2020/07/25 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」に宇津木 紫音さんが現れました。
宇津木 紫音 > 彼女は常に何でも欲しがる女だった。
それも、特別難しいものばかり。簡単に手に入るものは興味が無い。

何でも欲しがる彼女は、飛び切り面倒くさい異能をいつの間にか手に入れ。
それを嘆かずに"利用"した。

利用に利用を重ねるうちに、彼女はすぐに"異能者"のアドバンテージに気が付いた。

これからの世界は、政治家にコネがあっても。 メディアにコネがあっても。 裏社会にコネがあってもあまり意味をなさない。
"異能者"に対してのコネクションが今後の世界を左右するものだ。


そんな彼女がこの島に目をつけるのは、自然な話。
まあ、やってきてすぐにテストが終わって休暇期間に入ってしまったのはご愛敬というやつだ。

「……まあ、慣れるための期間だと思っておきましょうか。」

本日は百貨店。 ファッションフロアにてお買い物中。

宇津木 紫音 > 濃い緑……黒とも間違えられる長い髪を揺らして歩く、制服姿の女生徒。
己の体液をひたすら思い通りの薬品に変えていく、………直接的ではなく、間接的に危険度の高い女。

その名前から、"ドクウツギ"という毒木の名で呼ばれることもあるクソ女。
小さな可憐な木の実をつけながらも、食べれば死に至る猛毒。
そんな名前で呼ばれても気にならない、そういう女。

下着コーナーで足を止めて、ふーん、と最新の下着を眺める。

女店員 > 「どのようなものをお探しですか?」

にっこり笑顔のポニーテール店員が、下着を眺める彼女に声をかける。
明るく笑顔で爽やかな接客。 この店の接客マニュアルは完璧だ。

宇津木 紫音 > 「あなたのつけているものと同じものを上下頂ける?」

全力でボレーシュートを店員の顔面に放っていくクソ女。
どんなものをつけてるの? なんて目を細めて尋ねながら、店員に対して一歩踏み込んで。

「……下着売り場の店員が付けているものならば、信頼できるでしょう?」

にっこり。

女店員 > 「へぁっ!?」

可愛らしい悲鳴を上げて、一瞬一歩後ろに下がる店員。
何を言っているんだろうこのお客さんは、って顔をしながら後ずさる。

「わ、わかりました、お持ちいたしますね?」

しかしそこはプロ根性、きっちり耐えて笑顔で返して。

宇津木 紫音 > 「では確認させてもらいましょうか。
 私は貴方がつけているという信頼にお金を出したいのです。 ええ、分かって頂けるでしょう?」

そっと店員の手を取って、にこりと微笑みながら試着室に引き入れ。
しゃ、っとカーテンを閉める女。
有無を言わせぬ迫力をもって引きずり込めば、試着室でごたごたもぞもぞ。

