2019/05/17 のログ
ご案内:「学生通り」に天月九郎さんが現れました。
■天月九郎 > 「まずいな……これ完璧に迷ったぞ……」
入学から一ヶ月と少し、親元を離れた寮暮らしにも異能が身近な生活にも慣れたころあい。
よーしちょっと活動範囲を広げちゃうぞーなんて考えたのがそもそもの間違いだった。
普段から良く使う判りやすい大通りから一本外れれば店の雰囲気もチェーン店の明るい雰囲気から個人経営の落ち着いたものに変わって行き。
そして気がつけば露天やら屋台やら勝手にやってますよといった店構えがちらほら増え始め……。
あ、これほとんど路地裏じゃんと気付いた頃にはもう遅かった。
振り返ってもどの道から来たのかはっきりとせず、日も暮れてきて通りの印象も変わり。
ありていに言ってしまえば迷子であった。
■天月九郎 > 「ん~昼が早かったせいかお腹も空いて来たぞこれは……」
時間は夕飯時には少し早いが飲食店が夜の仕込みでも始めたのか辺りには美味そうな匂いがほんのりと漂っていて。
見れば夜鳴き蕎麦、と暖簾をたらした屋台がすぐそこに店を構えており、かぐわしい出汁の匂いに誘われふらふらと近づいていき。
キュイイイイイイ!
鍋から夜鳴きが聞こえてきてすっと真顔に戻るとかかとを地面に突き立て180度ターン、早足でルートを変える。
「やばいな常世島……ちょっと舐めてた……」
少年は一つ学んだ。
■天月九郎 > 「こうして見るとほんと色々あるな……」
表通りはそれこそコンビニやファミレスといった当たり前に見かけるような風景だったが。
こっちは駄菓子屋や怪しい古本屋などちょっとばかり主流から外れたような店が多い。
他にも怪しい壷をドンと一個だけ目の前に置いている老人や、正座した上に石畳を置いて「新刊落としました」と書かれた紙を額に貼り付けられている女性など様々だ。
と、そんなときに「あんちゃんあんちゃん」と囁く声が聞こえてきて……見れば路地裏に天幕を張った怪しい露天とあやしいおじさんが手招きしていて……。
「俺……ですか?」
都会に揉まれていない少年はあっさりとその声に反応してしまう。
するとニィっと笑みを深めると手製らしき無地の表紙の本を取り出し、可愛い子いるよ?と悪魔の囁きを投げかける。
生まれたままの姿の可愛いにゃんこちゃんだと、ちょっと幼いけどあんちゃんにはちょうどいいんじゃないか?など矢継ぎ早に告げられ、ドキン、と心臓が跳ねる。
コレはあれではないだろうか、ご禁制の、いやらしい…ご、ごくり……と。
今なら1000円!いやあんちゃんは今日始めての客だから700円でどうだ!と手ごろな値段を提示され思わず財布を取り出してしまう。
心臓は痛いほどにドキドキと脈打ち、ほらちょっとだけ中見せてやるよ……とうっすら開いた本の中身を覗き込み……。
「あ、買います」
スンッとテンションをフラットに戻し、可愛らしい子猫の写真でいっぱいの本を一冊買うのだった。
ご案内:「学生通り」にアガサさんが現れました。
■アガサ > 学生通りには大通りを始めとして、小路の中にも色々なお店がある。
偏に寮住まいの学園関係者の為である。と言われているけれど、その店構えはちょっぴり不思議だ。
肉屋があって、魚屋があって、八百屋があって。衣服を取り扱うお店に靴屋さん。それと雑多なお菓子を扱うお店。
これら全てが個人商店でそれぞれに店主や店員さんがいる。複合型商業施設の立場から見ると効率が悪いようにも視得て、
その実これらは島内の雇用を増やす目的もあるのだと、親切に教えてくれた人は誰だったかな──
「……わ、いけない。もうこんなに暗くなってしまった。幾ら日が伸びたと言っても……ナントカは矢の如しってものだね」
久しぶりに足を運んだ小路の内で、好きな菓子類を買い込みながら考え事をしていたらあっという間に空の色が変わっていた。
建物に囲まれて切り取られたような空は綺麗なグラデーションを見せていて、私は紙袋を抱えたまま見上げ、溜息を落として頭を緩く振う。
すると、揺れた頭が小路から更に路地へと誘われる誰かを視た。
「…………?」
それがちょっぴり気になって、後をついていって視て、彼が何やら怪し気な代物を買おうとしていると気付く──
「あ、ナカタさん。まぁたそんな怪しい売り方して。ダメですよう、ちゃんと本屋さんらしい売り方しないと!」
より先に、怪しい露天の主が本屋のナカタさんだと気付いて言葉だけで注意するような声が出て、
「そしてナカタさんに引っかかるって事は、君は新入生かな?新入生だろう?
