んないでしょ」
それでも何らかの形で二人の力になりたかったのだ。
ミスも多くてポンコツだけど、せめてこの仕事だけはミスの無いように、と。
「――なんなら、担当変わるかい。信用できる先輩とかの方が君らもいいでしょ」
けれど、そんなことは彼らには何も関係ない。
彼らにとっては信用できる担当の方がよっぽど大事だと思うから。
■水無月 斬鬼丸 > 「ちがうだろ」
口を開く。少し、震えている。
正直、強い言葉を使うのは苦手だ。
フェイはこちらを気にしてくれているけど、それはそれ。
彼女も判はおしてくれたが、それはそれだ。
「俺は!!謝っただろ!!
アンタは、本人と関係ない…家族で人の評価を定めようとして
それを無関係の理由でなかったことにして
書類に判だけうって、他に丸投げって…」
テーブルを叩いて、眼鏡の女を睨む
「そうじゃないだろ!」
■妃淵 >
どーせ判押すならヨケーなこと言わずそれだけしてりゃ良かったのにナ
…とは、言わない
似たような蟠りは隣の少年が全て、口から吐き出していたからだ
椅子の上でゆらゆらと身体を揺すりつつ
家庭の事情まわりなどは特に突かれるのを嫌う人間は多いだろう
突かなくとも裏で調べればすぐにわかること
事務的にすんなり処理しておけば良かったものを、わざわざ言及した上で信用問題と絡め、、
その上で逃げようと言うのだから仕方がない
自分も彼の家の話を聞いていた側、まあ少年の激昂も理解しないではないが
「まー落ち着けヨ、斬。
コイツの頭がよくねーことはなんとなくわかったろ」
「別にオマエを怒らせるために言ったワケでもねーヨ」
淡々とした言葉で、少年を宥めようとする
■織機 雪兎 >
大声を出す彼。
気持ちはわかる。
事務的に処理しようと思えばいくらでも出来たけれど、それはあまりにも無機質だと思った。
思ってしまった。
机の下で拳を力いっぱい握りしめ、熱くなりかけた頭を冷やそうと深呼吸。
「――ま、最終的に判断するのは僕じゃなくて上の人だしね。けど結局その辺で判断されたりするのは間違いないことだし、あとからそう見られてるってわかるよりは、って思ったけどお節介だったね。ごめん」
あ、やばい泣きそう。
泣いたって彼の機嫌を損ねるだけだし、何も良いことはない。
もう一度深呼吸。
よし落ち着いた。
オーケーまだ大丈夫。
「で、まだ僕は担当降ろされないってことでいいのかな。良いなら続けるよ」
だめかもしんない。
■水無月 斬鬼丸 > 「っ………」
フェイに宥められ、崩れるように腰を下ろす。
奥歯が、カチカチとなった。
息を吐く。
「なんで………」
弱々しい声。
「なんでっ!!」
うなだれて、苦しげに
「謝っただろ?フェイが悪いことしたって聞いて…
フェイだって、形はどうあれ…頭、下げたじゃないか…」
再び顔を上げて、眼鏡の風紀委員を視る
「なんで、アンタ、風紀委員なのに…素直に謝れないんだ…」
■妃淵 >
「もーイイって。
別にコイツに頭下げさせるために来てんじゃねーンだからサ」
少年の怒りはまだ収まらないのだろうことが良く分かる
それほど、触れられたくない部分に触れられたのだ
「此処に何しに来たのか思い出せヨ。
俺はそれだけ終わればとっとと帰りてーンだから」
引っ越すなんて大げさなものでもないけど、準備もあるしな、と…椅子の仰け反る
■織機 雪兎 >
「――ちょっと、ごめん。一瞬席外すね、一瞬」
そう言って席を立ち、会議室を出る。
バタン、と扉が閉じてしばらくしてから、ドゴン、と鈍い音が響くだろう。
続いてもう一度同じ音。
そうして扉が開く。
「お待たせ」
なにやら額がちょっと赤くなった状態で戻ってきた。
そのまま椅子に座る前に彼の横に立ち、
「ごめん、なにも知らないのに言い過ぎた」
頭を下げる。
九十度しっかりぴっしり。
■水無月 斬鬼丸 > 「……」
戻ってきた女を見据えて
細く、そして深く息を吐く
「いいよ…」
短く答えた。
そうだ、目的はそんなことじゃない。
風紀の彼女だって、それはそうなはずだ
「心配することは…わかる。
沙羅ちゃんだって…『異能殺し』の話になると、冷静じゃなかった…
でも、それは…『異能殺し』の話だろ?注意を向けるのも、危険に思うのも…
フェイじゃない。『異能殺し』のほうだろ?
