2020/08/04 のログ
ご案内:「学生通り」に小金井 陽さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に水無月 沙羅さんが現れました。
小金井 陽 > 「ふー、一段落ってぇところかね。」

学生通りの端っこに出来た、真新しく小さな洋菓子店舗『ラ・ソレイユ』。
憩いの場として利用してもらえることも多く、今も近隣住民や学園の学生が利用し、のんびりした時間とお喋り、そして陽たちパティシエの作ったお菓子に舌鼓を打ち、笑顔で帰宅したばかり。現在はかなり空いているほうだ。

水無月 沙羅 > 「……ここ来るの、二度目だっけ。」

神代理央がオーナーをしているという店、『ラ・ソレイユ』。
以前訪れた時はたしか彼の入院中だった。
マロングラッセをおまけにもらったんだっか。 そんなことを思い出しながら扉を開ける。

今日は、というか昨日から三日間ほどの謹慎処分を受けている沙羅は、休日の過ごし方というものを全く知らなかった。
そこで、以前の記憶を頼りにもう一度行きたいところを選出したというわけだ。
友達が少ない、というのはこういうところで人生不利になるのかと実感する。
友達と言える人は一人しかいないのだけれど。

「こんにちわー……」

以前はおしゃれさと見知らぬお菓子の並びっぷりに混乱してしまったが。
二度目ともなれば大丈夫だろう、意を決して中へ突入する。

小金井 陽 > 「っと、いらっしゃい。
お一人さんですかね?」

そうやって、沙羅がおそるおそるといった様子で入店すれば、フランクな笑顔と挨拶で迎えてくる、パティシエと思しき男性の姿。以前来店したときは見かけなかったが…奥で作業していたのだろうか。

「空いている席に案内するぜ、っと。」
そういって沙羅を先導して案内する、同年代と思しき調理服の男性。
フランクで砕けすぎている案内に、最初は店員に「もっとちゃんとして」と怒られたものだが、最近では訪れるお客さんにもラ・ソレイユの『味』として受け入れられており…近寄りがたい高級洋菓子店というよりも、もっと親しみやすい雰囲気に落ち着いているのだった。

水無月 沙羅 > 「あ、はい。 今日は一人です。」

見知らぬ人。
多分、パティシエさんだろう、お菓子を作る人。
以前は厨房に居たのだろうか。
私の事を知らない……、他の人からは聞いてなかった感じだろうか。
それはそれで都合がいい気もする。

「今日はそんなに忙しくないみたいですね……?」

キョロキョロと見渡す、やはりどこか落ち着かない。
目の前の男性はフランクで、接しやすそうな顔つきをしている。
ちょっと髪の色が眩しいけど……銀、彼とは真逆の色だ。

案内された席に座り、少しだけため息をつく。
ここ数日は気が気ではなかったから、疲れているんだろう。
そう言う意味では、一度来たことのあるリラックスすることが許されるスイーツの店、というのは今の自分にとっては良い選択だったかもしれない。

「初めまして、水無月沙羅といいます。」

とりあえず自己紹介、普通のお客さんならしないだろうけど。
これからたくさん来ることになるかも知れないのだし。

小金井 陽 > 「ああ、今はなー。さっきまではかなーりてんやわんやしてたんだぜー」
そう聞かれれば、ニッコニコの笑顔で嬉しそうに返す。店がゴチャゴチャになるくらい忙しくなるのがさも楽しそうに…ただし、店員は気が気でないだろうが。

「ん?俺の髪が珍しいかい?学園にゃ銀髪の生徒も少なくはなさそうだが。」
蒼銀の髪へ視線が向いてるのに気づき、気軽に問いてくるパティシエ。なんのこともない、『日常』を感じさせるやりとりだ。

「おう、初めまして。俺は小金井陽っていうんだ。ラ・ソレイユのパティシエをやらせてもらってるぜ…っと…水無月?」
まんまるな猫目をぱちくりして。どこか、聞き覚えのある名字を意外なところで聞いた、という顔だ。

