2019/03/07 のログ
ご案内:「古書店街「瀛洲」」に玖美・E・Aさんが現れました。
■玖美・E・A > 「これだ!……違う。じゃあ……これ!……も、違うかぁ……」
古書店街のど真ん中、迷いに迷い込んだその奥で、一人本の海と格闘する少女。世界有数の富豪アドラスヘルム家の令嬢にして異能力者、しかもその能力は使用を制限されるほど強力極まるもので……と、凄そうな要素をピックアップしてみても、今の玖美は控えめに言ってもただのアホであった。
まず、本来欲しかったはずのコミック本は最新のもので、瀛洲の奥地になど並んでいるはずもない。実際、目の前の本棚はほとんどが大昔の文庫本などである。しかも、
「……何てタイトルだったっけ?」
と、何が欲しかったのかすら忘れる始末だった。しかし、本を見て回るだけで楽しくなりつつあった玖美は、特に思い出そうとすることもなくうろうろと歩き回り始めた。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」に金剛経太郎さんが現れました。
■金剛経太郎 > 「ふむ、ふーむ。……むむむ。」
古書店の立ち並ぶ路地を、独りの少年が歩いていく。
背丈も目方も、何処から見ても小学生然とした少年は、しかしその容姿に不釣り合いな渋面で辺りを見回した。
「歓楽街に抜けるはずだったが……これは完全に迷ったな。
まったく、少しは街に慣れようとした結果が、このザマか。」
情けないああ情けない、と芝居がかった口調で往来で肩を落として。
時折すれ違う人や追い越す人たちは、そんな少年に一瞥をくれるだけで。
■玖美・E・A > 「『イギリス紳士に学ぶカツ丼の秘密』……『過酷!古代バビロニア式ラジオ体操』……うーん、一体どういう本なんだろう……」
気になりはするけど、別に手にとってはみない。そんな奇抜かつ微妙なラインナップの本の数々を横目に、ひとまず書店の一つから外に出る。どうせ休みなのだから時間はあるのだけど、それにしたって限りはある。他の本屋も当たってみよう……と、目的を失っているのにも気づかないままブラブラするはずだったのだけど、
「……ねえねえ君、大丈夫ー?」
と、気がつけば目の前の少年(のように見える人物)に声をかけていた。玖美の体の動きはいつもスローなのだけど、脳の回転はそれに輪をかけて遅い。『困っていそうだ』と思ったときにはもう既に声をかけていた。
■金剛経太郎 > 「む?」
適当に歩いたところで途中でへばるのが目に見えているし、異能を使えば余計な騒ぎになるかもしれず。
打つ手なしだな、と自嘲気味に笑ったところで声を掛けられる。
訝しげに顔を上げれば、一人の少女がこちらを心配している様だった。
(ほぉ……殊勝な者も居たもんだな。今日はツイてるようだ。)
幾人となくスルーされてきたものの、ここに来てようやく声をかけて貰えたことに内心ほっとしつつ、
けふん、と小さく咳払いをすると見た目相応の表情を取り繕う。つまり、極力、子供っぽく。
「僕のこと?えっと……ううん、大丈夫じゃない……かも。
道に迷っちゃったみたいなんだ、お姉さんこのあたりのこと、詳しい?」
我ながらあざと過ぎたか、と反省しつつも、こてん、と首を傾げる。
■玖美・E・A > 「それは大変……ええっと、どこに行きたいとか、ある?」
精一杯力になりたい、という気持ちは確かなもので、少し屈んで目線を合わせることで親身さを示して見せようともしているのだけど、
「……ええっと、あんまり詳しくないかなー……というか、私も現在進行形で、迷ってる……のかもー」
きょろきょろと辺りを見渡してから、誤魔化すようにはにかんだ。実際、今の玖美は世界一頼りにならない道案内人かもしれない。何せ自分の歩いてきた道すら思い出せなくなっているくらいである。
■金剛経太郎 > 「お姉さんも、迷ってるの?」
ええー、と大げさに驚きながら、内心で苦虫を噛み潰している。
ツイてると思った矢先に自分以外の迷子に声を掛けられることなどそう無いのではないか。
(……まあ一人で彷徨うよりはマシか。)
ここは前向きに行こうじゃないか、と自分に言い聞かせ、少年はきゅ、と子供らしさを再び取り繕う。
「じゃ、じゃあ……お姉さんと一緒に居ても良い?