それだけは、はっきりさせとくし、アンタにも…覚えておいてほしい。
これから、信頼し合うためにも…他人越しに、フェイを見ないでほしい。
沙羅ちゃんと…風紀の仲間…なら、なおさら…そんだけ」
■妃淵 >
やれやれ、とため息を吐きつつ
退屈そうに組んだ足をぶらぶら
「──ンで、手続きに必要なのはもう済んだワケ?」
本人意思の確認と、
保証人の意思の確認と…
他に何が必要なのかは、フェイエンには知れたことではないが
■織機 雪兎 >
誰か越しに見ないで欲しい。
その言葉を聞いて頭を上げ、少し迷ったような顔。
「努力は、する。すると言うか、うーん……」
どう言ったものか、と悩みながら、自分の席に戻って。
「――僕は、僕個人の考えで言えば、家族がどうでもこの子はこの子だと思ってるよ。けど、なんて言うのかな。どうしても、そう言う風に見てくる人はいる、と思う。て言うかそれはどうしたって避けられないと思う」
それはもう仕方ない。
個人的には良くない事だと思うけど、もうどうしようもないことなのだ。
「だからこう、なんて言うか、十分にわかってることだと思うけど、その、腐らないで欲しい、と言うか。さっきみたいな時に、やっぱりそうだってなる人も、こう、いるからさ」
とても言いにくそうに。
感情的にさせた自分が言うことではないけれど、あまり感情的にはならない方がいいだろう、と言う様な事を。
「――うん、まぁ、とにかく。そっちからの質問が無ければ、とりあえず終わり、かな。あ、何もなければここに名前書いて」
そう言って書類を渡す。
面談に来たのが間違いなく本人だと言う宣誓書みたいなものだ。
■水無月 斬鬼丸 > 「それが風紀の総意なら、俺たちは風紀に頼れないし
そもそも、信頼を盾にその問題を話したってどうにもならないだろ…」
だからなんだ。
家族が悪いやつだからお前はそうじゃない証明をしろなんて
どう思うか以前の話。
ようは、こうは言ってるものの、そもそも相手は信用なんてしてなかったということだ。
再び火が付きそうになるのを抑えつつも書類に署名する。
「悪いけど…それも、『あんたが、それを、いまここで、あえて』やる必要なんてなかっただろ」
謝ったですませばいいのに、またそれを蒸し返すなら
苛立ちの混じった低い声で
「なんで、こんな扱い受けなきゃいけないんだ…」
フェイにペンを渡し
■妃淵 >
「そンなモンだって」
ペンを受け取る
「所詮他人なンてだーれも信用できねーの。
オマエみたいなのが超レアなンだヨ」
決して綺麗とは言えない字でさらりと書き終える
家族はいないも同然、自分の名前しか持っているものはない
妃淵とだけ書き記したそれを、ペンと共に突き返して
「斬はフツーに生きてるだけでも、周りがそーさせねーとかナ。
いっそ、俺と一緒にスラムで暮らしたほーがよっぽど自由だったりして」
茶化すように、笑う
■織機 雪兎 >
「……前だろ……」
ぼそりと呟く。
あぁ、だめだ。
もうだめだ。
