2020/07/07 のログ
ご案内:「商店街」に山本 英治さんが現れました。
ご案内:「商店街」に角鹿建悟さんが現れました。
山本 英治 >  
今日は七夕まつりである。
ゆえに。浴衣ガールが大勢商店街にいるのだ。
よって。俺はこう考える…………

「ナンパのチャンスだ、建悟」

あの出会い以降、俺達はそれとなく話す機会が多くなった。
第九と風紀。接点は多い。
それでも今回、遊びに連れ立つのは初めてだった。

「建悟……お前は日常の匂いが一切しない…」
「俺はそういうのが心配だよ………」
「よって日常の充実を図ろう。大丈夫だ…俺は慣れてる…」

今までも再三馴れ馴れしくしてきたが。
今回はかなりひでー気がする。てへ。

角鹿建悟 > 今日は七夕である――が、この男にそんなのは全く関係が無かった。
偶々非番だったのをいい事に数少ない友人である山本英治から呼び出され、そして何故か現在こうして商店街に野郎二人で佇んでいる。
ちなみに、やたらと彼がきっちりした装いなのに対して、この直し屋は―――制服だった。

「……英治、いきなり呼び出した挙句にナンパ、というのが意味分からんのだが」

至極当然の疑問を投げ掛けながら、フォーマルなアフロスタイルの彼の横で何時もの無表情。
そもそも、何で制服なのか?…私服なんてこの男は持っていないからである。
あるのは制服、作業着、ジャージ、この三種類だけだ…安心しろ、全て3着程度予備はある。

「日常と言われてもな…俺の日常は直す事だぞ。あと慣れてると言うが具体的にどう慣れてるんだ?」

と、突っ込み、というか真顔で疑問を投げ掛けていくクソ真面目スタイルである。

山本 英治 >  
来た彼は制服スタイルだった。
ちゃんとした服を着て来いよ、と言ったのに。
いや、ちゃんとしてるのか。
ってか……真面目か!!

「大丈夫だ…だって大丈夫なんだからな……大丈夫…」

大仰に顔を手で覆って首を振る。アフロが揺れる。
ソウルフルを全身で表現しつつ熱弁を振るう。

「日常が仕事っていうのは良い! 良いぞ! だが良くない」
「彼女の一人でもできたら潤いと張りあいとコクが出るんじゃないか?」
「慣れてるっつーのはな……俺はナンパの経験が豊富なんだよ」

アフロコーム(アフロ専用の櫛)を髪の中に仕込む。
フォークみたいなそれはアフロを丸くした。

「見てな!! 手本を見せてやる!」

道行く浴衣美少女に声をかける。

「ヘイ、そこの美少女……君たち可愛いね。俺たちと一緒に遊ばない?」
「ああ、ああ。安心してくれ。遊ぶっつってもゲーセンでさ…」
「お友達から始めてこーぜ……今日は織姫と彦星がアッはいすいませんでした」

すげなく断られてとぼとぼと帰ってくる。
笑顔で親指を立てて。

「な?」

白い歯を見せた。うん、我ながら百点スマイル!

角鹿建悟 > 「いや、だからちゃんとした服装だが」と、平然と彼は答えるだろう。制服だからフォーマルな筈だ。
地味に天然、というかまぁそれよりも問題はそもそも服の持ち合わせが壊滅的という事。
多分、そこらの男子の方が遥かに私服を持っているだろう…否、そもそも私服といえるのがジャージしかない。

「……いや、自分に言い聞かせてるようにしか見えないんだが。あと、そもそも俺はナンパとかいうのはよく分からんのだが」

角鹿建悟16歳。そもそもナンパすらロクに知らなかった。
だって、ほぼ毎日直したり直したり直したり直したりの生活なのだ。

「…いや、彼女とか言われても困るんだが。そもそも仕事も溜まってるし。
…と、いうか経験豊富なら英治に任せて俺は後ろで見ているだけでもいい気がするんだが」

消極的どころか、コイツ女にそもそも興味あんの?というレベルで淡白なお答え。
アフロコームについては、アレで整えているのか…と、ソコだけ何故か無駄に感心していたという。

「――ああ、お言葉に甘えて手本を見せて貰おう」

そして、彼が意気揚々と道行く浴衣美女に声を掛けるのを、静かに眺めている仏頂面。

声を掛けるアフロ、ジェスチャーが無駄に気障なアフロ、話をバッサリ中断されて断られるアフロ…そしてしょんぼり帰ってくるアフロ。

「――いや、よく分からんが普通に不審者でも見るかのような目で見られていた気がするんだが」

と、思ったことをストレートに包み隠さず述べていくのがこの男だった。
あと、ナンパというのは…女から蔑視を受けたいそういう特殊性癖の持ち主の遊びなのだろうか?

