2020/07/10 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 展望温泉「少名の湯」(13F)」にレナードさんが現れました。
レナード > 「……よし。」

ここは混浴。
こんな時間でも、人なんてそりゃあいないものである。
そもそも入浴と言うことを目的に混浴を選ぶのは、家族等の関係にあるか、そういう目的でしかないだろう。
故に人を選ぶ場所でもあり、人目に付かない場所でもある。
だが、少年はここを選んだのだ。

「…もうじき海開き……
 泳ぎに自信があるわけじゃーないけど、練習は必要だし…」

プールなんて学園にもあるだろう。
だが、人目を忍んで練習したい欲があった彼に、大衆の前で泳ぎの練習は堪えられないものがあったのだ。
更に、ここは水着に準じるものを着用することを義務付けられている。この恰好に文句を言われることはない。
彼はそこに目を付けた。

「……それならここで、泳ぎを練習すりゃいいわけだし!!」

そもそも風呂で泳いではいけないという基本原則は無視することにして。

レナード > 持ち場に付く。始めが割と肝心だ。
こういう場所でも自分がその気になればどうとでもなるというもの。
湯船の縁に手を付けた。片足を後ろに下げ、両手で縁を握り込む。
…そのまま前かがみになれば、俗にいうトラックスタートの構えとなる。

眼を瞑る。集中する…
イメージするは岸壁、飛び込む先は大海原。ここは海だし、僕がそう思ったから海なんだし。自分自身にそう言い聞かせた。
…潮の香りが心なしかしてきた気さえする。今しかない…―――

眼を見開いた!
その刹那、後足に置いた重心を前足に移し、前のめりについた勢いに身を委ねるように飛び込んだ!

パッチャァァン―――

激しい水飛沫と共に、平たい何かで水面を叩きつけたような音がした。
…辺りに激しい波を立たせたその爆心地には、ぷかぷかと浮かぶ藻屑…もとい、
壮絶な腹打ちをキメた少年が、水面に浮かぶようにして悶絶していたのだった。

レナード > 「―――ぶっは!!!!
 し、死ぬとこだったし!!」

泡食ったように水面から顔を上げ、はふはふと荒い息遣いで新鮮な空気を取り入れる。
このままパニックになっても本当に溺れ死ぬだけなので、ひとまず縁の辺りへとなんとか辿り着こうと。

「はっ…はっ、あー………いったぁぁい……
 あんなにきれいにお腹を打ち付けるなんて考えてなかったし。
 腹ん中のものが全部出てくるかと思ったし…」

縁に手をかけ、一安心。とはいえ、流石にこの盛大な失敗は厳しいものがある。
本当に、人前でやらなくてよかったと独り言ちるのだった。

「………。」

辺りを見回す。やはり誰もいない。
見られていないことを、まずは安心した。

レナード > 「……ふつーに練習するし。
 とりあえず、誰も来ないうちは何しててもバレるこたーないし。」

たぶん。
ひとまず落ち着いたところで、浴槽内で泳ぎはじめてしまった。
大きな音を立ててバタ足をしてる辺り、泳ぎがうまいとはとても言えたものではないだろう。


…そうして暫くの間、気が済むまで泳いでいたらしい。
店員に怒られたかどうかは、彼のみぞ知る……

ご案内:「扶桑百貨店 展望温泉「少名の湯」(13F)」からレナードさんが去りました。