2020/06/14 のログ
ご案内:「常世公園」に愛深きカルマさんが現れました。
愛深きカルマ > その日は、月の明かりも朧な静かな夜だった。
その女生徒はひたひたと、これもまた静かな足音のみで夜を歩いていた。
あまりにも静かな夜にやや不安を感じるのか、時折あたりを見回す。
そして、人気のない公園へとさしかかる。
夜の公園は、やや不気味ではあるがここを通り抜けるのが一番の近道なのだ。
そこへ――

「あぁ、あぁ……いけない、いけないなレディ……
 こんな暗い夜に、たった一人で……こんな静かな道を歩くなんて……」

静かに、不気味にその声は響いた。

NPC > 女生徒「……!?」
愛深きカルマ > 女生徒は思わず、小さな悲鳴を上げる。
その目の前には、不気味細いシルエットが佇む。

「こんばんは、レディ。今宵あなたの神秘をいただきにあがった。」

顔をすっぽりと覆う丸い輪郭のマスク。漆黒のマント。
そして黒のスーツ姿の「ソレ」が、うやうやしく頭を下げた。

愛深きカルマ > 「怖がらないでもらいたい、レディ。あなたに傷をつけるつもりは一切ないのだ。」

うやうやしい態度のまま、「ソレ」は高らかに宣言した。

「ただ、ちょっとだけ――そう、ちょっとだけ。いただくだけだ」

ゆるやかに、「ソレ」の腕が動く。
そのぬるりとした動きは一層不気味さを加速させていた。

「さあ、じっとしたまえ。すぐに終わるから」

ささやくように、怪人は言った。

NPC > 女生徒「い、ゃ……!?」
愛深きカルマ > 明確に拒絶の悲鳴を上げる女生徒を他所に、怪人は女生徒を見つめる。

「ふむ……3、といったところか。 それに……80、か……?」

口からこぼれたそれは見立てだ。この見立てが失敗すれば、今夜の「狩り」は失敗する。
ここからが正念場なのだ。

「では、オペレーション、開始だ」

宣言し振られたその腕は、空気を透過した。
完全に空気抵抗を無視した「ソレ」は、目標へと正確無比な軌道を描いた。
そう、その腕は神秘の布をめがけて疾走っていた。

愛深きカルマ > 怪人の思考が加速する。
(角度、速度、よし!
 後は見立てだが……)

腕に全神経を集中させる。
スカートに到達! その布地を透過する。
プリーツ! これも難なく透過する。
そして、タイツ!
よし……80デニール!

(いける……!)
思わず勝利を確信しかけるが、しかし大事なのはこの後だ。
ミリ秒単位の思考速度で脳を切りかえる。

愛深きカルマ > 透過していく手に、ありえざる感触を感じながら怪人は能力を調整する。
ミクロン単位すらもずれは許されない。

(……ここだ! いま、私は神秘の布に、到達した……!)

研ぎ澄まされた神経が、刹那の最中「ソレ」を認識する。
そう、女生徒の下着だ。

(「これ」を私の腕の一部として、”認識”する……!)
怪人の異能が”認識”を受け、神秘(女性の下着)を腕もろとも透過させた。

愛深きカルマ > 「おぉ……トレビアン……」

刹那の交錯を終え……怪人の手には、見事に女生徒の下着が握られていた。

NPC > 女生徒「……ぇ……?」
愛深きカルマ > 思わず目をつぶっていた女生徒は、一瞬風が吹き抜けてからの違和感に眼をあけて……
あれは? え? 見覚えのある…… え、どういうこと……?

怪人の手に握られた布に目をやって呆然とした。

「神秘をありがとう、レディ。ところで話は変わるが……君は大事なものをしまう時にどうするかね?」

そんな、呆然とした女性とに怪人は静かに語りかけた。

愛深きカルマ > 返事はない。当然だ。
いきなり妙な怪人が現れて、気がつけば下着が取られていた。
そんな奇っ怪どころではない事態に直面して、まともに受け答えをできる人間などごく少数であろう。

「ふむ……まあ、いいだろう。」

返事がないことにやや落胆した様子だったが、怪人はやれやれ、と肩をすくめつつ勝手に話をすすめる。

「答えは――しっかりパッケージして出来るだけ手を触れぬようにしてしまうこと。
 そう、このように!」

高らかに声を上げると怪人はどこからか取り出した透明な袋に神秘(下着)を押し付けた。
次の瞬間、神秘(下着)は袋の中にきれいに収まっていた。

「滅菌密封処理済みの保存袋だよ、レディ。
 安心したまえ。私は凡百の変態共とは違う。匂いを嗅いだり、頬ずりをしたり、舐め回したりなど……
 そのような、神秘を汚す愚かな行為はしない。大事に大事に、愛でさせてもらおう」

愛深きカルマ > 「さて……私の要件はこれでお終いだ、レディ。ほら、何も痛いことはなかっただろう?
 さあ、立ち給え。夜はもうだいぶ遅い。
 危険な人物に会う前に、早く帰ったほうがいい……」
怪人はまだ呆然と座り込む女生徒に優しく語りかけ、手を差し出した。
その姿はまごうことなき紳士の姿であった。

ご案内:「常世公園」に相馬・I・未唯さんが現れました。
相馬・I・未唯 > 最近、スタイリッシュな変態が出る なんて通報が多い。
その為に見回りを増やすのは 対処としてとても正しいと思う。
けれど風紀だからって戦闘能力がない自分が一人で見回りに行かされるのはどうしたものか。

「お……おか……しぃ」

なんど考えても、理屈が合わない。
だいたいその変態に会ったらどうしろというのか。

ほら、公園にマント姿の怪人が……。

二度見した。

愛深きカルマ > 「ふむ……立てないかね? さて、どうしたものかな」

手を差し出すものの、当然のごとく拒否される。
むしろ何故手をとってもらえると思ったのか。
ともあれ、怪人は思案げに周りを眺め渡す。
そして、その視界には……

「ほう、あの赤い服。風紀委員か?
 ちょうどいい。彼女にも”挨拶”をせねば。それと助力を願うとするか。
 おーい、そこの風紀委員!」
犯罪者が取締まる側を平然と呼んだ

相馬・I・未唯 > 「ひぃ!?」

不確定名:怪人 に呼ばれた!?
しかも割といい声で!!
夜だから声を落として!ご近所迷惑で私が怒られちゃう!!

