2020/09/28 のログ
ご案内:「学生通り」に織機 雪兎さんが現れました。
織機 雪兎 >  
学校が終わって一度家に帰り、私服に着替えて学生街へ。
一人でいろんなお店を回り、クレープなど食べながら歩いていたら。

「あ、あの、……」

声を掛けられた。
ナンパと言うやつだ。
三人ぐらいに囲まれて、ひとり?だとかどっかでお茶しない?だとか。
怖いんですが。

「い、いくとこあるので……」

そう言って間をすり抜けようとするが塞がれる。
どこいくの?何か買い物?そのあとカラオケとかどう?
しつこいんだが?????
ていうか僕みたいなのに声かけてないでその辺で明らかにナンパ待ちしてるやつに声かけろよ。
視線がずっと刺さってんだよ。

ご案内:「学生通り」に史乃上空真咬八さんが現れました。
史乃上空真咬八 > 「――連れに、何か、用事スか」


史乃上空真咬八 > ――真っ赤な、浮かび上がる鋭い眼光湛えた、狂犬じみた褐色肌の男子学生。

そんな奴が、ナンパされた織機と、ナンパする三人の背後から、そのうちの一人の肩に腕を置く。
それはそれは恐ろしい顔をしている。

「……織機さン」

名前を呼んだ。努めて平常運転のトーンだが、顔だけがそれはもうおっそろしい。

織機 雪兎 >  
めっちゃこわい声。
男三人と同時に自分もそちらを見る。
うっわこっわ。

「あ、かみやんパイセン」

一瞬怖い人かとビビったけどよく見たら知ってる人だった。
男たちはなんか焦ってひきつった笑いを浮かべながら走って行ってしまった。
その拍子に男の一人にぶつかって、バランスを崩す。

「う、わ……あー、あー!」

転ぶことはなかったものの、手に持っていたクレープを落としてしまった。
まだ一口しか食べてなかったのに。

「おいこらクレープ弁償しろ! おい! 逃げんな!!」

ぎゃあぎゃあ騒ぐが、男たちはもう見えなくなってしまった。
くそっ逃げ足の速い。

史乃上空真咬八 > .
「……失礼しやした」

男三人、揃ってケツまくって逃げ出したのを見送りもしない。
そのままバランス崩してクレープを台無しにした織機へ歩み寄り、
小さく頭を下げた。
……足元に落ちたクレープだったものを一度見て、次には手を挙げた。

「……クレープ一つ分の代なら、俺、出しやスよ、織機さン」

もう怖い顔は無くなっていた。相変わらずの仏頂面寄り真顔気味――の、
前よりちょっとだけ柔らかいかもしれない顔。
彼なりに努めた、こわくない顔。日々努力の賜物かどうかは兎も角。

「……或いは、ナンパされたほうが、良かったスか」

織機 雪兎 >  
「いやぁ助けてもらってそれはちょっと……」

しゃがんで落ちたクレープを拾い上げる。
地面について砂がべっとりついたところを落とせば食べられなくもなさそうだが、それはあまりにみっともない。
近くのゴミ箱に放り込む。
さよならチョコバナナカスタードクレープ。

「えっ。いやまさかぁ。あんな頭悪そうな連中についてっても何も楽しくないよお」

へら、と笑って手を振る。
どうせ一緒に遊ぶなら、もっと頭良さそうな人と遊んだ方がいい。
そう言う意味でなら、

「むしろデートならかみやんパイセンとした方が楽しそうだし」

史乃上空真咬八 > 一瞬、『まさか拾って汚れだけ落として食べる気じゃ』と身構えたが、
流石にそこまでみっともないことがされることはなかった。
ちょっとほっとしながら行く末を見届け、その笑顔と手に、
ちょっと安堵の顔。

