2020/08/18 のログ
ご案内:「古書店街「瀛洲」」にキッドさんが現れました。
■キッド > 学生通り、古書店街「瀛洲」
少年は本というものが……いや、正確には"キッド"は興味が無かった。
『活字何てクソくらえ』アウトローにはそれが丁度良い。
しかし、融解した心は、独りでにそこへと足が向かった。
少年はこう見えて、それなりに"良い教育"を両親が健在の時に受けてきた。
故に、本当は知識欲は結構ある。
しかし、今回向かった目的は別にあった。
白い煙を口から吐き出し、咥え煙草で歩く少年は
とある店の前の本棚へと足を止めた。
「…………」
本のタイトルはズバリ、『恋する常世学園~常世島デート大全~』
そう、そう言うカップル向けの本である。
迷いなく手に取り、ふ、と鼻で笑って……。
「コレください」
──────購入!
店員がマジかコイツ、みたいな顔をしてたけどきっと気のせいだ。
透けないタイプの紙袋を抱えて、再び本の道へと戻っていく。
白い煙を漂わせ、右へ左へ、視線を移し、再び本を探していた。
■キッド >
仕事上、色んな区画に出歩く事は多い。
とはいえ、今まで恋人何て出来るとは思っていなかったから
そんな場所に興味さえわかなかった。
ここは一つ、彼女を喜ばせるために覚えておいて損は無い。
好きな人に喜んでもらいたいと思うのは、きっと人として当たり前の事だ。
「……後は……外出デートばかりってのも、な……」
此方は風紀で稼げても向こうは学生身分。
二人きりの時に口を出す気は無いが、世知辛い事情もあるはず。
とも成れば……部屋……。
「…………」
いきなり部屋に読んで大丈夫なのか?
色々疑問は浮かぶが、何時か呼ぶかもしれない場所だ。
というか、寮のお隣さんは既に女連れ込んでた気がする。
此処は思い切って向かい合った本は……。
「さて……」
────インテリア!
さて、どれにしようか……。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」にサクヤさんが現れました。
■サクヤ > ちょこちょこっと、インテリアの本に向かい合うキッドの隣に巫女服の子供が立つ。
こちらも真剣に古本を吟味している様子。キッドの姿をあまり気にしていない。
と、キッドがいいなと思って手を伸ばした本の背表紙を
同タイミングで子供も手を伸ばす。
ぶつかる手と手。
「あ……! ご、ごめんなさい……」
そうしてぺこりと謝った。
とたん、積み上がっていた本の一角がバサバサと崩れ落ちる。
「わわわわーーーー!」
慌てて子供は本を拾い始めた。
■キッド >
「…………」
悩む。結構悩む。
あんまり凝っても仕方ないし、シンプルなタイプがベターだろう。
しかし、折角オシャレをするなら格好良くはしたい。
男はそう、カッコつけたがり。顎に指を添え、白い煙を吐きだしながら悩む悩む。
ふと、別の客が来たようなので横目で見やった。少女の様だ。
やはり、女子と言うのはインテリアにもこだわるんだろうか?
「……よし」
これにするか。伸ばした手と手。偶然は重なる。
少年の堅い手と、少女の小さな手がぶつかった。
「おっと、悪い……、……」
平謝りと同時に、本が一斉に崩れた。
あーあー、と言わんばかりに帽子を目深に被り、しゃがみ込んだ。
「手伝うよ、お嬢さん。アンタも災難だな?
今日のラッキーアイテムを手にする前に不幸に出会うなんてな」
サクヤに目線を合わせるようにジョークを一つ。
ラッキーアイテム事、インテリア本を適当に手にとって見せつけ
崩れた本を拾い上げるのを手伝い始めた。
■サクヤ > お互い真剣に本を選んでいたのが災いしたのだろう。
ぶつかった手がちょっとのバランスで成り立っていた本の一角を崩し、
本の洪水か、雪崩が起こっていた。
軽いジョークとともに一緒に拾ってくれるキッドに恐縮しながら
「ありがとうございます……」
と、微笑んだ。
今日のラッキーアイテム? 『モテる!おしゃれなインテリア~コスパ最高!編~』
をキッドが拾い上げたのを見ると、くすりと笑って
「……あ、あの、インテリア、ご興味があるんですか?
