2022/09/10 のログ
ご案内:「商店街」にリタさんが現れました。
■リタ >
二、三か月に一度――特に季節の変わるこの時期に、決まって自分は商店街に来ている。
理由は単純。買い出し。
「……うん、割と満足。パンジーも金魚草も、いい種が買えた」
季節は常に移ろいゆく。それは即ち自然の摂理であり、そしてそれに従って世界の表情も次々と変わる。あと数週間もすれば、あっという間に紅や山吹に染まる木の葉を至るところで目にすることができるだろう。もうすぐ、寮にある部屋のコスモスも花を咲かせる。
趣味の一つ、ベランダガーデニング。寮の部屋でやっているそれは、自分で言うのもなんだがそれなりの規模感になっている。最近は商店街の通りにある花屋に顔を出すことも多くなっていて、そろそろ顔を覚えられそうだった。
……。
「……アレに、顔を……」
やたらと筋肉質な花屋の店主の顔を思い浮かべて、頭を振った。やめろアレとか言うな思うな。
気を取り直して、商店街通りを歩いていく。背負った鞄の重みを感じながら。
■リタ >
大きなリュックを背負って歩く子供の姿も、目を引きこそするがここでは珍しいものではない。道行く人に紛れて、店と店の間を通り抜けていく。
「テトラたちのエサは買った、花の種も買った……えっと、あと足りないものは……」
指折り数えて、記憶を辿る。
「食料……そろそろ尽きるか?」
もうすぐ食べ物が美味しい季節である。リタ12歳、現在は自炊の特訓中。今のところ勝率は60%ほど。
「じゃあ、野菜も買わないと」
お金もあまり多くを使えるわけではないので、色々工夫して食料を調達してはいる。いるのだが、結局のところお金を出して買う野菜はそれ相応に美味しいのだ。
「その前に休憩……っはぁ、疲れた」
歩みが遅くなっているのを感じて、近くのベンチに座り込む。背負っていたリュックを傍らに置くと、中でがさっと音が鳴った。
■リタ >
「何買おう……」
先日はマシュマロを消し炭にした。自分にキャンプに行ってみたらどうと勧めてくれた先生にその話をすると、顔を伏せて笑われた後に、今度料理を教えてあげるねと大変ナマアタタカイ声で言われた。
違う、そうじゃなくって。
「茸……うん、茸が美味しい季節か」
声に出してみると、途端に食べたくなってくるから不思議。
「よし、パスタをリベンジしてみよう。茸とバター醤油を合わせると美味しいらしいし」
更に前の日にパスタの鍋を盛大に吹き零したことを思い出して、一人そう決意する。
■リタ >
「よし、そろそろ休憩終わり」
勢いをつけてベンチから立ち上がる。そうしてリュックを背負いなおして、ふらっとまた通りを歩き始める。八百屋は――あっちだっけ。
さて。
実は八百屋の店員にも、近頃顔を覚えられはじめている。花屋よりも足を運ぶ頻度が多いうえに、何より通い始めたころ、店先で"草"を纏繞した挙句、
『せっかくならいいものを……いえ、違いますね。ここに並んだ皆は、どれも元は大切な命……それを頂くというのに選り好みなんて、おこがましいですね』
と言い出して、わざわざ他の人が敬遠しそうな形の悪いものを選んで買った結果、自分の評価は『突然姿が変わって面白いことを言いだす女の子』なのである。
うん、やっぱり不用意に力を使うのはよくない。色々と面倒なことになる。
というわけで、ただ普通に野菜を見ている。
目利きという点については、まあ素の状態でも人並みにはできるからいいだろう。多分。