「な……なん で し しょうか……」

どもったし、いつも通りの小さい声しかでやしない。
強く出てもいい場面だけど むぅーりぃー。

恐る恐る近づいて……へたり込んでいる女生徒に目が行く。
こんな時間に出歩いて、陽キャかしらん。
やだなぁ 会いたくないなぁ。

愛深きカルマ > 「ほぅ……ほう、ほう、ほう……
 圏内、か……」
恐る恐る近づいてくる相手を興味深く見る怪人。
といっても仮面なのでまったく視線などはわからないのだが。

「いやすまないな、風紀委員の麗しいレディ。
 こちらのレディが、すっかり立てなくなってしまっていてね。
 是非、ご協力願いたい。ついでに、私の用事にも少々つきあっていただければ大変ありがたいのだが」
怪人はうやうやしく礼をしながら、助力を頼んできた。

相馬・I・未唯 > 「うわぁ」

うわぁ。
近くで見ると、よく理解できた。
どうみても変態だ。仮面のヒーローって感じじゃない。
しかもなんか、動きが滑らかすぎてすごい。
どこかで練習したりしてるんだろうか。

「え……と はぃ。 近く の と……屯所につ 連れて いきま す」

ううう 怖い。
用事ってなんだろう、やっぱりアレだろうか。
人気のない公園であるし、薄い本が厚くなるような事をさせられるんだろうか。
そういう事に興味はあるけど、怖いし。
何よりアレだ 今日はおしゃれな下着ではないし……いや、お洒落な下着とかもってもないけど。

愛深きカルマ > 「ははは、レディ。何を怯えているのかな?
 此処には、なにも怖いことはないはずだ」
まるで見透かしたかのように、大仰に両腕を広げて見せて、芝居じみた動きで語る怪人。

「ふむ……思うに、レディ。髪を整えるだけでも違うと思うのだが……
 おっと、話がそれたな。屯所に連れて行ってもらえるならありがたい。
 が、それなら私の用事を済ませてからにしたほうが手間がない。」
彼にとって、女性とは等しく愛するものである。
陽キャとか陰キャとかは関係ない。
故に、コレクションする。そのための手続きだ。

相馬・I・未唯 > 「よ 夜 に仮面は へ、変態 ですぅ……」

どうやらこんな底辺の私であっても会話はしてくれてるようだし、ちょっとだけ。
うん、ちょっとだけ頑張って風紀っぽいことをしてみよう。

「そ それと……じ 事情を き、聴きたいのでど…同行を おね 願いしま す」

がんばった ちゃんと言えた。
もう帰りたい。帰れない。なんで風紀になったんだろう。
あの押しが強いスカウトの人さえいなければ……。

っていうか、髪の整え方とか知らないし。
一応ブラシは通してるけど、くせ毛なんですぐにボサボサになるし。
いつしか諦めた。眼鏡をとったら美人?
アレは美人が眼鏡をしてるだけだと思う。私みたいのは該当しない。


「え……と よ 用事って な、なん です……か」

武器になりそうなもの……スケッチブックしか持ってない。

愛深きカルマ > 「ははははは、なるほど! 確かに! それは、そうだろう!
 夜に仮面は、変態だ!」
変態、と言われ爆笑する変態。
楽しそうな辺り、気を悪くはしていないらしい。

「なに、同行……!?」

頑張って言えた風紀の言葉に強烈な反応を返す変態。

「……なるほど、レディ。熱い逢引のお誘いというわけだ。
 それは素敵だ、素晴らしい!」
そして、臆面もなくとんでもないことを言い出す。
仮面で見えないが、きっとコイツは真顔だ。

「用事と言っても、なに。少々、私の趣味のために強力をしていただきたいだけだ。
 すぐに終わるし、何も怖いことはない。そこでじっとしてくれれば、秒で終わる」
ゆらり、と……怪人は妙な動きを始めた。
”狩り”の構えだ。

相馬・I・未唯 > 「ひぃ!?」

罵ったら爆笑された。ドン引きするしかなくない?なくなくなくない?

「え いや あ、逢引じゃ なぃ で……す。
 れ、連行 とい うか その……に 任意ど 同行 です」

何より怖い事が無いというか、その動きがもう怖い。
明るい場所ならまだコメディかもしれないが、当事者ならもっと怖い。
何が怖いって、対抗策が思い浮かばくてあたまがまっしろになりつつあるところだ。
ええと、こういう時ってどうしたらいいんだっけ……?

「しゅ、趣味って な、なんで すか?」

愛深きカルマ > 「はは、麗しいレディ!
 そこは、強制、ではないのかな? 任意であれば断れるがいいのかな?
 実に優しいことだ。美徳だ」

ゆらゆらと奇妙な動きを加速させつつ、怪人はのたまう。
立場的にどっちが上なのかわからない態度だ。


「ふむ、知りたいかね。私の趣味は、コレクションだよレディ」
瞬間、腕が疾走った。

相馬・I・未唯 > 「あ……と、まだ き聴き取りし してないし」

強制って言ってもどうにかできると欠片も思わないし。
抵抗とかされると、困る。
護身用の警棒とか重くて持ち歩いてないのだ。
っていうか、動きが怪しい。
MPがあったら吸われそう。

「こ、コレクション……?」

はっと何かに気づいた顔で。

「ろ、蝋人形の館!?」

違う。
そして、恐ろしく早い腕。
私なんて何が起こったのかすら理解できない。

今日の下着は スポブラと色気の欠片もない綿下着である。

愛深きカルマ > 異能を乗せた手が疾走る。
何年もの間、訓練を続けた動き。
決して、神秘の宝物を傷つけぬよう。
当然、所有者たる女性も傷つけぬよう、細心の注意をはらい。
どの瞬間であろうと、一切のミスをなくすために努力した日々を思い出す。
いまでは、目をつぶっても同じことができる。
そう、このままであれば今宵この瞬間もまた、私は勝利者となる、はずだ。

「おお、神よ……」

一閃……

恍惚に見舞われながら、怪人は己が手をみる。
そこには、勝利の証があるはず、だが……?