女店員 > 「お客様!困ります!あーっ!困ります!いけません!」

小声でひそひそ声が漏れて、もぞもぞと二人のシルエットが重なり、布が擦れる音が響き。

宇津木 紫音 > 「ありがとう、じゃあ、こちらを頂くわね。」

しゃ、っとカーテンを開けば、上下の下着を指に引っ掛けて現れる女生徒。
中を見せないように、しゃ、っとカーテンを閉めてしまえば、悠然とその試着室から立ち去って。

「…………これと同じものを頂ける? サイズは私に合わせて頂いて。」

全く別の店員に、何も無かったかのような顔でほかほかとちょっと暖かい上下の下着を差し出す女。
にっこり。

宇津木 紫音 > 彼女はいつだってこうだった。
買い物も、お金で買えるものは必要ない。
男も女も、自ら求めてくるような相手は面白くない。

嫌がる相手を、己の力で目の前に引きずり出すことそれそのものが快感でもあった。


「………異能者がわんさといると聞いていましたが。
 面白い相手、はいないものですかね。」

買い終わった下着の入った袋を指で引っ掛けながら、周囲を見回す。
強い、弱い、男、女、年上、年下、関係ない。

ただ、彼女が虐めてみたいと思わせる相手。 それが条件だった。
不運にも見つかってしまえば、毒の牙を戯れに突き立てるくらいはする女。

宇津木 紫音 > 「………いや、誰でもいいわけではないけど。」

首を横に振る。
おそらく、この島のモールだ。 異能者など履いて捨てるほどいるに違いない。
かといって、誰でもいいわけではない。

彼女は有能な異能者に声をかけたいのだ。
自分では到底できないようなことが出来る相手を、自分の力で屈服させたいのだ。

それを考えるだけで、心が跳ねる。
脚も軽やか、ゆっくりとファッションエリアを回りながら。

ファッションエリアに足を運ぶ人間を、ひたすら観察する毒木。
感覚の鋭い人間ならば、寒気の一つも感じるかもしれない。

宇津木 紫音 > 「………あの男の子は強そうね?」

目を細くして、一人の少年を追いかけ始める女。
今日は面白い相手になってくれるのかしら。

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」から宇津木 紫音さんが去りました。
ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」に修世 光奈さんが現れました。
修世 光奈 > 「うーーーーーん」

ライフワークがあるとはいえ、彼女もまた夏を堪能する気持ちはある。
だから、この扶桑百貨店のファッションエリアの一角、『特設水着コーナー!』と書かれた場所でうんうん悩んでいる。
予算もあるし、特に見せる相手がいるわけでもないけれど。

「やっぱり一回ぐらいは海いきたいよねー…うーーん」

それはそれで可愛い水着を選んで、ひと夏の…なんて憧れもまた、ある。
黄色のビキニタイプ、青色のビキニ+パレオタイプ。
そんな色とりどりの水着たちを見つつも、決めきれない

「はぁ。一人で来るのは間違いだったかなぁ…誰か誘っておけばよかったかも…」

というのも、自分の発育はそれほどよろしい方ではない。
だから、誰かを誘うと敗北感に晒されてしまう可能性も高かったが。
結局水着を決められないなら、誰かにアドバイスを求めた方が良かった気がする。

あっちをうろうろ、こっちをうろうろ。
唸りながら、色々と見て回る。

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」にキッドさんが現れました。
キッド >  
そんな夏の日差し、青春の一ページでうろうろする光奈の周囲に
見覚えのある様な白い煙が漂い始める。
臭いは無い、煙たいだけの白い煙。
コツ、コツ、とわざとらしい足音を立てるそれは、光奈の後ろで足を止めた。

「……子ども用の水着はアッチだぜ?プリンセス。」

ふ、と煙と共に吐き出されたあんまりな第一声。
振り返ればそこには何時ぞやの風紀委員のろくでなしがいた。
相変わらずにやけた口元で、キャップの奥の碧眼が光奈と水着たちを交互に一瞥し

修世 光奈 > 「…?、あ―――」

夢中になっているからか、足音には気づかず。
後から声をかけられて振り返ってみれば。
少し前に猫の捜索を手伝ってくれた…ひねくれた印象の男子だ。
白い煙も、ある程度見慣れたもの。

「だから、プリンセスじゃなくて光奈…って!誰が子供だー!」

驚き、少し恥ずかしがり、そして怒る。
相変わらずころころと変わる表情で男に向き直って。
図星を突かれたからか、かー、と顔が赤くなって。

「風紀委員にセクハラされたって言いつけてやりましょうか。
……キッドさん、少しぶりです」

ただ、それも長くは続かない。
ビキニタイプ…パッドを入れて大きさを誤魔化すそれをサ、と戻しつつ。
軽く挨拶をしよう。

キッド >  
「へッ、まだまだ夢見るお年頃じゃねェのかい?
 俺はピーターパンとして、アンタを海に連れてくつもりだったんだけどな。」

夢を見るのは子供の特権。
それを叶えるのがピーターパン。
夢の国ならぬ、夏の海で一時の思い出をご提供。
……完全に物は言いようである。
怒られても、あっけからんとしていた。

「セクハラされるような見た目してんのかい?
 それなら是非とも、見てみたいもんだな。」

戻した水着は恐らく増量するタイプ
敢えて言いはしなかったが、若干焼け石に水な気も……。
それはそれとして相変わらず、軽口は止まらない。
隙あらば口説くような言葉の羅列、とんだピーターパンもいたものだ。