(…俺にはさっぱり分からん世界だな…)

と、腕組みをして溜息。と、いうか玉砕したのに何で無駄に笑顔を決めてるんだこいつは。

山本 英治 >  
「いいぞ建悟、次は服を買いに行こうな!」
「もちろん女性受けのいいヤツを……だ!」

オオウ、と口にしながら彼の肩を叩く。
身振り手振りで説明を始める。

「ナンパはな…男にしかできない……女がやったら、逆ナンだからな…」
「よってナンパはハチャメチャに男らしい行為なんだ……Q.E.D.」

なんの説明にもなっていないが。
とにかく今回は建悟に良い目を見せてやろう。

「仕事! 仕事! 仕事! それもいいだろう、常世のためになる」
「だが……人のココロはそれだけでは乾いてしまう」

失敗したのを一部始終見てもらって。
笑顔のままうんうんと頷く。

「不審者というのは間違っていない……だが愛の不審者だ」
「よくわからないのも最初のうちさ。すぐに理解できるようになる…」

道行く女性を指して。

「あの子なんかカワイくないか!? ってかちょっぴり女優の角田エリカに似てないか!?」
「決まったな……さぁ、建悟…あの子に声をかけてくるんだ」
「一人だ、寂しいのかも知れない、友達とはぐれて心細いのかも」

「そういう時! 心に愛という名の慈雨をあげるのがナンパなんだ……」

力説して肩をぽんと叩く。

「ビカム・ザ・マン」

男になってこい、と言って器用にウインクしながらサムズアップ。

角鹿建悟 > 「…金はまぁ、あるが服か…動き易ければ何でもいいが。あと、仕事にも使える丈夫なやつがいいかもしれんな」

と、真顔で考え込むが今、英治が言ったのは私服の事なので仕事にも使える、という発想は完全に職業病のそれである。
彼がオーバーリアクションで呆れるのも無理ないことだろう。

「…そもそも、そこまでして女子とお近づきになりたいものなのか?
俺にはサッパリだが…まぁ、英治の口ぶりからしてそういうものなのだろうな」

何の説明にもなっていないが、取り敢えず男にしか出来ない行為なのは理解した。
ちなみに、自分が見知らぬ女の子に声を掛ける発想は最初から全く無い男である。

「…そうか?割と集中できて雑念が消えるし、色々と試行錯誤出来るが。少なくとも渇いた事は無いぞ」

ん?と、首を傾げて。多分、世間の男子からかなーり感覚がズレてるのは否めない。
常識が無い、というよりそっち方面へのあれこれが今まで皆無だったせいもある。

「愛の不審者…どちらにしろ怪しいのに変わりは無いと思うぞ俺は(むしろ、余計に胡散臭くなってないか?)…」

心の呟きは友人には漏らさず、ともあれ彼が指差した先に居る女子を無表情で眺める。

(いや、そもそも角田エリカというのは誰だ?知らんぞ俺は…やれやれ)

「…分かった、声を掛けてくればいいんだな?まぁ、適当に済ませてくる…。」

と、如何にも乗り気じゃない感じの溜息と共に、彼が指差していた女子に声を掛けに行く。

「…いきなりすまない。何か困っているように見えたが――…」

と、割と物怖じせず何時もの調子で話し掛けていく朴念仁。物怖じしないのはまだマシな方か。
そして、一言二言女の子から話を聞けば、ふぅむ、と考え込むように。

「…成る程、ちょっとそれを見せてくれないか?ああ、俺は直すのが仕事だからな。何とかする…いいや、”必ず直す”」。

と、そんな会話が一部彼にも聞こえるだろうか?
やがて、女の子が取り出したのはひび割れたスマホ。どうやらアクシデントで破損させてしまったらしい。
それで連絡を取ったりとか出来なかったのか。画面も暗いままでダメージはかなりでかそうだ。

ともあれ、その女の子に許可を取ってから能力でスマホを修復開始。
破損箇所と同時にデータそのものも復元していく…結果、1分足らずで終了した。

「…ほら、これでいいだろ。…一応直っているか確認してくれ。…代金?いや、別にいらないが。
お礼?いや、それも別に――いや、ちょっと待ってくれ」

何故か女の子からグイグイされる。どうやら手際に感心したと同時に興味を持たれたらしい。
が、彼自身は「何でこうなった」といった感じである。

山本 英治 >  
俺は人間の仕掛けたスネア・トラップにかかり絶望したイノシシのような顔をして建悟を見ている。

あいつ。

あいつ。

ナンパ。

成功……してないか…………?
しッ信じられねぇー!! 俺だって120回に1回成功すれば良いほうなのに!!
初ナンパで!! この!! 上手くッやりやがってッッ!!
格闘士(グラップラー)のような表情筋で一部始終を見ていた。

「建悟……男になってこい………父さんお空のお星さまになって見ているからな…」

後ずさり。
彼ならきっと同じ空の下で強く生きていける。

「もう教えることはない……ナンパ免許皆伝だ…」

血の涙が流れた。頬を触ると、それは幻想であることに気付く。
角鹿建悟ォ……!!
あ、心の中で呼んだだけです。

角鹿建悟 > (落ち着け、お前は俺の父親じゃないし、そもそも俺に”親は居ない”!)

