2021/11/18 のログ
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁刑事部」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
「お疲れ様です。はい、後は私が───」

バタン。

ドアの閉まる無機質な音

窓のブラインドから差し込む西日も翳り、月が顔を出す時刻
あらかじめ残業を申し出た凛霞は一先ず今日の通常業務を終え、別の仕事に取り掛かる
一人で残るのはやや寂しい感じもしつつ、やるべきことは終わらせないといけないのでこれはしょうがない
とりあえず珈琲だけは淹れとこうと席を立つ

伊都波 凛霞 >  
「熱っ……、ふぅ」

寒くなる時期、とりあえず淹れたての珈琲に口をつける
ゆっくりと自分のデスクに戻って椅子にかけ…、さて、と

残って何をするか、といえば
大量の報告書と反省文の作成である
落第街の違反組織の一つ、"蜥蜴"に潜伏していた時間もそれなりに長く、
とても一枚や二枚で収まるような量ではなかった

伊都波 凛霞 >  
…が、本来なら書類仕事は凛霞の最も得意とするところ
筆も速く、字も綺麗で読みやすい、となかなか評判である
そう、こうやって残ってまで書類の作成が遅れている理由は

報告書に連なる、反省文の作成が引っ掛かりを起こしているのだった

「……いい加減、提出しないと余計怒られそうなんだけどなぁ…」

デスクに頬杖をついて、大きなため息

伊都波 凛霞 >  
今回、結果的に"蜥蜴"に潜伏し
浅いまでも一応の内情、絡繰はともかくその統率と指揮の狡猾さ
一部構成員の能力、そして首魁である羅刹の語る組織の目的、と
それなりに持ち帰れたものもあった

端末から送信された偽のメッセージについては否定し、
事の発端は羅刹個人の策に嵌って捕縛されるという失態である、ということも明かす

問題は…つっかえている部分は、その先

伊都波 凛霞 >  
反省する、ということは
失敗の原因を特定し、次に同じ失敗をしないよう対策することが何よりも肝要
原因については明瞭だ
一般生徒の闖入を予測しなかった甘さと
実力的に不足のある同僚とではチームを組むこと自体が足枷になること
要するに単独で対処に当たったこと、なのだが

…あの状況で他の子がいても、結果は変わらなかっただろうと思ってしまう

それだけ、蜥蜴の構成員の連携と統率は完璧なものに見えていたし、
あの、おそらくは操られていただろう一般生徒が投げ込まれるタイミングも完璧だった
ではどうすれば良かったのかといえば…

『状況的に厳しいと判断した場合は一般生徒への被害を考慮せず任務を優先する』

…という答えはとっくに出ているのだけど、どうしてもそれを書き渋ってしまう

伊都波 凛霞 >  
「…結局、あーだこーだ書いても『甘い』って言われそ……」

そういう意味じゃないけど、今淹れた珈琲は砂糖多め
色々と考えることもあるし、糖分とらないと頭がまわんない

「事前に、単独での違反組織との交戦を避ける…かな。うん、これくらい…」

状況が起こる前に予防線を張って置くしかない
逃げ足には自信があるし
…これも風紀委員が犯罪組織相手に背を向けるなんて、と言う人には言われそうだけど

と、まぁ
そんなこんなで進捗は牛歩も牛歩、進んでいないのだ

伊都波 凛霞 >  
できれば報告書と反省文をセットで提出したかったけれど、よろしくない
報告書だけ先にあげるとそれはそれで反省文のほうは?って圧を受けそうだけど仕方がない

「…情報の共有は、早いうちにしておかないとね」

首元のチョーカーに触れる
これだけは、まだ外せていない

──羅刹の持つ異能は『洗脳』であり、その発動条件が…このチョーカーを外すこと
と、彼自身から聞いてはいるのだが、少しだけ疑わしい
彼はとても狡猾で、恐ろしく冷静で…どこか律儀ではあるが手段を選ばない時は選ばない
そんな印象を受けていた

多くの状況ではそれを教えずに発動させたほうが彼の組織にとっては都合が良いんじゃないかなと、やや訝しむのである

「(まあ、彼がそう言ってましたよ、と。書いとくだけでもいいかな…)」

学内組織のどこかで外しても大丈夫とかの分析できないかなコレ、とか思いつつ

伊都波 凛霞 >  
報告書のほうは実にすらすら出来上がってゆく
情報のどれもが信頼性の高いものではないにしろ、
落第街という巨大な学園の闇は手探りするには深すぎる
そうかもしれない、と前置きを作れること、一応の情報として知っておくことが重要だ