誰かを部屋に招く、とか……」
そんな質問を投げかけた。
■キッド >
どういたしまして、と返せば白い煙を上へと吐き出した。
匂いのしない、白い煙が空へと立ち上る。
「ん、ああ…まぁな。お姫様が来るんだ
ちょいと、煌びやかにしてやらないとな?」
ニヤリと口角を上げて口から述べるのは何とも歯が浮くキザったらしい台詞。
そんな台詞とは裏腹に結構真面目なのか
ちゃんと崩れた本は大きな手で丁寧に持ち上げ戻していき
キチッと埃を払って積み上げておいた。
「そう言うアンタもそう言う趣味かい?ホラ、アンタのラッキーアイテムだ」
『モテる!おしゃれなインテリア~コスパ最高!編~』をサクヤへと差し出した。
■サクヤ > 「おひめさま……それはそれは、ええと常世島に一国の皇太子をお招きするのは
公式の手続きが大変そうですが……もしかしてそれはあなたも高貴な身分の方でしょうか?」
キッドの言う”お姫様”の意味をそのままに取り違える。
なんせここは常世学園、異世界のお姫様だって門から転移してきたらやってくる可能性があるのだ。
本を大事に丁寧に扱う彼の姿勢に、優しい人なのだなと分析すると
差し出された本を丁寧に断ってお返しする。
「いえ、サクヤは……主治医に自室があまりに簡素だからなにか飾り付けをなさいと言われたので
その勉強のためにインテリアの本を探しに来ました。
サクヤは別の本を選びますから、どうぞお気になさらず……ええと、」
相手の名前を呼ぼうとしてまだ自己紹介されていなかった。
困ったようにじっとキッドの顔を見つめる。
■キッド >
「おっと……」
まさか真に受けられてしまった。
如何やら大層真面目な少女の様だ。
サクヤの言葉に軽く肩を竦め、煙草を手に取って口から離す。
「生憎、そこまで堅苦しい事はしないさ、お嬢さん。
まぁ、俺にとっての"プリンセス"って事さ。他から見りゃ、普通の一般生徒。
……要するに、女を呼ぶために勉強中って事」
ヘラヘラと笑いながら言ってみたはいいものの、これは中々恥ずかしい。
ちょっと耳元が熱い気もする。此れは良くないな。
いい終えればゴホン、と軽く咳ばらいをしてキャップを目深に被った。
「主治医?アンタ、病気でも持ってんのかい?ああ、俺はキッドだ」
軽く名乗るも、差し出した本は引っ込めない。
「ハハ、言ったろ?アンタのラッキーアイテムだ。俺が持ってても意味はねェ。
それに、コイツもアンタの所に行きたいってさ。アンタが買ってやりなよ」
■サクヤ > キッドの話す言葉の意味を噛み砕いて理解し、
自分の勘違いだったことを納得するとみるみるうちに顔が赤らむ。
「し、しつれいしました……。それは、えええと、あなたにとっての”おひめさま”
ですから、その、こここ恋人さん……なのですね……」
自分の勘違いを恥じるだけでなく、キッドが誰かとそういう関係であることに
ぽぅっと浮ついて頬を染めた。
言ったキッドもちょっと恥ずかしそうなので、なんだか申し訳ない気分。
こちらの体調を気にしてくれるキッドに、慌てて首を横に振った。
「いえ、サクヤの体調は万全です。どのような機能の不全もありません。
……申し遅れました、ぼく、祭祀局員のサクヤと申します。
キッドさん……、かわいらしいお名前ですね。
サクヤは祭祀局の”備品”なので、不全がないよう常に主治医に診ていただいている、というだけです。
ご心配おかけしてすみません、ありがとうございます」
それから、本を引っ込めないキッドと、本を交互に見て、申し訳無さそうに受け取った。
「……ありがとうございます。では、この本はサクヤが買います。
もし、お邪魔じゃなければキッドさんのご本選びをお手伝いしてもよろしいでしょうか?」
■キッド >
「ンッ!?」
"恋人"。
間違いではない。とどのつまり"恋人"だ。
だが、どれだけ取り繕おうと16歳の少年、思春期真っ盛り。
ストレートで言われた途端、思わず煙草落としそうになるほどに動揺した。
折角隠そうとした顔もすっかり赤く、やれやれ、と首を振って溜息を吐いた。
「あー、まぁ、そうだな……。悪いかよ、初めての恋人なんだよ」
ちょっとぶっきらぼうに言い放ってしまった。
男は照れるとそんなものだ。
煙草を咥え直し、落ち着くために煙を思いきり吸い上げた。
「────ゲホッ!」
……むせた。全然落ち着けてない!