「……ま、元気そうで何よりだな。最近、変わりはねェか?プリンセス。」

それでも、再会が喜ばしいのは間違いない。
"己のやってる事"を省みれば、充分過ぎる贅沢だ。

修世 光奈 > 「海にはいきたい……、でも、子ども扱いしないでください!
…大体、キッドさんはいくつなんですか!」

むむ、と…半目で見返し。
誘いについてはあっさりと返事をして。

「う、ぐぐぐぐ…元気で、変わりもない、です、けど…!
別にトラブルもないですし。ちょっと依頼に困ってるぐらいで」

ピーターパンに翻弄されるプリンセスはそのストレートすぎる軽口に唸る。
ただ、光奈にとってキッドは…良い人、という認識であるためその頬が膨れる程度だ。

「ふん。いいですよーだ。あいでんてぃてぃーなんですから。
そーいうキッドさんこそ、見せられる身体してるですかー!」

軽く自分の身体を隠すようにしながら。
プリンセスの反撃がピーターパンに向けられる。
言葉とは裏腹に自分の身体の事を気にしているのは明白だ。
そして、周りを顧みないその声はそこそこに注目を集めてしまっている。

キッド >  
煙草を二本指で煙草を取って、天井に白い煙を吐きだして、ニヤリ。

「16……今年で17だったかな?」

長身の見た目からは告げられる圧倒的若さ。
なんなら、光奈より一歳若い。
若いからなんだ、と言わんばかりに奔放さが際立つ。
そう、無礼なのだ。
当のキッドに置いて、年齢なんて些細な問題なのであっさり答えた。

「それでも、アンタよりは見せられる体はしてるさ。」

ジャケットの袖をめくり、軽く腕を曲げてみせる力こぶ。
訓練により訓練を重ねる事により手に入れたアメリカンマッスル。
全ては己の"正義"の為だが、だらしない体よりかは人に見せられる。

……裏を返せば、その若さで"そこまで鍛え続けてる狂気的執念"の裏返しではあるが……。

「にしても、アイデンティティーねェ。確かに、中々キュートだな。
 俺は嫌いじゃないぜ?この後、食事とホテルでもとっておくかい?」

遠慮なく吐き出される下品な軽口は、それらをおくびに出さないものなのかもしれない。
煙草を咥え直せば、水着の方に視線を見やった。
流石に場所が場所、女性ものの水着ばかりだ。

「……それで、困り事があるって?良ければ相談に乗るぜ。
 勿論、ただの"点数稼ぎ"だけどな。」

修世 光奈 > 「な、な…――――――………、し、しかもむきむき…!」

その見た目で年下だったの、とか
敬語使ってた、とか。
色々な思いがぐるぐるする。
そこに追い打ちとして、鍛えられた…これも年下とは思えないマッスル。
ついがくがくと震える指で男を指さす。

どれだけ鍛えたらそんな体になるのか。それも、不思議に思うが…
女子として気になるのは、もしかしたら効率よく身体を絞る方法も知っているかもしれないと。
ライフワークの影響もあり、太ってはいないが…少し油断するとぷにぷにとお腹が自己主張してくるのだ。

「だーれにでもそんなこと言って……るんでしょ。まったくもー。嫌われるよ?
…水着選び、手伝ってくれるの?…まあ、別の視点も必要だけどー…。
ああ、困りごとって言うのは…」

年下だとわかればあっさり気軽な口調に。
男子の視線に気づけば…また水着を選び始めながら。

「なかなか見つからない依頼があってさ。結構探してるんだけど手掛かりが全然なくって。
…こうして水着を選んでるのは、その気晴らしもあるかな?」

キッド >  
「……フ。」

鼻で笑ったぞコイツ。今嗤った。
軽く小ばかにしやがった。良い性格してるぜ。
当然袖は直ぐしまっておいた。見せびらかすものでもない。

「さて、どうだかね。少なくとも、"プリンセス"と呼んでるのはアンタ位かな?」

光奈の推察通り。キッドは誰にでもこんな調子だ。
中身のないようなふわふわとした煙の様な言葉。
真意だのなんだの、そんなものはない。
その場限りの思い付きと、ちょっとした悪意を隠し味にまわりまわる二枚舌。
だからこそ、口元のにやけ面は絶えることなく……。

「嫌われてんなら、本望さ。」

と、呆気なく返した。
嫌われ者、願ったり叶ったりだ。
寧ろ、キッドにとっては"そう思われていた方が居心地がいい"。

「せっかく海に行くなら、俺好みの水着着てくれてた方が嬉しいからな。
 それで、今度は何を探してんだ?フランシス・ドレイクよりも探し物は得意だろう?
 ……それとも、死体でも探してんのかい?」

