2020/09/03 のログ
ご案内:「商店街」に金剛 経太郎さんが現れました。
■金剛 経太郎 > 「夏休み終わってもまだまだ暑いのなんのって……」
放課後。
本日の授業を終え、歓楽街へと延びる幾つかの通りのうちの一つを歩く小さな姿。金剛経太郎である。
額に汗を浮かべながら、とぼとぼと歩く姿は迷子のようにも見えるが、今回はちょとした“バイト”の為に歓楽街へ向かう道中だ。
「まあ、急げって言われてないし休み休み行くとしてだ。
この暑さばかりは何とかならんもんかね……」
暦の上では数日前に8月を終え、9月になっているはずである。
なのにクソが付くほど暑い。ファッキンホット。四季の概念仕事しろ。
そう口々にぼやきながら、経太郎は街路樹の下に設えられたベンチへと腰掛けた。
まだ予定の時間までは余裕がある、学校からここまで歩いて来たのだから、少しくらい休憩しても良いだろうという勝手な判断だ。
■金剛 経太郎 > 「はー、涼し……くねえな。」
木陰ならば多少涼めるかと思えば、容赦なく差し込む西日によりちっとも涼を感じられない。
歩いていた方がマシではと訝しむ経太郎だったが、再び腰を上げて歩く気力が無い。
もやしには夏のアスファルトの上を歩くという行為は重労働なのである。
「まっすぐ寮に帰れば良かったか……」
スマホを取り出して昼過ぎに届いた連絡を確認する。
歓楽街にある何でも屋の手伝い、それが今の経太郎のバイトであり、何でも屋の事務所がバイト先だ。
主な業務は日によって違い、今日もそれほど急務ではなさそうだったのだが。
「……まあ週一くらいで顔出しときたいし……」
仕事の有無に関わらず、雇用主である何でも屋の主人とは顔を合せておきたい。
あわよくばジュースかアイスを食べたい。そんな思惑もあった。
ご案内:「商店街」に松葉 牡丹さんが現れました。
■松葉 牡丹 >
商店街。キュラキュラと道を進む車椅子。
八月を終えたというのに、まだまだ残暑が厳しい今日この頃。
アスファルトの上を進む車椅子は最新技術の塊。
こんな猛暑に耐えれるように、車椅子からは音もたてず冷気が漏れている。
「ハァー……」
おかげで、此の猛暑でも大丈夫だ。
動けない自分にはありがたい話だ。
そうこう移動している最中、正面に見えるのは気だるそうな少年の姿。
小首を傾げればレバーを操作して、車椅子を其方へと移動させる。
「こんにちは!えっと、大丈夫ですか?これ、お水です。どうぞ!」
車椅子に備え付けられたボトルキーパーから差し出すペットボトル。
少年に無垢な笑顔でご挨拶だ。
■金剛 経太郎 > 「えっ、こ、こんにちは
あ、……どうも、ありがとう……」
気は進まないがそろそろ休憩も終えて歩き出そうかと考え始めて10分が過ぎた頃。
不意に声を掛けられた経太郎は、ペットボトルを差し出されてきょとんとしたまま受け取った。
何が起きたのかいまいち状況が飲み込めていないのだろう、不思議そうな顔で水と車いすに乗った少女とを見比べている。
「ありがとうだけど……ええと、貰っちゃっていいの……?」
この暑い中無償で飲料水が手に入るのはありがたいけれども。
予備が無いのであれば貰う訳にもいかない。ので、ひとまず確認だ。
■松葉 牡丹 >
にこにこと笑顔を浮かべる少女。
その左腕の欠損など目立つ部分が在るが
それを感じさせないような明るい雰囲気を纏っている。
「はい、大丈夫です。ホラ、これ結構涼しいから。
流石に直射日光を浴び続けるのはキツいですけど、ちゃんともう一本ありますよ?」
だから、おすそ分けです。と少女は付け加えた。
事実、近づいてきた車椅子からはひんやりとした冷気が漂っている。
中々便利な車椅子だ。夏場なら引っ付いていたくなるほどの涼しさだ。
「私、松葉 牡丹(まつば ぼたん)って言います。暑さにやられてるみたいですけど、大丈夫ですか…?」
自己紹介ついでに、心配そうに顔を覗き込む。
■金剛 経太郎 > 「そ、そう?……うん、じゃあ貰うね。
ありがと、喉乾いてからじゃ遅いもんねー」
予備があるのなら、と有り難く頂戴する事にした。
それにしても、と車いすを見て、少女の腕を見て、それから笑顔を見て経太郎は小さく感嘆する。
ハンデを抱えながらもそれを感じさせない様振る舞う精神に、だ。
「あ、僕はきょうたろう。金剛 経太郎っていいます。
暑いなあとは思ってたけど、まだ動けるから大丈夫。授業が終わってからここまで歩いてくるので疲れちゃっただけだから。」
心配ご無用、と言わんばかりに笑みを浮かべて首を振る。
やっぱりこの時季、屋外でだらけてるのは不要な心配を与えてしまうか、と反省しつつ。
■松葉 牡丹 >
「はい、どうぞ!」
えーい、とわざとらしく愛嬌を振る撒いてふに、と掌に押し付けるペットボトル。
保冷もばっちりでひんやりしている。
最新技術には驚くばかりだ。この炎天下でも、冷たい飲み物を持ち歩けるのだから。
「経太郎君、って言うんだね。……あ、でも君って、先輩だと失礼かなぁ?