気を取り直して、煙草を咥え直す。
「アンタはサクヤで、祭祀局と言うと……あのうさん臭い連中か」
所謂呪い師めいた連中の集まり。
この混沌とした世界においても、魔術などに疎いキッドにとっては
異能学会の連中宜しく、"胡散臭く"見えるらしい。
そして、続く言葉に眉を顰めた。
「"備品"、ねェ……」
偶然にも同じ言葉をつい最近聞いた。
同じ意味合いかはさておき、その言葉にいい思い出は無い。
本に関しては適当に右手をひらひらとさせて応えた。気にしてないよ、の意だ。
「ソイツは構わねェが、選びながらでいいからアンタの事を聞いても良いか?
よっぽどタチの悪いジョークでなきゃ、"備品"なんて自己紹介はしないんだぜ?ありゃ、どういう意味だ?」
早速単刀直入に尋ねる。
「……それと、男に"カワイイ"はやめろ。せめて、"カッコいい"だろ?」
……その辺は気にする。まだまだ子どもだからね!
■サクヤ > 「い、いえ……!素敵なことだと思います……!
サクヤは恋心のなんたるかを未だに知りません。
人を好きになるということはどういうことなのか、経験できるものなら、してみたい……。
キッドさんはそれをすでに知っているのです。とても尊いことだと思います。
人を初めて好きになる意味、愛の意味……」
自分の胸に両手を当てる仕草は、恋に恋する子供のようで
大仰な言い回しだが、普通にキッドが付き合っている人がいることに肯定的な笑みを浮かべた。
「はい、祭祀局をご存知ですか? 胡散臭い……そうですね。
対外的な評価としては間違っていません」
”大変容”以降、魔術や異能が表に出てきたとは言え
まだまだそれに対する評価は芳しくない。
よくわからないものを人々が畏怖して遠巻きに見るのは当然の反応である。
それから、キッドが引っかかる、”備品”の意味について至極真面目に返答する。
「はい、わかりました。
”備品”はそのままの意味です。サクヤは過去在籍していた生徒のクローン体です。
常世学園におけるクローンの扱いに関しては未だに議論の最中であるために
一時的に”備品”として据え置いておくことで余計な議論に巻き込まれないようにしています。
あ、でも、備品といっても生徒・教師と変わらない人権や権利を付与されていますから
特に不便などは感じていないんですよ? 扱いに関しても疑問はありません」
なんとなくのフォロー。
「……そう、ですね。サクヤも”かわいい”よりは”かっこいい”が嬉しいと感じます。
では、訂正して、キッドさんは”かっこいい”です」
ふんわりと笑う。
■キッド >
「素敵、ねェ。まァその通りだとは思うがね……。
俺も、そうだって肯定できるほど"恋愛"って意味じゃぁ何も言えねェけどな」
まだまだ恋愛初心者だ。
それに、自分のあの告白は"別れの言葉"のつもりだった。
強引に好きな相手から迫られて、隣にいる事をお互いに願った。
多分これはレアケースだ。彼女に何か言える程でも無い。
ただ……。
「ただ、なんだ。"愛"ってだけなら、色々種類があるんだぜ?
女を愛するを以外にも、親愛とかな?アンタも気に入ってるダチとかいねェのかい?」
人を愛するのは尊い、それは間違いがない。
だが、それは別に恋愛だけにとどまらない。
身近なものへの愛もまた、尊いものだとキッドは知っている。
ふ、と笑みを浮かべて、キャップの奥の碧眼はサクヤを見る。穏やかな視線だ。
「仕事上な、詳しくはない。俺ァ、一応風紀委員だからな」
仕事の関係上、学園内の組織は名前位は知っている。
尤も、キッドは特に興味は無いので、本当に表面上しか知らなかった。
そして、なんの躊躇もなく意味を話し始めるサクヤの言葉に、眉を顰めた。
「……成る程、ね」
この21世紀、多くの技術が発展した中でクローン技術は珍しい話じゃない。
ただ、サクヤ自身の言うように未だに人間のクローンには問題が多い。
やはり、やり玉に挙げるのは"人権問題"だろうか。
詳しい訳でも無いが、キッドも懐疑的だ。
目の前の少女がクローンなんて、微塵も見えない。
それは過去在籍した少女、つまり彼女の元を知らないからこそ言える。
ただ、此の場にはキッドのみ。だからこそ、自分の意見を言えば、こうだ。
白い煙を吐きだし、首を振った。
「祭祀局の連中はしらねェが、"備品"って言うのは止めときな。
お前さんは別にモノじゃねェんだ。俺ァ、クローンなんてモンは良く知らねェが
そんなモンに興味はねェ。俺から見りゃァ、お前さんも"ただの女の子"だ。
だから、"備品"って言い方は止めときな。他の連中に言ってんなら、猶更な」
彼女は個人である。元の人間なんて知った事じゃない。
色々複雑そうな事情だが、キッドから見れば"クソくらえ"だ。
ニヤリ、と口角を吊り上げれば、視線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「せっかくだ、俺と"ダチ"になんねェか?」
■サクヤ > 「ふふ、キッドさんはこれから、ということでしょうか?