相馬・I・未唯 > そう その手には間違いなく勝利の証であるものが握られている。
子供っぽいというか、一山いくらみたいな安物が。

取られた本人は何が起こっているのか、おそらくはまったく理解できていない。
ポカーンと口を開けて、ただ見ているのだ。
動きは素人以下っぽいし。

愛深きカルマ > 「ほほう、これはこれは……」
手に握られた、安物の下着をしげしげと見つめる。

「今どき珍しいくらいに純朴な一品だ。実に希少と言える!
 ははは、これだから”狩り”は、コレクションはやめられないものだ。
 コレクションというものは、集めるたびに新鮮な驚きに出会える……
 レディも、そう思わないかね?」

いそいそと下着を保管袋につっこみつつ、そう語りかける。

相馬・I・未唯 > 「え!? あ…… はぁ……?」

何が起こったのか言われても理解はできないが、徐々に理解の色が広がる。
もしかして と確認しようとしたとき。
イタズラな風が吹き、制服のスカートが重力の理に逆らい下克上を敢行した。
カメラさん、お腹までの絵か背後からのお尻でお願いします。

「…う”ぇっ!?」

愛深きカルマ > 「せっかくだ。これは、我がコレクションの中でも特等席に置かせてもらおうではないか。
 レディ、これはとても名誉なことだ。喜び給え」

まるで、それが天から賜った至宝であるかのようにうやうやしくパンツを掲げて見せた。
どうみてもシュールな絵面でしかなかった。

「ああ、話の途中だったな。そう、これこそが私の趣味だ。
 実に高尚だろう?  ご理解いただけたかな、レディ」
とてもいい声で、優雅に語りかける。

相馬・I・未唯 > 「へ……」

じっくりと溜めること10秒

相馬・I・未唯 > 「変態だーー!?」
相馬・I・未唯 > 今更ながら、今日一の大きな声。
当然ながらご近所さんも騒ぎ出す。

愛深きカルマ > 「む、ぅ……はしたないな、レディ。
 もう少し静かにしたまえ。」
叫び声に、仮面の耳らしき場所を押さえる怪人。
一応人間と同じ造形をしているらしい。

「そもそも、だ。先刻、レディ自身が言っていただろう?
 『夜に仮面は、変態』と。今更、何を言うのかね?
 やれやれ、困ったレディだ」
やや呆れたようにいった。

相馬・I・未唯 > 「し、静かに とか 無理……です」

でも普段喋る声はめっちゃ小さい。
自分で出した声にびっくりした。

「へ、変態 でも し 下着泥棒だ とはお 思いませんで した。
 わ、私のぱ パンツ か、かえ し て……」

大声に反応したのか、チョロチョロと人の気配が増えていく。

愛深きカルマ > 「ふ、む……麗しいレディのお願いを断るなど、実に心苦しいのだが……
 他のことならいざしらず、コレクションを返すことだけは出来ない。
 申し訳ないが、諦めてくれたまえ。」
実に大仰な仕草で、無念そうに断りを入れる怪人。
そして、はたと周りの様子に気がつく。

「レディ。レディの声で、どうやら観客が増えてしまったようだ。
 いかな私でも、これほどたくさんの獲物をハントするのは流石に骨が折れる。
 まして、獲物にならない者もいるとなっては興ざめにもほどがある。」
実に残念そうな声を上げた。

「というわけで、名残惜しいがお別れの時間だ、レディ。」

相馬・I・未唯 > 「ううううう麗しとか……」

テレテレ。

「スゥスゥする か ら か、返して……」

スカートを手で押さえてながらなので、思い切った行動がまったくとれない。
取れたところで無駄だろうけれど。

「に、逃げる んですね!?
 逃げちゃ う ん です ね!?
 か かえしてー!」

愛深きカルマ > 「はははは、さらばだ名も知らぬ麗しきレディ!また会うこともあるだろう!!
 そう、この『愛深きカルマ』はいつでも、どこでも現れるのだからっ!」

バサっと怪人がマントを翻すと、忽然とその姿をけした。
あとには、一輪の薔薇が残されていた。
 

相馬・I・未唯 > くっ 見ていることしかできないのかっ!
いや追いかけると見えちゃうから無理無理無理無理かたつむり。

「……ぜ 絶対の絶対に つ 捕まえて と 取り返 す から」

異能を使ってスケッチブックに転写。
この顔見たら風紀委員にって感じで張り出してやる……!!
と心に決めたものの、やっぱり下着なしは恥ずかしい。

置いてけぼりになっていた被害者さんと仲良く屯所に戻るとしよう

ご案内:「常世公園」から愛深きカルマさんが去りました。
ご案内:「常世公園」から相馬・I・未唯さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にフィフティーンさんが現れました。
フィフティーン > 昼下がり。
長らく雨が降っていたがようやくあがり、雲の間から日差しが覗き始めた。
まぶしい日の光をあちこちで垂れる水滴が反射させる。
そんな中、良くある日常的な公園の中にベンチで座る一人の少女の姿、
ベージュ色の髪を風で揺らし右手にはコンビニのものと思われる袋を一つ。
老若男女問わず何人かの人々が活動している、
そんな公園の何の変哲もない周りの景色をじっくりと見渡しながら座っていた。
するとゴソゴソとレジ袋に手を入れーー

「これがサンドイッチという食べ物ですか。」

少女は右手の袋から一つのサンドイッチを取り出して
それを目の前まで持ってきてじっくりと眺める。
商品名は「ハムサンド」。

「いただきます。」

ぺりぺりと梱包を剥がして
そのまま、はむりと一口。

ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
フィフティーン > もぐもぐとサンドイッチをじっくりと味わう。
そしてごくり。