彼、時折こうやって妙な売り方するから気を付けないといけないよ」
次には被害者?の青髪の彼。きっと後輩だろうとアタリをつけて、島内生活2年目の私は先輩風を路地に吹かしもするわけさ。
■天月九郎 > 結局手に入ったのはにゃんこの写真集、プロのカメラマンではなくご家庭で取った個人撮影の物のようで技巧こそ拙いもののリラックスした姿がなんとも可愛らしい。
油断したお腹だとか。
にゃんこはとても好きである、家で飼えないからと近所のにゃんこを構いに行っていたのも良い想い出である。
と、カバンに仕舞い込もうとしたところで後ろから女の子の声が聞こえビクーン!と背筋が伸びる。
いやなにも後ろめたい事はない、ちょっとだけ…そうちょっとだけイケナイ本と思い込んでしまっただけで見られて困るようなものでもない。
勤めて平静にギギッと振り向くと額に汗を浮かべて自然にぎこちない笑みを浮かべ
「アッハイ!新入生であります! あ、いやうん、ちょっと探検してみたら変な場所に来ちゃってさ。うん、ちょっと迷っちゃってウロウロしてたら面白そうな本屋があったから」
ほらこんなの買ったんだと、なにも変な本じゃないよと自然にアピールするためにニャンコがサッカー中継の映るテレビ画面を不思議そうにタシタシしているページを開いて見せたり。
■アガサ > ゼンマイが切れかけの古びた人形のように動く彼の赤い瞳と眼が合う。髪色と相俟って、まるで夏空に坐す太陽みたいだな。
そんな与太を思考を押し流すような怒涛の抗弁に私は言葉を圧すようにして笑った。
「んふふ、やっぱり。大通りと違ってこっちの小路はあの手この手でお客さんを捕まえようとするから──
ワオ、猫ちゃん!買ったとなると君は猫が好き?私も好きだけど、寮だと流石に面倒は見れないんだよね。
噂ではこっそり飼っている人もいるって話だけど……と、そうじゃなくて」
小路から更に外れた奥の道は既に暗い。ナカタさんの天幕の明りばかりが仄暗く、
その奥に、よくないものがあるような気がして私は小路へとそれとなく足を向けた。
「探検。此処はいいけれど他は気を付けないといけないよ。その内知るだろうけれど歓楽街の奥にはスラムとかもあるから。
人呼んで落第街と言ってね、そして人呼ばずとも私はアガサ・ナイトって言うの。常世学園の2年生。君の名前は?」
魚屋さんの照明の傍まで行ったところでくるりと彼に向き直り、紙袋から食べる?と飴玉を差し出して、
幾つかの注意を述べてからの自己紹介。
■天月九郎 > 「ああ、そういえば大通りだと客引きなんかは見た事なかったなあ……雰囲気が違うなって思ってたけど気付かなかった。
あ、うん……猫がお腹見せてくれたときとかやったぜ!って感じになるな。猫が好きだから買いました」
こくこくと、よっしゃ誤魔化しきれたと内心ガッツポーズ。
物が物だけに誤魔化さない方が自然に話が変わったという事には気付くよしもなく。
年上の人かな?とこの辺りに慣れた様子に見知らぬ場所に迷い込んでしまった焦りも少しばかり落ち着いて。
「いやぁ、その辺の危ない場所は入学の時にしっかり教えられたんで大丈夫だと思ってたんだけど。
まさか学生街からちょっと外れただけでこんな怪しい場所があるとは……あ、俺は天月九郎、一年生……です」
こんな怪しい場所、と視線の向く先には焼肉串と書かれた屋台が店を構えていて。
牛肉串600円、豚肉串400円、鶏肉串200円、肉串20円だそうな。
新入生?と聞くって事はそりゃ上級生に決まってるじゃないかと慌てて慣れない敬語に切り替え、いただきますとありがたく飴玉を受け取り口の中に放り込む。空腹に糖分はとてもありがたい。
■アガサ > 「天月九朗。うん、九朗君だね!私が言うのもなんだけれど常世島へようこそ~……その様子だと異邦人街はまだ行った事が無いね?」