「そんな扱いって、当たり前だろそんなの。今まで異能殺しにどれだけ被害受けたと思ってんだ。その肉親だってんなら慎重になるのも当たり前だろ。その子個人を見るっつったってその後ろに見えるのはどうしたって見えるだろ」
頭に血が上ってる。
あぁくそ、涙まで出てくる。
「それを全部承知の上でそれでもあんたがその子を引き上げたいって言うからこっちはそれでもなんとか問題ないって材料探して時間と労力裂いて上にうんって言わせるために色々やってんじゃないか!!」
叫ぶ。
一度火がついてしまったらもう止まらない。
「そもそもアンタこっちのことはなっから信用してないじゃないか!! 僕はアンタがその子引き上げたいっつーから色々準備して、書類も用意して、色々やって、やってんだよ!!」
無茶苦茶なことを言っている自覚はある。
実際他人から見れば自身に任せるのは不安だろう。
そんなことは自分だってよくわかっている。
「自分のことしか考えてないじゃないかアンタ!! 自分が、自分たちが気に入られない見方されたからって癇癪起こして、こっちが何言いたいかも考えようとせず、自分に都合のいい考えしか受け付けないで、子供かよ!!!」
癇癪を起しているのは自分だ。
子供なのも自分だ。
事務的に必要な事だけ聞いてさっさと終わらすのが正しいんだと思う。
「信用できないんじゃなくて信用してないだけじゃないか!!! そんなんじゃこっちからいくら手ぇ差し伸べても一緒だよ!!! なんだよ!! 何のために僕こんなことやってんだよ!!!!」
ダン!と机を叩く。
あぁもうわけわかんねぇや。
「なんだよもう……無駄なことしてバカみたいじゃないか……」
■水無月 斬鬼丸 > 「…だから、そんなの、関係ないだろ。
水無月沙羅ちゃん、風紀にいるんでしょ?
なのに、風紀がそんなだってなら、沙羅ちゃんがここにいるのだって
正直、やめてほしいって思うよ」
それは異能殺しの問題だって言ってるんだ。
「風紀の人間の関係者って全員品行方正でただしいの?
全員にこんな尋問じみたマネとかしたの?
そりゃ引き上げたいって言ったのはこっちさ
出会いの印象から最初はそりゃ変わってほしいって言った。
でもアンタはサポートしてくれるって言った、だからお願いするって言ったんじゃないか。
だけどあんたは、いらないことで、変な揺さぶりかけて、不安を煽るだけ煽って…」
睨む。
もういい。
なんだこいつ
「あんたが、うった喧嘩だろう」
■妃淵 >
「…やーそもそも、こっちのために時間と労力割いて、って…そりゃ当たり前だろ…
仕事でやってんだろ?給料もらって」
突然何かの許容量を超えたのか爆発した雪兎を見てやや引き気味のフェイエン
「オマエ個人への信用はしらねーけどこの学園のシステムを使いたいってだけの話だヨ。
で、オマエはその準備と手続きをするの仕事なんだろ?ちゃんとそれだけやってくれりゃいーンだけどナ」
うーんと頬を掻きつつ、喧嘩腰の二人を見やる
■織機 雪兎 >
今なんつった?
ケンカを売る?
こっちは色々こういう事もあるって意見を言っただけだぞ??
ケンカ売ってんのはそっちじゃないのか?