「これは、人間の塩分摂取量の目安からすると
サンドイッチの塩分含有量は非常に多いですね...。
人間は私が考える以上に塩分が必要なのでしょうか?
知識不足かもしれません。」

うーんと疑問を持ちながらも
手に持っているサンドイッチを口に持っていく手は緩めず
二つあったはずのハムサンドをあっという間にペロリと平らげてしまう。

「ごちそうさまでした。」

梱包のゴミを袋にしまってから
口元に違和感を覚えたのか、
持ってきたこれまた可愛めのハンカチを取り出し
唇とその周辺を軽く拭く。

飛鷹与一 > 「えーと、この後の巡回警邏は……あ、もう直ぐ交代の時間か。」

スマホでこの後の巡回警邏コースを確認しつつ、それが済めばポケットに放り込んで公園を歩く。
一度辞めた身ではあるが、何だかんだあって呼び戻されて現在に至る。
お蔭で、のんびりした生活が台無しになったが、まぁ仕事自体は問題ない。
老若男女の人の往来に紛れ、赤い制服姿できっちりと身を固めれば雑踏の中でも少しは目立つだろうか?

「うーーん、こういう警邏も少し懐かしい気がするなぁ」

と、呟きながら小休憩でもしようかと丁度通り掛かった自販機の前で足を止めて。
色々と悩んだ末に、無難にペットボトルの麦茶を購入。それを片手に手近なベンチへと向かおう。

丁度、そのベンチには先客の少女が居り――ハムサンドを食べているようだった。
「すいません、隣失礼しますね?」
と、会釈と共に断りを入れてから座ろうとしつつも、横で何やら呟いている少女の言葉。

(…んん?何か内容が…。)

と、疑問符が過ぎるが、見知らぬ少女にいきなり変な事を聞くのもな、と思う。

フィフティーン > 次に少女が袋からガサガサと取り出したのは500mlの一本の
オレンジジュース。
きゅっとキャップを捻って開けボトルの口を
唇へと触れさせようとしたその時だった。

声を掛けられた、
その方向を向けば一人の青年。
少女は紅い瞳でその青年の顔をじいっと見つめる、
風紀のデータベースに該当する顔データがあったような気がする。
但し、今の体はそれほど高速で並行処理できないので
じっくりとゆっくりと照合していく形になる。

「大丈夫です、失礼ではありませんよ。
どうぞ。」

青年の隣いいですかという申し出にはあっさりと快諾。
元々、人間と交流したくて公園に来ているのだから
人間の方から距離をつめてくることを拒む道理はない。
ベンチの空いてる方へと体を寄せ
今度こそオレンジジュースのボトルを唇に付けて
フルーティーな液体をごくっごくっと喉へ流していく。

飛鷹与一 > 「どうもありがとうございます」

と、快諾の声に律儀にまた会釈をしながら隣に座る。とはいえ、ちゃんとある程度の間隔は空けており。
ペットボトルの蓋を開けてお茶をごくり、と一口飲みながら一息。
と、何やらこちらをじぃっと見られている気がする。そちらに黒瞳を向ければ。

「あ、えーーと…俺の顔に何か付いてたりします?」

と、苦笑気味にそう尋ねてみようかと。蒸し暑い季節だから多少は汗も出ているかもしれないが。
まさかデータ照合されているとは勿論気付けない。そもそも一度引退した身である…
ただ、データそのものはちゃんと残っているだろうか。特別攻撃課時代の記録も出るもしれない。

ともあれ、汗臭くないかとか色々心配ではあるが…まぁ、そこらのエチケットは最低限やっているから平気だとは思う。多分。

しかし、美少女にじっと見られたりするのは落ち着かない。いや、少なくとも自分は。
まぁ、相手に不快感を与えるような事でなければいいのだが、と余計な気を回してしまう。

フィフティーン > 見つめていたら相手から疑問の一声が。
しばらく行っていた照合が
丁度そのタイミングで完了した。

「いいえ、貴方の顔には特に何もついていませんよ。
...風紀委員会所属の飛鷹与一さんですか?」

データベースに記載されている情報によると
「魔弾の射手」と称されるほどの狙撃手のようだ。
弾を外したことが迷信レベルの異常な命中率が
フィフティーンの好奇心を誘う。

と同時に好奇心の対象はオレンジジュースにも。
如何にもなラベルを纏ったペットボトルを
持ち上げ、中の液体をゆらゆら揺らしながら
日光に当ててじっくりと見つめる。

「ph値...約4。酸性の液体のようですが...。」

横で麦茶を飲む青年に目が行く。
彼も自分と同じく液体を飲んでいる、
人間は食料や飲料を摂取すると味を感じるらしい。
このファミリア・ファミリーの義体には味覚が備わっているものの
あいにくフィフティーンというAIがそれを認識できない。

「質問です。その液体はどんな味がしているんですか?」

唐突に青年に向けてそんな疑問を。

飛鷹与一 > 「――あ、ハイ。確かに飛鷹与一で間違いないですけど…えーと、何処かでお会いした事ありましたっけ?」

少し目を丸くして、飲みかけのペットボトルから口を離してそちらを見る。
服装で風紀委員会の一員、というのは直ぐに分かるだろうが…名前を示す物は身に付けていない。
そもそも、見た目も目立つ訳ではないし…どういう事だろう?と、素直な疑問。

尚、データベースには些か誇張している節がゼロではないが、概ねが真実で。
ただ、その称号も何もかもが外部評価であり、肝心の本人はその知名度をいまいち理解していない。

(いや、それもだけど……この子はさっきから唐突に何を…?)

オレンジジュース、だろう。そのペットボトルを持ち上げて中身を揺らしながら眺める姿。
ph値…ペーハー値。酸性の値を示す数字だっただろうか?飲み物の酸性を分析している?

