2019/03/13 のログ
ご案内:「常世公園」に金剛経太郎さんが現れました。
金剛経太郎 > 「うう……ぐぬぬ。
 よもやここまで体力が無いとは。」

昼下がりの公園のベンチ。性も根も尽き果てた金剛経太郎がぐったりと横たわっている。
体力の向上を目標に掲げ、ウォーキングから始めようと決意したは良いものの、結果は散々であった。

「伊達や酔狂で10年も寝たきりだった肉体ではないということか……がくっ。」

体力が予想以上に無い。その現実を嫌と言うほど思い知らされた経太郎は、もういっそこのまま公園の土になろうかとまで考えていた。

ご案内:「常世公園」に玖弥瑞さんが現れました。
玖弥瑞 > 散歩のために常世公園を訪れた玖弥瑞。
昼下がりという時間帯もあって、公園には多くの小さな人影が見えることだろう。
まだまだ寒い時期だろうが、島民の子供たちは遊具やら広場やらで元気よくはしゃぎまわっている。

……そんな中で、ひとり、ベンチにぐったりと横たわる経太郎の姿を見つけると。
狐耳狐尾、スク水姿という異様な出で立ちの童女が、そちらに歩み寄ってくる。

「なんじゃお主、こんな天気の良い日に遊び回らずにベンチで寝とるとは。
 子供じゃったら昼間ぐらい元気に遊ばんかぇ? それとも寝不足ってやつか? くふふ」

ベンチの背の側から少年を見下ろし、微笑みながらそう揶揄する。

金剛経太郎 > 「指一本でも動かすの怠い……」

肉体のある生活というのはこんなにもしんどいものなのか。
周りの子供たちはよくもまああんな風に動けるものだ、と感心しつつ春の日差しを受けていたのだが、

「……ううん?
 えっと、……ああまあ、寝不足っつーのかな。体力不足?」

周囲の子供たちと違ってスタミナの上限値がとても低い。
その事をどう説明しようかと考えながら、声のした方を振り返れば。

「………あぁ?」

珍妙な格好の少女……が居た。

玖弥瑞 > 「はっ、体力不足とな。妾にはお主は至って健康そうに見えるがの……いや、ちょいと細いか?
 まぁこの島の住民はいろいろ事情持ちも多いし、お主にもそうやってヘバってる理由があるんじゃろが…」

浮浪者めいてだらしなくベンチに伸びる少年を、訝しむように見下ろしつつも。
玖弥瑞は視線1つ動かさず脳内で『通信』を行い、自分がアクセスできる範囲での生徒名簿を紐解く。
この少年をどこかで見たことあるか、何かしら『体力不足』の事情を持つ生徒がいたか。
………その程度のクエリでは、すぐには見つからないけれど。

「……あぁ? とは何じゃ。ん、妾のカッコが気になったのかぇ?
 妾は異邦人ではないぞ、妖怪じゃ。名は玖弥瑞、一応は教師ということになっておる。
 お主は……ここの学園の生徒じゃよな?」

検索を続けつつ、相手の素っ頓狂な反応にも言葉を返す。

金剛経太郎 > 「そういう事だ。
 こちらにも何かと事情がある。何せほんの数週間前まで10年寝たきりだった身の上だ。」

体力不足にもなろうってもんだ、と自嘲を浮かべながら答える。
別段自分の身の上を隠すつもりは更々無い。
隠したところでいずれはバレる事である。それが教師であれば尚の事。

「って、待て。教師……?
 常世学園の、教師。つまりは先生って事だな?

 ………。」

しばし黙考。

「ぼ、ぼく金剛経太郎っていいまぁ~す。
 えっとぉ、先月入学しましたぁ。よろしくお願いしまぁす。」

玖弥瑞 > 「……じゅ、10年寝たきりとな。そいつぁ大した事情じゃ。
 なれば今は体力を取り戻すためのリハビリ中ということじゃな。それは……失礼なことを言っちまったの」

そのキーワードで、ようやく検索に該当する生徒が1件。
寝たきりの果てに復活し、何かしらの異能も発現させているという。顛末や異能の詳細はよくわからないが。
まぁ、こうして公園でダラリと寝転がってるような少年である、きっと危険はあるまい。

「……ん、な、何じゃ経太郎。いきなりしおらしい態度になりおって。
 礼儀正しいのは結構じゃが、急にそうなるとなんか……気持ち悪いぞ?」

己が教師であるという自己紹介の後、いきなり態度を軟化させた経太郎には、はっきりと苦言を呈す。

「妾じゃって今年からここに転属して、来年度から本格的に教師始める身の上じゃ。
 お主と同じ新顔であることには変わらんよ。無理して繕わんでもええよ」

口の端を釣り上がらせ、ニヒルな笑みを向けながら、経太郎に諭す。
しかしその顔はすぐに真顔に戻り、蒼の瞳でじっとベンチの上の少年を見つめながら、小声で言葉を続ける。