「――ああそうかい! じゃあそうやってずっと自分のことだけ考えて生きてろよ!!」
もう知ったこっちゃない。
こんなわからず屋に裂く時間なんてあるもんか。
完全に頭に血が上ったまま書類を引っ掴んでファイルに突っ込む。
どうせサイン貰ったところで仕事は終わっている。
「結果は近いうちに連絡行きますからね!!! それじゃお疲れさまでした!!!」
つかつかつかと顔も見ずに歩いて行って、乱暴に扉を開け、勢いよく閉める。
バァン!と大きな音を立てた後、ズドン!と重い音が廊下から聞こえてくるだろう。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁小会議室」から織機 雪兎さんが去りました。
■水無月 斬鬼丸 > 「はぁ……」
書類をかき集め立ち上がる。
なんなんだあれ…
「帰りに引き継ぎ、してもらうよ…
ごめんね、フェイ」
もう少し付き合って、と頭を下げる。
正直腹立てるのはつかれる
■妃淵 >
「なんであんなのが担当になったんだ?」
素朴な疑問、あれでよくこの仕事が務まるなと思わんでもない
「いいヨ。お前が腹立てるのも無理ねーし」
謝られるようなことでもない
すっと立ち上がって、両手を上に上げて伸び
堅苦しい場所は、どうにも窮屈に感じてしまう
「じゃ、俺はヨケーなこと言わないようにしとくから任せた」
口は災いの元である
それを体現したかのような空気の悪さを感じつつ、斬鬼丸と共に会議室を出ていくだろう
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁小会議室」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁小会議室」から妃淵さんが去りました。
ご案内:「委員会街・生活委員会本庁」に小南 美奈子さんが現れました。
ご案内:「委員会街・生活委員会本庁」に干田恭支さんが現れました。
■小南 美奈子 > 活発的な活動が目立つ風紀委員と比べて、その他の委員会は細々とやる印象が非常に強い。
当然、定期的な会議、集会、必要ならば交流会とどれも基本的なことは欠かさないものの、大手を振って遊ぶといった企画は中々取り辛いのは事実である。
かの風紀委員はよく合宿や快気祝いだのをやっていたという報告書を目に通しながら頬杖を突いて息を吐く。
先ほどまで会議が行われていた一室に残り、ぺらぺらと議題に上がらなかった内容を見返している。
■干田恭支 >
「パイセーン、溜息溜息。
しょうがないじゃないっすか、俺らの仕事って目立たないのが一番っしょ。」
生活委員のお仕事、インフラ整備。
インフラというのは機能してるのが当然で、
我々の仕事はその『当然を当然のままに維持すること』だと
委員会に加入したときに説明されたのを思い出す。
恭支もその通りだと思ったし、ゆえに地味になってしまうのは無理もないことだと納得もした。
会議が終わった後の椅子や机を拭き掃除しながら、まだ居残っている二つ上の先輩へと声を掛ける。
やる気があるのかないのか、いまいち分からないけれど。
それでもこうして資料に目を通しているということはやる気が無いわけでは無いのだろう。
「それともうちらもやります?合宿とか。
そういや新歓とかも出来るんじゃないです?後期から生活委員に入りたいって生徒も居るかもだし──」
■小南 美奈子 > 「……それが出来たら苦労しない」
我々は整備を軸とする委員会だ。建築・修理、防災の拡充、ライフラインの確保と展開、日々の清掃に、場合によっては寮生への献立作り。
ブルーカラーだのなんだのと揶揄されがちな縁の下の力持ち。最近はインフラエンジニア等の技師スキルまで求められるのだからあまりにも世話しない。
一人でこれらが賄えるはずもなく、多様なスキルを持ったプロフェッショナルがそれぞれ得意な分野を担当することもある。