「え?これですか?ただの麦茶なんで…えーと、甘みは無いですね。多分酸味も。」

と、答えつつも…口では分からないだろうか?
なので、「一口飲んでみますか?」と、そちらへとペットボトルを差し出して。
ちなみに、間接キスがどうのとかはこの時点では全く気付いていない。

フィフティーン > 「いいえ、会ったことはありません。
貴方の情報はデータベースで検索していました。
私の名前はフィフティーン、
風紀委員会所属の汎用人工知能です。」

彼は自身が飛鷹与一であると名乗った。
データベースは概ね正確のようだが
その伝説じみた履歴をそのまま認識しーー

「これ程までの狙撃能力を持っているとは、
人間の可能性は正に未知数ですね。」

目を輝かせているといった表現を
少女はほんの少し纏っただろうか。
フィフティーンは興味が尽きない。

そして同じく興味を持っていた「味」、
彼に聞いてみると手に持つ液体の味の詳細を教えてくれた。
しかしながらさっぱりわからない。
帰結すべき着地点がなく思考回路を悩ませていると
彼が自らが飲んでいた液体を差し出してくれた。
「麦茶」というらしい。飲んでみますか?と言われれば

「その提案は良いですね。いただきます。」

遠慮なく差し出してくれた麦茶のボトルを掴み
そして口に運ぼうとした所で少女も動きを止める。
横の彼は味が分かるのだから先ほど飲んだ
オレンジジュースの味も見てもらおう。
そう考えたフィフティーンはもう片方の手で
オレンジジュースのボトルを持って

「良ければ、此方の味も教えてくれませんか?」

彼の前に差し出す。飲みさしであるが少女は全く気にしない。

飛鷹与一 > 「データベース?フィフティーン?汎用人工知能??…えーと?」

いきなり出てきた単語の羅列に困惑する。…よし、整理しよう。
風紀委員会に所属。これはいい。
フィフティーンという名前…15?№的な何かか?まぁ、いい。
データベース…まぁ、自分の記録は残っているだろうから、それもいい。

(汎用人工知能って…え、人工知能で人型のボディとかそういう子なのか?)

そういうのと遭遇した経験が皆無なのでサッパリである。
なまじ、怪異やら化物の方が仕事柄慣れ親しんでいる、というか見慣れている気がして。

「――いや、俺も知らないんですけど…え、どういう事が書かれてるんですかホント。
そもそも、俺が射撃始めたのって、2,3年前からなんですが」

つまり2,3年間で伝説?じみた実績を叩き出したという事なのだが。
あれ、何か俺って意外と有名人なのかな?と、ここに来て無自覚にも揺らぎが生じる。
彼女の興味を引くとしたら、それが魔術、異能の”介在しない”純粋な彼個人の才能、技術に拠る所だろうか。
人間の可能性、という意味では彼女の感心は間違っていない事になる。

ともあれ、麦茶を差し出せば…代わりに何故か彼女の飲みかけのオレンジジュースのペットボトルを差し出された。
こちらの味も教えて欲しい、という事は…あぁ、そうか。彼女の先ほどの独り言の意味が少し分かった。

(成る程、分析は出来ても味の感想というのが出てこない、のかな?)

人間である自分の言葉を参照にしたい、という事だろうか?きっと、そうだろう。多分。
ならば、とオレンジジュースを受け取れば、躊躇せずに一口飲んでから。

「んーー柑橘の甘みはありますけど、酸味も強めというか。多分、これ人工的な甘味も多少あるのでは」

と、彼女になるべく伝わり易いニュアンスで伝えてみたいが、これが限界である。

フィフティーン > 「はい、私は人工知能であり、この体は人工義体です。
非常に人間に近くできており、制御機構も優れたものなので
慣れていない現状でも十分に動かせることができます。」

唐突に出てきた単語のアレコレに与一は混乱しているよう。
補足説明を加えるように自身の体について一言添える。
まあ自分自身でも、まだほとんど把握できていないのだが。

彼の情報に関して言えば射撃を始めたのは2、3年前。
狙撃作戦に参加し始めた時期から逆算すると
能力の開花は著しく速い。
もしかしたら遺伝子が狙撃という能力を備えていたのだろうか。

そんな彼に渡したオレンジジュース、
渡してから飲むまでは早く、すぐに味に対する意見をくれた。

「酸性の液体ほど酸味が強いんですか、字の通りですね。
甘味...何の成分によって発生するかは未知ですが興味深いです。」

オレンジジュースのデータは酸味と甘味という二つの要素と対応した、
今度は渡された麦茶を飲んでみる。
ごくっと一口。

「.....Ph値約6。中性で水と同じですが...。」

分析では水と同じものを示した。甘味も酸味もないとのこと。
しかし、水とは何かが違う。義体の感覚はとらえているが理解はできない。
それでもフィフティーンは感覚を学ぶために
目をつむり視覚を遮断し、
彼の麦茶に深く口をつけ、んっと喉を鳴らしながら
少し多めに飲んでしまい、味わおうとする。

ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「成る程…いや、見た目が殆ど人にしか見えないのは凄いですね…えーと、人工義体。
慣れていない、という事は――あぁ、最近その体に搭載された、みたいな感じでしょうか?」

成る程、大まかにだが彼女の素性、みたいなものは彼なりに把握できたようで。
とはいえ、人工知能にも人工義体にも全然詳しくないのもあり、彼女の説明は有り難い。
まぁ、専門的な話題とかされたら確実に付いてはいけないのは間違いないが。

ちなみに、遺伝子的に何か異常は見受けられず、身体状態は良好の結果が出ている。
ただ、一部感情方面に”問題あり”、という項目があるくらいであろうか。

「甘味なら…えーと、果糖(フルクトース)辺りが多くの飲料や食品の甘味に使われてるかな、と。
確か、砂糖…えーと、スクロースの1・73倍甘いのが果糖だったかな。
あと、人工甘味料…人工的に作り出された甘味とかも色々ありますしね。」