水無月 沙羅 > 「そうだったんですか? なら、タイミングよかったですね。」

眩しいくらいの笑顔で返される。なんというか、今まであってきたどのタイプとも違う人だ。
大昔の、子供の頃の幼馴染をふと思い出す。

「いいえ、知っている人がブロンドだったので、正反対だなって。」

そう言う意味では、隣同士に並べばアイドルとかできそうだ。
絶対嫌だけど。
この学園なら確かに銀、というか白い髪の人も多い。
真白師匠の髪も白かった。

「やっぱりパティシエさんでしたか……あれ、聞き覚えのある名字でしたか?」

斬鬼丸兄さんと会ってたとか? 可能性はあり得るかも、
もう一つは……やっぱり、店内だから情報は知れ渡ってるとか。

小金井 陽 > 「おう、俺も接客に出てこれるってもんだ。菓子作るのは勿論大好きなんだが、食べてるお客の反応が見たくてなー。」

笑顔には笑顔で、太陽みたいな笑顔で返し、あっけらかんとそうやって自身の内心を伝える。裏表のない人物のようだ。

「なるほどな、確かにブロンド髪とは正反対の色合いしてっからなぁ。俺の髪の色。」
自身の髪を一房指先で摘まんで、つんつん。きらきらと、刀の煌めきのような光彩が走る。

「おう。…んー、俺の勘違いだったら悪いけどな、もしかして斬ちゃ…水無月斬鬼丸って学生と血縁かい?と、悪い。今メニューと水とおしぼり持ってくるな?」

そういって、一度テーブルから離れて給仕の用意をする。

水無月 沙羅 > 「お客さんの反応? あぁ……そうですね。 作ったものをおいしく食べてもらいたい、笑顔で居られてもらえたらうれしい、というのは分かる気がします。」

そのためにずいぶんと料理も練習した、効果が実っているのかは定かではないけど、少なくとも水銀とか塩酸とかは使わなくなった。
いつか自信をもって手作りですってお菓子の一つでも渡せればいいのだけど。

「あぁ、やっぱりそっちでしたか。 斬鬼丸兄さんは従兄なんです。
 幼い頃に一緒に居た時期が少しだけ。
 あ、あんまりお気遣いなく……って、お店だからそういうわけにもですね。」

理央から何か聞いていた、というわけでもないらしい。
給仕を受ける、というのは未だに馴れない。
大体誰かの補佐をすることが多かったのもそうだけれど、そもそも日常的な生活というものに縁が遠かったというのもある。
ファミレスとか、カラオケとか、およそ学生が楽しんでいる趣味とかそういうものにあまり縁がなかったのだ。

小金井 陽 > 「おうおう、それそれ。その気持ちな。いやー、なかなか気が合いそうだわ。」

お冷とおしぼり、メニューに…それと、小皿に軽く盛られたクッキー二種が目の前に置かれる。香りからして、プレーンと…紅茶だろうか?シンプルながら、とても丁寧に作られており、ザラメ糖がまぶされている。

「ああ、そのへんは全然気にしないでいいぜー。俺は俺のやりたいことをやってるだけだから。この店含めて、な。」
気遣いなく、と言われれば軽くウィンクして、かんらかんら笑うパティシエ。その自然体の姿勢からして、本当に『やりたいこと』をやりたいだけやっているだけなのだろう。

「そうかそうか、斬ちゃんにゃ従妹ちゃんが居たのか。アイツ、自分のことは全然話さねぇからなぁ。」
そういって、陽キャ扱いされてなかなか仲良くなれない後輩のことをしみぢみ思い出しながら、メニューを沙羅の前へ。
八月のお勧めメニューは白桃系…パフェやスムージー、ケーキなどが並んでいるようだ。そして通常メニューも目白押し…相変わらずに、つい目移りしてしまうラインナップである。
しかし、給仕とは言っても学友が話しかけてくるような軽いノリ…そう、雰囲気的には文化祭で恐る恐る遊びにいった友人の店でくつろぐようなノリになっている。本来はそれではいけないのだろうが…!!

