2021/01/13 のログ
ご案内:「商店街」に雨見風菜さんが現れました。
■雨見風菜 > 今日ものんびり散歩日和。
風菜は商店街を歩いている。
肉まんを頬張りながら。
「んー、美味しいですねえ♡」
■雨見風菜 > 肉まんを食べきった風菜。
そのままのんびり歩いていく。
「暖かくなってきてますねー」
■雨見風菜 > 「~♪」
何らかの歌を口ずさみながら、商店街を歩いていく……
ご案内:「商店街」にΦ(ファイ)さんが現れました。
■Φ(ファイ) > 「……」
この辺りに美味しいこーひー豆専門店があると小耳にはさみ期待を胸に歩き始めてどれくらい時間がたっただろう。
既に数時間彷徨っていて眠くなってすらいる。
珈琲屋さんはいったいどこにあるというのだろう。
誘導機械は何も教えてくれない。この辺りにあるはずなのに、
「目的地の近くとなりました。案内を終了します」
そんな軽やかな言葉と共に一番大事な部分を放棄したままそれは喋らなくなってしまった。
行きかう人に聞いてみたら?
そんな事が出来るならこうして困っていたりしない。
心を繋ぎ奮い立たせているのはそのコーヒーが大変おいしかったと
クラスメートが嬉々として話していたという事実だけ。
「ぅ」
そろそろ心が挫けそうになってきた。
地面を見つめていた視線を僅かに上げて、上目遣いになるようにそっと辺りの人の群れを伺ってみる。
忙しそうに行きかう人々はこちらに注意を向けてなどいない。
ほっと安心したように一息ついて油断したからだろうか。
その中の一人と前髪越しに偶然視線が合った。
そう、合ってしまった。
「……(えぇぇ……)」
思わずとっさに視線を斜め下に逃がしその場で硬直する。
目を引く容姿をしているからということで現実逃避したい気持ちで既にいっぱいだ。
あ、そう、何も変わった人じゃないから気が付かなかったふりをしてそのまま歩き去れば……
やべーよ、牛だよ。牛な人がいるよ。あ、駄目だやっぱり認識してしまっている。
ご案内:「商店街」に雨見風菜さんが現れました。
■雨見風菜 > のんびり散歩していたら、一人の少女と目があった。
前髪で隠れているが間違いない。
さっと目線を逸らされた。
(……あれ?)
通常ならめっちゃ見られる。
そもそもいま現在も周囲の視線を集めている。
こんな反応を返される心当たりは風菜にはない。
関わってこないでくれオーラを発されているが、しかし風菜の中の何かがピンときている。
結局風菜は、彼女に近寄って。
「どうされました?」
微笑みを湛えて声をかける。
■Φ(ファイ) > 視線を水平以上に上げるのはあまり好きではない。
見えるもの全てが情報が欲しい物とは限らない。
一応コンタクトでフィルタをかけているし、
見ないようにセーブしているけれど咄嗟に見えてしまうことはよくある。
特に目が合った相手などは恐怖感からほぼ無意識で”観察”してしまうようになっている。
暗器等隠し持った危険なものが察知できる事は役に立つけれど、
基本的には見たくないものを見てしまうことが多い。
例えばそう、えげつない下着とか。
「(コノヒト ヤバイ)」
思わず鞄に手を伸ばしトミー君(30㎝ほどの長細いカエルの人形)を取り出しかき抱くと精神の安定を試みる。
ああこの素晴らしいふにゃふにゃ具合。まるで枕のようで心が休ま……
「……(!?!?!?)」
平静を失っている間にいつの間にかヤバイヒトが目の前に。
声を掛けられ思わず視線を上げる。
はた目からは鷹揚に見上げているように見えるような緩慢な動きは
内心必死に平常心を装っているだけだ。
最も表情筋等が根こそぎ死んでいるので全くその焦りが表に出た例はないのだけれど。
「……どうも」
1秒ほど見つめた後ふるふると首を振る。
ある意味個性的な服装の二人が対面しているからだろうか。
周囲の視線が集まっている気配にそっと視線を落とす。
……これ如何しよう本当。生きて家に帰れないかもしれない。
■雨見風菜 > 風菜は特に何も隠し持っていない。
と、いうのも大抵の所持品は『物体収納』して、必要なときに取り出すタイプだ。
しかしながら、別に暗器を始めとした武器を所持しているわけでもない。
暴力を振るうことは好まないし、むしろ振るわれる方が好みだ。
そんなことはさておき、今服の中に身に着けているのは異能の『糸』とピアスくらいである。
えげつない下着……どころか下着すらない。
「何か、困ってるような気がしたんですが」
さて風菜、そんな彼女の事情は知らずに通常対応である。
■Φ(ファイ) > そもそも人は多すぎるし何を話して良いのかが分からない。
昨日も「初対面の人と5秒で仲良くなる100の方法~あなたも明日からコミュニケーションマスター~」という本を読んだけれどこんな場面への対処法なんて書いてなかった。
誰か下着をつけていない人への話しかけ方をマニュアル化するべき。
下着を着ている人へ話しかけるのだって苦手なのに!