「そうね。愚痴も弱音も吐かず、当たり前の事を当たり前のように快適に過ごしてもらうんだし。
合宿なんてやってたら誰かが穴を埋めなきゃいけないでしょう。私は清掃業務が仕事だからまだいいけど、替えの利かない仕事をしている人もいるし、下手に人員を割く可能性があるとめんど……大変なことになる」
一年の干田恭支が熱心に掃除している光景を横目に、淡々と口にする。
まだ入って間もないひよっこだというのに、よくやってくれている。
「新歓なら出来るだろうけど。二時間ぐらいここで飲み食いするとか。……狭苦しいかな、ここだと」
■干田恭支 >
「ここは──さすがに。
まあそんな大勢わっと入って来ないと思うんすけど──」
自分と先輩しか居ない会議室を見回しながら恭支は答える。
今回は定例報告会だったらしく、各担当の代表がそれぞれ出席していたらしい。
らしい、というのは恭支自身は会議が終わってから清掃の為入室したから仔細は詳しくないからだ。
「地味で面倒だけど替えの利かない仕事。そりゃ人気も出ないっすよ。
まあ、だからこそ他の委員会以上に遣り甲斐もあると思うんすけどね。
俺ら仕事ボイコットしたら確実に泣きを見るの他の委員会ですし。」
先輩へと冗談めかして笑顔を向けながら、机を拭き上げる。
会議用机をぐるっと円を描くように並べられているそれを既に半分以上拭いている。
残すところ小南が陣取ってる机含め2つほど。空いてる方の机に雑巾を掛け始めつつ
「そういや、パイセンは何で生活委員に?」
■小南 美奈子 > 「そうね。そもそも仕事が忙しくて来れないっていう人も多いだろうし」
がらんとした会議室は人は概ね入れられようが、多方面に業務が割れているせいで参加者の確保や予定のすり合わせもやり辛い。
今回は定例報告なのでタイミングは作りやすいから楽なのだけど。
各々――概ね上級生が担当する――代表同士の定例報告は、いつも通りの業務報告・他の委員会の活動報告・文化祭に向けた清掃活動の周知、後期から生活委員に所属する生徒のリスト化と担当の割り振り。
否定意見もなくスムーズに時間通り進むと、夜勤に向かう者や早く帰る者と様々な理由でそそくさと帰ってしまった。
「うん、別に待遇に不満もないから良いんだけど。
掃除しても掃除してもゴミが無くならないから面倒だなって。分別をいつまで経っても覚えないし。飲みかけの儘捨てるし。
わたし達のお陰で生活が成り立っていることを自覚したほうが良いと思う」
彼が雑巾がけをしている様子をぼぅっと眺めながら愚痴を垂らす。学年が二個上というのもあって微妙に捌け口にしている感は否めない。
「え、なんで……」
掃除の合間の雑談。唐突に振られたそれに少し間を置いて答える。
「初めて常世島に来た時、ゴミ一つ落ちていない島を見て綺麗だなって思ったの。どうやったらこんなにきれいになるかなって思ったら、いつの間にか入ってた。
恭支はなんで入ったの?」
陣取った机から未だ離れず、雑めに応答を返して話題を振る。
■干田恭支 >
「そっすねー、うちの仕事地味に活動する時間帯も部署ごとにバラバラだし。
俺もまだ同じ委員会なのに知らない人の方が多いですし。」
そういう意味では顔見せ程度の集まりか何かあっても良いのかもしれない。
でもそれは生活委員が正しく機能していればいる程難しいだろうと、恭支も理解している。
業務があまりにも専門的になり過ぎるが故に人手が足りなくなるのも先の通りだ。
あくまで予想の域を出ないが──きっと上級生でも所属生徒を全員把握している者など居ないのではないか。
「俺は感謝してるっすよ、先輩の掃除。
こうやって何だかんだ言う割に丁寧じゃないっすか。」
あはは、と愚痴に笑いながらテーブルを拭き、椅子も同様に拭いていく。
残りは小南が居る机のみとなり、恭支は清掃の手を一旦止めた。
「へぇー、思ったよりちゃんとしてるんすね。
てっきり押し付けられたりしたのかと思ったんすけど。
──俺っすか?