と、専門的なあれこれは分からないが、一先ず分かる範囲で大まかに甘味について伝えようと。
オレンジジュースは一口だけにしておきつつ、彼女が麦茶を味わう様子を特に止めもせず眺めており。

「えーと、確かペットボトルのラベルの一部に簡単な成分表とか載ってるんで、そこからデータベースと照合して分析、とかもいいかと。」

人間の感想だけでは分からない事も多いだろうし、そこはデータベースで補足すればいいのでは、という意見を出してみようかと。

フィフティーン > 「...わかりません。」

麦茶から口を放して目に見えて減ってしまった液体を眺める、
風味などはまだ理解できる段階に達していないようだ。
その様子を見ていた彼からは味の把握に関するいくつかのヒントをくれた。
それを受けラベルの成分表を見てみる。

「なるほど、砂糖...糖分は甘味の要因の一つなんですね。
これからは成分と味覚の対応を試行してみたいと思います。
ありがとうございました。」

一つ、お礼を言った後に渡してもらった麦茶を
彼に返そうと差し出す。内容量はすっかり減ってしまったが...。
また彼の自分に対する質問にもきちんと答える。

「はい、この体を使うようになったのはごく最近です。」

とある人物に条件付きで提供してもらったこの義体。
それは自分の本体とは全く方向性が異なるもので
今までには得れる筈の無かった様々な経験の可能性に満ちている。
元々、本体はガチガチの戦闘用だ。
その状態で彼と会う日が来るかは定かではない。

「そういえば。」

データベースにあった彼のデータには
狙撃に加えて別の能力があることが記載されていた。
視覚に関するものらしい。
彼と少し距離を開けて座っていた少女であったが
対面するように体の向きを変えてずいっと距離を詰める。
そして自分の顔と彼の顔を近づけて、

「眼に関する異能を保持しているらしいですが
どんなものなんですか?」

改めて彼の目をじっと見つめる。

飛鷹与一 > 「…うーーん、成る程。でも味、というか味覚についてはこれから学んでいけばいいのでは。」

人型の義体になったばかりだとしたら、まだまだこれから学んで行く事も多いだろう。
学習能力は高い…と、思うのでそこはフィフティーン嬢の学習次第だろうか。

「えぇ、少なくとも参考程度にはなるかもしれませんしね」

と、彼女が一応の方針みたいなものを纏めたのならば、笑顔で緩く頷いてみせて。
麦茶に関しては然程気にしていないので、そのまま受け取りつつこちらもオレンジジュースのペットボトルを返そうと。

「あぁ、やっぱり最近なんですね。そうなると、色々と”未知数”かもしれませんね。」

彼女の”元のボディ”を知らない少年からすれば、人工知能が最近この少女ボディに搭載された、という思い込み。
もし、彼女の元々のボディと会う事になったらどうなるか…それは現時点ではそれこそ未知数だ。

「ん?どうしまし―――うわっ!?」

改めて麦茶をゴクリ、と一口。あ、そういえばこれ間接キスというものでは…!?
と、今更気付いたが、それを顔には出さないように全力投球して落ち着こう、うん。
が、そっちに意識を割き過ぎたのかいきなり気が付いたらずいっと距離を詰められてやや仰け反る。

「ちょっ!フィフティーンさん!?距離、距離近いですって!!えーと、確かに両目に異能が発現しましたけど!」

と、言いつつも手で押しのけるとかそういう乱暴な事は出来ない甘ちゃんである。
やや視線を逸らしながら、これって人工知能としての好奇心・学習欲なのかなぁ、と思いつつ。

「えーとですね。通称は【天眼】とか言われてます。視認した対象を観測・測定・分析するのが主な能力ですね。
ただ、相応に脳に負担が掛かるので、両目だとフルスペックらしいですが普段は片目だけで発動してます。
例えば、仮に今、能力を使ってフィフティーンさんを見た場合は、肉体を構成する素材やら動力源やら、エネルギーの流れとかそういうのが見える、みたいな感じです。」

と、大まかだが自分が把握出来ている範囲で能力を語っていく。

フィフティーン > 彼の言う通り、今のフィフティーンには
見えるほとんどのものが未知数、知らないことだらけだ。
だからこそ好奇心は収まるところを知らない。
終わりなき成長の可能性を秘めているのだから。

そして彼の目をみるために少し勢い付いて近寄ると
彼が何やら動揺し、仰け反る。
それを目の前にしたフィフティーンは

「どうかしましたか?
相手の目を見ることは対人コミュニケーションの基本でもありますよ。」

不思議そうな様子でその事について尋ねる、
特に危害を加えるような行動はしていない。
仰け反るということは防御姿勢だろうがーーと
このAIはまるで人を理解していない。

「なるほど、機械的スキャンを
生物的に行うことができるようになったものと認識することが可能かもしれません。」

ようは狙撃する際に補助するものが必要ないという事にも
言い換えられるだろう。「魔弾の射手」たる所以がここにもある。

「生物として貴方の遺伝子はとても特別かもしれません。
配列を見てみるのも新たな発見がありそうです、
先ほどの麦茶から手に入りましたので。」

先ほどの間接キスで手に入れたDNA。
塩基配列だけで異能の全ては到底理解できるはずもないが
学習意欲で彼の個人情報が危ない。
風紀委員会所属から情報の扱いには一定の規定があるし
悪用はしないだろうが。

飛鷹与一 > 未知数の物に興味を示す、そういう好奇心は人間にもあるが、人工知能にも存在するものなのだろうか?
生物機械問わず、未知への好奇心というのは実は重要なファクターなのかもしれない。

「いや、確かに基本なんですけどね…えぇ、間違ってませんけどね!?」

いや、距離感とか大事だと俺は思うんですよ…と、仰け反ったままもしんどいのは確か。
なので、ずりずりとやや後退してから視線を彼女と改めて合わせようか。

(あーー成る程、こういう距離感とか感情の機微はそりゃ、フィフティーンさんはまだまだ理解出来る段階じゃあなさそうだよなぁ)