好きな人とともに居られる時間はとても甘く楽しいものと聞きます。
素敵な時間を過ごされてくだされば、サクヤも嬉しく思います」
キッドがどのように恋仲になったとしても素敵な未来を歩んでいるのなら
それを応援するのは当然であるという態度でにっこり笑う。
「……サクヤは最近になって祭祀局員に配属されたので友達はまだ、全然です。
愛にも色々ある……はい、友愛、敬愛、などなどあげれば暇がありません。
うーん……サクヤにある愛は……、猫さんに対しての、愛でしょうか」
頬に手を当ててそんなことをのたまう。
愛玩もまた立派な愛かも知れないが、どうにもピントがずれているかも知れない。
「そうでしたか、風紀委員のかただったんですね。
いつもお勤めお疲れさまです」
ぺこりと頭を下げ、キッドが眉をひそめるさまを不思議そうに見つめた。
白い煙を吐き出して自分の意見を述べるキッドにぱちぱちとまばたきする。
それから、困ったように考え込んで
「でも、サクヤが”備品”であることは本当のことですから……
あ、でもキッドさんがご不快に思われるのならやめておきます。
……ええと、それからサクヤは”ただの女の子”、ではなくて……
この体は、両方の性別の特性を持っています。
ですから、”ただの女の子”とは違うと……思います」
自分の体のことを告げるのはちょっと恥ずかしいので、小さく声を潜めて
しかし、キッドが友達にならないかと言ってくれれば戸惑いと嬉しそうな顔を見せて
「よろしいのでしょうか……、サクヤは正規の学生ではありませんけれども……。
でもキッドさんが問題がないとお考えでしたら、ぜひ友達になりましょう!」
そう言って右手を差し出した。握手のつもりである。
■キッド >
「そりゃ、間違いないな。これからさ、俺もお前さんも。
ハハ、まさに"猫かわいがり"って奴かい?なぁに
お前さんもそのうちもっと色々知るさ。まずは、友愛からってな?」
くつくつと喉を鳴らして笑い乍ら冗談を一つ。
彼女の発言の端々に見える"ぎこちなさ"。
無機質さと言い換えるべきか。
それは、彼女が"作られた"故か。
今一つキッド自身もその辺りは、彼女の出生を考えれば複雑かもしれないが
彼女自身に悲観もなければ、それを気にするだけ野暮と言うもの。
だから、お互い"これから"だ。
「それが本当でも、お前さん自身は"サクヤ"だ。"備品"じゃねェ。
……飽く迄俺個人の感想だが……アー、まァ、成る程?」
そう言う所いわれると思わなかったなァ、とちょっと歯切れが悪くなった。
成る程、つまり"そう言う事"か。クローン作った奴は余程悪趣味だな。
或いは元の生徒がそういうのだろうか。まぁ、ともかくとして
キッドも、気を取り直して咳払い。
「まぁ、それはそれ。アンタが自分も女と思ってりゃ
そんなモンは"個性"みたいなモンさ。気にするンな」
気にしてるかは知らないけどな、と付け加えてわざとらしく肩を竦めた。
これだけ色々ごちゃ混ぜな時代だ。
それ位個性と言い切る位の度量をキッドは持っている。
差し出された手を一瞥すれば、それこそ鼻で笑った。
「俺は初めから、オールオッケーだよ」
そう言えば自らのキャップを外し、その可愛らしい頭にかぶせた。
大きさ的にぶかぶかで、視界が遮られてしまうかもしれない。
それでも構わずキッドは白い煙を吐きだし、歩き始める。
そのまま振り替える事無く立ち去っていくだろう。
■キッド >
その先で────────。
「……あ、買い物……まぁいいか……」
カッコつける事を重視して、うっかり本を買いそびれた。
まぁいいか。少なくとも、前の自分からは考えられない台詞のオンパレードだ。
特に、"正規の学生"ではない。あの台詞、ちょっと聞き流してしまったが
前の自分なら恐らく……。
「……ふ」
そんな自分を鼻で笑った。
満足げな顔だった。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」からキッドさんが去りました。