私は二年だけど、経太郎君は何年?実は同学年とか……!」
此の常世学園の生徒に年齢制度はない。
見た目だけで判断できる人のが少ないのだ。
もしかしたら彼も…、と自身の頬に人差し指を添えて、小首を傾げた。
「ん、ならよかったぁ~。そう言えば、これからどこから行く予定、とか?」
確かこの先は歓楽街だったような。
ついでに、訪ねてみた。
■金剛 経太郎 > 「わ、冷たい……えへへ」
受け取ったペットボトルの冷たさに驚きながらも。
多機能な車椅子へと視線を向け、凄いもんだなあと感心する。
経太郎が“救助”され目を覚ましてから数日間、病院の車椅子に乗っていた事があったが、それとはかなり性能に差があるようだと思い返してみたり。
「えっと、僕は1年生。
だから、松葉お姉さんの方が先輩……だねっ」
見た目で言っても相手の方が年上に見えるだろう。
実年齢で言えば経太郎のほうが年上の様にも見えるが、見た目で年齢が計れない事は経太郎自身、身を以て知っている。
「あ、ちょっとこの先の歓楽街に、お手伝いに。」
バイト、と言い掛けて果たして適切だろうかと思い至り言い換える。
小学生と遜色ない容姿でアルバイトというのは、色々と問題や誤解が生じそうだから、という判断。
■松葉 牡丹 >
「この時季だと冷たい飲み物は必須だよねぇ~。本当に暑くて、嫌になっちゃうなぁ」
はふん、と溜息を吐いて苦笑い。
残暑とは言うが、いくらなんでも暑すぎだ。
車椅子が有っても、汗ばむものは汗ばむ。
制服の襟元を掴んで、パタパタと仰いだ。
汗ばむ首元と胸元が僅かに見え隠れ。
お洒落には気を使っているので勿論肌はそれなりに綺麗だ。
「わ、一年生!それじゃぁ、私の方が先輩、だねっ」
何だかそう言うの、ちょっと嬉しい。
先輩風を吹かせるという訳じゃないけど
ほんのちょっぴり、得意げな顔。
ふふーん、と張った胸は年の割にはまぁまぁある。
「アルバイト、かな?えらいよ、経太郎君っ!
途中までついてっていいかな?私も用事あるから」
ふふ、と楽しげに微笑んで尋ねた。
■金剛 経太郎 > 「そうだねー、まだまだ暑い日が続くのかなー。」
相手の言葉に頷きながら、額の汗を拭う。
せめて一週間程度で残暑も落ち着いて貰いたいものだが、と内心で溜息を吐きつつも。
無防備に服の中へ風を送る姿を見て、まあもうちょっとだけ暑くても良いかな、と考え直す。
見た目こそちんちくりんでも立派な男子高校生なのである。
「うん、松葉お姉さんの方が先輩!
……あ、じゃあ松葉先輩って呼んだ方が良いのかな?」
かすかに首を傾けながら、どうだろう、と疑問符を頭上に浮かべる。
どうせ猫被り時の呼び方なんて悩むほどでもないのだけれど、と内心で自嘲気味に笑いつつ。
「うん、そうっ。アルバイトっ!
うんー? いいよ、そろそろ行かなくちゃだし。途中まで、ね!」
水を貰った礼もあるし、断る理由も無い。大きく頷く経太郎。
欲を言えば車椅子に二人乗り出来れば言う事無しだったが、流石にそこまで高性能ではないらしい。
そもそも車椅子は二人で乗る様なモノじゃあない。
■松葉 牡丹 >
「特にこの島は暑いからねぇ、早く涼しくならないかなぁ……」
南国の島というのは、大体これ位の熱気を持っているのだろうか。
常世の極楽、なんて笑えないな。なんて内心ぼやいた。
当然彼女は自分に向けられる視線が何処か知っている。
だから、経太郎の視線に気づけばクスリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「えっち」
と、ただ一言言ってやった。
そして、何事も無かったかのように会話を続ける。
「あ、いいなぁ。先輩呼び。ちょっとくすぐったいけど…じゃぁ、それ!」
ちょっと年上気分のお姉ちゃん気分。
ふふーん、と得意げに胸を張ってみせた。
「アルバイト、結構長いのかな?……うん、今日も一日頑張ってね。それじゃ、いこっか!」
頷けばレバーを操作し、経太郎の歩調に合わせて車椅子を動かしていく。
他愛のない談笑を続けながら、言われるままに歓楽街までついていくだろう。
目的地つけば別れを名残惜しむ事はなく、じゃあね、と爽やかにそれぞれ別の道、だ。