一度、ペンを置いて珈琲を一口
甘い…けど、頭は冴える。気はする

今回の顛末については、件の部署から既に上がっている
凛霞自身が、最も今回の件で悔いていること

「………」

手を組み、額を預ける
冴えたはずの頭が、重く感じる
罪の意識の重さか…それとも

結果的に"彼ら"に大義名分を与えてしまった

伊都波 凛霞 >  
もしかしたら、遅かれ早かれ行われる攻撃だったのかもしれない
でも今回あれが行われた切欠の一つは…

「……胃が痛くなりそぉ」

起きてしまったことを悔いても仕方ないといえばその通り
でもこれを気にせずにいれる人いる?

体制の中には落第街や二級学生を存在しないモノとして扱う人もいるだろうけど、自分はそうじゃない
むしろ、今回一時的とはいえど違反組織の中に侵入することになったことで…余計にその考えは強くなった
体制を恨み、憎んであの場所に身を置く人もいれば、そこでしか生きることができないといった人もいる

…だからこそ、可能なら…現場への復帰を希望したいと思った

自分以外にも手を差し伸べる人は多くいる、でもその手は大いに越したことはない筈、だった

伊都波 凛霞 >  
「………」

落ち込んできた
少し冷めて飲み頃になった珈琲をぐいっと一気に飲み干す
頭の中に湧いたネガティブエネルギーを吹っ飛ばせ、糖分パワー

「…ふぅ。とりあえず報告書はこれで、あとは…」

少し細やかな、主観を交えた考察などを追記する
主に自分の接触した構成員の持つ能力などの推察や、驚異の程など
そんなに多くはないので、ぴ、とすぐ書き終える

一服しよう

伊都波 凛霞 >  
珈琲を淹れ直し、一息
時計を見るとそこそこの時間
忘れず、同居する彼に連絡を入れておく
少し遅くなるかも、ご飯は食べちゃってー
自分にご飯を作るのが趣味の彼は少し残念がるかもしれない

椅子にもたれ、書き終えた報告書に視線を落とす

「…異能、かー……」

伊都波 凛霞 > 風紀委員にあって、主に戦闘行動に有効な異能を持っていない(と思っている)自分は珍しいのかな、なんて考えたりする
鉄火の支配者な彼のような力もなければ、
アフロの彼のような力もなければ、
今はともかく、とはいえ此処の先輩のような力もない

羨ましい、とまでは思わない
持つことの苦悩は、持たざる者には理解らないから

「──博士との一件で浮き彫りになっちゃったもんね」

異能力者相手への立ち回りの難しさ
予め能力を知ってでもいない限りは必ずといっていいほど不利…どころでなく勝ち筋を見つけるのが難しい

一人だとつい色々考えちゃうな、と珈琲を飲んでメンタルリセット

ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁刑事部」に燈上 蛍さんが現れました。
燈上 蛍 >  
1つの物語が終わりを告げ、舞台の上は後片付けに追われる。
台本は無く、役者は糸より自由となって、歩き始める。

刑事部の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
返事を特に待つ訳でもないまま、青年が1人部屋に入って来た。


「…お疲れ様です。」

ぴっしりと着こんだ紅い風紀委員の制服。
青混じりの黒髪に炎のような紅橙眼。
髪に差した一輪の白い彼岸花が目立つ。

特にくたびれた様子も無い風貌は、
恐らくこれから夜勤のパトロール組なのだろう。

伊都波はそこそこ長身であるが、この青年はかなり背が高かった。


「すごい書類の量ですね。」

溜息を零す少女に自然と視線がそちらに行く。
話を聞いていたかどうかは定かではない。

異能に悩む少女に、"炎"の異能を持つ青年は声をかけた。


件の蜥蜴に関する事件。
ちらりと書類に眼を走らせれば蜥蜴の文字は軽くでも読めるだろうか?

この青年も落第街で多少の風紀委員としての行動はしていた、が。

伊都波 凛霞 >  
「っとぉ…」

誰かが近づいて来る気配に、続くノックの音、応える前にドアは開いて…
慌てて佇まいを直す、一人だと思っていると油断があっていけない
…ちょっとアンニュイなところ見られたかな?

