2019/03/10 のログ
ご案内:「商店街」に金剛経太郎さんが現れました。
金剛経太郎 > 「なるほどなあ、10年の壁はだいぶ厚かったようだ。」

放課後。本日から本格的に授業に参加する事になった経太郎は、既にぐったりとした様子で帰路についていた。
10年間もの間オンラインゲームに意識を呑み込まれており、その間に他のユーザーと交流するなどして外の世界に関する情報は得ていたのだが。
寝たきりだった体で授業を受けると言うのは、思いの外負担が大きかったようだ。

「糖分でも摂らなければやってられん。
 目下、目標は体力づくりに励む……これだな。」

コンビニで買ったソフトクリームを片手に、ぶらぶらと商店街を歩く。
寮に帰宅後、特に予定も無く、家族も居ないとなれば門限ギリギリまで外に居る方が孤独もまぎれて幾らかマシだと思えた。

ご案内:「商店街」に紅乃 月華さんが現れました。
金剛経太郎 > 「む?」

誰か通り掛かった様に思えて足を止めたが、どうやら気のせいだったらしい。
不思議そうな顔で首を傾げた後、再び歩き出す。
放課後と言う時間帯からか、それなりに人通りの多いなかを小柄な少年一人が歩いているのは何とも危なっかしく見える。

「まあ、アイスを警戒してかぶつかってくるような不埒者は居ない様だが。」

居るとしたらそれはこの商店街では無く、落第街の様なスラムだろう。

金剛経太郎 > 「しかしまあ何と言おうか……同じ島内だと言うのに、治安は雲泥の差があるな。」

道の途中、木のベンチに腰を下ろして一息つきながら行き交う人々をつぶさに観察する。

「あのような場所の存在を、何故黙認しているのだろうな。」

そして誰も疑問を抱かないのだろうか。風紀委員も、公安委員も、一般生徒たちも。
経太郎にはそれが不思議でならなかった。
危険な場所がある、立ち入ってはいけない場所がある──と把握していながらも、なにゆえ、その場所が存在し続けることに疑問を抱かないのか。

「あるいは、考えても無駄だと諦観したか。」

金剛経太郎 > 「まあ、いずれにせよ俺が首を突っ込む様な話でも無い、か。
 餅は餅屋だ。治安の悪さには治安の悪さをぶつけるしかない。」

だいぶ物騒な事を言っているものの、傍から見れば小学生がベンチでソフトクリームを食べている光景に過ぎない。
穏やかな春の午後の雰囲気を醸し出しつつ、それでも眼光ばかりは鋭い小学生。

「……とはいえ、知らないまま放っておくのは性に合わん。
 島の歴史に詳しい者が都合よく現れはしないだろうか。」

金剛経太郎 > 「そういえば、この島には博物館があったな。」

この島の歴史を知るには、丁度良い場所かもしれない。
そう思い立った経太郎はソフトクリームを急ぎ食べ終え、ベンチから腰を上げると、行き交う人々の中を、再び流されるように歩いていくのだった。

ご案内:「商店街」から金剛経太郎さんが去りました。