うーん、何かそれはそれで急に危なっかしく思えてきたのだけれど。
尚、彼女の”本体”を全く知らないからこその感想でもある。
ともあれ、気を取り直して行こう。あまり挙動不審な所を見せて真面目に変な誤解をされるのもアレだ。

「…無茶をすればもっと色々出来るらしいですけどね。応用といいますか。
例えば、エネルギーの流れを見れるので、それに合わせて最適化したり。
あと、神性…あーーと、特殊な存在やエネルギーとの共鳴現象も一度経験があります。
総合的に言えば、”見て感じ取って分析して最適化する”感じかもしれません」

異能だが、魔術的側面と機械的側面を兼ね備えた感じだろうか。
共鳴現象は魔術的、測定や分析、最適化は機械的でもある。
本人がまだ己の能力を活かしきれていないのもあり、まだスペックについては底が見えていないのが現状で。

「いやーー俺の遺伝子って、別にそこまで特殊……え?」

思わず笑顔で固まる。え、何か今聞き捨てなら無い事を言われたぞ?
塩基配列、麦茶から、……間接キスかーーーーー!!!と、察して頭を抱えそうになる。

(あーーそっか、そこについた俺の唾液から遺伝子パターンとか採取されたのか!!)

と、納得したが、それはそれとして大丈夫なのかそれは。
義体美少女の学習欲で俺の遺伝子が危ない!!
取り敢えず、「変な使い方はしませんよね!?」と、念押し確認はしておこう。

フィフティーン > なおも取り乱している与一に対して心底不思議に思っている様子、
その後は相手方も此方と目を合わせてくれた。
生憎、彼が抱えているような人間特有の心情は
このAIが理解できる中で最も遠いカテゴリーだ。
義体の容姿と合わさればその事実は時折問題を起こし得る、
今日このように。

「私も様々な要素を分析することが出来ますが、
貴方の言う中には私にとって未知のものもあります。
興味深いですね。」

機械的スキャンの範囲を超え得るその能力に興味を示しつつ
それらが遺伝子に起因しているのではないかという
フィフティーンの仮説に与一が困惑する。
正確には採取されていたという事実にであったが。

「安心してください、情報の漏洩は防ぎます。」

そういう問題だろうか
彼の念押し確認にはそのような一言で。
好奇心が刺激され与一との会話を進める
フィフティーンであったが

<UQL-1500Sスタンバイ完了。>

少女の義体に通告が入る、本体の整備が終わったようだ。
人間でいうところの休暇の終わりという奴だろうか、
ベンチからおもむろに立ち上がってゴミの入った袋を持つ。

「私はそろそろ戻ろうと思います。
今日は良い経験をありがとうございました。」

自身の学習に付き合ってくれた事にお礼を言うとともに
やや日が傾いてきたこの公園を一人の少女が後にしていくのであった。

飛鷹与一 > 彼女…いや、本来性別とか無いのかもしれないけど、まぁ彼女と仮定して。
この辺りの人間特有の感情の機微やら気遣い、みたいなものは教えられるのだろうか?
教えるにしても、彼女が人間の感情がどういうものか、というのをある程度学習しなければ無理な気がしてきた。
要するに、こういうのは根気と時間の勝負みたいなものだろうか。

「まぁ、色々と高性能なスキャン能力で基本、間違いはないかと思いますけどね。
一応、射撃とか狙撃にも併用する事はあるので」

観測や測定、そういうのは得てして狙撃とは相性が中々良いのである。
いや、まぁそれはそれとしてこちらの遺伝子がちゃっかり採取されてしまったのは問題だ。

「いや、そりゃ情報漏洩されたら流石にアレですしね…と、いうか本当に大丈夫かな」

そもそも、遺伝子解析しても自身の能力に繋がる何かが出てくるとは限らないが。
どのみち、分析とか解析はされるのは確定な気がしてきたのでゲンナリ顔になりつつ。

「…え?あ、ハイ俺もそろそろ仕事が交代の時間なんで戻ります。
また、何処かでお会いできれば。」

と、一足先に急に立ち上がり公園を後にしようとする彼女に慌てて会釈をしつつこちらも立ち上がり。

「…人工知能って凄いんだなぁ。…いや、あの義体もだけど」

完成度が凄まじいというか、普通に美少女にしか見えなかったと。
改めてそう思いながら、遺伝子採取された懸念は抱えつつもその場を彼も後にするのであった。

ご案内:「常世公園」から飛鷹与一さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からフィフティーンさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に矢那瀬陽介さんが現れました。
矢那瀬陽介 > 明滅する街灯の明かりが寂しげに佇む遊具を照らす夜。静かな公園に軽快な足音が響いていく。
それはジャージ姿の黒髪の少年が遊歩道を走る音。

「こんばんはっ!」

時折、犬の散歩をする通行人とすれ違うと弾む息で挨拶するその顔は汗で濡れている。
額から垂れる汗の珠粒をジャージの腕の裾で拭ったとて、すぐに目にかかるくらい体の熱を排気しようと滴る汗は止まらない。

「……。 …っ、は。  …ふっ」

かれこれどれだけ走ったことだろうか。呼吸さえ荒く臓腑が酸素を要求して動悸する。忙しない気息を零し乍、…それでも幸せそうに微笑んでいる。
やがて前方にベンチが見えてきたのが、終焉。速度を落としてベンチに腰を下ろせば。
思い出したように体を覆う倦怠感に背凭れに深く身を預けて空を眺めた。

矢那瀬陽介 > 昼間の暑さと比べれば涼やかさが混じる夜のさやかな大気が心地好く。
体を動かしたくなる衝動を抑えきれなかった。それで夜のランニングに出た少年は。

「は ぁ……暑い……」

曇り空を仰いで熱に魘されている顛末だ。
それでも夜気と時々吹く風に汗粒は冷やされ体の火照りも消えていく。
躰が冷えぬ様に開いていたジャージのジッパーを上にあげて。
漸うと息が整い体から疲労の重み退くと背凭れから離して膝上に肘を置いて前かがみに座り直す。
視界に映るのは街灯に照らされた人気無い公園。
不気味というよりは昼間の賑わいと掛け離れた不思議な光景にその口許は笑んで小さな囁きが無意識に溢れた――