修世 光奈 > 「ぐぐぐぐ………!」

余裕の態度の年下に、年上なのにどうしようもない。
ただもう少しそのマッスルを見ていたいなーという気持ちもあった。
フェチではないが、良く鍛えられた筋肉は綺麗なものだ。

「ふーんだ。それもどうせ調子よく言ってるだけでしょー。
…はぁ。やっぱりずっとそんな感じかー…点数稼ぎって言いながら委員会に報告してなかったみたいだし」

軽口で、中身など無いとしても…少し嬉しくなってしまうのはちょろいのかどうか。
いや、そんなはずはない。貞操は硬いはず。
相変わらず嫌われた方がいい、と取れる言葉を出す相手にため息を履いて。

「…というか、あんな大海賊と一緒にされたら褒められてる気しないんだけど…。
…あーもう、じゃあ手伝って。水着探すの。探しながら説明するから」

自分の求めるもの。
それは中々見つからない。
他人のものならすぐに見つけられるのに。
だから、軽薄ながらも世話焼き…と光奈は思っている相手に、手伝いを頼んで。

「探し物についてだけど。…死体よりも厄介かも。多分だけど、異能か魔法か…そういうので隠れてる人間…かな?
名前しか見つけられなくてさー。『居る』のは確実だけど、中々…」

そう言ってラックから一つ水着を取り出す。
少し大人っぽい黒色に白の刺繍が入ったビキニタイプ。
それを見つめながら淡々と話をして。
似合わないかな…と思いつつその少しセクシーな水着をラックに戻す。

キッド >  
「拗ねるなよ。そういうアンタの顔も可愛らしいとは思うけどな。
 ま、子どもっぽいちゃそうか。……ん?ああ、ハハ。面倒になったんだよ、報告。」

言った傍からこれだ。
死ぬ迄治らない、病気みたいなものだ。
ずっとずっと、口から出るのは出まかせ捻くれ。
それでも本人は、"ずっと笑っている"。
一体、何が可笑しいのやら。
それはこのろくでなしにしかわからないだろう。

「わかったよ、プリンセス。とりあえず怒るなって。」

やれやれ、と肩を竦めて懐から取り出す小さな端末。
サイドのスイッチを押せば、水色のホログラフモニターが浮かび上がった。
風紀委員会に所属する人間なら持ち得るであろう、『学園名簿』だ。
学園関係者に限り、ある程度の情報が入っている。
とは言え、ほとんどが自己申告ばかりだ。
役に立たない事も多い。因みにキッドの情報はほとんど入ってない。
面倒くさかったからだ。

「……隠れてる、ねぇ。」

水着を選ぶ片手間で、煙を吐き出すて鼻で笑い飛ばした。

「隠れるってのは、隠れる理由がなきゃやんねェのさ。
 もしかしたら、『そうならざるを得なかった』奴かもな。」

それこそ、病みたいなものだ。
異能者が須くスーパーマンだと勘違いしている輩も多いが
"それと同じ位異能に苦しむ人間がいる"。
如何なる能力も、理由も多岐にわたる。
少なくとも、キッドが知る限りは好き好んで日常でかくれんぼをする酔狂な人間がいるはずもない。
光奈が戻した水着を一瞥し、端末をトントン、と叩くように指で操作する。

「……ソイツの名前は?他に身体的特徴とかは覚えてるか?異能、魔術、思い当たる情報がなんでもあれば言ってみな。」

矢継ぎ早に重ねる質問。
こう言う所は如何にも風紀"らしい"。

修世 光奈 > 「それじゃ点数稼ぎじゃないじゃん。…ほんっとに、風紀委員って変な人しかいないんだね。
まあ、悪い人はいないみたいだけどさ。……それと、別に、怒ってない」

ちゃんと報告しているか心配になって委員会に顔を出してみれば。
やっぱりちょっと面白い人と会ってしまった。
だから今、光奈としては風紀委員は『変だけどいい人の集まり』だ。

そして…この軽い…お互い気を使わなくていいやり取りは楽なのだ。
前は年上かと思って敬語を一応使っていたが、それでも話すのは楽だった。
水着を選びつつも…その『楽』さに乗って、口は開いていく。

「………、風紀委員なら、いっかな。
北条、北条御影。それ以外は何にもわからないんだ。
学校のあちこちに名前の落書きを残してたり、生徒名簿には名前があるんだけど…
…姿も、何もかも情報が無い…ただ、私は依頼を受けたんだ。その北条御影から」