「あ、お疲れ様ー!って、もうそんな時間!?」

今日の夜勤組であろう彼
独特の風貌で長身の姿はどうしても目を引く

すごい書類の量、と言われればあははと苦笑を零す

「うん、色々纏めることもあって、ようやくって感じ。
 まだもうちょっと色々書かなきゃだけど…
 蛍くんは今から警邏だよね」

大きな事件があったばかり、気をつけてね、と続けて言葉を送る

燈上 蛍 >  
名前を呼ばれる。書架から本が手に取られる。
そうすると青年は目をぱちくりとさせた。
どうやら、覚えられていたとは思ってなかったらしい。

風体こそ特殊であるが、物語の上では端役も端役。
台詞すら割り当てられぬ、ありきたりの異能を持つ青年。


そんな時間、もう少し時間が経てば、
他の夜勤組の風紀委員たちも顔を出して来るかもしれない。


「…えぇ、そちらの蜥蜴の件の後始末がてらの警邏だそうで。
 とはいっても、報告書がまとまるなら、もう仕事はそう無い…ですかね?

 ありがとうございます。
 派手な事件があったとはいえ、普通に仕事はあるものですね。
 大丈夫ですよ、僕はある程度戦闘向けの異能持ちですから。」

先程の伊都波の溜息の内容を知る由もなく、そう話す。

伊都波 凛霞 >  
実のところこの凛霞という生徒
自分の部署の人間だけでなく風紀委員全体を名簿で顔と名前が一致するように覚えている
無論、秘匿されている者に関してはその限りではないけれど

「そっか、まだあちこち混乱してるもんね…」

行われたのが落第街の一角とはいえ、これまでの風紀委員の行動の中ではかなり広い範囲の攻撃だったはず
現場がまだ落ち着いているとは思えない
引き金の一端になってしまった自分としては、バツが悪い

「そうだね。明日には提出できそう。
 どんな処分が下るか今から戦々恐々だよー」

眉尻を下げての苦笑い
笑って見せてはいるが、不安なのだろう内面が見て取れる

戦闘向けの異能、と青年は言う
顔を名前は一致していてもその異能までは知らなかった
…でも、やっぱり危ない場所に警邏に行く人材はそうなのかな、なんて思ってしまう

「そうなんだ。私の異能は全然現場向けじゃないから、少しだけ羨ましい」

もちろん、力を持つ本人には色んな葛藤や柵みがあるのだろうけれど、今は素直にそう口にしてしまっていた

燈上 蛍 >  
「…処分の下るような項目があったんですか?」

まだ最終報告書も上がってない事案だ。
風紀委員の全てが内容を全て網羅している訳ではない。

まぁ、処分とはいって伊都波の状況を鑑みるに、
謹慎やらの一時的な処分は下るかもしれない。
その首への枷に対する検査などの処置もあるかもしれない。

故に、処分と言葉を聞けば、
伊都波の近くにある報告書の束を触れない限りで上から斜め読む。

「まだ戦火は残ってはいますが、
 でも、落第街は無くならないですね。
 神代先輩が相当焼いたとは、聞いていますけど。

 あそこを維持しようとする配役のヒトも居ますし、
 門から流れ着くのも、二級学生に堕ちるのも、
 ……後を絶たないですからね。」

青年が零す台詞からは、神代理央の名前や、
遠回しではあるが、篝火を知っているような。


自分のデスクを軽く整頓する。
特にこれといって置かれてはいない。
出来る事なら異能の鍵である白の彼岸花を活けておくぐらいはしたいが、
彼岸花の謂れを考えれば、そんな不吉なことを出来る訳もなく。

「…ありきたりな異能ですよ。火を扱う類ですから。
 魔術でも十分代用出来ますし……先輩方のように、
 特異な能力というのは無いですから。」

火の異能。
彼岸花を生成し、火事の謂れを起源に炎を起こす異能。
ありきたりな分類の異能だからこそ、
成り立ちは千差万別ではあるが、
青年は己の異能をあまり好いてはいないようだった。

伊都波 凛霞 >  
「結構ある…」

ずーん、という擬音語が聞こえてきそうな勢いで俯いた
改めてこれこれこういうことで、と言い始めると再びダメージを負いそうなので、彼には後々報告が上がってから顛末を読んでもらおう