ユーザーの需要というものをもう少し理解して欲しい。
「……店、探してるだけ」
仕方ないので自分の興味があるかつ事実だけを口にすることにする。
そう、この動揺を収めるにはもう珈琲店に辿り着くしかない。
この辺にコーヒー専門店が沢山あって双葉コーヒーとかそんなチェーン店だらけで
目的の店の名前そもそも聞いてないとか内装ちらっと聞いただけだとか
そもそもこの辺ってどこ機械のバッテリー切れちゃったからわからないとか
そんな悲しみはすべて目的の完遂をもってしか報われないのです。
「別に」
トミー君をぎゅっと抱きしめ口元も隠しながら見上げる。
そう、別に下着をつけない人はたくさんいる。
なんかこう、健康のためのアトモスフィア的なあれだと聞いたことがある。
そう、大したことではない。平常心平常心。
「大した事ひゃない」
……噛んだ。
■雨見風菜 > そんな彼女の葛藤を全く知らず。
「良ければ一緒に探しましょうか?
よく散歩してるから、力になれるかもしれません」
助力を申し出る。
彼女が何を考えているか、そもそもどういった性格なのかすらエスパーならぬ風菜にはわからない。
人見知りなのかな、程度には思っているが。
(それにしても人形を抱きしめる姿が可愛いですね。
……あ、噛んだ)
「無理はなさらず。
私、今暇してますし」
■Φ(ファイ) > 善意と思しき申し出がまるで粘性のあるぬるま湯の様に緩慢に耳から脳へと通り過ぎていく。
理解にたっぷり数秒かけた後
「(あ、死んだ)」
何故か死を悟る。
目的のためには間違いなくこの申し出を受けるべきだ。
これがものすごく親切からくる言葉であることは理解できる。
断ったところでたどり着ける見込みもない。何なら家にも帰れない。学校何処。
こうして寒空の下行くあてがなく彷徨っている以上これ以上の進展を望むには他に方法はないのだ。
そもそも断ろうにも断るだけの語彙力がない。
最早ここにきて他を選ぶ選択権は私にはない。
……が、それ即ち知らない健康志向の人に説明をしなければならないという事だ。
つまり、死。
珈琲への欲求と精神的な生の欲求が擦れ合い歪な悲鳴を響かせる。
「……これ」
あっさりと色々諦めて視線を合わせないまま
握りしめていたくしゃくしゃになった紙とバッテリーが切れたナビを差し出す。
紙には走り書きで「商店街、豆専門、カウンターと棚、カップ沢山、ないすしるばー」とだけ書かれていた。
外観や立地情報がふわふわすぎる上にこの情報店に辿り着いて中に入らないと確認できなくね?という走り書きでももしかしたら心当たりがあるかもしれない。
尚探している本人にはそれに思い至るだけの精神的余裕がなかった。