――直後の言葉。「ぐッ」と、呻いた。
左手が顔を少し押さえ、視線を落としながら首を振った。

「……織機さン、そういう言い方は、ちょい、恥ずいスから、ご勘弁を。
冗談といえど、少し」

――精神的耐久力は前とそんな変わってなかった。
ファミレスでのスカート覗き未遂をやらかした時から、
全く、そう、まるで成長していない。

「……お元気そうで何より。少々、久しぶりの気がしやスよ」

織機 雪兎 >  
「ゆっきーで良いって」

律儀に苗字で自身を呼ぶ彼にへにゃりとした笑顔で手を振る。
そうして恥ずかしい、との言葉になんのことやらと首を傾げる。

「? 別に冗談言ってるつもりはないけど……」

だってあんな馬鹿そうな顔をした男三人とデートするよりよっぽど、いや比べるのも彼に失礼なほどだ。
だれだってそーだ、僕だってそーだ。

「うん、お久しぶり。かみやん先輩も元気そうでなによりだよ」

史乃上空真咬八 > 「…………ゆ、っきー……」

ドップラー効果を伴いながらゆーっくり横に視線が逸れていった。
その呼び方で呼んでいい、というの。
今もそのまま続いてて良かったのかと微かに悩んでいる。
親しみとかその他諸々を込めて呼ぶには、なんだろう、なんだ。
凄くあれだったのだが。

「……そう、スか。恐縮、スね」

――冗談じゃなく言ってるということならば、
素直に評価として彼は受け止める。
自分にそういう評価がされること自体、中々新鮮なものだが。

「……えェ。色々とありやしたが」

色々。の内容を語るのは、少々内容があまりに濃いのもあり、
やや濁すような言い方をした。
……少しだけ間のあと。

「……ゆっきー、それでは、僭越ながら、"デエト"の大義名分で、
どうでしょう。ひとつ、クレープを奢らせちゃくれやせンか」

織機 雪兎 >  
「あっはは、慣れてないねぇかみやん先輩」

顔を反らしながら自身のあだ名を呼ぶ彼。
なんだかおもしろくて笑ってしまう。

「硬い硬い。そっかぁ、色々かぁ」

色々。
まぁきっと色々あるんだろう。
自分にも色々あったけど、きっとその色々とは違う色々なんだろうな、なんてぼんやりと考えつつ。

「んー、じゃあかみやん先輩が僕に奢ってくれるお礼に、僕がかみやん先輩に奢る、でどう?」

流石に助けられてクレープまで奢られるのは申し訳なさすぎる。
なのでこちらも彼に奢れば、多少は罪悪感が減る。
どうかな、と右手の人差し指を立てながら。

史乃上空真咬八 > 「お変わり、無いようで」


自分も変わらなきゃ、相手も以前通りにからかってくれる。
笑っているが、こちらは結構あれで恥ずかしいのは本音なのだ。
デエトなどと口にしたからには、もうかなり褐色の肌も赤が透けているのだから。


「……互い奢りという、ことスか。まァ」

相手も立てねば義も欠けるか。と、微かに不満げなものの、
肩を僅かに竦めてから頷いた。それでいいならば、と。

「わかりやした。それで構いやせンよ。
……しかし、クレープは余り、食べたことがないもので。
選ぶのは、任せても、いいでしょうか、……ゆっきー」

織機 雪兎 >  
「そ、ほらこっち」

ひとしきりけらけらと笑って、歩き始める
来た道を戻り、さっき自分が買ったクレープ屋さんへ。

「あれ、食べたことないの。んー、定番はチョコバナナとかだけど、かみやん先輩はどんなのが好き?」

クレープ屋さんはさほど遠くはない。
精々数十メートルほど、すぐにつくだろう。
通路の端っこに置いてあるメニュー兼看板に掛かれているのは様々な種類のクレープ。
バナナやらイチゴやらフルーツ、生クリームやカスタードと言ったクリーム類。
ツナとかサラダとかの軽食っぽいメニューもある。
どれがいい?と聞いてみよう。