水無月 沙羅 > 「私も、つい最近そう思う様になったばかりで、まだ上手くはいってないんですけどね。
 気が、合うのかな。 そういうの、よくわからなくて。」

「あれ? 私まだ何も頼んでないですよ?」

目の前に置かれるクッキーに首をかしげる。
シンプルな二種類のそれ。 軽い前菜のように出てくることに少しだけ驚いた。
お菓子というのは何を作るにしたって手間がかかる、作り置きはしてあるのだろうけれど、黙って出してくるというのも懐が広いというか。

「やりたいことをやってる……あはは、理央さんのお財布がひっ迫しなければいいんですけど。」

あの甘味大好きの金持ちのことだ、ポケットマネーを使ってむちゃくちゃやっているに違いない。
このパティシエさんもあんまりそういうのにこだわる人には見えないし。
以前ここで接客してくれたあのお姉さんの胃は平気だろうか。
少しだけ心配になる。

「まぁ……その、兄さんもあまり言いふらしたいことではないでしょうから。 
 いろいろあるんです。 いろいろ。」

彼にとってみれば、自分は人生の汚点だ。
自分のことを大切に思ってくれている、という事は分かっている。
それでも、私のせいで今も苦しんでいることに変わりは無い。
自分のことを語りたがらないというのも、少なくとも全く無関係では無いのだろう。

いけない、余り暗いことばかり考えていては目の前の人に失礼では?
と思い頬を少し叩いて意識を現実に引き戻した。
置かれたメニューに目を通す、相変わらず見たこともない様なスイーツが並んでいる。
少しだけ縁遠い、でも今は手の届くそれに少しだけ胸が弾む。
年ごろの女学生というのはこういうものにやはり夢中になるのだろうか。

「どれもおいしそう……。」

此方にフランクに話しかけてくれるパティシエを見る。
本当に楽しんでいる、そういうのが伝わって来る。
その姿は眩しくて、少し羨ましい。
自分にはそう言ったモノは無い、あの人の役に立てればうれしい、位のものだ。
其れではいけないんだろうな、というのはなんとなくわかるけれど。

小金井 陽 > 「なんのなんの、難しいことなんていいんだ。心込めて精いっぱい作って、食べてもらって、おいしいって言ってもらう。シンプルに考えて、シンプル喜んでもらえたらよ、幸せじゃないか?」
小難しい話は無し、とばかりにかんらかんら笑うパティシエ。スイーツ脳筋というかなんというか。

「ああ、サービスサービス。本食前のちょっとした前菜みてーなもんだからさ。試作品の味見に手伝ってもらえりゃいいのさ。」
手のひらをひらひらして、にっかり。試作品…という割には、このまま店に出しても遜色のない形と香りである。バターと紅茶と小麦粉の焼ける香りが、のんびりとした落ち着きを醸し出す…

「んん?理央っちとも知り合いだったか。……いや、知り合いってーか…もしかして、いい仲か?」
とても親しげに、オーナーにして友人たる学生の名を呼ぶ沙羅の表情に…ニコニコと、いろいろ勘ぐってしまうのは仕方ないだろう。というかその勘ぐりは事実であった。

「…ああ、あんま触れちゃいけねーことだったか?悪ィ、俺ぁいつもこうやってつい踏み込んじまうタチでな。

…しかし…真っ直ぐなんだなァ、沙羅ちゃんは。――細かい相談とかはできねーけどよ、旨いスイーツを馳走することぐらいは、出来るからさ。」
少し気落ちした気配の沙羅の肩をぽん、っと柔らかく叩き、『相談に乗る』などの気休めは言わずに、ストレートに自分の出来ることを伝えるパティシエ。

水無月 沙羅 > 「幸せ……そうですね、きっと幸せなんだと思います。」

想像して、少しだけ笑みが零れる。
あの人の笑顔を引き出せたら、確かにそれはとても幸せなんだろう。
心が温かくなる、そんな小さなひと時。

やはり前菜だったらしい、しかも試作品という建前付き。
本当に試作品なのかはさておいて、多分気を使ってくれたのであろうことはわかる。
其れとも本当にたったそれだけなのか。
目的の無い善意、というのに免疫がない沙羅にはよくわからない。