と、心の中で抗議しつつ、必死――顔は無表情から殆ど変化して無いが、ともあれ彼なりに全力で断っておく。
名残惜しそうに会釈して立ち去る少女に、こちらも軽く手を振り返しながら彼の元へとちゃっかり戻るだろう。

「――何をさっきから勝手に言ってるんだお前は。
普通に困ってたから俺の得意分野で何とかしただけの話だろう。
――と、いうかお前のリアクション(とアフロヘアー)で周囲の目線が生暖かいんだが」

と、嘆息を零しながら周囲を見る。…頼むから人を同類でも見るような目で見るのは辞めて欲しい。

山本 英治 >  
「待て、俺は悪くない。だって俺は悪くないんだから」

周囲は珍奇なアフロを見る目で俺を見ている。

「ってかお前、茶髪で端正な顔立ちで背ぇ高くて細いながらしっかり筋肉ついてるんだよな」
「モテるんじゃないでゲスかぁ?」

揉み手擦り手。

「ゲヘヘ……あっしもあやかりたいもんでゲスなぁ」

諂う。
いやジョークはこれくらいにしないと!!

「ってか、さっきの女の子お前に好印象を抱いてたと思うんだけど」
「どうして帰らせたんだ……?」

信じられない。アドレス交換くらいすればよかったのに。
ワンチャン、エンカあったのに。マジ卍。

角鹿建悟 > 「…だから、モテるとかそういうのはよく分からんと何度も言ってるだろう英治。
俺が知り合った女子なんて…園刃先輩と、ひぐれ…最近知り合った風紀の特別攻撃課の先輩くらいだぞ」

と、溜息混じりに言うが女子との出会いが完全にゼロ!という訳ではないらしい。
まぁ、そこから発展しななさそうなのがこの男の朴念仁ぶりなのだが。

「…あと、なんだその喋り方は。気持ち悪いぞお前」

友人でも容赦なく言う事は言うのが角鹿建悟という男である。
彼の疑問はもっともであり、少し考えてから肩を竦めてみせる。

「別にそこまで無理してお近づきになりたい、とは思わないしな。
英治とか他の男子なら喜んだかもしれないが、俺は遠慮しておこう。
…むしろ、英治はもっと普通に声を掛けた方がナンパ…?の成功率が上がるんじゃないか?」

と、自分の事はどうでもいいからお前のほうだよお前のほう!という感じでアドバイス?をしていく。
女子に関心が全く無い、というか意図的に距離を置いているようにも思える台詞だ。
別に女嫌いでもなければ、好みは勿論一応は女子であり、別に同性愛者とかそういう訳でもない。

「それに、アドレス交換してもまともな付き合いは無理だろう。”仕事優先”だからな俺は」

と、肩を竦める。自分が諸々を投げ捨てて直す事に振り切っているのは当然自覚はあるのだ。

角鹿建悟 > そして、もう一人とある白髪長耳の少女とも知り合ったが――それは一応黙っておく。

”約束”の事もそうだが、彼女との出会いは何となく秘しておきたかったのだ。

山本 英治 >  
「えー、いっぱいいるじゃん。あと美少女ばっかりじゃん」

拳を天上に突き上げる。
背の高い俺がこれをやるとまた目立つが。
ご愛嬌。

「気持ち悪いヤツに気持ち悪いって言っていいと思っているのかッ」

目を見開いてそう言い放った。
フッ、決まったな。

「えっダメ出しされてる!? ご、ごめんなさい!?」
「いやでも俺の溢れるパッションを表現したらああなるんだよ…」

シドロ=モドロになりながら自己弁護。

「……仕事優先、か……………」

空を見上げる。夕焼けと夜の境界線が、次第に溶けて滲む様が美しい。
今日は晴れだ。織姫と彦星もきっと会える。

「お前本当はモテるだろ!?」

シンプル1500シリーズ The逆上。

「真面目で仕事熱心なイケメン男子……」
「お前本当はモテるだろ!?」

二度打ち。

角鹿建悟 > 「…まぁ、園刃先輩はあの人、適当で人をからかって楽しんでいるように見えて――実際そうなんだが意外と面倒見が良いタイプだと思った。
ひぐれ先輩は…正義感が強いと言うか、強固な自分の信念を持っている人だと感じたな。そういう意味では俺も共感できたというか。
それに、今度武術の呼吸法、というのか?そういうのを教えて貰う事になってな。或る意味師匠みたいなものかもしれない」

