2020/12/20 のログ
リタ・ラルケ >  
「――ぇ」

 一瞬、何をされたのかわかりませんでした。
 そっと前髪をかき分けられて、何かが私の髪に着けられて。

「……ぁ」

 正解の商品です、と。そう言われて着けられたのは、さっきまで迦具楽の持っていたヘアピン。
 そして、ウィンクと、「可愛い」の言葉。

「……そんなの不意打ちです……ずるい……」

 真っ赤になった顔を隠すように、俯きます。
 ……迦具楽の顔、まともに見れないっ……!
 嬉しいけど……嬉しいですけどっ……嬉しいから困りますっ……!

迦具楽 >  
「あはは、リタってば顔赤ーい。
 恥ずかしがらなくたっていいのに。
 リタは可愛いんだから、ちゃんと顔が見えてた方がいいよ、うん」

 と、一人で納得して頷いている迦具楽は、友人が何に赤くなってるかなんて察しておらず。
 自分のセンスも悪くないじゃないか、なんて一人で満足げにしている。

「うーん、やっぱりこの辺の可愛いアクセなら、リタの方が似合うなー。
 アクセなら可愛い系よりも、落ち着いた感じのがいいかも。
 個人的にはこういう、可愛いリボンとかしてるの見たいけどねー」

 赤くなっている友人を置いて、自分は棚とにらめっこ。
 白いポンポンのついたリボンを手に取ってみたりして、首を傾げている。
 今度は赤と緑の、小さいベルのついたシュシュを手に取って、再び友人の方を見た。

「んー、こういうのもアリだなぁ。
 リタに似合いそうなのならすぐ見つかるのになー」

 明るい色というよりは、少し濃い色のアクセサリを次々と手に取って、友人と見比べてみる。
 今日もそうだが、普段の白い髪にも濃い色は映える事だろう。
 見ているうちに色々と試してみたくなる。
 普段あまり手を入れていないからこそ、友人は飾り甲斐があるように思えた。
 

リタ・ラルケ >  
「……うぅ」

 満足げにしている親友は、自分が何をしたのかの自覚もなさそうでした。
 ……天然なのか、とぼけているのか。なんだか私が仲良くしている人、どこかこういうところがある人が多いような。

「って、そうじゃなくってっ。私よりもその人へのプレゼント、ですよっ!」

 本来は私へのプレゼントじゃなかったはずですっ。
 そりゃあまあ、私のこともちゃんと考えてくれるんだな、って嬉しくはなりますけどっ!
 熱い顔を必死で誤魔化すように、商品棚の方へ向き直ります。

「えっと、何色が好きとかあればそれがいいかもしれませんね。それから、髪をまとめる機会があればシュシュやヘアゴムなんかが便利だったり……」

 さっきよりも少し焦ったように喋ります。
 ……うぅ。まだどきどきしてる……っ。

迦具楽 >  
「うーん、好きな色かぁ。
 そう言えばそんな事も知らないなぁ。
 でも、家事とかしてくれる時は髪をまとめる事もあるし、シュシュはありかも」

 そう言う意味では、髪飾りはアリかもしれない。
 普段使いならシュシュは便利だろう。
 しかし、プレゼントとして渡したら、大事にされ過ぎて普段使いしてくれないような気もする。

「うん、でも、いいね。
 いくつかデザイン覚えて帰ろうっと。
 これくらいなら作るのも簡単そうだし」

 と、手に取ったシュシュをよく観察して、棚に戻す。
 そしてまた別のシュシュを手に取る。
 観察してはいるが、買う様子はなく、また棚に戻した。

「ヘアピンとかヘアバンドとかもいいねー。
 でもそっか、髪飾りかぁ。
 櫛とかカンザシとかの方が喜んでくれるのかなぁ」

 飾り櫛や簪、そう言ったものの方がきっと馴染みがあるようにおもう。
 だからこそ、シュシュとかリボンを着けてるのを見たい気持ちはあるのだが。

「カンザシ――うん、カンザシ、良いかも。
 それならいっそ、カンザシに合わせて着物も――あ、振袖!
 うんうん、初詣とかも行きたいし」

 と、また一人で頷き始める。
 なにかいいアイデアが浮かんできた様子だが、さてさて。

「ちょっと思いついたかも。
 まあ作るのは大変そうだけど――まだ間に合うかな」

 少し視線を彷徨わせながら、どれくらいかかるだろうかと計算する。
 二人分のプレゼントを作るとなると、ちょっとギリギリかもしれないが。
 睡眠時間を削れば多分、なんとかなるだろう。