独りだと心細くて……寂しくて。お姉さんも、おんなじでしょ?」
■玖美・E・A > 「えへへ、めんぼくない……」
と、ばつが悪そうに頭をかいて見せる。申し訳ないとは思っているけれど、事態をあまり深刻には捉えていないという感じだ。
「もちろん、私でよかったらどこまででもついてくよー。あ、私は玖美・エルメスティーネ・アドラスヘルム。長いから、玖美でもティニでも好きに呼んでね」
人懐っこく自己紹介すると、握手を求めて手を差し出した。
■金剛経太郎 > 「ううん、大丈夫。僕一人が迷子じゃないって解っただけ、ほっとしたから。」
にっこりと笑顔で首を振りながら、この少女はどうやって今までこの島で生きてきたのかと疑問を抱く。
抜けてるように見えて案外抜け目が無いのかも、と思いながら、差し出された手を握って。
「玖美…エルメスティーネ……う、うん。玖美お姉さんだねっ。
僕はきょーたろー。金剛経太郎。よろしくねっ!」
わーい、と握手した手を上下に振って嬉しさをアピール。
■玖美・E・A > 「きょーたろう君だね、それじゃあよろしくー」
握られた手が上下されるのを微笑ましげに見つめると、今度はその手を左手に握って、
「それじゃあとにもかくにも歩いてみよー。見覚えのある場所に出るかもしれないしね!しゅっぱーつ」
経太郎の手を握ったまま、てくてくと歩き始めた。もちろん方角も何もわかったものではない、完全に適当である。
■金剛経太郎 > 「見覚えのある場所……そもそもこの辺は、島のどの辺りなんですか?」
気付いたら迷い込んでいたのでこちらも皆目見当がつかない。
古本とはいえ本屋が並ぶのだから商店街や学生街の一画なのだろうかと当たりを付ける。
真っ当な答えは端から期待していないが、無言で歩くのも味気ないという理由からの問いだ。
「玖美お姉さんは常世島に来て結構経つの?」
そして今度は普通に雑談目的の問い。
手を繋がれているという気恥ずかしい現実から目を背ける目的もある。
■玖美・E・A > 「え?えーっと、学生街の中のはずだから……島の真ん中らへんか、そのちょっと外れになるのかなぁ……?」
どこが島のどのあたりにあたるとか、玖美はあまり考えたことがなかった。だいたいあのへん、だいたいこっちの方向、でなんとなーく覚えて暮らしている。それで困ったことは……いくらでもあるのだけど、だからそれを改めようともいちいち思っていなくて、
「んー、そんなに長くないかな、半年とか、それくらいー?」
そもそも、自分自身のことでもこの程度の認識である。何かをごまかしてるとかそういうわけではなく、素でこれなのだ。
■金剛経太郎 > 「そう……島の真ん中あたり…。」
となると、と大まかに以前目にした島の地図を頭に思い描く。仮に玖美の予想が合っていれば、やっぱり自分は大幅に道を間違えている事になる。
心中で溜息をこぼしながら、笑顔で玖美へとありがとうございますと言った。
「半年……じゃあ、僕より長く居るんだね!」
経太郎がこの島で目を覚ましたのは、ほんの先月のことだ
それまではずっと意識はゲームの中にあったのだから、事実上この島には来て一ヶ月も経っていない。
島の住人としては、玖美が数ヶ月先輩という事になる。
■玖美・E・A > 「私の方がちょっと先輩だねー、えへへ」
にこにこ笑いながら、責任感のあらわれとでも言うように、繋いだ手を改めてぎゅっと握った。
「とりあえず外に出られればだいたいの道はわかると思うんだけど……あのお店はさっき見たような……違うかな?」
ただやみくもに歩くだけではなく、周囲の風景を確認したり、自分の記憶と照らし合わせたりと精一杯道を探そうとし始める。もちろん、それもあまり頼れたものではないのだけれど。