商店街に感嘆とする九朗君の言葉に私の瞳が細くなる。
問いの意図は明け透けで、もしかしたら彼の地の怪しさパワーの出力の高さが予想出来るかもしれない。
「それと、そんなに改まらなくても私は大丈夫だから御気軽にね。
君も知っているだろうけど、学園の生徒は年齢がバラバラだから、学園が上でも年齢は下みたいな事が結構あるんだ。
視た所、九朗君は私とそう歳も変わら無さそうだし──」
怪しさ度合いを閑話休題《それはさておき》とし、私は彼の改まる言葉に相好を崩してみせるのだけど、
ふとした視線に釣られてみると、そこには何という事だろう串焼きの屋台が堂々と怪しい様を示しているじゃないか。
「………うん、異邦人街だとね、羽の生えた蛙の串焼きとかもあるよ。」
閑話休題と書かれた札が脳裏で粉々になっていった。私は九朗君が引かないように精一杯をお伝えし、
彼が飴を受け取り頬張るなら、紙袋から次々に飴やヌガーの類を取り出そう。
「良かったらお近づきの印に少し持って行くかい?私はコーヒーヌガーが好きで……あ、こっちのアーモンド入りも美味しいよ。
あそこのセラノ商店は結構品揃えが良くってね。君が甘党なら抑えておいて損はない筈さ!」
■天月九郎 > 「はい、よろしくお願いします先輩、って、え?異世界から来た人たちの居住区、ですよね?」
と、入学したときに貰った資料には書いていたはず、となにやら怪しい気配を漂わせる様子にビクりと戸惑いを見せ。
「あーじゃあ楽に話させてもらうよ。
確かに、見た目は年下でも先輩って可能性もあればおじいちゃんの後輩とか居るわけか……高校じゃなくて学園だもんなあ……、あ、俺は今年14になったばかりで……
蛙!?っていうか羽って……そ、そうか異世界人の街だから食材も異世界式……」
なるほどそういう事か……と、この場所はまだ地球式だから常識の範囲内に収まっているわけかと冷や汗を浮かべて。
「あーいやいや飴貰ったばかりだし遠慮しとく、甘い物は……うーん、嫌いってわけじゃないけど特別好きだってほどでもないなあ
どっちかというと好物は肉……」
肉……とちらりと屋台の方に視線が。
お安いな……と
■アガサ > 「勿論大丈夫だとも。そしてその通り、色々な生徒が居るからね。
異世界人の生徒もいるし、見た目と年齢がズレている人も。例えば私は今年で1015歳──なんて訳も無く15歳なんだけれど」
戸惑い、冷や汗を浮かべる九朗君の様子はともすれば面白く、からかってしまいたくなって、でもそれは良くないと飲み込んで。
和やかに学園の与太話が飛び交っては消えていく。
「そう蛙。ピチュ・ッパイガヤって名前の奴で、跳ぶのか飛ぶのか判らない奴。他にも……」
話題が飛んで跳んで転がる先は肉屋の屋台。香ばしい匂いが夕暮れ時に頼もしく、興味を惹かないとあれば嘘にもなった。
「ようし、それじゃあ先輩が新入生の九朗君に御馳走してあげよう。お近づきの印というものさ!」
こうして新しく知り合った誰かとの会話は気分を和ませるのもあった。
だから私は九朗君の手を引いて屋台の前まで行くのだけれど、店主が知らない人だと少しばかり言葉に詰まる事となる。
聞けば最近参入したのだとか──
「…………九朗君。先輩としては鳥辺りがいいんじゃないかなあと思うよ?」
「新鮮締めたて」「安全な肉ごす」「健全な食生活」
なんて描かれた看板も目に入って、私は彼の目を見ずに視線を泳がせた。
すると布が被さった小さな檻が目に入る。中に何かが、いるみたい。
■天月九郎 > 「そういえばまだ会った事が無いけど人間以外の人も居るんだっけ……
ううん、会ってみたいけど好奇心丸出しってのは失礼だろうしなあ……」