「っと、リタの方はどう?
 なにかプレゼントに良さそうなのあった?」

 と、ようやく意識が現実に戻ってきたようで。
 友人の方はどうだろうかと、顔を向ける。
 

リタ・ラルケ >  
「作る? シュシュを? 迦具楽、お裁縫できるんですかっ?」

 もしそうだとしたら、凄いですっ。前にも野菜を作ってるって言ってたこともあったし、迦具楽は結構器用で多芸なのかもしれません!
 さて、こっちはっ。

「あ、えっと、はいっ。プレゼントっ」

 問われて、答えます。他の人へのプレゼントは、まだ少し考えたいですけど、でも、少なくとも一つは決まりました。
 それは、

「……プレゼント、ですけど。その、さっき待ち合わせの時のこと……」

 待ち合わせの時。迦具楽は私の纏繞する精霊が何かを当ててくれて。正解の商品は何かな、と言われてから。ずっとどうしようかと思っていました。
 一目見て、これだと思ったのです。

「えっと、後回しにしちゃってましたけど。私からも、正解商品ですっ。どうぞっ……」

 そう言って差し出すのは、ガーネット――天然のそれではありませんが――があしらわれた黒いヘアピン。
 迦具楽の瞳の色によく似たそれは、まるで彼女のように作られたものだと。そう思えたのです。

迦具楽 >  
「裁縫くらいならねー。
 最近はちょっとした細工モノも練習中だよ。
 色々作りたい物があってさー」

 迦具楽はこれまで食べた人間の技術を模倣することができる。
 その上、物事に慣れるのが非常に速いため、大抵の事はすぐにできるようになってしまうのだ。
 とはいえ、それでも簪に合わせて振袖を作ろうとすれば、それなりに苦労するだろうが。

「ん、ああ、賞品なにかなーって?
 そんなの別に――」

 ちょっとしたノリで言っただけなのだが。
 差し出されたのは、綺麗な赤い石のついたヘアピン。
 受け取って、ヘアピンと友人の顔を交互に見た。

「え、っと、いいの?
 ちょっと冗談でいっただけなのに」

 プレゼントは嬉しい。
 けれど、あんな戯れの延長で貰っていい物なのだろうか。
 

リタ・ラルケ >  
「いいんですよっ。受け取ってくださいっ」

 賞品がどうとか、そういうのは半分建前みたいなもので。
 もとより私がここで選んでいたプレゼントは、常世という地に来て会えた一番の親友に贈るものなのです。

「その、改めて言うのもなんだかまた恥ずかしいんですけど……」

 一つ、咳払い。
 これは、"私"の気持ちであり、それと同時に"自分"の気持ちでもあり。

「私と出会って、仲良くしてくれて――そうして、"リタ"を受け入れてくれて、ありがとうございます……って。そんな気持ちを、形にしたくって」

 だから、受け取ってください、と。そう付け加えて、改めてヘアピンを差し出します。

迦具楽 >  
 咳払いをした友人の言葉は、どうにもむず痒くて、落ち着かない。
 けれど、それがとてもうれしくて、口元がにやけてしまうのは抑えられなかった。

「え、へへ。
 そんなの、お互い様だよ。
 リタの方こそ、いつも仲良くしてくれてありがと。
 情けないところも、かっこ悪いところも見せちゃったのに、愛想つかさないでくれてさ」

 照れ臭そうに頭を掻いてから、ニット帽を外しポケットに押し込むと、伸ばしっぱなしの前髪が垂れてくる。
 それを横に分けて、渡されたばかりのヘアピンでしっかりと留めた。