「風紀委員が足並み揃えてどうにかできる広さなら、とっくに落第街自体残っていないよ。
 そ。不法入島者だけ、じゃないからねー……」

広大な面積に、後をたたない流入者
仮にあの場所がなくなったとして、それを受け入れられる土壌がなければ混乱が学園側にも拡がる
…そう考えれば、必要なエリアなのだと取ることもできる

どうやら神代くんのことは知っているらしい
まあ目立つ存在だし、落第街の警邏にまわっている風紀委員なら知っていて然り、だろうか

自身の異能をありきたりだと評する青年
言われてみれば確かに物珍しい…所謂ユニークな能力ではないのかな、とも思うけれど

「でも、君が風紀委員で、なおかつ刑事部の人間で、更に夜警にまわるんだから」

「ちゃんと役に立つ立派な力だと思うよ?」

役割があり、仕事があり、それにそぐう種類の異能なら、それやっぱりプラスになる
持たざる者から見ればの意見なので当然、本人からすればまた意見は変わるのだろうけれど

「…もしかして、自分の異能の力…あんまり好きじゃない?」

なんとなく、伝わった雰囲気からそんな言葉をかけてみる
不機嫌にさせたら、余計なお世話しちゃってごめんねと謝ろう

燈上 蛍 >  
手を組んで額につけてそうな状態だった。
まさかそこまでとは思わなかった。

「結構、です、か……
 まぁ、即時地下に放り込まれたりしてないだけ、
 良いんじゃないです…?」

励ましなのかなんなのか分からない台詞だった。
残業申請が通っているし、処分がまだとはいえ、
まだ動き回れるならそこまで重い処分ではないだろう、と。


門からの流入者、島外からの監視者、二級学生、
不当な取引を行う何かしらの組織の潜伏先。

落第街にあるのは何も違反部活だけではない。
あらゆる何かしらのはみ出したモノの受け皿なのだから。


「ええ…まぁ、だから僕たちの仕事があるんですし、ね。

 ……あまり好きではないですね。
 火の異能、所謂"セカンドステージ"になる前は、
 彼岸花を生み出すだけの異能だったので。
 "異能疾患"とまでは行きませんが、色々ありましたから。」

異能ステージ説。異能疾患。
異能は、それにまつわる様々な話がある。
去年の学術大会では、『全ての異能は治療されるべき』なんていう文言すらあった。

異能を羨むものもいるが、一筋縄ではいかないのがこの世界。

己の音も含め、全ての音を消し去る異能。
己を食べねば生きられぬ異能。
異能によって形成された炎の巨人は街を焼き、
異能の力の暴力によって、ヒトを殺めた誰かがいる。
探せばこんなのは序の口で、"異能"と一括りにおさまり切らない。


今は必要とされている、という事で、多少は留飲も下がっている。
だから不機嫌になることは無いが、
火の異能とは逆に、冷えた心で青年は応える。

「…とはいっても、良くある話ですよ。
 異能を持って蔑まれるだとか、そういう"お話"は。」

伊都波 凛霞 >  
素行や、普段の活動内容等
所謂『大目に見てもらえる』事柄、事由
日頃の行いって結構、重要なのだった
ほんとならすぱっと辞めさせられていても全然おかしくない

「…そっか。
 やっぱり、持ってる人は持ってる人で色々あるよね」

そりゃあね、と納得する
お花を生み出す異能、っていうのも魅力がある気はするけど
彼岸花、と聞くと少し物悲しくもある
本人にしかわからない葛藤や不安、悩みなどはたくさんあるのだろう