俺は──そっすねー、一目惚れ……っすかね、パイセンに。」
雑巾を畳んで腰に提げたツールハンガーに掛けつつ、事も無げに言ってのける。
その表情には恥じらいなどの感情は一切無く、にこにこと人懐こい笑みを浮かべているだけ。
■小南 美奈子 > 「全員の顔と名前を知らないままいつの間にか卒業、というのも良くある話よ。
私の先輩もそんな感じだったし。生活委員会内での送別会でも『誰……?』っていう人が送り出されるのは恒例行事だから」
『誰だ』という気まずさを解消し、少しでも円滑に仕事を進める上である程度のコミュニケーションは大事というのはよく理解していた。
だから仕事以上での集まりがウチではないことをネック感じたりもするのだ。まあ、最初は集まれる人だけ集まれば良いのかもしれないけど。
彼が掃除する為に立ち止まったのを確認し、面倒くさそうに席を立つ。
「綺麗にしたいっていう気持ちだけはあるから。初めて思った気持ちを忘れないように、同じことを繰り返してるだけだから」
にべにもなく、己は続ける。
「私、イヤっていう時にははっきりとイヤっていうから。面倒臭いけど」
そして彼が何ぞ――お前何言ってんのー―と言いたくなる言葉を口にした。
口を突いて出そうになったそれを飲み込んで、「はぁ」と気のない返事。これまでダウナーなリアクションばかり返してきたが、今日イチ気のない返事だった。
にこにことした笑顔で口にした言葉は、軽薄と言うには違う気がしたけど。
「――そう、ありがと。冗談としてはつまらないけど。
じゃあ後はここを拭いて」
ご案内:「委員会街・生活委員会本庁」に干田恭支さんが現れました。
■干田恭支 > 「あー、やっぱりそうなんだ。
出来れば同じ委員会の仲間として、顔くらいは知っときたいんすけどね。」
お互いを知らないまま卒業することもあると聞けば、少しだけ寂しそうに肩を落とす。
性質上仕方ない事なのかもしれないが、やはり一抹の寂しさを覚える。
「でもそれ、案外難しいことっすよ。
同じことを繰り返すだけにしても、断る時はちゃんと断るにしても。」
席を立った小南を見て、軽く頭を下げてから机を拭き始める。
「あ、冗談だと思ってます?冗談じゃないんすよ、ああでも言い方がちょっと悪かったかも。
俺、中学の時もこういう感じで掃除とかする委員会入ってたんですけど。
この学校に入学手続きに来て、ついでに校内見せて貰ってた時に、空き教室を一人で黙々と掃除してる先輩が居て。」
当時を思い返しながら、机を拭いていく。
……当時と言ってもほんの数ヶ月前の話なのだけれど。
「この学校、こんだけデカいのにそれでもこうやって掃除してる人居るんだ、って思って。
俺にも何か出来るんじゃないかなって、そう思ったんすよね。」
ついでに椅子も拭いて。固く絞った雑巾だから、拭いた跡が残る様な事も無く。
満足げに息を吐いた後、どうぞ、と小南に場所をあける。
「だから、うん。やっぱ一目惚れっすね。パイセンにというか、パイセンの仕事ぶりに?」
■小南 美奈子 > 「そういう意見が出ると、順応し過ぎたことを痛感する」
元々他人とそこまで関わる気がないから、イマイチその気持ちには共感できないけど。フレッシュな意見を素直に答えられると、これはこれで庇護したくなる。
なんとかしたい、なんとかしよう――というほどやる気に溢れた熱血キャラじゃあないから、一人考えを巡らせるだけで済ませてしまう。
「今後何らかの集まりでも具申しようか。通るかどうかは別にして。
手っ取り早く新歓でもダシに使うなりで」
合理的に無駄なく。面倒臭いプロセスはおいといて、使えそうなものをとりあえず使う。そんな気楽な気持ち。
「自分にとって利がなければ断るし無視もする。自転車だってマニュアルを見なくても動かせるんだから、繰り返していれば同じことだって反復は案外容易いものよ」
彼が机を拭きながら滔々と語る言葉に、ぼぅっと耳を寄せる。
断りもしないし、スルーもしない。一応価値はあるものだと判断しているらしい。
「……そう。それはありがとう」
数ヵ月前も同じことをしていた。誰に言われるまでもなく(使い魔代わりの骨の動物も使ったけど)暗くなるまで一人で学園中を掃除してピカピカにしていた。
新入生が来ることへの歓迎と、一年世話になった校舎への恩を込めて。ひたむきな掃除の姿勢を誰かに見られていたというのは、思わない部分が無いわけではない。
それこそ素直に喜んで良いのだから。
彼に促されて席に座り直す。面倒そうな顔は薄らと和らいでいた。
「……それでわたしの仕事振りが好きって話だったけど。
そんなに惚れ込んでくれるなら、今後しばらく私の手下として掃除を手伝ってほしい。専任の仕事が特に決まっていないなら、色々な部署をたらい回しにして見る良い機会になるから。
どんな適性があって何に向いているか。委員会としても今後の活動の参考になるかもしれないから」
所謂好き嫌いの話よりはビジネスライクなモノなのだけど。