史乃上空真咬八 > 「うス」

犬のように後を着いていく。まぁ中々結構顔が怖いもので、変な奴が寄り付くこともないだろう。
むしろ人波があればそこそこにモーセじみて裂けていくくらいだ。

ついていって見えるクレープ屋、きらきらしたメニューやら、
意外と塩味っぽい感じのまであって、中々興味深そうにしている。
定番のチョコバナナというのも美味しそうだが、ここは――。

「……ツナサラダ、というもの。これは気になりやスけど、む、ゥ」

定番か、興味か。その二択で悩んでいるらしい。
犬ならきっと、尻尾がゆらゆらと揺れている。
……はっとして。

「いえ、失礼。こちらは少し悩むので、先に、どうぞ。代はすぐに出しやスンで、……ゆっきー」

織機 雪兎 >  
こちらは当然チョコバナナカスタード。
さっき一口しか食べていないのだ。
店員さんからの「あれ、この子さっきも来なかったか?」と言う視線など気にならない。
気にならないのだ。

「んー。ごゆっくりどうぞー」

悩んでいる彼に笑顔を向けて店員さんに注文。
手際よくチョコバナナカスタードが作られている間に、ちょいちょいと彼の袖を引っ張ってみる。

「かみやん先輩、お会計」

なんだかんだ言いつつ奢られる気満々である。

史乃上空真咬八 > 「……ぁ、うス」

そそくさ。がま口財布から金額ぴったりと会計は済ませる。
――さて、こういう時、彼は存外女々しい位に悩み耽るらしい。
そちらが注文したチョコバナナカスタードが出来上がって手渡される頃にやっと決心したように。


「……ツナサラダ、推して参りやス」

カチコミか????と言いたくなるような決意の一言が飛び出る。
別にそこまで怖いこと言って注文せんでも。と、店員さんごめんなさい案件だ。

……して。彼が決意した理由はというと。



「……どうでしょう。ツナサラダのほうも、少し食べてみやせンか。
……ゆっきー」

織機 雪兎 >  
自分の分を彼が出せば、彼の分は自分が出す。
店員さんからの不思議そうな視線は見ないことにしておく。

「ここのクレープねぇ、皮がもちもちしてて美味しいんだよ」

早速クレープにかじりつく。
ああ美味しい。
美味しいからこそ、それを落とされたあの男どもが許せない。
くそ、覚えてろよ。
次見かけても特に何もしないけど。

「えっ、いいの? じゃあ遠慮なくー」

彼の決意など露知らず。
どうかと聞かれて悩むことなく受け入れ、何事も無ければそのまま彼のツナサラダクレープにかじりつこうとするだろう。

史乃上空真咬八 > 確かに、店側から不思議なものだろう。お互いの注文に、
お互いが代金を出しあっているのだ。
だが、そうせねば通らぬものもあるのだ。青年は出来上がりのクレープにかじりつき、
美味しそうに食べる顔を見てほっとしている様子だ。
……肩を小さく竦めてから、ツナサラダクレープの齧られた場所を、
ちょっと別方向からそーっと齧るように食べる恰好。


そして不意に。

「……織機さン」

また名字呼びだ。それから、小さく頭を下げた。

「風紀委員としての活動に、俺を推薦してくれたこと、感謝してます。
……織機さンの護衛を毎日、出来ればしたいとは思いやスけど、
色々と、他の手伝いにも呼び出されることがありやして。
――とても、充実して、他の先輩方、後輩と話す機会が多くて」


「……織機さンの、御蔭です。心から、感謝を」

織機 雪兎 >  
「ほほう、ツナサラダ、ほうほう……」

普段食べ慣れている甘いクレープではなく、しょっぱい味のクレープとは、なるほどこうなるのか。
もぐもぐもぐと味わうように。
これはこれで美味しい。

「んぇ、なになに、そんな大したことしてないよ」

へらりと笑って。
だって自分がしたことなんて風紀委員に入りたいと言う人がいる、と先輩たちに伝えた程度だ。
それで充実している、と言うのなら、それは彼の人柄があってのことだ。
顔は怖いけど話せば義理堅いし真面目だし。

