2019/02/27 のログ
ご案内:「商店街」にツクヨミさんが現れました。
■ツクヨミ > 日の傾きかけた商店街を薄い男子学生服を纏った一人の少年がふらふらと歩いていく。
手には様々な店のビニール袋を抱え、その中にたくさんの買い物を詰めて
ややバランス悪そうにえっちらおっちら、
片手には誰かに頼まれたのかメモ用紙が握られている。
それをちらちら見ながら買い残しがないかどうか、次に買うものは何かなど
頭の中で一生懸命考えているらしい。
先日、違反部活群や違反組織群の多い落第街で風紀委員による大規模な掃討があった。
幸いツクヨミはその時出かけていて、攻撃の憂き目にはあわなかったものの
組織の仲間が何人も怪我を追ったり死亡したりした。
負傷者のための薬品や食料が足りなくなって、こうして何の役にも立たないツクヨミにさえお鉢が回ってきたわけだ。
もちろん落第街でも買えるものは有るけれど、大量に揃えるとなるとやはり学生街の商店に頼らざらるを得ない。
他の二級学生と手分けして、物資を買い出しに出かけたわけだけれど、
普段買い物なれしていないものだから、向かいからくる他の学生にぶつかりそうになったりなど危なっかしい。
ご案内:「商店街」にギルゲイオスさんが現れました。
■ギルゲイオス > (荷物にふら付きながら歩く姿に、また一人。
軽く身体の側面で当たるような――強くぶつかる訳ではないものの、明らかに、歩を止めようとする動きの、モノが一人)
「一人のタイミングを見つけるのに、中々と苦労したのであるよ。
あぁ、敵ではないので、安心してほしいのである
少なくとも、現状では」
(身長の差からしても、声は上から聞こえてくるように。
喉元からは微かにと、笑い声さえも混ざっているような話したであった)
「と言っても信用は出来ぬだろうしな。
――ホレ」
(指に挟んだ紙切れを、相手の視線の辺りへと差し出す。
書かれた文字の内容は意訳すればこうだ『適当に合わせて話せ』
恐らくは、知っている人物のサインが、何処かに併記されているのだろう]
■ツクヨミ > 長身の男にぶつかれば、ツクヨミの体は大げさに傾く。
痛みは無いものの、急に自分を阻むような相手に訝しげに見上げた。
と、自分は敵ではないことと、手の中に挟んだ紙切れを見せてくるので
素直にそれに従う。
上級学生の誰かの字でサインされた紙切れに、一応信用は置けた。
「…………、なに……?」
まじまじと相手を見上げ、今の自分に何の用事があるのだろうと首をかしげる。
早く買ったものを届けないと、また叱られてしまう。
とはいえ、目の前の指示にも従わなければまた文句を言われてしまうのだろう。
困ったように眉根を寄せ、とりあえずギルゲイオスの話を聞くつもりで黙りこくった。
■ギルゲイオス > 「異能を授ける存在がいる、と噂を耳にしてな。何やら宗教じみた集いにも、なってるそうで。
我自身は増やしたり新たに手に入れる事に興味は無いのだが、気になるではないか。
魔法や魔術とも違う、種族的な特殊技能とも違う。此方の世界で忽然と現れた『異能』というモノを、どうやって授けているのか、とな」
(言った後に、小さく肩を竦めるような仕草をする。
この状況を作り出すのに、随分いろいろと金が掛かったようだ。魔王としての権力が有る状態なら強引な手段も使えるのだが、此方の世界では一般人と違いない。少々と脅しも絡めたのは、事実なのだが)
「っと、買い物の途中であるかな?移動しながらでも構わぬよ。此方のやり取りは聞こえぬようにしておこう。
ふむ、持とうか?」
(パチンと、指を鳴らせば周囲に流れる空気の質が僅かに変わる。壁も無いのに、少し淀むような、不思議な。
周囲への音の拡散を、幾分遮断した、といった感じか。大声で話さない限り、内容は外に漏れる事はないだろう。
そして、少しとばかり相手の様子を眺めた後に。片手を差し出す事とする)
■ツクヨミ > 「……、」
ギルゲイオスの言ったことは全て事実であり、相手が自分が思うより内情を理解している。
どんな手段を使ったかについてまで、ツクヨミの頭ではわからなかったが、
とにかく彼は自分と話がしたいらしい。
持とうか、と差し出された片手を数秒見つめて、結局持ってもらうことを拒否するように首を振った。
仲間のための大事な物資を、おいそれと知らない相手に預けたりは出来なかった。
周りの空気が遮断されるような気配に、不思議そうな顔をするものの、
促されて歩きながら自分の持てる言葉で会話をする。
人と対等に話すのは、もしかしたら久しぶりかもしれない。
「……、どう、やってって……キス、したり、セックスしたり、血を抜かれたり……」
彼が方法について聞いているのだろうと推測した上で、あられもない表現で言葉を紡ぐ。
ツクヨミに恥じらいはない。すでに彼の日常の一部になっているからだ。
仕組みについて尋ねられても、ツクヨミには答えられないだろう。
彼も自分がどうして異能を授けられるのか、はっきりわかっていないからだ。
■ギルゲイオス > 「噂を元にしてかなーり、色々と手を尽くしたのであるよ。違法部活が関与してるって事で、危ない橋も、多少とな