「蔑まれる、かぁ…」

この島だと異能がない人間こそ、といった場面もある
そう考えると、少しやりきれないところもある

「人って、やっぱり自分と違う人を警戒しちゃうんだよ。
 ちゃんとお話して、少しでも距離感を縮めていけたらいいんだけどね」

理想論ではある
でも理想を掲げなければ、現実はそれに近づくことはできない
というのが最近の少女の持論である
近づける気もないのに理想を掲げるのは?もちろんNG

「…きっと、落第街と学園側の人間だって」

話さえできれば、なんてぽつりと零したところで、ハッとする

「って、もう夜警の人達来る時間なんだった!」

誰かと話すと、その誰かとの距離が変化する
少しずつ人となりを理解して近づいてゆけるのが好きだった
…ので、結構話していると時間を忘れるのだ、この風紀委員

燈上 蛍 >  
彼女の首枷の事を考えれば、その可能性は大いにあった。
積み重ねが免責の効果が多少あるとはいえ、
爆弾を抱えた身、というのは扱いが難しいだろう。

「この島では流石にそういうのも少ないので、
 ありがたい限りですけどね。

 ただ、異能は誰にでも発現し得るモノですから…。
 僕みたいに生まれつきよりも、後天性の方が苦労はしそうですが。」

全ての生命を平等に、均等に扱うことなど不可能だ。
認識は同じ種族同士でもズレていくものだし、
偏見も差別もありふれたモノだ。

片田舎では古錆びた言い伝えが
まだまだ息をしている所だって沢山あるものだし、
そういう言い伝えで、彼のように除外されて育ったモノもいる。

…いつか、伊都波にも異能が芽生えるかもしれない。

願わくば、そうなっても愛される配役であれと思う。



そうですね、と、彼女の理想論に頷きかけた。
…そうであれば、どれだけ救われるモノがいるだろう。

「…あぁ、確かにそろそろ皆さん来ますね。」

書類、片づけてしまわないとこの青年はともかく、
根掘り葉掘り聞かれるのでは?

伊都波 凛霞 >  
「大変容から随分たった今でも、やっぱり"外"ではそうなんだね」

凛霞は、この島で産まれて育った
怪異に慣れていたりするのもそのおかげではあるけれど
外の世界での異能者の扱いなどを聞くと、想像だにしていない話もそれなりにあったりした
彼も、そんな経験を多少なりしてきたのだろう…

「お邪魔になっちゃうし片付けないとー」

わたわたと少し慌てた様子で書類をまとめ、片付ける
いつ、どこで異能が芽生えるか
それでは誰にもわからない──無論、凛霞自身も
雷覇博士の一件を切欠に自身に芽生えているものに気づくのは、まだ先で

「ごめんね!これからお仕事なのにヘンなお話しちゃって」

残った珈琲をくっと空にして、カップを机の横のゴミ箱にトス
自分のデスクを片付けて、バッグをよいしょと肩に掛ける
最後に自分の机の周りをチェック、忘れ物ナシ!

「それじゃ、夜遅くまで大変だろうけど他の人達にもよろしくおねがいします」

これから夜警に向かう彼へと言葉を向けて、ぺこりと頭を下げる。長いポニーテールが流れるように揺れる

今度から、居残りすることがあったら夜の仕事に向かう同僚のためにお菓子か何かを用意しておこうかな
なんて考えながら、最後のもう一度改めて 気をつけて と言葉をつけ加えて

「それじゃ、お先です。またね!」

あまり顔をあわせない間柄、にしてはどこかフレンドリー
これがこの少女の基本的な距離感なのだろう
そう感じさせる挨拶を交わして、ぱたぱたと少しだけ急ぎ足でドアへと向かい
特に呼び止められなければ、本庁を後にするだろう

燈上 蛍 >  
「まぁ、一部ですよ。
 田舎ではどうしても風習が残りがちですからね…。」

常世島が『常世学園』として機能し始めたのは十数年前。
前身の常世財団の事を思えば、
彼女ほどの年齢のモノが島で生まれ育つほど年月が経ったのだろう。

学園の運営は彼ら生徒手ずからで盤石となり、異能や魔術の研究は進んだ。
様々な事柄に理解は進み、青年のような異能にも偏見は少なくなった。


そんな雑談を零し、時間は過ぎていく。
廊下は夜勤の生徒で賑やかになりつつあった。

「…いえ、構いませんよ。ありがとうございます。
 お疲れ様です、先輩。」

端役の青年は、そんな台詞を詠う。
今日取った一つの物語の本を、書架に仕舞いこんで。

小走りで舞台の上を去っていく彼女を、
彼岸花の青年は見送った。


そうして、刑事部はにわかに賑やかになり、
また夜の街を照らすように、散っていく。


今日の所はお話はおしまい。
また本の頁が捲られるかは、分からない。

ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁刑事部」から燈上 蛍さんが去りました。
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁刑事部」から伊都波 凛霞さんが去りました。