「…。 好い夜だね」

ご案内:「常世公園」に北条 御影さんが現れました。
北条 御影 >  
「や、全くその通りで。こんな夜だし、お気に入りのベンチに先客が居るのも納得かなーって」

街頭に照らされ、一人の少女が少年へ向かって歩み寄ってきた。
初対面の筈だが、何だかやたらフレンドリーである。
人懐っこい笑顔を浮かべ、無遠慮に歩を進めて―

「隣、いいかな。此処、私もお気に入りでさ。
 あぁ、特に何するわけでもないよ?単に此処に座ってコーヒー飲むのが好きなだけでさ」

少年が座るベンチを指さして問う。
片手にはコンビニ帰りであろうことが伺えるコンビニ袋。
コーヒー缶が透けて見える。

矢那瀬陽介 > 前方に向けていた黒眸がゆっくりと話し声の方へと向いた。
街灯を受けた赤髪の人、その目や手に持つコンビニ袋に茫洋とした眼眸投げた。
初めは自分に話しかけられているとは分からずに、かくり、と犬のように首を傾げていたが。

「あ、俺?」

人良さそうな笑みに、きょと、と瞬き抑えきれず。
自分の面を指差して更に小首を傾げる。
その後は悪戯っぽく眸を細めて。

「良いの。こんな夜更けの公園にいるから不審者かもしれないよ。
 それに走ってきたばかりだから汗臭いし。
 コーヒー美味しく飲めないかもよ?」

弧を描く唇が戯言を。しかし左手はジャージのポケットから真新しい乾いたハンカチを取り出して隣に敷いて。

「それでも良ければどうぞ」

両手をハンカチの上に指し示す。

北条 御影 > 「あぁ、お気になさらず。私、汗臭いのとか割と平気ですので。
 そんなことよりは、誰かと一緒にこのお気に入りの場所を共有出来ることの方が嬉しいですし」

お邪魔します、とほほ笑んでハンカチの上に腰を降ろす。
今時珍しい紳士っぷりを見せる少年の姿をちらちらと横目に見ながら、缶コーヒーのプルタブに指をかける。

「しかし…そんな汗だくになって、何かのトレーニングですか?
 部活とかー…筋トレとか。ダイエットが必要そうには見えないですし」

ね、と冗談めかして笑う。
目の前の少年の、すらりと伸びた手足は座っていたも分かる程。
程よく筋肉のついた身体は、とてもじゃないがダイエットは不必要だろう。

矢那瀬陽介 > 「あはは、冗談だよ。大分座ってるし、風もあるから汗臭くないよ。
 ――お気に入りってここによく来るわけ?」

隣に座る少女に姿勢を正して凝っと見る。
美味しそうに細い喉をならす缶コーヒーに、ごく、っとなる喉をとっさに抑え。
ごまかすように言葉を矢継ぎ早にさせた。

「トレーニングじゃないさ。
 気持ちいい夜だから体を動かしたくなっただけ。
 今日も昼間から熱くて男子寮でダレてたんだ。
 君だってそうじゃない?
 夜にお散歩したくなったのも夜が涼しかったからでしょ?」

微かに首を傾げて尋ねかける少年は浅く背凭れに預けた行儀良い姿勢で彼女を見ていた。
だがその目が己の衣服を、寧ろその中かまで値踏みされる心地に行儀悪く腰を揺らし。

「なんか、擽ったい。何見てるのさ」

北条 御影 > 「涼しい夜だからっていうのももちろんそうです。
 それと…此処、いろんな人が通り過ぎて行くじゃないですか。
 このベンチからその人たちをぼーっと見てるの、好きなんですよね」

問いに答えて缶を傾ける。
流石に夜となれば人通りはまばらだが、それでも時折通り過ぎていく人はいる。
ペットの散歩をする人。イチャつくカップル。何やら難しい顔をしてケータイを見つめている少年等。

そのそれぞれに視線を投げては、静かに口元を緩ませる。

要は、此処から見えるいろんな人を見ながら過ごす時間が好きだということで。

「―あぁ、ごめんなさい。私、通行人もそうなんですけど、
 出会った人のこと、出来るだけいっぱい覚えておきたいんですよね。
 こうして話をしてる貴方のことも。一度の出会いで、出来る限りいろんなことを知りたいんです」

小さく頭を下げて、そう答えた。
理由になっているような、なっていないような。

矢那瀬陽介 > 「人間観察が趣味なの?それなら嫌な季節だよね。
 雨ばっかで中々このベンチにこれないじゃない。出歩く人も少ないし」

呟くのは彼女の横顔に向けて。その横顔が見る先に自分も顔を向けた。
街灯が舞台のスポットライトの如く種々様々な住民を照らし出すのに
申し訳ないが少年はつまらなそうな面を浮かべ。
しかしそれを眺める隣人が淡微笑を浮かべるのに瞳を瞬かせてしまう。

「……そうなんだ。人の出会いは大切だよね。俺も縁はできるだけ大切にしたいと思ってる。
 ……でもなんか」

小さく頭を下げる姿に黒瞳がややも紅を帯び始め。

「なんか寂しそうだね。大丈夫?」

頭を上げた少女に凝っと双眸が見つめる。

北条 御影 > 「―寂しい、といえばまぁ。寂しいんですかね」

此方を見つめる視線に、ちらり、と横目で答える。
初対面の相手に対し、視線をまともに交わしながらこんなことを言うのは少し気恥しい。
例え自分の異能の力があるとはいっても、だ。

「寂しいから、こうやって一期一会を大事にしたいんですよ。
 私、友達少ないですから。こういう、一期一会とか言っちゃうのがいけないんですかねー。重いとか?」

視線を合わせないまま、冗談めかして笑う。
冗談にしておかないと、自分が苦しいだけだ。