「あ、えーっと、まぁ。 その。 一応、恋人……ですかね?
 今は同じ部屋に住んでるんです、あの人余り返ってこないんですけど。」

つい口に出してしまったことに苦笑いする。
どうにも油断していたというか、たぶんこの人の雰囲気に充てられたのだと思う。
するすると言葉が出てきてしまうような、そういう不思議な雰囲気のあるひと。
あの人が出資する、というのにも、そういうところにひょっとすると理由があるのかもしれない。
そう思うと少しだけ、目の前の人物が身近に思えてくる。

「いえ、大丈夫です。 私が勝手に重く考えてるだけですから。
 気にしないでください。
 
 ……真っすぐ、ですか? よく、分からないですけど。
 そうですね、相談に乗られるよりも、そっちの方が気楽、かな。
 
 不思議な人ですね、陽さんは。
 飾りっ気が無くて、理由も要らない、純粋な人。
 あ、ごめんなさい、変なことを言って。
 そういう風に見えたって、それだけの話ですから。」

優しくされることにも、正直そこまで免疫は無い。
緊急時に『気を使われる』という事はあるけれど。
日常で優しくされる、という事にはあまりに成れていないから、反応にこまったりする。
だから癖として、相手を評価してしまったりして。

でも、この人はどういうわけか、少し暖かい雰囲気がする。

小金井 陽 > 「おう、それそれ。そうやって笑顔になれるようなキモチになれるんなら、十分じゃね?」

にっかり。単純な…とても単純だけど、揺るぎない大事な事へと言及するのだった。

「ああー、やっぱそっか。最近理央っちと会えてなかったからなァ。しかも同居、いいねいいねぇ!」
茶化すような気配は無く、単純に二人が幸福であるようにと願う微笑みを浮かべ、ニッカニカである。
…目の前のパティシエは、もしかしなくても、人が『幸せ』であるということがとても好きなのかもしれない。

「相談ってのは相手をよく知らないと逆効果になっちまうことが多いからなー。よくやらかしてんだ、俺。」
そう吐露して苦笑し。

「ははっ、褒めてくれてありがとよっ♪そうだな、いろいろ考えるよか、感覚で動いちまう方だなァ。

………うん、決めた。理央っちの恋人に…何よりな、今の沙羅ちゃんに食って欲しい特別なモン思いついたわ。
ちょっと待ってな。」

言うや否や、沙羅と話してたテーブルから離れて、銀の尾を引きながら奥の厨房へ、足早に、それでいて見苦しくないように引っ込むパティシエ。…まだ注文が終わってないというのに、こんな店員、フツーいるだろうか?なんか視界の端では別の店員が頭抱えてそうな雰囲気がする…!

水無月 沙羅 > 「会えてない……ですか、まぁ忙しいというか、いろいろありましたから。
 ネット、とか見てないんですよねきっと。
 今度会ってあげてください、きっと喜びます。」

今のあの人には、こういう人がきっと必要だ。 
本当はもう少し茶化されるものだと思っていたけど、感じるのはただ祝う気持ちだけ。
本当に、たったそれだけ。
揶揄うわけでも無くて、その事実が嬉しいと表情が物語っている。
なんて人なんだろう、人によっては自分の醜さが移ってしまう鏡の様だ。
それだけこの人は、『綺麗』なんだ。

「褒めて、るのかな。 本当に思ったこと言っただけなんですけど。

 うん? え、あの、陽さん!?」

桃のスイーツでも頼もうかな、と頭を悩ませようとしていた矢先に、厨房に消えてしまった。
なんというか、『自由』という言葉がよく似合う。

「私に食べてほしい特別なもの……?」

よくわからない。
スイーツのこともそうだけれど、出会ったばかりの自分に食べてほしい物。
料理人とは、パティシエとはそういう生き物なのだろう。
多分私が特別という事ではないんだと思う。
誰にでも、そういう特別を用意する人。
心は温かい何かを感じる、けれど。