「あ、僕のも食べる? 甘いのへーき?」

そうして食べ掛けのクレープを差し出す。
齧っていないところなどない。

史乃上空真咬八 > 食べている様子を見るに、どうやらお気に召したらしい。
全部を奢るという訳ではなくとも、こういう形でちょっとでも報いたい。
ので、それが上手くいったので、彼は初めて口許を柔らかく緩めた。
やればできるじゃない。

「……大したものでなくとも、織機さンから賜ったものであることには、
違いありやせンから。それについて、御礼を述べたかったンスよ」

それらを認めて貰えたのは、何よりまずその機会をくれた、彼女の御蔭なのだ。
――と、彼なりのまじめスイッチがONのときに。


「……は」

差し出されたクレープ。どこも齧られている。
俗に言う間接キスは免れない。
――深呼吸、から。


「……」

意を決した。

もぐ。と、普通に一口いった。
眼を閉じ、若干震えながら咀嚼して飲み込み、口許を押さえて一言。

「……甘いのは、割と嫌いじゃありやせン……」

織機 雪兎 >  
「ん、んー、どう、いたしまし、て?」

面と向かってそう感謝されるとちょっと照れる。
首の後ろを左手で抑えながら。

「ここのクレープも美味しいんだけどね、もうちょっと向こうにあるコニクリームカロッケサンドも美味しいんだよ」

嫌いじゃない、と言う彼に満足そうな笑みを向け、引き続きチョコバナナカスタードクレープをムシャムシャ。
そうしてこの通りのグルメ情報を口にする。
限定百個のコニクリームカロッケサンド、割と暇を見付けては並んで買ったり買えなかったりしている。

史乃上空真咬八 > ちょっと珍しい反応を見れた、気がする。
そうやって照れる仕草を見抜いてか知らずか、彼にしちゃ、またレアな顔第二段とばかりのきょとんとした様子から、ふっと噴き出したような笑顔が一瞬見えた。
成る程、こうやって真剣な感謝を伝えると困惑するタイプなのか。ひとつこの人に詳しくなった、と。

「……コ、コニクリーム、カ、カロッケ……サンド?」

発音合ってるのか?と二度見した。口の動き。クレープ詰まってない?と心配面である。
しかし限定ということであれば、希少になるほど需要が高く、
そして美味しいということだろう。
聞いてみれば興味がわいた。

「それは、是非今度食べてみたいもので。
――差し支えなければ、今度、昼食にでも買いに走りやしょうか、俺」

『走る速さなら自信ありやスよ』と、成程鍛えられた足のカカトを地面にこんこん、と。
パシられる気満々だ。そんなところまで名前が如く犬じみることもなかろうに。

織機 雪兎 >  
「そう、コニクリームカロッケサンド」

発音はあっている。
カニクリームコロッケサンドではない。
コニクリームカロッケサンドなのだ。

「いや流石に先輩はパシらせられないよ。って言うか昼休みにはもう売り切れてるから」

朝十時から販売開始で、早ければ三十分、遅くても十一時過ぎには売り切れてしまっている。
そんな人気の限定品。
授業が終わってから走ったって間に合わない。
そもそも彼は先輩なのだ。
先輩をパシリに使うほど命知らずでもない。

史乃上空真咬八 > 「コニクリームカロッケサンド」

今度は噛まずにしっかり発音出来た。
世界は広い。学園も広い。彼女の知見も広い。

「……ほォ」

そんなに早く売り切れるものか。成る程、人気どころじゃない。
――だが、そんなことを聞くと微妙に彼の挑戦心のようなものがうずく。表に出る程では無いが。
なんて色々巡る思考の合間に口はしっかりクレープを食べ進めて、
ツナサラダクレープという彼の新鮮なクレープ体験は終わった。
またひとつ味覚が賢くなったようだ。

「……ご馳走様でした。
…………」

「ゆっきー」