「どう、似合うかな?」

 普段は機能性を重視してばかりいるから、装飾には慣れていない。
 はにかむようにしながら、友人にたずねて。

「――ふふ、リタの顔がよく見える。
 なんか嬉しいな」

 髪に着けたヘアピンに触れながら、つい頬が緩んでしまった。
 

リタ・ラルケ >  
 ふわふわの帽子を外して、渡したヘアピンを着けてくれるのを見て。
 瞳と同じ色が、垂れた前髪をかき分けて。
 迦具楽の笑う顔が、よく見えて。

「はい、とっても似合いますっ。まるで迦具楽のためにあるみたいで」

 自分の前髪に手を伸ばし、そこにある硬い感触を感じます。

「お揃い、ですねっ。えへへ、なんだか嬉しいなっ」

 そう言って、笑みを返します。
 お友達と、プレゼントの交換こ。今日一日で、今までずっと憧れてたこと、たくさんできちゃうっ。

迦具楽 >  
「そんな、大げさだなぁ。
 でも、ありがと!」

 似合うと言われれば当然嬉しい。
 自分のために考えて、選んでくれたのだと思うと、その嬉しさも一入だった。

「もー、リタってばそんな可愛い事言ってると、抱きしめちゃうよ?」

 お揃いだと言って喜ぶ友人は、とても可愛らしい。
 こんなふうに嬉しそうな表情が見れるなら、誘ってよかったと思える。

「でも、まだ一件目だからね。
 そんなにはしゃいでたら、最期まで持たないぞー?」

 そう、まだ一軒の雑貨屋を覗いただけなのだ。
 別のお店も見たいし、友人のおかげで行きたいお店も出来た。

「ほら、お会計したら別のお店にも行ってみよ。
 私もリタのおかげで行きたいお店できたんだ」

 そう言うと、また自然と友人の手を取って。
 

リタ・ラルケ >  
「うぅーっ……。こういうところで抱きしめるのは、その、ちょっと恥ずかしいですよっ」

 嫌ではない、けど。特に今は色々と言った後ということもあって、なんだか照れくさいのです。

「まだまだ全然平気ですっ! えへへ、迦具楽と一緒だしっ」

 だって、何もかもが楽しいんですからっ。
 一緒にお出かけするのも、何がいいかなと悩むのも、色々とお喋りするのもっ!

「そうですね、行きましょうっ! 私も色々なお店、一緒に見て回りたいですっ!」

 差し出されて触れた手を、そっと握って。

迦具楽 >  
「えー、それじゃあ人が少ないところで、ぎゅっとしちゃおうかなーなんちゃって」

 普段の友人も、それはもう可愛らしいのだが。
 今日の可愛さは直球的で、迦具楽もまたついつい可愛がってしまう。
 特に、照れたり恥ずかしがってる姿は、一級品の可愛さだった。

「ふふ、それじゃあいこっか。
 次はさっきのお店行ってー、ちょっと着物とか見に行きたいなー」

 優しく手を握り返すと、友人の道を開けるようにエスコートして歩き出す。
 ちょっとしたプレゼントでこれだけ喜んでもらえるのだ。
 クリスマスプレゼントにはどんな表情を見せてくれるだろうかと、思い浮かべながら。
 

リタ・ラルケ >  
「うーん、それなら……?」

 いやでも、なんとなく恥ずかしいし、だけどぎゅってされるのは嫌じゃないし、と。思考が堂々巡りになって。
 だけれど握り返された手に、そういう気持ちもどこか遠くなっていって。
 そうして二人で、また色々なお店を見に行くのです。

「はいっ。さっきのお店に……着物、ですかっ? あんまり見たことはないけど……面白そうですっ!」

 そして、願わくば。
 この手の届くところで、ずっと、ずっと、一緒にいられますように。

ご案内:「扶桑百貨店 商店街支店エリア/催事場エリア(1~3F)」からリタ・ラルケさんが去りました。
ご案内:「扶桑百貨店 商店街支店エリア/催事場エリア(1~3F)」から迦具楽さんが去りました。