大変容で表社会に出て来たとはいえ自分の周囲にはそういった異種族は居なくて、ファンタジー世界のようで興味深いけれど好奇の視線を向けられれば誰だって快く思わないだろうと少し悩ましげに
「え、なんて……?」
発音も若干おかしな固有名詞を聞き取れず、それだけに異質な何かというのが十分に伝わってきてやべぇ感に若干引き気味で。
「え?あっちょっ!」
不意に手を引かれると一瞬で思考が飽和状態に。
だって14歳の男の子、異性との接触とか劇物でしかなく、そしてそんなのぜんぜん平気ですよ?と振る舞うために全力を傾けるため……思考リソースは枯渇寸前であった。
「あ、じゃあ俺は肉で……。いや俺肉は好物なんで」
ゆえに普通なら警戒して避けるメニューを目に付いたからという理由で選んでしまうのだった。
屋台の糸目のお兄さんは「そうか、君はやはりそれを選ぶんだね……」と穏やかな笑みを浮かべ紙袋に包んで渡してくれて。
■アガサ > 「人間……の定義次第だけど、うん。いるよ?大型プール施設で監視員をしてるドラゴンっぽいお兄さんとか……ん?」
悩ましそうにする九朗君に聞き返されて、私はもう一度ピチュ・ッパイガヤだよ、なんて教えて上げる。
そうしてこうして屋台の前。私は檻から目線を外して、見慣れない店主さんの、貼り付いたような笑顔に少しだけ首を傾ぐ。
「九朗君!?……君、中々やるなあ。えっと、じゃあ私も──」
そうしていると傍らの彼が冒険の舞台に躍り出ていて、こうなると先輩として臆する訳にはいかない。
いかないのだけど、先程の檻から凡そ聞いた事の無いような鳴き声がして、目を瞬いて暫し沈黙する事になっちゃう。
「──私は、鳥で!」
その声が私を悩ませている幻聴の類では無かった事は良しするけれど、選ぶ由にはなりはしない。
指した指先は鳥串を選び、見慣れない店主のお兄さんは、何かに納得したように頷いて紙袋に包んで渡してくれた。
「うん、まあ学生街のお店だし、なんだかんだで大丈夫なものな筈だよ。
これが歓楽街とか落第街なら無理やりにでも止める所だけど」
それから、屋台から少し離れてから。
私は紙袋からお行儀悪く鳥串を取り出し、甘かったり辛かったりする味に舌鼓を打ちながら、
猫を殺す感情を漲らせる猫好きの後輩を一応案じて眉を顰めてみせた。
■天月九郎 > 「あーそっか人間って一言で言っても範囲があるわけか…厳密に言うと俺も枠から外れそうだしなあ……。ドラゴンかぁ……いかつそうだなあ
ファンタジーで定番だとエルフとか、獣人とか?」
もう一度発音を教えられてもぴ…ピチュ?と結局上手く発音できないようで。
彼女は鶏肉を選んだようだがそれを聞いてようやく、あれ?自分冒険した?と気付いて袋の中に詰められた肉串に視線を注ぐ
視線を注いだところで今更変えられないわけだが。
「あーなんか違法な施設とか結構ごろごろしてるとかいう……さすがに用事でもなければ行かないし、用事も作りたくないなあ……
さて、それじゃ改めて、いただきます」
小さくなった飴玉をガリっと噛んで飲み込むと恐る恐る、串に刺さった肉を一口。
妙に気前の良い大きさなのが逆に気になってしまう。
噛み締めれば多少筋張った食感からじゅわりと肉汁があふれ、ハーブとニンニクを効かせたらしい味付けがガツンとやってきて……
「普通に美味しいな……」
そして普通に美味しいからこそなんであの値段なの?という疑問がじわじわこみ上げてきて……
視線を屋台の方に向けるとそこには全く別のたいやき屋さんの屋台が……
■アガサ > 「うん、耳が長い人もいるし、獣人な人も居る……って九朗君が?またまた、先輩をからかっちゃいけないよ」
九朗君はどうみても普通の男の子に見える。目を惹くとするなら綺麗な赤い瞳だけれど、何も他に居ない訳でもない。