「……で、じゃ。お主、なにか異能を持っとるんじゃろ?
 妾にだけこっそり見せてくれんかの? いや、ただちょいと気になっちまっただけなんじゃが……」

金剛経太郎 > 「そうなんですぅ
 ああ、気にしないでください、知らなかったんだからしょうがない……

 ……気持ち悪い?
 ………まあ。だろうな。やっぱ後出しで見た目相応に振る舞うのは無理があるな。」

小さく息を吐いて、取り繕った子供らしさを振り払う。
そもそもベンチに横たわったままだったので、飽く迄上っ面のみ引っ被っただけだったわけだが。

「一応、先生相手にゃ素直な少年で通してるんでね。
 この事は他言無用でお願いしますよ先生。

 ああ、じゃあ異能を見せるのと引き換えに、誰にも言わないってことで。
 それがいい、そうしましょう。はい決まり。」

一方的に決めるが早いか、無造作に腕だけをベンチの前へ向けてかざす。

「さあ出て来い──【騎士】よ。」

経太郎の呼び声に応じる様に、ベンチの前に黒い甲冑の騎士が姿を現す。

玖弥瑞 > 「見た目相応? ふん、お主くらいの背格好で十分大人びてる奴もここにはいっぱいいるじゃろ。
 飾っても大抵の大人にはすぐバレるし、あまり良い印象は抱かれぬことが多いぞ。
 自然でいるのがええ、と忠告しておこう。まー、ケースバイケースじゃがの」

すぐに虚飾の振る舞いを止めて元のぶっきらぼうに戻る経太郎に、玖弥瑞はホッとしたような笑みでこう諭す。
……とはいえ、玖弥瑞も見た目相応とは言えない老人口調だけど。
これはもはや、こういう『設定』なのだから仕方がない。この少年のように繕うことすら玖弥瑞には難しい。

「……む、異能を見せてくれるか! 飲み込みが早くて助かるのう!
 もちろん他言はせぬ、お主の力も、力を見せてくれたということもな。じゃあ早速………むっ!」

玖弥瑞の誘いに経太郎が乗ってくれると、玖弥瑞は『年相応』の無邪気な笑みを浮かべてはしゃぐ。
そして少年をまじまじと見つめながら次の一手を待ちわびる……が。
彼が見せた行動は、ただ【騎士】とやらを呼び出す言葉と、腕の最小限の動作だけ。
ただそれだけで、いつの間にか2人の傍らに新たな人影が現れると、一瞬びくりと肩を震わせ、そちらに視線を移す。

「……な、なんじゃこれは。【騎士】……?
 しかし中世のそれと似ておるが、ところどころ違うような……創作物に近いデザインに見える。
 まるでこれは、ゲームのキャラクター……『アバター』のようじゃな……むむむ」

騎士である以上、武器も帯びているだろうし、腕っぷしも立つだろう。それが動くのなら、であるが。
玖弥瑞は警戒して不用意に近づくことはせず、しかしながらその鎧姿をきょろきょろと観察している。

「これは、お主が呼び出したんじゃな、経太郎? 召喚の術というわけかぇ……ええのう……」

金剛経太郎 > 「言ったでしょう、10年寝たきりだった。って。
 この体は、10年間、碌に成長せず眠りつづけたわけだ。
 つまり、本来ならもう10歳くらい老けてなきゃならないと。
 でも、こんな子供がヒネた態度で喋っても、そっちの方が印象としては悪くなるってもんでしょうよ。」

まあ自然体で居る方が楽な時はそうしますけどね、と経太郎は締め括る。
無邪気な子供のフリをしてる方が都合が良い事も、儘あるのだ。例えば、……まあ、色々だ。

「ついでに言えば、もちろん動かせるに決まってる。
 置物を呼び出す異能なんてわざわざすき好んで見せるもんでも無いだろう。
 こいつは、俺が10年間寝てる間に、せっせとレべリングして育て上げた正真正銘のゲームのアバター。
 文字通り、俺の分身ってわけですよ。他のジョブも幾つかあるんすけどね。」

この装備まで育てるの大変だったなあ、と遠い目で黒騎士を見つめる。
現実時間にして2年半の歳月を費やしたのだ。不眠不休で。眠るための体も持っていなかったし。

玖弥瑞 > 「ほほー……10年ずっと育ててたゲームの……なるほど。ふむ……」

なるほど、本性を表せばこの経太郎という少年、自分の言うとおりに『ヒネた態度』が板についているようだ。
所々にトゲがある物言いと説明を聞きながらも、しかし玖弥瑞は召喚された騎士の方に興味津々。
彼の口利きについて咎める気配もなく、まじまじとその召喚物の造形や仕草に目を向けている。

「正真正銘のアバターかぇ。そいつぁ……妾と『似ておる』のぅ。
 もしかすると、原理やきっかけも……いや、そこまではわからんか。うん、なんでもないよ。
 経太郎、見せてくれてありがとの。妾はまだここで日が浅くての、異能というものも数回しか見たことがない」

ベンチの上の少年に向き直ると、玖弥瑞は耳をピコッと動かしながら軽く会釈し、微笑みを向けた。

「……くふふっ。かように屈強なアバターがおっても、お主自身にも体力があるに越したことはなかろうよな。
 何なら、このアバターに訓練をつけてもらうっつーのはどうかね?
 さまざまなジョブがあるんなら、お主自身の多方面への成長も望めよう。どうかね?」

ベンチの傍らに立つ玖弥瑞の背後から、長大な尻尾が鎌首をもたげる。
相変わらずぐったりと横になっている少年の脚の上にふわりと覆いかぶさり、コソコソとくすぐってくる。