学年すらも不確か。
手掛かりは落書きだけ。
しかも依頼内容は――

「その、北条御影を見つけて私が一緒に遊ぶ。それが依頼…あはは、難しいよねー」

光奈とて、自分が探し物について万能ではないことぐらいわかっている。
けれど少し悔しくて、水着を二着手に持ったまま俯く。

「探し物、得意ではあったんだけど…流石にちょっと難しいや。ほら見て。私が書いたみたいなんだけど…
書いた記憶がないの。…多分、だけど…関わった記憶も記録も消える…のかな」

初めて、探し物に対して…壁にぶつかった。
男に見せる端末のモニターには――

『北条御影。御影※※※を探す。
※※※※、※※、※※※※※※。見つけたら一緒に遊ぶ』

などと、不自然な文字化けを起こした意味不明な電子メモ。

「あ、あーごめんね、キッド。私が受けた依頼だから、そんなに気にしなくていいよ。
ほら、水着選んでよ水着」

いくらなんでもこんなものを見せられては困惑するだろうと。
誤魔化すように笑ってから水着選びに戻る。

キッド >  
「別に、見てくれを気にしてやってるワケじゃねェ。
 俺にとって、"偶然風紀が丁度良かった"。……それだけさ。」

そうでなければ、"過激派"なんて言われて風紀委員の爪弾きにすらなっていない。
ただ、己の正義を実行するのに丁度いい場所。
点数稼ぎ何て言うけど、結局は二の次。
キッドには、"執念"がある。
己の正義を実行するために、如何なる事でもやる"執念"。
今の風紀委員会は、己が甘い汁だけを吸うには丁度いいだけに過ぎない。
そう語る時だけ、口元は笑ってもいなかった。

「北条 御影。」

光奈の出した名前を検索すれば、確かに名簿には引っかかったが

『何もない』

北条御影に関するデータは一切何も書かれていない。
在るのは名前だけ。しかも、この名前さえ本当にあっているのかどうかも怪しい。
本当は"いない"生徒なんじゃないか、と思える位に何も、何もなかった。
それこそ影でも掴まされたような、手応えの無さだ。

「…………。」

居ない人間を探す。手の無い手を伸ばせなんて、言われた気分だ。
おまけに証拠らしい証拠も無く、提示されたものと言えば
よりにもよって手書きの電子メモ。おまけに、"書いた記憶が無い"と来た。
いきなりのどん詰まりだ。諦めろ、と此処ですっぱり言った方が彼女もあきらめがつくかもしれない。

胸ポケットから携帯灰皿を取り出し、煙草をねじ込んだ。

「……それで?泣き言は終わりかい?」

ふ、と意地の悪い笑みを浮かべた。

「俺ァ、アンタの妄言に付き合ってるワケじゃないんだぜ?
 仕事の話かと思えば、無茶苦茶言いやがって……。」

端末を閉じ、無造作にポケットにねじ込んだ。
吐き捨てるような、辛辣な言葉だが……。

「初めっから、気にしちゃいねェよ。
 その依頼は、"アンタがやり通す"って決めたから
 メモまでとったんじゃないか?」

「俺は確かに、何処に出しても立派な"ろくでなし"さ。
 けどな、テメェで決めた事を簡単に諦める程腐っちゃいねェ。」

「アンタ……そんな俺以下にでもなろうってのかい?」

光奈と北条の間に何が在ったかなんて考える気は更々ない。
記憶媒体さえ朧気で、名前だけしか覚えてない。
本当に影みたいな人間を、必死になって探してる。
確かにキッドは、"ろくでなし"だ。協調性もなく、己の信念を貫くために何でもやる。
だが、人の気持ちを踏みにじるような男ではない。
光の様に明るい彼女が、思い詰めている。
人生行き詰まることだってあるだろう。
手を差し伸べるのも吝かでは無いが、"ガラじゃない"。
せめて、やってやることと言えば……。
キッドは静かに、煙草を咥える。