私は唇と緩やかに曲げて鼻を鳴らして見せるんだ。
「違法……という割には暗黙の了解的に放置されているのもあるそうで、SNS上では陰謀論が飛び交う事賑やかしいよ。
君も興味があったら目を通してみるといいんじゃないかな。此処だけの話、美味しいお菓子屋さんがあったりもしてね……」
当惑気味な彼に続く言葉も唇を曲げたまま。
時折そういった場所に、私が赴いている事を暗に示しもするのだけど
──示したところで、ついぞ最近はそういう所に行っていないなと、思い出したように顎先に指をやっての思案の構え。
すると、彼が肉串に対して至極真っ当な感想を零していて、私は新装開店のサービスだったのかなと、視線に釣られて振り向く。
「…………………………あれ?」
其処には串焼きの屋台なんて無かった。
私は手元の串と、たい焼きの屋台を二度見して性質の悪い幻覚の類じゃない事を確認し、
顎にタレが付いた事に遅れて気付いて、串をそっと捨ててからハンカチで拭う。
「……えっと、御免ね。確認なんだけど……屋台、あったよね?」
彼からすれば何を変な事を、と思う事を、私はきっと困った顔で訊ねたと思う。
多分、きっと、そういった魔術か、異能の心得がある誰かの悪戯なのだとも思うけれど、念の為だ。
■天月九郎 > 「まあ縁があればって事にしとくかあ。 うん?ああ、見た目は普通なんだけどさ、遺跡で見つけたアーティファクってやつ?あれが身体に入ってなんていうのかな……強くなった?」
霊視能力でもあれば妙に生命エネルギーが強いだとか判るだろうが外見的な特徴といえばせいぜい目の色くらいのものだろう。
「ううん、なんだか物騒な……っていうかそういう場所に美味しいお菓子とか売ってても麻薬の隠れ蓑とかってイメージが……洋画とかでたまにあるやつ……」
なんだか海外のスラムのような印象が…とつい最近まで日本の平和な街で暮らしていたせいでいまいちピンと来なくて
「いや、あそこにあった、よな……」
周りを見渡しても他には屋台は無く見間違えようはずが無く、すっかり食べ切ってしまった串を見て不安そうに……
いや美味しかったしまあいいか、と前向きに捉える事にしよう。
「さて、俺はそろそろ……帰りたいんだけど男子寮ってどちらの方向でしょうか……」
ぱん!と膝を叩いて気を取り直して……そういえば迷子だったよと困った笑みを浮かべて振り返り。
■アガサ > 屋台は確かに在った。
九朗君の手元にも串があり、彼の口元にはタレがついている。私はその事に安堵して大きく息を吐いて
「───」
なんだかすごい秘密をさらりと明かされたような気がして、鳩が豆鉄砲の銃身を直接叩き込まれたような顔になっちゃうんだ。
「えっと……つまりそれが九朗君の異能……なのかな。凄いなあ、もし良かったら今度詳しく聞かせておくれよ。
遺跡ってことは大変容以前の魔術的なものかもしれないし──あ、私魔術の勉強もしていてね」
落第街の菓子屋に纏わる裏話予想もなんのその、私は驚きを他所に彼の言葉を圧するように言葉を乗せて、
幾ら先輩とはいえ、初対面の相手には不躾すぎると、近づきかかった身体と言葉が離れて空咳を一つする事にもなる。
「う、うんそれは兎も角として……男子寮?それならこっちの方だとも。先輩に任せてくれたまえ!」
膝を叩く九朗君に胸を叩いて応じてみせて、ポケットより取り出したるは携帯端末のナビ画面。
「このアプリがあれば学生街で迷う事は無いよ。無料だから君も入れるといいんじゃないかな!」
先輩らしく、便利ツールの使い方だって教えて上げれる私なのだった。
ご案内:「学生通り」から天月九郎さんが去りました。
ご案内:「学生通り」からアガサさんが去りました。