2019/02/05 のログ
ご案内:「商店街」に沢渡マリアさんが現れました。
沢渡マリア > 沢渡マリアはアンドロイドである。
よって、人間と異なる生活を送ったとて何ら問題が無い。


放課後、夕暮れ時。
制服に身を包んだ少女が商店街へと姿を現した。
顔には何の色も浮かんでおらず、どうにも感情は見えないであろう。

そんな少女が迷いも無く足を運んだ先は、精肉店の前。
様々な種類の肉が並ぶショーケースを前に、彼女は立ち止まる。

そして、並んでいる肉を凝視しだした。

肉屋のおじさんはそれに気付いて、少女を見るが身動ぎもせず。

沢渡マリア > <何か御入用かい?>
引きつった笑顔で、おじさんは問いかけてくる。

それでも、少女は動かない。
喋らない。

斜め下を向いていた顔が、僅かに上を向いて。
紺碧の瞳がおじさんをじっと、見返すだけだ。


緊迫の時間が、流れている。

沢渡マリア > まるで蛇に睨まれた蛙みたいに、動けなくなった店主。
音は発さねど、その異様な空気に気付いた通行人が数名集まって来て、
俄にざわつきだした。なんだなんだ、どうしたどうした――と。

そのような公衆の目などまるで存在しないかのように、
少女は反応しない。ただ真っ直ぐ前を見据えているだけだ。
しかしどうも、彼女の視線の先に在るのは店主の顔では無いようだ。

落ち着き払った双眸が、一度、瞬いた。

沢渡マリア > 静寂に包まれた中、カチン――と、何かが動く音がして。
それを契機として少女がついに口を開く。


『――イチハチマルマル。タイムセールの時間です。』


笑顔の欠片すら見せずに、事務的な口調で彼女はそう言った。

時計の針は確かにたった今、18時を示したところだ。

沢渡マリア > 要求通りにお肉を幾らか値引いた価格で提供して貰っても笑顔は見せなくて。

提示された額を支払い、品物を受け取り。
踵を返そうとした時に、やっと思い出したように、ぎこちない会釈をした。

最近やっと憶えた交流の基本である。


そうして必要なものを手に入れた彼女は、帰り道を辿り出した。

沢渡マリア > 沢渡マリアはアンドロイドである。
よって、人間の食べ物を食さずとて何ら問題が無い。


それでも彼女に、食事が出来る機能をつけたのも。
下手くそな料理を勉強するように指導された事も。
意味が無い事だなんて、少女は思わないのだ。


今日も寮の自室で、酷い品質で酷い匂いの料理が出来上がる。
隣接している部屋の学生には、大変申し訳の無い話である―――

ご案内:「商店街」から沢渡マリアさんが去りました。