どこか、不安を感じるのは何故だろう。
『優しすぎる人』は、時々怖くなる。

小金井 陽 > 「――ほい、っと。お待たせだ、沙羅ちゃん。
予約販売の限定が諸事情で浮いちまったんでな。食ってもらいたいのはコイツだ。
『常世苺のタルト』。ちょっとした逸品だぜ?」
……そういって目の前に出されたものは、店内のライティングを映し、きらきらと表面の飴が光り輝く真っ白な宝玉めいた苺のタルト。…奥に引っ込む前、少し左右に視線を彷徨わせたのは、これをほかの客に見せないためだろうか。確か、収穫の際にあまりの倍率の高さに暴動がおこるほどだとか…
噂に少しでも聞いていれば…非常に稀少な常世島の名産品であり、口にしたものも…それこそ、このように菓子として加工されたものは更に稀。
『誰にでも』出せるような『特別』ではないことが、はっきりわかる。

「ああ、ここ一月ばかりネットも見てねぇなぁ。
この店が思ったより繁盛しちまったのもあるし、
理央っちがどうしても参っちまったときのために…
とびっきり旨いスイーツを食わせるために、まだまだ修行不足だし、な。

ああ、是非会いてぇし、なんなら沙羅ちゃんが引っ張ってきてくれよ。
……ん、どした?何かおかしなことでも言ったか、俺?」
小首を傾げ、超稀少のレアタルトを持ってきたパティシエが怪訝そうな顔をする。
……この常世苺自体嘘、の気配は無い…だまして高価なものを食べさせるような気配も…無い。
むしろ、嘘をつくのはものすごく下手そうである。
すべて、赤心から出る本音なのだろう。

水無月 沙羅 > 戻ってきたパティシエが、あたりを警戒するようにしながら運んで来たのは、イチゴのタルト。
沙羅でも知っている定番ともいえるお菓子。
『常世苺』、噂位は聞いた事がある。
これが原因で起こった諍いを風紀委員が諫めたことがあったはずだ。


「あの、どうしてこれを、私に……?」

どうやら、自分の予想は外れていたらしい。
誰にでも出せる特別な物、ではなく、『誰かのために』出す『特別な物』が出てくる。
余計に不安になる。理由が見当たらない。理由がないのは、怖い。
それはおかしなことなのだろうか。

「どうしても参っちゃったとき……っていうなら、それはまさに今だと思いますよ。
 よかったら、少し見てあげてください。
 今は、お店の営業中ですから終わった後にでも。」

「えっと……わからなくて。 貴方からは、裏とか、嘘とか、企みとか。
 そういうのを、全然感じなくて。
 そこまでしてもらう理由も、見つからなくて、だから。
 それが少し、怖いというか。
 すみません、純粋に気をかけてもらってるというのは分かるのに。」

本音を真っすぐ向けてくれる相手を、疑わずにいられない。
そんな自分が醜く見えた。
嬉しい筈なのに、悲しい。
悲しい筈なのに、嬉しい。
矛盾した感情に、混乱する。

小金井 陽 > 「んー、そうだな。」
少し、自分の中の言葉を整理するように考え込む仕草をして。
テーブルの方を見るパティシエの視線は、衝動的に起こした自分の行動への言語化を整えているように見えて。

「そっか、理央っちが今そんな状態なのか。なら、後で会いに行かなきゃいけねーな。

…ああ、なんとなく分かった。
沙羅ちゃん、お前さんもな『そう』見えるからだよ。
どうしようもなく参ってるような、理央っちと同じような、今の状況に疲れ切ってる…ってぇ顔してんだ。」

俯き、混乱し、悲しみ、惑い、疲れ。
自らの考えを嫌悪して落ち込みのループに入ってしまいそうな沙羅へ、ぽんっと日常の温かさが肩を叩く。

その後に、煌めく銀髪を小さく掻いて苦笑いし。

「…っても、最近の島の状況はわかんねぇし、理央っちがどうなってるかも、沙羅ちゃんがどういう状況に居るってのもわかんねぇんだけど、さ。

友達や、ダチの彼女が疲れたり、落ち込んでいた時に…励ましにとびっっっっきり旨いモン食って少しでも元気になってもらいたい、ってのは、理由としちゃ不十分かね?」

沙羅と視線を交わし、バカみたいに真っ直ぐな目で見つめてくる、スイーツバカ。…ほんとに、目の前のパティシエは、自分の菓子で食ってもらった相手を明るくすることしか、考えていないのだ。愚直なまでに。