と、数少ない知り合い女子二人については述べるも、矢張りもう一人知り合っていたとある少女については黙っておくのだった。
――理由?分かる訳が無い。ただ、何となく…そう、きっと珍しい自分の気紛れみたいなもの、だ。

「あと、英治以外にももう一人男子の知り合いも出来――いや、自分で気持ち悪いと思ってるなら改めろよ」

と、そこは真顔かつ淡々ときっちり突っ込みを入れていくのは忘れない建悟である。
と、いうか無駄に迫力あるポージング…いや、ここ商店街のど真ん中なんだけど。往来凄い見てるんだけど。

「表現の自由ともいうが、やりすぎると自滅するぞ英治。…まぁ、お前らしいとは思うが」

それなりに彼の性格は理解してきたのか、結局まぁ、これが山本英治という男なのだろう、と。
――そう思っていたら、いきなりまたぶち壊してきたのだがこの男は。

「――何で二度繰り返した。いや、だからモテた事は無いと言ってるだろう。
俺はそもそもお前みたいな社交性は無いし、お洒落も分からんし、ただの仕事人間だよ」

と、仏頂面だけど目元だけを半眼にして”悪友”を眺める。友人とか親友よりコイツは悪友、というのがぴったりな気がした。

あと、二度打ちよりそこは二ノ打要らずの方がいいのでは、と凄いどうでいい思考が過ぎった。

山本 英治 >  
「園刃先輩はなぁ……素材がでっかいダイアモンドって感じ」
「原石のままの美があるよなぁ……」
「二年の不凋花ひぐれ先輩ってそうなんだなぁ…」
「建悟も強くなりたいのだな……」

ぼんやりと述懐して。

「お前、真面目だからそういうところ見てくれる知り合いが増えるといいな」

笑顔で頷く。拳は下げる。
さっきは嫉妬で狂いそうになったが。
よくよく考えれば、こいつに良い目を見てもらいたいと思っただけなんだし。
こういう会話ができるのも良いのかもな。

「嘘だッ俺を騙そうとしてるッッ」

わざとらしく袖で顔を拭って泣き真似。

「あーあ、騒いだら腹が減ってきたな…」
「メシ行こうぜ建悟。良いマレーシア料理の店知ってるからさ」

ダチと騒ぐだけってのも、まぁ悪くないか。
たまにはこういう日があっても。ああ、ああ。全く。

悪くない。

角鹿建悟 > 「…まぁ、俺の勘違いかもしれないが、あの人も色々と複雑なものがあるように感じたな俺は。
――強くなりたいんじゃない。俺は”暴力は振るわない”と決めてる。
単に呼吸法をマスターすれば、体力や持久力が向上して能力を行使できる時間が長くなるから、というのが狙いだ」

と、そこだけ訂正する。強くなる、というのは何も暴力だけではないが、彼にとって強くなる、というのは直す力を高めるという意味になる。

「真面目?ただ俺に出来る事、やりたい事を俺なりに全力で取り組んでいるだけだぞ。」

と、不思議そうに述べる。彼の笑顔と言葉の意味を理解できているのか怪しいものだが。
ただ、知り合いが増えるのは存外悪くない、と思えてる辺りは少しはマシにはなっていそうだ。

「騙す理由が無いだろう。まったく…で、気は済んだか?俺にはともかくナンパとやらは向いてない」

――あと、俺でも分かる泣き真似は止めろ。まったくこいつは…。
ふっ、と珍しく苦笑じみた顔を浮かべてから肩を竦めてみせようか。

「マレーシア料理なんて俺は初耳だぞ?…まぁ、英治はそういうの詳しそうだから任せるが。」

と、何だかんだ悪友を彼なりにちゃんと信頼はしているらしい。こういう奴は裏表無いと何となく分かるから。

だから、フォーマルなアフロ頭の悪友と二人、歩き出しながらふと思ったのだ。

(――俺は、恵まれてるよ…)

誰かに、そっと呟くように、祈るように。
そうして、二人でその飯屋へと繰り出すのだった。


――なお、その後もナンパは続いたが玉砕した。

ご案内:「商店街」から山本 英治さんが去りました。
ご案内:「商店街」から角鹿建悟さんが去りました。