「……"友達"、なんだろ?そこまでして探して、一緒に遊ぶんだからよ。
 ダチの事を中途半端に投げ出すなよ。絶対に『いる』ってわかんなら」

「アンタが探してやらないと、今頃"泣いてるぜ"?」

背中を押してやる位だ。
ジッポライターで、煙草に火をつけた。
再び匂いの無い、煙が漂い始めた。

「……ま、"慰めて欲しい"なら、何時でもホテルで朝までお付き合いするぜ?」

修世 光奈 > まだ、相手のことがよくわからない。
風紀の事を話す時…微妙に違う気もするが、相手の雰囲気が変わる。
それはいくらなんでも気づいてはいた。

けれど、相談に乗ってもらっている今…それを確かめることは少し難しい。
だから…また今度聞こうと心に留める

「……ぅ………」

まずはしゅん、と。
水着を持った手が下がる。
当然だ。こんな話を依頼と言われれば怒るのは当たり前だと言える。
つい、謝罪の言葉を出そうと口を開くが…

「――――…………」

次の男の言葉に顔は上がったもののぽかん、と口を開いたまま少し間抜けな表情に。
確かに、そうだ。
自分が見つけなければ誰が見つけるのだ。
…もしかすると、『隠れる異能』を見破るような異能や魔法もあるかもしれないが。
こんなメモが残っている以上、自分はこの依頼を受けた。
それは変えようのない事実だ。

光奈のライフワークは探すことである。
だから、簡単に諦める、なんて口に出していいものではなかった。
それは自分を否定することにもつながる。

「―――…、……そう、か…そーだよね。どんな子かも"覚えてない"けど
…探すんだ。それは、確か」

間抜けな表情から、また笑みを浮かべて。

「…もう!、年下が生意気!朝までお付き合いしたいならもーちょっと年上を敬って!」

すっかり元の…元気な調子。
にこ、と笑顔を見せ。

「…ありがと。キッド。…まあ、朝までホテルとかは無理だけど…、好きな水着着てあげるくらいはいっかなー」

どうせ、そんな魅惑的な体でもないのだ。
お礼としてそれくらいはいいだろうと。
どれがいい?と聞いてみよう。

キッド >  
「……ふ。」

また、笑った。
それでも、それはいつものにやけ面と違って
"楽しそうに"笑ってる。

「やっぱり、アンタはそういう笑顔が似合ってるよ。」

光の様に明るい笑顔。
きっと、それが誰かの導になる。
例え影すら照らし出して、『北条御影』の手を掴めるだろう。

「暇な時は一緒に探してやるさ。一人より二人、だろう?」

どうせよそよそしく仲でもない。
それに、キッドと言う男も、一度関わった以上はそれなりに"スジ"を通すタイプだ。
せめて、光奈の光だけは絶やさないよう。
その笑顔を維持させるために、名前しかない人間を探す位、やってみせる。

「ヘッ、そう言われんのが嫌なら、ちったァ凹凸つけな、"先輩"。」

また煙の様に、ふわふわと言葉が消えていく。
そして、取った水着をそのまま光奈へと投げ渡した。
迷いない手つきは、初めから"それ"と決めていた雰囲気まである。

フレアトップのバンドゥビキニ。
白色を基準としたカラーに、ワンポイントのハイビスカスが刺繍された、シンプルなデザイン。

「先輩にゃ、それが似合ってるさ。」

それだけ言って踵を返した。

「じゃ、俺はこれで。突っ走るのもいいが、休む事も忘れるなよ?」

白い煙を吐きだしながら、相変わらずのにやけ面で去っていく。
お節介だ。いつもいつも、不器用な男。
帰り際にカウンターにしっかりと、水着の代金だけ置いていくあたり

本当に不器用で、お節介な男だ。

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」からキッドさんが去りました。
修世 光奈 > 結果、この依頼がどうなるかはわからない。
見つかるかもしれないし、ずっと見つけられないかもしれない。
そもそも、見つかったとしてもまた記憶が消されてはどうしようもない。
けれど見つける。流石に少し減退していた元気が補充されたからだ。

投げ渡された水着を見て。
胸をより綺麗に!なんて書かれた謳い文句にむ、とするも。
それを…自分に合うものを『探して』くれたキッドに感謝。

けれど、それはそれ。
人が気にしていることを堂々と言うその悪ガキっぷりと。
レジに行ってみればカウンターに既に代金が置かれている、などという気障すぎる行動。


ありがたくその行動を受け取るが…
彼が去っていった方向に駆け出し、その背中に――

「べーーっだ!」

笑みを浮かべながらも、舌を出して…見えていないお返しだ。
ただ…少し足取り軽く、水着売り場を後にした。

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」から修世 光奈さんが去りました。