まぁ、お主の様な感じだったのは、少々予想外ではあったがな。もっとこう、あくどい感じに肥え太ったオッサンか、ミステリアスな美女を予想しておったが」
(言葉の最後は冗談めかし、口の端を上げ。白い歯を僅かに覗かせて。
小柄で、何処か儚げな印象の彼……彼女?どっちだ、どっちなのだ。と自問自答するが。服装からしてとりあえず彼と認識しておくこととする。
荷物は、なるほど。人に預けるようなモノではないらしい。動きを察すると、のばした手を引っ込めて。歩調を合わせながら不自然のないように歩き始めた)
「ほーん、粘膜の接触……少し違うな、体液が相手の身体に摂取、もしくは接触する事でという感じであるか。
魔術的儀式で肉体的な、そういう儀式もあるが。異能を授けるなんて内容に比べると、随分お手軽な気がするのである。……授けるというより、目覚めさせるに近いのか。ハードルは下がるが、ふーむ。
しかし、何か不都合とか起きたりせぬのか?お主にも、相手にも。副作用の様な」
(告げられた方法には、此方も別段と恥じらうような様子は無かった。ある種の、儀式的なモノであると理解しているらしい。
少ない回答から考察じみた独り言を呟き。顎を指で撫でたり、小さくと頷いたり。
そして、結果に対する代償は?というような聞き方をする)
■ツクヨミ > ギルゲイオスの冗談にもツクヨミは笑うことすらしない。
ただ疑問符を浮かべたような顔で、彼の言葉を大人しく聞く。
のたのたと歩きながら、ギルゲイオスが自分の異能を分析するさまを冷めた視線で見つめる。
この程度のことだったら組織の上級学生に聞けば、もっと情報をきちんと得られるのではないだろうか。
わざわざツクヨミに聞くということは、もっと、何か別の意味があるのだろうか。
「不都合……、異能が、現れたりしても……、その、うまく、適合できないと……
燃えたり、自分で、暴走したり……、死んだりする……」
目覚めさせた者の中には強すぎる異能で自滅するものも居た。
いきなり運転免許もなく車を運転できるものもいれば、そうでないものもいるということだ。
ツクヨミについて不都合は、と聞かれても、特に不都合があると感じたことは無いらしく、
またぞろ疑問符を浮かべて首をかしげるのみ。
ただ、ツクヨミ自身はそうと認識していないだけで
こうして違反組織に犬のようにこき使われて、囲われて、
好きでもないキスやセックス、あるいは違法な人体実験をさせられていることが
代償のようなものかもしれない。
■ギルゲイオス > (情報を収集するだけであれば、関連する人物に聞き取った方が手っ取り早かっただろう。
実際の所そこまで深い意味は無く、『本人と話してみたかった』というのが大きい。
先ほど挙げた二例だと、むしろ本人が進んで行っている、様にも思えるが。
当の本人は、どちらかといえばそう言う判断が薄弱そうな……遠慮なく言ってしまえば、利用されてる感が強い)
「……ソレは恐ろしいのであるな。合わぬのか、耐えられぬのか。本来得る筈ではない力だった、という事であるかなぁ。
お主としては、それについてどう思うのだ。今まで話してきた感じでは、自分から進んで行っているようには聞こえぬ。
利用されている、というのが正解ではないかな?」
(相手の前へと回り込み、顔を向い合せ、後ろ歩きで。
ぴっと人差し指を立てれば、首を横へと僅かに傾げた。別に、咎めているという雰囲気ではない。
異能についての聞き取りから、相手自身がどう思っているのか、という内容に変ったらしい)
「正直な所な。自分から好きにやっているモノであれば、試してみるのも面白いかとは思っていたのだが。
どうも様子を見るにな。好ましく思ってやってる訳ではなさそうだと、感じたのであるよ」
(間違えていたら自信過剰であるなと、小さくつぶやいて顔を横に振った)
■ツクヨミ > 「……利用……」
ギルゲイオスの言う言葉は概ね当たりである。
それについてはツクヨミも、十分理解していた。
自分は利用されている、宗教じみた集いの象徴として担ぎ上げられているのだってそうだろう。
だが―――、そこから抜け出すための力も意志もツクヨミには無い。
「どう、って……、よく、わかんない……」
自分の顔を見つめてくる相手にぽつりと呟く。
別に異能を求めて自滅した学生がどうなろうと、自分には関係ないと思っているのか
あるいはもう誰かに何かを感じる受容体が摩耗して、麻痺しているのか。
「このましい、とか、……好きでやっているとかも、 よく、わかんない……。
でも、異能が欲しいなら、あげる……」
今まで与えてきた子の中には、劣等感に苛まれて自分を痛めつけるような子もいた。
その子が異能を得られた時、まるで神を見るような目で感謝されたのをツクヨミは覚えている。
ふいに、地面へ荷物をどさどさと落とし、対面するギルゲイオスの頬へそっと手を伸ばして顔を近づける。
相手と自分の唇が触れるか触れないかの所で止まって、じっと相手を見つめた。
最後のひと押しは、相手が決めるべきである。